第4章第3話:背徳のシミュレーション
「……次は、もっと深いところまで行くわ」 訓練は、最も残酷なフェーズへと移行した。
健一がゾディアック役を演じ、麗子の精神に「愛と羞恥の混濁」を叩き込むシミュレーション。
私は麗子の両手首を革のベルトで固定し、彼女を壁際に磔にした。 ロイヤルブルーの生地が極限まで張り詰め、麗子の肉体のラインを露骨に引き立てている。
「セイントレディ。……いや、麗子。私の指先が、恋しくなったかな?」
私はあえてゾディアックの冷酷な声色を真似、レオタードのウエストからヒップにかけて、掌をねっとりと滑らせた。
「ひっ……! ぁ、あぁ……っ……健一、……っ」
愛する人の手。けれど、伝えられる刺激はゾディアックの模倣。 その倒錯した状況に、麗子の心は激しく千々に乱れる。
レオタードの繊維が私の手の動きを「支配の記憶」へと翻訳し、彼女の二つの突起を、ニップレスを押し返さんばかりに昂ぶらせていく。
「見ないで……そんな、汚らわしい名前で、呼ばないで……っ!」 麗子の拒絶は、快感と羞恥によって甘い喘ぎへと変質し始めていた。
私はさらに追い詰める。 片手で麗子の右胸をレオタード越しに強固に圧搾し、もう片方の手で、クリスタルの「角」を恥丘へとじりじりと押し当てた。
「ああ、ああああああああっ!!」 絶頂のブーストが来るという極限の恐怖が、麗子の全身を襲う。
その瞬間――麗子の腰が、蛇のようにしなやかに、激しく左右に蛇行した。
第2話で学んだ回避運動。
彼女は、ゾディアックの幻影による快感の奔流に飲み込まれそうになりながらも、必死に「我」を取り戻し、物理的にクリスタルの合致点をずらし続けた。
「……はぁ、はぁ、……っ。やったわ……健一、私……イッてない……っ」
麗子の瞳に、かすかな、けれど確かな勝利の光が宿る。 身体はゾディアックの調律に反応し、裏返った声を上げながらも、心と技術はそれを拒絶することに成功したのだ。
麗子は私の胸に崩れ落ちた。
全身のレオタードは汗で濡れ、二つの突起は敗北の記憶で硬く尖ったままだったが、その震えはもはや、操られるだけの標本のそれではなく、自らの意志で戦う「ヒロイン」の誇りに満ちていた。
(第4話へつづく)




