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第23話 誘い

23話「誘い」


 依頼管理所。


 報告と手続きが一通り終わり、


 張り詰めていた空気が、ようやく緩み始めていた。


「……終わったぁ〜〜!!」


 その空気をぶち破ったのは――


 トペミアだった。


 両手を大きく広げて、その場で伸びをする。


「いやマジで疲れたって!!」


「お前は元気だな……」


 クロージスが呆れたように言う。


「元気じゃないとやってらんないでしょ!」


 トペミアはにやっと笑う。


 そして――


 ぱん、と手を叩いた。


「はい決定!」


「よし!今日は打ち上げいこ!!」


「……は?」


 数人が固まる。


「いやいやいや!」


「今回報酬エグいって聞いたんだけど!?」


「命がけだったしさ!」


「こういう時くらいパーっといこうよ!」


 満面の笑み。


 空気を強引に引っ張る。


「……まあこんな時じゃないと他のパーティも交友ないしね」


 リノアがくすっと笑う。


「でしょ!?リノちゃん話わかる〜!」



 軽いノリ。


 だが――


 その明るさが、救いでもあった。


「……俺は行かない」


 リンが言う。


「休む」


「えー!?」

 

 トペミアが大袈裟に驚く


「主役いないとつまんなくない!?」


「別に主役じゃない」


 リンは即答。


 興味なし。


 完全にいつも通り。


 その時――


「リンちゃも来なよ」


 リノアが、何気なく言う。


「……行かない」


 即答。


 だが――


「私は行くよ?」


 ぴたり、と空気が止まる。


 リンが、わずかに視線を動かす。


「……」


 一瞬の沈黙。


「……なら、ちょっとだけ顔だすか)


「え」


 トペミアが固まる。


「えええ!?」


「なに!?」


「リノちゃんが行くなら行くの!?」


 リノアが吹き出す。


「ちょっとなにそれ?」


「……別に」


 リンはそっぽを向く。


 だが耳が、ほんの少しだけ赤い。


「いいじゃんいいじゃん!」


 トペミアがニヤニヤする。


「リンも来るってよ!」


「……うるさい」


 ぶっきらぼう。


 だが――


 確かに参加することになった。


「じゃあ決まりね!」


 トペミアが満足げに頷く。


「クロは?」


「俺は遠慮しとく」


「え〜!?」


「今回は休む」


 落ち着いた判断。


「ジョカは?」


 視線が向く。


 ジョカナスは――


 無言で首を横に振った。


「あー、だよね」

 

 トペミアが苦笑い


「よし!!ってことで!」


 トペミアが振り向く。


 視線の先――


 レイとルーク。


「そこのお二人も当然来るよね!?」


「え?」


 ルークが固まる。


「いや、えっと……」


「来るよね!?」


「圧が強い!?」


「来いって言ってるの!」


 笑いながら言う。


 断らせないタイプ。


 レイは少しだけ考えて――


「……行くか」


「よっしゃ!」


「ありがとうございます!!」


 ルークも勢いで頷く。


 その様子を――


 少し離れた場所で見ていた影。


 シェリ。


「……」


 特に興味はなさそうに、


 そのまま背を向ける。


 その時。


「シェリ」


 声がかかる。


 振り向く。


 チャコリア。


「……なんだ」


「少し時間いいか」


 短く言う。


 シェリは一瞬だけ考えて――


「……ああ」


 そのまま歩き出す。


 二人だけで、奥へ。


 誰も気づかない場所へ。



 夜。


 王都の酒場。


 騒がしい空気。


 笑い声。


 酒の匂い。


「かんぱーい!!」


 トペミアの声が響く。


 グラスがぶつかる。


 レイは水。


 ルークは珍しく控えめに酒。


 リノアは軽く口をつける程度。


 リンはリノアの隣をキープしている


「いやー今回ほんとやばかったよね!」


「死ぬかと思ったもん!」


「軽いな……」


 レイが呟く。


「軽く考えないとやってらんないでしょ!」


 トペミアが笑う。


 その言葉に、少しだけ現実が混じる。


「でもさ」


 リノアが口を開く。


 視線がレイとルークに向く。


「二人とも、すごい良かったよ」


「え?」


 ルークが驚く。


「ちゃんと戦えてた」


「崩れてなかったし」


「……どうも」


 レイが短く返す。


 リノアは少しだけ間を置いて――


「ねぇ」


 真面目な声になる。


「私たちのとこ、来ない?」


「……え?」


「えええ!?」


 ルークが完全に固まる。


「ちょ、ちょっと待ってくださいそれって……!」


「そうだよ、スカウト」


 リノアはさらっと言う。


「いやいやいやいや!?」


「なんでそんな軽く!?」


「軽くは言ってないよ」


 リノアは笑う。


 だが、その目は本気だ。


「戦力として欲しいって思った」


「それだけ」


 シンプル。


 だが重い。


 トペミアが横から割り込む。


「いいじゃんいいじゃん!」


「一緒にやろーよ!」


「楽しいよ!?うち!」


「いや楽しさ基準!?」


 ルークが混乱する。


 レイは黙っている。


 少しだけ考える。


 そして――


「……悪くはない話だな」


「レイさん!?」


「ただ」


 一度区切る。


「すぐには決められない」


 はっきりと言う。


 リノアはそれを聞いて、


 小さく頷いた。


「うん、それでいいよ」


「気持ちが固まるまで待つよ」


 無理に引き込まない。


 それができる余裕。


「……ありがとうございます……」


 ルークがぺこっと頭を下げる。


 その様子を見て、


 トペミアがにやっと笑う。


「いいねいいね〜!」


「なんか面白くなってきたきた!!」


「じゃあ、仕切り直して…カンパーイ!!」


 リンは無言で酒をのんでいた。


 夜は続く。


 騒がしく、


 少しだけ、軽く。


 だが――


 確実に、何かが動き始めていた。



 一方、その頃。


 依頼管理所の奥。


 静かな部屋。


 チャコリアとシェリ。


「単刀直入に言う」


 チャコリアが口を開く。


「うちに来ないか?」


 間。


 シェリは無表情のまま。


「……理由は」


「強いからだ」


 即答。


「それだけで十分だろ」


 シェリは目を細める。


「……私は単独で動く」


「知ってる」


「だが今回は組んだ」


 チャコリアの言葉。


「お前なら効率を理解してるはずだ」


「……」


 否定はしない。


「実際お前は一人でも強い」


「だが、うちに来ればさらに上に行けるぞ」


 静かに言う。


「その環境は用意できる」


 沈黙。


 数秒。


 そして――


「……考える」


 それだけ。


 だが、


 完全な拒否ではない。


 チャコリアは小さく笑った。


「それでいい」


「気が向いたら来い」


 シェリはそのまま背を向ける。


 扉へ向かう。


 そして――


 ほんの一瞬だけ、止まる。


「……」


 だが


 そのまま去る。


 静かな部屋に、


 チャコリアだけが残る。


「……面白いやつだな」


 ぽつりと呟いた。 

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