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第24話 王女の遊戯

第24話「王女の遊戯」


 王城、最奥区画。


 限られた者しか足を踏み入れることを許されない場所。


 重厚な扉の向こう――


 そこには、異様な静けさがあった。


 広い室内。


 装飾は豪奢。


 だがどこか冷たい。


 人の温度が感じられない。


 窓際。


 一人の女が、椅子に腰かけていた。


 足を組み、


 頬杖をつく。


 視線は、夜の王都へ。


「……退屈ね」


 ぽつりと零れる声。


 第一王女。エルフィア.ヴァルグレイス


 王位継承権第一位。


 本来ならば、国を導く存在。


 だがその瞳に宿るのは――


 興味の欠片すらない、冷え切った光だった。


「ねぇ」


 視線を動かさず、言う。


「報告を」


 その一言で、


 空気がわずかに歪む。


 次の瞬間。


 部屋の隅に、“影”が立っていた。


 音もなく。


 気配もなく。


「……洞窟実験、終了」


 低い声。


 感情はない。


「対象区域にて、実験個体の投入を確認」


「戦闘データの回収に成功しました」


「ふーん」


 興味なさそうな返事。


 だが――


 耳は、確実に拾っている。


「結果は?」


「寄生、操作ともに正常に機能」


「対象の精神干渉も問題なし」


「……九名死亡」


 わずかな間。


 そして――


「あら…少ないわね」


 あっさりとした一言。


 命の重さなど、そこにはない。


「三十人規模でそれだけ?」


「想定より抵抗が強く……」


「まあ…いいわ」


 言葉を遮る。


 面倒そうに。


「別に“壊滅”が目的じゃないもの」


 ゆっくりと立ち上がる。


 窓へ歩く。


 月光が、その横顔を照らす。


「今回の目的はあくまで“確認”」


「でしょ?」


「……はい」


「なら十分じゃない」


 くすっと笑う。


 だがその笑みは、


 どこまでも冷たい。


「それで?」


「“核”はどうなったの?」


「……討伐されました」


 一瞬の沈黙。


 だが――


 エルフィアは、笑った。


「いいわねいいわね」


 心から楽しそうに。


「死亡させて本気にさせて壊されるってことは、“通用してる”ってことだもの」


「え……?」


 影が、わずかに戸惑う。


「相手が弱すぎたら、検証にもならないでしょ?」


「あの程度壊されるくらいでちょうどいいの」


 当たり前のように言う。


 まるで、


 壊れる前提の玩具の話をするかのように。


「それに」


 エルフィアは振り向く。


「“寄生”は確認できた」


「“操作”も問題なし」


「群体化も、ほぼ想定通り」


 一つ一つ、指を折る。


「……十分よ」


 満足げに頷く。


「じゃあ次は…」


 その一言で、


 空気が変わる。


「“混ぜなさい”」


 低く。


 はっきりと。


「魔物と人間」


「両方」


「寄生させられるスライムを使って」


 ぞくり、とする言葉。


「戦場で必要なのは、“使えるかどうか”だけよ」


「……」


「壊れてもいい」


「死んでもいい」


「命令を正しく聞くなら、それでいい」


 淡々とした合理。


 そこに迷いはない。


「兵士を育てるより早いでしょ?」


「お金もかからないし」


 軽く言う。


「だって――」


 一歩、踏み出す。


 影に近づく。


 そして、微笑む。


「“商品”なんだから」


 言い切る。


 完全に。


 人も、魔物も、


 すべてを“物”として扱う価値観。


「他国は喜ぶわよ?」


「自国の兵を減らさずに戦えるんだから」


「戦争なんて、“効率”よ」


 その思想は、


 どこまでも歪んでいる。


「……次の段階へ移行してよろしいでしょうか?」


 影が頭を下げる。


「改めて実戦規模での検証を――」


「そうね」


 エルフィアは軽く頷く。


「小規模でいいわ」


「村でも、拠点でも」


「好きに使いなさい」


「はい」


「ただし――」


 影が止まる。


「“面白くして”」


 その一言。


「ただの虐殺はつまらない」


「データが欲しいの」


「個体がどう動くか」


「どこまで壊せるか」


 目が、わずかに細くなる。

 

 そして影の男が洞窟内戦闘の映像をみせる

「ふーん……いいわね…特に」


 異質だった存在。


「この黒髪の剣士」 「あと赤髪も」

 リンの姿。それとレイも。


「いいわね、この子達」


 くすっと笑う。


「壊れるか」


「壊すか」


「どっちにしようかしらね」


 楽しそうに呟く。


「観察対象に追加して」


「……御意」


 影は、静かに消えた。


 音もなく。


 気配もなく。


 再び、部屋にはエルフィアだけが残る。


 静寂。


 夜の王都が広がる。


「……ああ」


 ぽつりと漏れる声。


「やっと少し、楽しくなってきたわ」


 その笑顔は――


 王族のものではない。


 ただの、


 “観察者”。


 いや――


 “実験者”。


 人の命すら、


 盤上の駒として扱う存在。


 その視線の先で、


 何も知らないまま、


 物語は進んでいく。

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