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第2話:声の誤作動
昼休み、職員室へ戻る廊下で、麗子はスクールカウンセラーの氷野――ヒュノプスとすれ違った。
「神代先生、お疲れ様です。少し顔色が優れないようですが……大丈夫ですか?」
氷野の、いつもの穏やかで心配そうな声。ただそれだけの「語尾の柔らかさ」に触れた瞬間、麗子の身体は、主の意志を完全に無視して、嘘のようにふっと緩んでしまった。
麗子にとって、氷野は自分を理解してくれる聡明で優しい「同僚」以外の何者でもない。だが、麗子の脳と身体の深層部は、第5章の相談室で彼女に唇を奪われ、胸を弄られた際の、あの「抗い難い依存的な安心感」を甘い毒のように記憶してしまっていたのだ。
(違う……私は、もっとしっかりしなきゃいけないのに……)
頭では自分を律しようとしているのに、氷野が放つ特有の空気に触れるだけで、戦士としての「規律」が自律神経レベルで崩壊し、身体が勝手に『快感のスイッチ』をオンにしてしまう。親切な同僚への信頼と、生理的な反応による隷属。そのあまりの乖離に、麗子は眩暈を感じながら、自分自身の肉体が完全に制御不能な迷宮へ迷い込んでしまった恐怖を自覚させられていた。




