episode46 宰相
---from 伊藤女史 side---
「え? 今なんて言ったのかしら。」
私は驚いて聞き返します。
これが事実とすれば、大転換点です。
「うむ。デビルフィッシュを倒した。」
赤石クンは短く答えます。
アオイ姫も山吹さんも頷きます。
なるほど、事実なのでしょう。
私は驚きます。
レポートを見る限り、不死の化け物です。
何度、倒されても死にません。
私達なんか一瞬で消し炭になるドラゴンブレスを受けても死なないんですよ。
溶岩に落とされても死なずに復活したんです。
こんなんどうやって倒せるのでしょう?
正直にいいます。
レポートを見て絶望していましたよ。
溶岩の海に落ちても死なないんですよ。
知ってます?
溶岩って鉱物が溶けてるんですよ。
そんな温度で生き延びるなんて生物辞めちゃってます。
そんな生物辞めちゃっているのがいるんですよ。
勝てるわけがないじゃない。
そう思うじゃないですか フツー。
それを倒してきたって言っちゃっているんです。
この子達。
だとすればですよ。
好機です。
またとない好機です。
「デビルフィッシュが倒れたってことは、今、帝王のところには宰相しかいなのですよね。」
「あ!」
アオイ姫が気づいたようです。
今まで帝王のところにいこうとしていたのは、帝王自身に用があるのではなく、帝王が保有している地の国から奪った碑石の間が目的です。
もっと言えば、その碑石の間にあるリサ教授の碑石。
それを獲得するのが目的です。
今までの経緯から譲ってほしいと願っても難しいでしょう。
そもそも帝王は当初、地上を侵略しようとしていましたから。
残念ですが、りさ教授の碑石を獲得するためには攻め入る必要があったのですが、こちらの戦力であるレンジャーワンは3人。帝王の戦力は倍以上。そのまま攻め入っては物量で負けます。
袋叩きです。
特にダンジョン内では部隊が展開しにくいため、個々の戦闘力が勝負を決めます。
それこそ一騎当千の戦士の数が勝敗を分けます。
実際に一騎当千の戦士の数が上回った逆さまの森では苦戦しました。
一騎当千の戦力で袋叩きにあいかけたのです。
幸いといってどうかは何ですが、帝王側は侵略のスタンスを捨てていません。
ならばと、大雑把な方針としてそのまま迎撃して帝王側の戦力を削る。
この方向性で進めていました。
少しづつ、そして確実に敵の一騎当千の戦力を減らしていく。
その最大の障害が不死ともいえる怪物 デビルフィッシュでした。
いくら倒しても減らない戦力ですから。
しかし、そのデビルフィッシュが倒れたという事は。
「もう戦力を削り切ったということではないでしょうか? 帝王のところに行っても数で負けることはないのではないでしょうか。」
私は告げます。
「そうですね! アオイちゃん、好機ですね。」
山吹さんがアオイ姫確認を入れる。
それは正しい判断だと私も思う。
実際のところこのメンバーの中で元帝国四天王でしたアオイ姫よりも帝王の戦力に詳しい人はいないでしょう。
「そう。デビルフィッシュが倒れた今、帝王の傍には宰相ユミルしかいない。宰相ユミルは帝王から離れることはまずないから。これ以上、帝王の戦力を削るのは無理。と考えると今が帝都に行きリサ教授の碑石を奪取する好機ではある。むしろ、いらん、十人衆みたいな予定外の増員が不意に増えることを考えるなら、今動かなくて、いつ動くって感じ?」
アオイ姫が考えながら、自分の考えを伝えます。
「うむ。行こう!」
赤石クンが立ち上がります。
そうですよね。
誰よりも リサ教授を救出したいのは赤石クンなのですから。
アオイ姫も山吹クンも赤石クンの気持ちは知っています。
それに・・・魔石研究の第一人者、リサ教授を救出するのがレンジャーワンの意義です。
アオイ姫も山吹くんも赤石クンの声に頷きました。
---from 宰相ユミル side---
私は今、地の国から奪った「碑石の間」にいます。
ここは思案するのにちょうどいいのです。
どうやって部屋を奪ってこれたのかを聞くのは野暮というモノでしょう。
土魔法でも空間魔法でも、方法は様々あります。
さて、この「碑石の間」
土の国の研究者が作った部屋です。この部屋は様々な可能性を秘めている私たちにとって希望なのです。
ですから帝都がタイタンの襲撃を受け帝都撤退を余儀なくされたときも魔法を駆使してこの部屋を一番に確保しました。
たかが部屋と侮るなかれ。
この部屋は活用方法次第で無限の可能性を秘めているのです。
この部屋は簡単に言えば守護者と呼ばれるモンスターに喰われたモノの部屋です。
守護者に喰われた者は死にはしませぬが、変質いたします。
己の『願い』に執着し、己の『願い』に対しては超常の力を発揮するように。
こうなるとまず普通の生活は難しくなります。
『願い』の内容にもよりますが、『願い』に対して正直な行動をとるようになります。
そして厄介なことにその『願い』に対して『願い』かなえるための超常の力を発揮します。
そうですな。
具体的に言えば恋愛を事例にとりましょうか?
