表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/29

第14話 評価と報酬

第14話「評価と報酬」


夕暮れの王都グランセル。


赤く染まった空の下、レイとルークは冒険者ギルドへの道を歩いていた。


森での依頼を終えた二人の足取りは、行きよりも重い。


疲労。

緊張。

そして、初めて命を懸けて戦った現実。


その余韻が、まだ身体の奥に残っていた。


「……生きて帰ってこれましたね……」


ルークがしみじみと呟く。


「当たり前だ」


レイは短く返す。


「いや、全然当たり前じゃないですから!」


「僕、本気で終わったと思いました!」


「生きてるだろ」


「結果論ですぅ……」


情けない声に、レイは小さく息を吐いた。


だが、不思議と悪くない気分だった。



冒険者ギルドへ戻る。


中は昼と変わらず賑わっていた。


酒を飲む者。

依頼書の前で悩む者。

仲間と笑い合う者。


その中へ入った瞬間、何人かの視線がこちらへ向く。


新人二人。

しかもCランク依頼を受けて出ていった組み合わせ。


無事に戻ってきたこと自体、少し意外だったのだろう。


レイは気にせず受付へ向かった。



カウンターには、昼に対応した受付嬢がいた。


柔らかな金色の髪。

落ち着いた青い瞳。

整った制服姿。


忙しい空間の中でも、どこか穏やかな空気を纏っている。


彼女は二人を見ると、ほっとしたように微笑んだ。


「お帰りなさいませ」


「ご無事で何よりです」


ルークが小声で言う。


「この人です……昼に止めてくれた人」


女性は軽く頭を下げた。


「受付担当のセリスと申します」


「依頼達成の確認をいたしますね」


レイは討伐証明の素材をカウンターへ置く。


獣型魔物の牙。

爪。


セリスは丁寧に確認していく。


だが、その途中でわずかに目を見開いた。


「……想定数以上、ですね」


「群れだった」


レイが答える。


セリスは納得したように頷く。


Cランク依頼。


新人が受けるには危険度が高い依頼。


単体でも厄介な魔物。

複数出現の可能性。

負傷者が出てもおかしくない内容。


それを二人は達成して戻ってきた。


「……確認完了です」


やがてセリスは報酬袋を差し出した。


「依頼達成報酬はこちらになります」


ずしり、と袋が置かれる。


ルークの目が丸くなった。


「お、おお……!」


「こんなにもらえるんですか……!?」


「危険度の高い依頼ほど報酬は上がります」


セリスが丁寧に説明する。


「それだけ危険なお仕事ということです」


ルークは真顔で頷いた。


「……納得しました」



「それと、お二人の評価も更新されます」


「評価?」


レイが聞き返す。


「はい。依頼達成数や内容、信頼性などを記録する制度です」


「実績を積めば、受けられる依頼の幅も広がります」


実績。


父に言われた言葉。

騎士になるためにも必要なもの。


その一歩を、今確かに踏み出した。


セリスは穏やかに微笑む。


「初依頼達成、おめでとうございます」


その一言は、思った以上に胸へ残った。


ギルドを出る。


外はすっかり夜になり、街の灯りが石畳を照らしていた。


「すごいです……!」


ルークが興奮気味に言う。


「僕たち、本当に依頼達成しましたよ!」


「そうだな」


「しかも報酬まで……!」


袋を抱え、嬉しそうに笑う。


その姿を見て、レイは小さく息を吐いた。


「……腹減ったな」


ルークがきょとんとする。


「え?」


「飯だ」


短く言って、ギルド横の酒場へ視線を向ける。


冒険者たちの笑い声と、料理の香りが外まで流れてきていた。


ルークの顔がぱっと明るくなる。


「い、いいんですか!?」


「初報酬だろ」


「少しくらい使ってもいい」


「行きます!!」


さっきまでの疲れはどこへやら。


ルークは勢いよく歩き出した。


「転ぶなよ」


「転びません!」


言った直後、石畳につまずきかける。


「うわっ!?」


レイは呆れながらその背を見た。



王都グランセル、《銀の灯火亭》。


酒場の扉を開く。


熱気と笑い声。

焼けた肉の匂い。

鳴り響くジョッキの音。


生きて帰った者たちの場所。


レイとルークは、その喧騒の中へ足を踏み入れた。


まだ未熟な二人。


けれど今日、確かに一歩進んだ。


その小さな成功を胸に――


二人の夜が、今始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