第22話 帰還と違和
第22話「帰還と違和」
王都グランセル。
依頼管理所。
重い扉が開く。
――ギィ……
中にいた視線が、一斉に向いた。
「……帰ってきたぞ」
「レイド組だ……!」
ざわ……と空気が揺れる。
だが――
すぐに、違和感に変わる。
「……少なくねぇか?」
「……あれ、こんだけ……?」
帰ってきたのは、チャコリアとコノミを含め
十九人。
出発時は、二十八人。
誰もが理解する。
その差の意味を。
ざわめきは、すぐに静まった。
軽々しく声をかけられる空気ではない。
ただ、道が開く。
レイたちは、その中を静かに進む。
受付カウンター。
そこにいるのは――
受付嬢。
セリス
いつも通りの笑顔。
だが、その目だけが違った。
「……おかえりなさい」
静かに言う。
「報告を、お願いします」
チャコリアが前に出る。
「依頼は成功」
短く。
だがはっきりと。
「洞窟内異常の原因は排除した」
「確認します。被害は?」
一瞬の間。
そして――
「……十一名死亡」
空気が凍る。
受付嬢の手が、わずかに止まる。
だがすぐに、書き記す。
「……確認しました」
それ以上は言わない。
言えない。
それが、この場所の“日常”。
「生存者十九名」
「全員、報酬対象とする」
淡々とした手続き。
だがその裏で、
確かに命が消えている。
「……やっと終わりましたね」
ルークが小さく呟く。
「終わりじゃない」
レイが言う。
「え?」
「ただの一区切りだ」
ルークは少しだけ考えて、
小さく頷いた。
「……はい」
その時――
「おつかれ〜!」
明るい声。
トペミアが手を振る。
「いやー、さすがに疲れたー!」
「お前は元気すぎだろ」
クロージスが苦笑する。
ジョカナスは相変わらず無言。
だが、そのまま壁に寄りかかる。
皆、戦いの疲労は、隠しきれていない。
「リン、大丈夫か?」
クロージスが声をかける。
「問題ない」
短い返答。
だが――
リノアが横から口を挟む。
「本当は全然大丈夫じゃないよね?」
「……問題ない」
「無理してるじゃん」
「してない」
「してる」
即答。
ほんの少しだけ、周囲の空気が緩む。
トペミアが笑う。
「相変わらずだねぇ〜!」
「でもさ、ほんと助かったよ!」
「リンいなかったら、普通にヤバかったって!」
「……全員だ」
リンが言う。
「誰か一人でも欠けてたら崩れてた」
短いが、重い言葉。
リノが小さく笑う。
「珍しくいいこと言うじゃん!」
「……いつも言ってる」
「初めて聞いたかも!」
軽口。
だが、そのやり取りが
“生きて帰った”証だった。
少し離れた場所。
レイはそれを見ている。
「……なんか…いいな」
ぽつりと。
「え?」
「いや」
ルークが首を傾げる。
レイはそれ以上言わない。
ただ――
目に焼き付けている。
あの強さ。
あの関係。
その横で――
「……」
シェリもまた、無言で見ていた。
そして、静かに言う。
「面白い」
「え?」
ルークが反応する。
だがそれ以上は語らない。
視線は、リンへ。
完全に“標的”を定めた目だった。
その時。
「おい、君!」
レイが呼ばれる
振り向くと、チャコリアがいた。
「……なんだ」
「今回、よく動いてたな」
「……見てたのか」
「全部じゃないがな」
チャコリアは軽く笑う。
「悪くない。君は伸びるぞ」
「……どうも」
短いやり取り。
だが――
確かに“評価”されている。
チャコリアはそのまま背を向ける。
奥へ向かう。
報告の続き――
のはずだった。
だが。
「……おかしいな」
足を止める。
小さく呟く。
誰にも聞こえないほどの声。
だが――
その目は鋭い。
(あの洞窟のスライム……)
思い出す。
寄生。
操作。
統率された動き。
そして――
異常な増殖。
「……自然発生で、ああはならない」
断言できる。
経験があるからこそ。
「……人為的に誰かぎ作ったか?」
可能性。
だが――
完全には否定できない。
むしろ、
そちらの方が今回のケースには“しっくりくる”。
「……面倒な匂いがするな」
小さく息を吐く。
そして、歩き出す。
誰も、その違和感には気づかない。
まだ――
知らない。
この戦いが、
ただのレイドでは終わらないことを。
その裏で、
何かが動いていることを。