なに。私が恋愛を語るのが似合わないですと?
いや、いや人を見かけで判断してもらいたくないですな。
憎愛ドラマなど大好物なのです。
A君と恋仲になりたいB子さんが守護者に襲われ『願い』を優先する思考になったとします。
そしてその『願い』を叶える超常の力を手に入れたとします。
そのB子さんは精神的にも実力的にもブレーキが利きませぬ。
あらゆるハードル・・・そうですな、仮に恋敵がいたとしたら、恋敵を。親が反対していたら親を。実力で排除して『願い』を叶えようとするでしょうな。
簡単に言えば犯罪者です。通常の生活は難しいでしょうな。
それを土の国の科学者は憂いたのでしょうな。
対策を研究しました。
そして、土の国の科学者どもはこのように考えたようですな。
『願い』に対して正直な行動をとるのは『理性』を奪われたからである。
『願い』に対して超常の力を発揮するのは奪われた『理性』の隙間に超常の権能を埋め込まれたからである。と・・・
土の国の科学者が優秀なのはその奪われた『理性』のありかを発見したことですな。
なんでも、このダンジョンに点在しているとか。
そして地の国の科学者はその『理性』をかき集めるための装置をつくりました。
この部屋は、その点在している『理性』をかき集めることができる集積装置なのです。
その集めた『理性』が碑石と呼ばれているものですな。
ダンジョンから集めるから石の形状をとるのか、そのあたりの仕組みは私にはわかりかねますが。
それにしても、すごい執念を感じますな。
それこそ、地の国の科学者の関係者の誰かが守護者に喰われて『願い』を優先する『魅入られた者』という名のモンスターになったのでしょうか?
それが憎愛物語であれば聞いて見たいものですが、いくら探しても動機はわかりませんでした。残念です。
それはともかく、帝王様はこの装置の有用性にいち早く気づき、いち早く地の国に対して侵攻を開始しました。全てはこの装置を我が物とするためです。
えっ?
この装置の有用性が理解できないですと?
困りましたな。
例えばですぞ。
地底国家群をある理由から征服を考えたとしましょう。
地底の国々はダンジョンで移動します。
そのため大軍の移動は適しませぬ。かといって通常の方法ではドラゴンのような大型モンスターを送り込むことはできませぬ。
一騎当千の強者の送り込むのが一般的な考え方でしょうか?
例えば、かつての帝国四天王がその一騎当千の代表でしょうな。
ただし強者はなかなか靡かぬものです。
そういう時にこの部屋です。
守護者に強者を襲わせ、『理性』を奪います。奪われた『理性』はここに集まります。奪われた強者は『理性』を取り戻し、元の生活を取り戻したければ、この部屋の所有者である帝王様や私の言う事を聞かなければいけないわけです。
いわば、この部屋を所有することによって『理性』を人質に強者に指示を出せるようになります。
いかがです?
