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第2話:外部心理士との偶然の接触

数日後の昼休み。俺は麗子をランチに誘おうと、彼女の勤める高校の近くまで来ていた。


校庭の隅のベンチで、麗子が誰かと談笑しているのが見えた。


相手は見知らぬ若い女性――落ち着いた雰囲気で、どこか知的な印象を与える人物だった。


「神代先生、最近少しお疲れのように見えますね。生徒指導も大切ですが、ご自身の息抜きも必要ですよ」


その女性は、同じ教育現場に身を置く先輩のように、自然な距離感で麗子に寄り添っていた。


「……ええ。少し、色々と考えすぎてしまうことがあって」


麗子は、俺には見せなかった「弱音」を、その女性の前でぽろりとこぼした。


しばらくして、麗子が俺に気づいて手を振った。


「健一! ちょうどよかった。紹介するわ」


麗子は俺を手招きし、隣の女性を紹介してくれた。


「こちら、スクールカウンセラーの氷野さん。今年度から週に数回、うちの学校で相談業務を担当してくださってるの」


「氷野です。よろしくお願いします」


氷野と名乗った女性は、柔らかく微笑みながら俺に会釈した。


その笑顔には、有能な心理士としての温かさが漂っていた。


「神代先生、いつも健一さんのお話をされてますよ。とても信頼しているんですね」


「え、そんなこと言ってないわよ!」


麗子は慌てて否定したが、頬を染めている。


氷野は穏やかに笑いながら続けた。


「でも、教師という仕事は本当に大変です。神代先生のような方こそ、自分を大切にしてほしいんです」


「……ありがとうございます」


麗子は、氷野の言葉に心から救われたような表情を浮かべた。


俺は遠くからその光景を見つめながら、背筋に冷たいものが走るのを感じていた。


理由は分からない。


氷野が何者かも知らない。


ただ、麗子が俺に見せない「弱さ」を、あの女に預けている――その事実が、言いようのない不安を呼び起こした。


これが、エクリプスが仕掛けた最も静かで、最も残酷な罠の始まりだった。


だが、この時点では俺も麗子も、それに気づくことはなかった。

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