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第4話:相談室の心理誘導と奪われた唇


放課後、麗子は抗い難い引力に導かれるように、氷野の待つ相談室へと足を運んでいた。

後になって私が知ったことだが、その部屋はすでに、ヒュノプスの魔力と話術によって設えられた完璧な「心理的アジト」と化していた。

「誰かの期待に応えようとして、自分の意志を見失っていませんか?」

ソファに向かい合った氷野のその問いかけは、教師としての麗子の悩みに寄り添うような優しいトーンでありながら、彼女の最も脆い部分を的確に抉り出していた。

「あなたは十分頑張っている。でも、無理に『正しさ』を背負わされているように見えるの」

正体を知らないはずの同僚からの、あまりに的確すぎる指摘。

昼間の噂話で主体性を揺さぶられていた麗子は、自分を縛り付けていた規律の重さに耐えきれなくなり、完全に心理的な逃げ場を失って涙を零した。

「私は……ただ、正しくありたくて……っ」

顔を覆って泣き崩れる麗子。その時、氷野の手がスッと伸び、麗子の顎を優しく持ち上げた。

そして、涙に濡れた麗子の震える唇を、氷野の唇が塞いだ。

優しく、しかし有無を言わさぬ力で奪われた、同性からの突然のキス。

外部の心理士に突然唇を奪われるという凄まじい違和感と異常事態。本来の麗子であれば、激しく突き飛ばして拒絶するはずの行動だ。

しかし、この時の麗子には、それを跳ね除けるだけの『自分の意志(主体性)』がもう残っていなかった。

「誰かに委ねてしまいたい」という依存の種が芽生え、彼女の防衛本能は完全にショートしていた。麗子は目を閉じたまま、抗うこともできずに、その甘く冷たい毒のような口付けをただ受け入れるしかなかった。

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