この部屋の有用性が理解できたでしょうか?
もっとも、この案は廃案となりましたが・・・
というのもですよ。
一騎当千の実力を見誤りました。四天王クラスともなると守護者程度は退けてしまうのです。
四天王を守護者に喰わせて「魅入られた者」に「理性」を人質に意のままに操るというプランは頓挫してしまいました。
そこで代わりに目を付けたのが四天王につける副官です。
彼ら副官を「魅入られた者」で構成します。彼らは『理性』を人質に取られているので決して裏切りませぬ。四天王ほどの実力はなくとも『願い』を叶えるための超常の力を得たならば、その超常の力を発揮できるシーンは限定されるのもの、四天王の抑止力とはなり得ます。
そこで間接的に一騎当千の猛者である四天王を監視やこちらの意に添うように補佐させることは可能です。
このように、この部屋があることで一騎当千の戦士を配下に収める事が可能です。
有用でしょう?
そして・・・
何よりもこの部屋が有用なのは・・・
守護者に喰われたモノの『理性』がここにあるということは、元に戻すことも理論上では可能であるということです。
我が帝王様にはどうしても戻したい方がいます。
私達がお三方と呼んでいるお方です。
帝王様は通常の人ではありませぬ。・・・言葉にするもの恐れ多い。神の一族です。
帝王様には3柱の兄弟神がいました。
力の神・勝利の神・魔術の神の3柱です。
あろうことかその兄弟神が『魅入られた者』になってしまいました。
それも帝王様を庇ってです。
帝王様は好奇心が旺盛な神でした。
その好奇心でダンジョンを拡張し、ダンジョンに住む住人のため住む場所を広げようと考えたのです。
その時代はまだダンジョンの壁を壊すと守護者が顕れるということは周知されていない時代でした。
守護者の存在も知らない時代でした。
ダンジョンの壁を壊した結果、大量の守護者に襲われ、神々は『魅入られた者』になってしまいました。
神ともあろうものがと思うかもしれませんが神とてダンジョン内に生きるもの。
ダンジョンの摂理には敵いませなんだ。
『魅入られた者』となった神々。
神々の判断はそこで別れました。
力の神・勝利の神・魔術の神の3柱は自らを封印しました。
神のような全知全能の力を持つ者が『願い』を優先する行動をとるとどうなるか?
災いの元となると考えた3柱の神々は自らを封印し、お隠れになりました。
帝王様は反対しました。訴えました。
全知全能の存在である神々がダンジョンの摂理ごときに支配されるのはおかしいと。
なんとかできるはずであると。
しかしながら3柱の神々は自らを封印しました。
帝王様は納得いきませぬ。
自責の思いもあるのでしょう。
ダンジョンの住人のためとはいえ、帝王様の企画で守護者という化け物を呼び出し、お三方が自らを封印することになったしまった事態を引きおこしたという後悔がありました。
帝王様はお隠れになったお三方を探すことを決意しました。
帝王様はお隠れになったお三方を元に戻すことを決意しました。
お三方を探すため、地底国家群を進むうちに帝国ができました。これは都合が良かった。捜索には人海戦術も必要です。探す人員が多いほど見つかる可能性が上がります。
非協力な人や国は力で言う事を聞かせればよいのです。
帝王様のお三方を思う気持ちを蔑ろにするような非常な輩など存在するには値しませぬ。
お三方を元に戻すため地の国の碑石の部屋を入手しました。抵抗する地の国を占拠し、支配下に置きました。帝王様のお三方を思う気持ちを知って協力しないなどありえませぬ。
そうしてできたのが地底帝国です。
その地底帝国もレンジャーワンのお陰で見る影もなくなりましたが。
まあいいでしょう。
目的は達成してます。
お三方を救うための碑石の部屋はあります。
そしてお三方の居場所もわかりました。
そうなれば、別に帝国など不要です。
帝国は捜索の結果としてできたモノ。
広大な地底国家群を捜索するにあたって便利ですからそのまま活用しておりましたが・・・はてさて、お三方の場所が分かったのです。もはや不要ですな。
