第4章 第1話:残滓の音
地方都市、Y市の朝。 第3章での凄絶な敗北から数日が経過した今も、麗子のマンションの一室には、重苦しい沈黙が淀んでいた。
彼女は今、姿見の前で、一着のロイヤルブルーのレオタードを手に立ち尽くしている。
「……健一。私、またこれを……纏えるのかしら」
麗子の声は震えていた。
下腹部、パンティの前面に固定されたブルークリスタルは、ゾディアックによって絶頂をブーストされたあの夜以来、輝きを失ったまま冷たく沈黙している。
私は彼女の背後に立ち、その細い肩を力強く抱き寄せた。
「大丈夫だ、麗子。これは君を辱めるための檻じゃない。君が正義を貫くための、誇り高き『規律』だ。……俺が一緒に、その意味を取り戻してやる」
麗子は小さく頷くと、震える手でパンストを穿き、レオタードに肢体を滑り込ませた。
ファスナーのない強靭な生地が、163センチの肉体をギリギリと締め上げていく。まだ戦闘用のニップレスを貼る前の、剥き出しの肌。
仕上げに、彼女はレッグラインの裾ゴムを両手で掴み、力任せに引き下げてから、静かに手を離した。
――パチンッ!
乾いた音が静かな部屋に響き渡る。 その瞬間、麗子の肉体がビクンと激しく痙攣した。
「ひっ……!? あ、ああ……っ!」
裾ゴムが柔らかな肉に深く食い込んだ衝撃。その物理的な振動が、消灯したクリスタルを通して、彼女の脳裏にゾディアックの冷酷な指先をフラッシュバックさせた。
「翻訳回路」が勝手に作動し、生地の微細な摩擦を「愛撫」として再構成する。
ニップレスのない二つの胸の突起は、本人の意志を嘲笑うように、瞬時に硬く、鋭く尖り、レオタードの表面に二つの小さな「点」を浮き彫りにした。
(やだ……。着るだけで、身体が……あの時の絶頂を思い出してる……っ!)
「……麗子。俺を見ろ」 私は彼女の腰を引き寄せ、鏡の中の自分を直視させた。
「突起が尖るのは、君が弱いからじゃない。装備が君の戦う意志に応えて、感度を高めているだけだ。……その震えも、俺がすべて肯定する」
麗子は私の胸に顔を埋め、パチンという音の残響に怯えながら、再び聖女として歩み出すための第一歩を、重い足取りで踏み出した。




