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第8話:方針転換:心から腐らせる呪い

「……ふふ。なら、直接触れずに、中から腐らせるまでよ」


氷野の呟きは、誰に聞かせるためのものでもなかった。ただ静かに、自分自身に言い聞かせるように紡がれた言葉だった。


一方その頃、麗子は校舎裏の暗がりで、膝を抱えて座り込んでいた。


唇を奪われた感触が、まだ消えない。あと少しで、最も触れられてはいけない場所にまで指が届きかけていた──その事実を思い出すだけで、吐き気にも似た震えが背筋を這い上がる。


けれど、麗子を本当に打ちのめしていたのは、そのことではなかった。


(私、あの時……感じて、しまった)


信じられなかった。信じたくなかった。抗おうとした意志とは裏腹に、自分の身体があんなにも従順に、あんなにも淫らに応えてしまったこと。その記憶が、麗子の中で何度も何度も再生されては、心を内側から抉っていく。


膝に埋めた顔から、嗚咽とも呼べない乾いた息だけが漏れた。


(健一のことも……もう、自分のことさえも、信じられない)


かつて自分を支えていたはずの誇りも、信念も、今はどこにも見当たらない。ただ、空っぽになった胸の中に、冷たい風だけが吹き抜けていくようだった。


夕闇が校舎の輪郭を溶かし始めた頃、麗子のすぐ背後で、何かが微かに蠢いた。


音もなく、影が伸びる。


麗子はそれに気づかない。気づく余力さえ、もう彼女には残されていなかった。



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