それにしても、あのような場所に自ら封印していようとは思いもよりませんでした。
レンジャーワンのドラウプニル
そこに自ら封印していらっしゃるのですな。
厄介な場所ではありますが、帝王様のためです。
頂戴いたしましょう。
---from アオイ side---
私達はまっすぐ帝王のところに向かっていた。
今回のメンバーはレンジャーワンの3人とメンドーサの使い魔である雷獣達だ。
メンドーサ自身もきたがっていたが置いてきた。
危険だから。
その代わりに雷獣達を随行させることをお願いされた。
雷獣達なら危険があっても文字通り電気の速さで戦線離脱することができるからメンドーサ本人がくるよりは安心安全。
それに雷獣がいれば電波の届かない地底でもスマホ替わりに地上の伊藤女史や青の国のカイ将軍などとも連絡が取りあえる。
だから雷獣達がついてくることだけはOKした。
「それにしてもよく道がわかりますね。」
山吹が感心したようにいう。
「失せもの探しは魔術の基本。」
私は胸をそらせて答える。
『胸ないくせに。』
というカグヤのツッコミが聞こえたがそんなの無視だ。無視。
まあ、それでも、今私が行っている魔法。ちょっとはコツがいるかな?
失せもの探しの魔術は基本中の基本だけど、本当にそれだけで探し物ができるか?といえば難しい魔法でもある。
例えば消しゴムを無くしたとする。
それでこの魔法をつかって探そうとすると、文房具屋の消しゴムコーナーを案内されたりする。
この魔法を使用するときに失せものの「指定」という作業をするんだけど、大雑把な「指定」ではダメ。
探し物ができない。
また、人を探す場合、相手が探されるのを拒絶していたら難しい。
大抵の人はこうなったら出来ないと思っているがこれも「指定」の仕方次第。
この場合、目的の人物に関連する別なものを「指定」する。
このように「指定」にコツがいる。
センスといいかえてもいい。
本当の意味でこの魔法を使いこなしているのは数人だと思う。
今回、私は「指定」先に地の国で開発した「碑石の部屋」を指定した。
この「指定」先はこの世に一つしかない。
これで仮に「帝王」や「宰相」を指定したらどうなるか?
過去に「帝王」を名乗った者の墓や、「地上」の宰相職にある人物に案内される。こんな可能性がある。この失せもの探しの魔法は簡単だが難しい。
「み・み・みー、み、みなさん。き、き、気をつけてください。 この先、戦闘発生してます。」
「「「!」」」
雷獣の電波を活用し、哨戒しているメンドーサから連絡が入る。
「誰と誰が戦闘中かわかる?」
「え、え、―っと。爆煙が邪魔して分かりづらいです。けど、こ、こ、これは。このシルエットはド、ド、ド、ドラゴンっ! ドラゴンです。ドラゴン同士が戦ってます。」
私は動機が高まるのを感じる。
ドラゴンにはいい思い出がない。
祖国を一度滅ぼしたのもドラゴン。
レンジャーワンとして初めてドラゴンと戦った時も私は倒れてる。
「大丈夫ですか!」
『お姫様、顔色が悪いですわよ。』
山吹とカグヤが私を心配する声をあげる。
ん? そんなに悪い顔してるか私。
「メンドーサさん。その戦闘は終わりそうですか?」
山吹は思案顔で訪ねる。
『え、え、えーっと。判りませんけど。今、双方暴れている真っ最中です。すぐに収束するとは・・・。』
メンドーサは言葉を濁した。
まあ、そうでしょ。
彼女は雷獣の電波を使った索敵はできても、そこから戦力分析までは難しい。
「行こう!」
私は一歩足を前に進める。
どういう状況にしろ、ここで立ち止まる選択肢はない。帝王と宰相ユミルのみの状況は今しかないかもしれないんだ。
「守る。」
赤石が私の横に立ち呟くように、しかし断言するように言う。
私は思わず笑った。不器用な赤石なりに私を奮い立たせようとしているらしい。
「生意気。」
私は言葉を返した。
---from 山吹 side---
えーっと、これはどういう状況でしょうか?
