80/97
第8-8話:崩れ去った基礎
「健一……私、もう……自分の身体が、信じられないの……」
震える彼女を腕の中に閉じ込めながら、私は言いようのない無力感に苛まれていた。
かつての彼女は、どんなに苦しくても「自分の中の正義」を信じることができていた。しかし今の彼女は、敵の刺激を身体が「正解」として記憶してしまっている。信頼すべき氷野先生ヒュノプスの前で見せた涙も、私の前で見せるこの震えも、すべてがネクサスの計算通りに「身体のバグ」として利用されているのだ。
遠隔刺激などではない、彼女自身の身体記憶と羞恥の増幅が、彼女を内側から食い破っている。
第一波の「解析」は終わった。敵は彼女の内部構造を、そして「崩壊のタイミング」を完璧に把握した。
次に来るのは、この揺らぎきった麗子の「個」としての尊厳を、根底から踏みにじる最悪の連携攻撃。私は来るべき崩壊を予感しながら、汗と蜜に汚れたロイヤルブルーの残響を纏う彼女を、ただ強く、折れそうなほど抱きしめ続けるしかなかった。




