第19話 核
第29話「核」
洞窟内部。
戦線は崩れかけていた。
魔物の群れ。
操られた仲間。
そして、足元から湧き続けるスライム。
どこを見ても敵。
逃げ場はない。
「散開しろ!!崩れるな!!」
ガルドの声が響く。
その直後だった。
ズルッ
「……?」
足元に違和感。
視線を落とした瞬間――
ぐにゃり
「なっ――!?」
絡みつく。
足から、胴へ、首へ。
「離れろ!!ガルド!!」
仲間の叫び。
だが遅い。
覆われる。
顔まで。
完全に。
静止。
ゆっくりと顔が上がる。
目は、真っ黒。
次の瞬間。
剣が振るわれた。
「がっ……!」
仲間の肩を裂く。
「やめろ!!」
だが止まらない。
振りかぶる。
一瞬の躊躇。
そして――
斬る。
ガルドの身体が崩れる。
「……くそが……」
ガルドを斬った男が震える。
「……仕方なかったんだ……!」
叫びはすぐに戦場に飲まれた。
次の敵が来る。
止まれない。
「レイ!」
ルークの声。
振り向く。
迫る魔物。
黒い目の冒険者。
「《クイック・ステップ》!」
身体が軽くなる。
レイが踏み込む。
一体、斬る。
さらにもう一体。
横からの牙を弾く。
だが――
「終わらない……!」
ルークの声が揺れる。
「下からも来てます!」
足元。
ぬかるみ。
そこから、次々と湧く。
終わりが見えない。
「……レイ」
シェリの声。
「見ろ」
指差す先。
ぬかるみの一角。
「……違うな」
レイが呟く。
「あそこだけ流れが遅い」
「中心だ」
シェリが頷く。
「ルーク、見えるか」
「……はい!」
「動きが変です!」
「核だ」
その会話を、チャコリアが聞いていた。
わずかに目を細める。
「……ふーん。なるほどね」
一歩前に出る。
「みな聞け!!」
声が響く。
「この寄生、魔力で繋がってる!」
「つまり――切れる!」
「コノミは回復維持!」
「はいっ!」
「《ヒール・フィールド》!」
光が広がる。
「私が底上げする!」
「無理に突っ込むな!」
そして――
「リノ」
名前を呼ぶ。
リノアが視線を向ける。
「できるな?」
一瞬だけ空気が止まる。
「……やってみる」
短く答える。
「剥がせ」
それだけ。
リノが前に出る。
「……いくよ」
「《マナ・リリース》」
光が走る。
一人の冒険者を包む。
身体が跳ねる。
スライムが剥がれる。
地面に落ちる。
「……外れた……!」
空気が変わる。
もう一度。
光。
また一人。
また一人。
解放されていく。
だが――
「……きつい……」
小さく漏れる。
支援と同時。
マナリリースは魔力の消費が激しく
負担は大きい。
「でも…がんばる!」
リノは止まらない。
その時だった。
ズルッ
「え……?」
ルークの足元。
絡みつく。
「ルーク!!」
レイが叫ぶ。
遅い。
広がる。
顔まで。
静止。
ゆっくりと顔が上がる。
目は、真っ黒。
「……ルーク……?」
一歩、近づく。
ルークが足元に落ちていた
かつて味方だった者の武器を拾う。
ぎこちない動き。
振りかぶる。
レイへ。
一直線。
ガキンッ!!
受け止める。
重い。
「……っ」
斬れない。
「やめろ……ルーク」
届かない。
もう一撃。
速い。
躊躇がない。
「くそっ……!」
弾く。
距離が詰まる。
次が来る。
その瞬間。
光が走る。
ルークを包む。
「《マナ・リリース》!!」
リノア。
スライムが剥がれる。
落ちる。
静寂。
「……あ……」
ルークの目に色が戻る。
武器を落とす。
そのまま崩れる。
「ルーク!」
レイが支える。
「……レイ……?」
震える声。
「ごめ……ごめんなさい……」
涙が滲む。
「僕……襲って……」
「……怖かった……」
半べそで震える。
「……無事ならそれでいい」
レイは短く言う。
ルークが小さく頷く。
「……ありがとうございます……」
リノを見る。
リノは息を吐く。
「まだ終わってない」
前を見る。
奥。
ぬかるみが、大きく脈打つ。
「……次が来るぞ」
シェリが呟く。
地面が歪む。
巨大な塊が現れる。
「……あれが本体か」
レイが言う。
ここを潰さなければ終わらない。
戦いは、最終局面へと入る。