私達はメンドーサさんが事前にキャッチしたドラゴン同士が戦っている場所へ駆けつけました。
そこには多数のドラゴンの死骸。
ダメージを相当受けている三つ首ドラゴン
その三つ首ドラゴンに騎乗している宰相ユミル
そしてこれまたボロボロのブラックドラゴンに騎乗するタイタンの姿がありました。
???
なぜ、ここにタイタンがいるのでしょうか?
そしてこの状況は?
「おう! テメエ達! 意外と早かったな!」
タイタンは軽口を叩いてますが、わりと重症です。
状況的に宰相ユミルと戦っていたのでしょうか??
何故でしょう?
ここでタイタンが宰相ユミルと戦う理由がわかりません。
「ナニ、バカやってんの。」
アオイちゃんがそう言ってタイタンに回復魔法をかけます。
「あん? テメエ達に宰相ユミルの首級を譲るわけ訳にはいかねぇからな。こいつだけは俺の手で仕留める。テメエ達、手出しすんなよ。」
それを聞いた宰相ユミルが眉を顰めて
「迷惑なことですな。」
と割と大きな声でつぶやきました。
これってぜったいと大きな声で、タイタンに聞かせるように言ってますよね。
うっわー。
すごい、うんざりした顔してます。
「ナニ似合わない熱血クンやってんの。あんたと宰相ユミルってそんな因縁あった?」
アオイちゃんがタイタンに問います。
こうやって二人が並ぶと四天王だなって思いますよ。
迫力が違います。
僕は気軽にタイタンには話しかけられません。
ええ。
「決着がついてねぇんだよ。」
タイタンは宰相ユミルをにらみながら言う。
「決着?」
「おうよ! 帝都を攻めたときも、帝王が帝都を奪還に来た時も宰相ユミルと対戦したが、決着がついてねぇ。」
「困りましたね。」
タイタンの発言を聞いた宰相ユミルが深いため息とともに一歩踏み出す。
「決着も何も、私はあなたには用はないのですがね。」
「そういうなよ。帝都を奪った俺を恨んでるだろ?」
「帝都ですか。そうですな。探し物を探しているときは人海戦術がとれて便利でしたが、すでに要はありませぬな。もう探し物は見つけたので。」
「へっ。つれねぇなぁ。その探し物ってなんだよ。教えろよ。」
タイタンの質問に宰相ユミルはすぅーと指さしました。
その指は僕たちに向いてます。
「その3つのドラウプニルです。」
「どいうこと?」
アオイちゃんが宰相ユミルに質問します。
「そのドラウプニル。元々地上にあったものではないのでしょう? どこで手に入れました? いや、質問がわるいですね。言い直します。誰から授かりました。」
え?
宰相ユミルからその質問が出たとき、ドキリとしました。
この質問をしているってことは・・・あの三注の神々のことを知ってますね。
「それを聞いてどうするの?」
アオイちゃんが問いただします。
「あなたが、どういうことですか?と質問したからですよ。私と帝王様の目的はですね。そのドラウプニルをあなた方に預けたお三方なのですよ。彼らをお救いしたいのです。」
「救う?」
「ええ、あのお三方は自らを封印しておいでです。現世には出てこれないのです。その封印を解き、現世に出れるようにして差し上げたいだけなのです。」
宰相ユミルの言うお三方とはドラウプニルをくれた三柱の神々でしょう。
僕の実験で封印は半ば解かれたというお礼でドラウプニルをくれたのでした。
あれ?
今の宰相ユミルの話
違和感があります。
なんでしょう?
