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第1話:身体記憶の暴走
梅雨入りを控えた、湿度の高い日のことだった。私は出向先での仕事を早めに切り上げ、麗子の勤める高校を訪れていた。廊下からそっと覗き見た彼女の授業風景は、一見、いつも通りの厳格なものに見えたが、私の目は彼女の僅かな異変を逃さなかった。
窓から差し込む湿った空気が、麗子のタイトスカートとジャケットを、いつもより生々しくその肢体に張り付かせている。麗子はチョークを持つ手を震わせ、不自然なほど頻繁に腰の位置を直していた。
後になって麗子が涙ながらに語ったのは、その「湿気」がもたらした地獄のような錯覚だった。スーツが汗で肌に吸い付く感覚が、あのネクサスの冷たい触手がレオタードの上から全身を這い回った際の「多点拘束」の記憶を、強烈なリアリティで呼び覚ましていたのだ。
敵はいない。魔力も感じない。しかし、彼女の脳内では衣服の摩擦が「触手の蠢き」へと自動的に変換され、身体は防衛本能と羞恥の狭間で小刻みに震え出していた。黒板に英文を書き記すその背中は、見えない触手に縛り上げられているかのように強張り、彼女は教室という安全な場所で、独り、蹂躙の残響に悲鳴を上げていたのである。




