第1話:勝利の裏側の違和感
前章での戦い――私と考案した、骨盤を意図的に動かす「腰の旋回」という新技で勝利を収めた後、麗子の表情には確かに誇りが戻ったように見えた。
翌朝、アジトでコーヒーを淹れる彼女の背中は、教師としての凛とした真っ直ぐさを保っている。しかし、当時の私は気づくべきだった。彼女が時折、無意識のうちに自分のウェストのくびれや、タイトスカート越しのヒップのラインを指でなぞり、小さくため息をついていることに。
「あの技のおかげで勝てた。本当に感謝しているわ、健一」
彼女は振り返り、そう微笑んでみせた。だが、その笑顔にはどこか微細なノイズが混じっており、それが拭い去れない不安として私の胸に残っていた。
当時の私は、彼女の心の奥底に沈殿していた澱の正体を、正確には理解できていなかった。
あの「腰の旋回」は、確かに敵の押し込みを回避する有効な戦術だった。しかし同時にそれは、敵の目の前でロイヤルブルーの生地を波打たせ、自らのヒップやVラインを官能的にくねらせて見せるという、「女性としての肢体を武器にする行為」に他ならなかったのだ。
厳格な教師であり、潔癖な聖女であろうとする彼女にとって、戦場であのような淫靡な動きを自ら進んで行ったという事実は、ボディブローのように後からじわじわと「本能的な羞恥」となって彼女の自尊心を削っていた。
自らの誇りを守るために、「あれは戦うヒロインとしての技術・戦術だ」という盾で必死に羞恥を否認し続けていた彼女の心。その張り詰めた「心の基礎」は、この時すでに限界へと近づき、次なる崩壊への静かなカウントダウンを始めていたのかもしれない。