思い出すんです。
最初の出会いを。
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
あの三柱の神々に出会ったのは、そう実験中でした。
リサ教授がこれまでにない巨大な魔石を発見し、魔石の洞窟内の研究所内では解析不可能と判断。地上の大学内の研究所に送られ、僕が対応することになりました。
そして研究途中で封印が解けたようで・・・気が付いたら真っ白い空間に三柱の神々がいて確か・・・
「礼を言う。我々の封印を一部とはいえ解いていただき感謝する。おかげでいくつか権能を回復させることができた。」
そう、中央の根暗そうなフードを被った神様がそう言ってました。
宰相ユミルの話と矛盾してます。
そもそも宰相ユミルの話は矛盾してます。というより破綻してます。
あの三柱の神々が自らを封印したとします。
その事情はアオイちゃんから伺ってます。
「魅入られた者」になった。からと伺ってます。
そう、「理性」よりも「願い」を優先する行動原理を持つ「魅入られた者」に
人知を超える神々が「願い」の赴くままに活動すると大変です。
そこで神々は自らを封印しました。
途中、リサ教授が封印されていた巨大な魔石を発掘して、その魔石研究を引き継いだ僕が中途半端に封印を解くというアクシデントはありました。
しかし、神々は白い空間から現世に戻ることはありませんでした。
僕は封印が中途半端に解けたから現世に出てこれないんだろうなと考えていましたが、それが神々の意思だとすると・・・宰相ユミルのやろうとしていること・・・いや・・・
宰相ユミルの「願い」は・・・
三柱の神に否定されます。
そうですよね。
ヒッキーを決めたのに、出てこいって言ってそう簡単に出てこれるもんですか。
しかも、正当な理由があるんです。
そのヒッキーを力ずくで、無理やり、白い空間から追い出そうだなんて。
宰相ユミルがやろうとしていることは余計なおせっかいどころか。
ただの自己満足。
誰も幸せにならない。
地底国家群や地上でといった各所に大きな影響を与えて、多数の犠牲を払ってたどり着くのが誰も幸せにならない自己満足の 独りよがりの「願い」
ああ、そうか。
わかりました。
だから三柱の神々は自分たちを封印したんですね。
こうならないように。
宰相ユミルのようにならないように。
この時、僕の横で金色の光輝く神が頷いた気がしました。
・・・・
・・・・
「宰相ユミルさん。」
僕はドラウプニルを構えます。
「なんでしょう? 勝利の神の加護を得た少年。」
宰相ユミルが真っすぐ私を見ます。
「あなたは『魅入られた者。』ですね。」
「・・・ご推察通り。」
・・・胡麻化すかな?と思いましたが、正面から答えてきました。
射貫くような眼です。
宰相ユミルが『魅入られた者』であるということが意外だったのでしょう。周りがざわつき
ました。
僕はそれどころではありません。
宰相ユミルの目は真剣です。
この質問に対しては嘘は言わないという決意か傍からも感じられる目です。
この目には真剣に応えないといけません。
「そして、あなたの信奉する帝王様も『魅入られた者。』ですね。」
僕は宰相ユミルの決意に応えるよう、負けぬように見返しつつ質問を続ける。
宰相ユミルは沈黙しました。
雰囲気が変わりました、
深い深いアビスのような。人が触れてはならないような
深淵をのぞき込むような
顔はそのままですが表情が消えています。
宰相ユミルは沈黙しています。
その沈黙が終わります。
宰相ユミルの慟哭で
宰相ユミルは声なき声で、地面に崩れ、地面を叩きました。
「帝王様は許せなかった! 神は神羅万象遍くあらゆるものを超越する存在! その存在ですら従わなければならない理のルール! 万能であるはずの神々がそれに従うのはおかしい! 帝王様はそれで勇敢にも「理」に挑まれたのだ。」
突如話し出す宰相ユミル
勿論、この話は今までの話の流れとは無関係ではないはずです。
それなら、この物語の結末は一つです。
「それで帝王様と貴方は『魅入られた者』となったのでね。」
「私達だけではない! 私たちを庇おうとあのお三方も犠牲になられた!」
