70/75
第6話:戦闘中の混線
なんとかアジトを飛び出し、下級怪人ドロルとの戦闘に突入したセイントレディ。しかし、今日の彼女の動きは見る影もなかった。
「はぁっ!」
鋭い蹴りを放とうと右脚を跳ね上げたその瞬間、ドロルの手が彼女の足首に偶然掠めた。ただの、取るに足らない物理的接触。しかし、その瞬間、麗子の脳内で「ネクサスの6本触手による多点拘束」の記憶が、爆発的なリアリティを持ってフラッシュバックしたのだ。
「あ、ぁあっ……! やめ……そこは……っ!」
目の前にいるのは泥の怪人であるはずなのに、彼女の視界には全身を這い回る無数の触手が映り、肌の上には冷たい内視鏡の感触が蘇る。現在と過去、現実と記憶が完全に混線し、麗子は空中でぶざまに姿勢を崩すと、コンクリートの地面へ背中から叩きつけられた。
ドロルたちは、ただ脚を掴もうとしただけでパニックに陥った聖女を、嘲笑うように囲む。
「ヒヒッ! 聖女サマ、ガタガタ震エテルゾ!」
魔力を振り絞ってなんとかドロルを撃退したものの、彼女に残されたのは、自分の感覚が何一つ信用できないという致命的な喪失感だけだった。