宰相ユミルは血の涙を流さんばかり叫んだ。
「挑んだのは私達だ! それなのにお三方は私たちを庇おうとした! 私は何故と問うた! お三方は「理」に反することを成そうとした私達に反対していたからだ。反対者を庇う理由がないではないか! なのにあのお三方は事も無げに言うのだ「当り前じゃないか」と。「大事な友を家族を救うのに理由がいるのか?」と。「やりたいからやっているだけだ」と。」
これは・・・懺悔です。
自分たちが仕出かした出来事で三柱の神々が犠牲になったことへの
「ああ、その結果、お三方は自らを封印し、お隠れになった。 その責めは私たちが負うべきものなのに。」
そこで宰相ユミルは慟哭をやめ、ぐるりと首をこちらにむけました。
「帝王様はお三方を再び現世で過ごしていただきたいだけなのです。それが私たちの償いなのです。さあそのドラウプニルをよこしなさい。そのドラウプニルの中にお三方が封印されているのは分っているのです。」
そして、宰相ユミルは手を差し出します。
この時、僕の横で金色の光輝く神が首を振りました。
「・・・・。」
そして、僕に何事かを告げます。
この僕の横に立つ金色の神はどうやら僕以外には見えていないようです。
「その・・・あなたの言う。お三方の意思は無視ですか?」
「なんですと?」
宰相ユミルの動きがとまります。
「相手がそれを望んでなくても。願ってなくても封印を解くのですか?」
僕は質問を重ねます。
宰相ユミルが動きを止めます。
しばらくの静寂
そのあとに再び宰相ユミルの慟哭が、この昏い昏い洞窟に響き渡ります。
そして・・・
宰相ユミルが叫びます。
「我が愛しの帝王様はっ! 自らの行いが招き、大切な人が自ら現世から消え去ることを悔いていた。何度も 何度もっ! 我が愛しの帝王様は神々である自らが「理」に縛られる理不尽な世を嘆いておられてた。何度も 何度も! だからこそ、お三方を現世に再びお迎えするために智も力も魔も帝国もすべてを使い あの日に戻りたいと願った。あのお三方を想い、お三方が現世に戻った未来を常に描いたっ! それのっ・・・その「願い」のどこが悪い!」
宰相ユミルが僕に迫ります。
「え?」
僕のドラウプニルが勝手に起動しました。
「An armor changes Frey」の機械音が鳴り響きます。
僕の頭に光り輝く黄金のティアラが
金色の胸当てにフレアスカートでデザインされているドレスアーマーに僕の体が覆われます。荘厳な黄金の魔法使いが身に着けるような肩掛けも装着されました。
性別は・・・言わないでおきましょうね!
「Completion! The vala・yellow」
僕は金色の戦巫女に変身しました。
僕の口から「詠」が流れます。。
その詩は威力を伴う衝撃破となり、鬼気迫る勢いで迫ってきていた。宰相ユミルを吹きとばしました。
僕が強制リセット能力と呼んでいる「詩」による吹き飛ばしです。
これを行ったのは・・・光り輝く金色の神
あなたですね。
僕自身は何もしてないですもの。
勝手に変身して、勝手に「詠い」、勝手に宰相ユミルを吹き飛ばしました。
ついでに赤石クンやアオイちゃん、タイタンも瀕死の三つ首ドラゴンや同じく瀕死のブラックドラゴンも吹き飛ばしてますが・・・。
僕は僕にしか見えていない、傍らにいる金色の神をにらみます。
だって嫌なんですよ。
この性別転換変身は!
宰相ユミルは洞窟の壁まで吹き飛ばされました。
あれ? 倒しちゃいました?
確かに僕達が来た時にはタイタンとバトルした後のようでして、かなりダメージを受けていました。
いまの衝撃でトドメを刺してしまったのでしょうか?
「・・・よこせ・・・」
宰相ユミルがゆるゆると起き上がります。
倒したと思ったのは早かったようです。
「・・・それをよこせーっ!」
今までの宰相の威厳も何もない姿で僕に向かってきます。
―化け物―
あまり使いたくない表現ですが、その姿を見て率直に僕はそう思いました。
その宰相ユミルに一人の戦士が突っ込んでいきます。
「おいおい。俺をわすれんなよ! つれねぇじゃねぇかよ。」
タイタンです。
魔法の力でしょうか?
比喩でもなんでもなく、文字通り炎のパンチで宰相ユミルをぶん殴ってます。
そのタイタンも満身創痍で、肩で息をしてます。
「・・・ええい。どこまでも邪魔をっ!」
忌々しそうに宰相ユミルが叫ぶ。
「ハッハーッ! そりゃ。決着ついてねぇのに浮気するからさ。」
タイタンが面白そうに宰相ユミルを殴る。
「・・・くっ。なぜ、ここまで邪魔を!」
「テメェがそのお三方とやらに執着してるのと同じだろ! 質問を質問で返してやろうか? なぜ ここまで執着してる? 所詮は他人だろ?」
「他人だと!」
宰相ユミルが殴り返します。
「それも、事情はよく分からねぇが、フラれてるみてぇじゃねえか? 未練がましい男は嫌われるぜ!」
「ダマレ ダマレ ダマレ! 事情を分からぬ癖に。知ったような口を!」
宰相ユミルはそういうと自分の左腕を右手でつかみました。
そして・・・そのまま自分の左腕を引き抜きました。
何でしょう?
何故、ここで自傷行為を?
「ヒャッハー。左腕一本とは豪気だな。いよいよ後がなくなったか?」
タイタンは宰相ユミルがなぜ自傷行為をしたかわかっているようです。
「おい。レンジャーワン!」
タイタンが宰相ユミルを見ながら僕達に声をかけます。
「よく見とけよ。あれが宰相ユミルの権能だ。」
「どういう事?」
アオイちゃんが質問をします。
同感です。
自傷行為が権能なのでしょうか?
そう思っていると、引き抜かれた左腕が蠢き、変化し始めました。
「ああああっ!」
アオイちゃんが叫びます。
僕も驚きました。
宰相ユミルの引き抜かれた左腕が巨大なドラゴンに変化したのです。
ドラゴンの方向が洞窟内に響き渡ります。
「宰相ユミルのスキル。ドラゴンクリエイター。自分の体を生贄にしてドラゴンを生み出す。
前の戦いじゃあ替えの利く、髪の毛なんかつかってたが、本気で俺のことが忌々しいらしいな。腕一本を生贄にするとはな。」
「私の・・・ひいては帝王様の邪魔をするからです。そのドラゴンは文字通り私の片腕。髪で創造された今までのドラゴンとは比較になりませぬ。 消えなさいっ!」
宰相ユミルがそう叫ぶと同時に左腕から生まれしドラゴンはタイタンにむかってブレスを放ちます。
「しゃらくせーっ! melta diki!」
タイタンが魔法で巨大なマグマの海を作ります。
範囲が広いです!
タイタン自らと左腕より生まれしドラゴンが余裕で収まる広さです。
「来てください。スキーズ!」
僕は急いで空飛ぶ船スキーズを召喚
「急いでください!」
僕達、レンジャーワンは急ぎ空飛ぶ船スキーズに乗り込み、広がるマグマの海から難を逃れます。
急に地面がマグマの海になった影響で 左腕から生まれしドラゴンはマグマの海に飲み込まれドラゴンブレスの斜線がずれます。
さらにタイタンは自ら作ったマグマの海に潜り姿を消しました。
対する左腕から生まれしドラゴンはマグマの海に沈み、断末魔の悲鳴をあげています。
「悔しいけど。タイタンはやっぱ強い。魔法の一手で攻撃と回避を同時に行うなんて。」
アオイちゃんが眉間にしわを寄せています。
「この程度で私を倒せるとでも! Níðhǫggr Níðhǫggr Níðhǫggr vinr boð n. Þrīfask Ísland Niflheimr!」
宰相ユミルが魔法を唱えます。
魔法の終了とともに一帯の戦場の雰囲気が変わりました。
極寒の吹雪と地面に無数の巨大な黒蛇が蠢いている氷の地獄にです。
空間を覆う極寒の吹雪と地面を覆うマグマの海のせめぎあいです。
極寒の吹雪と同時に魔法によって召喚された無数の黒蛇がマグマにぼたぼた落ちていって次々と消滅しています。
本当であれば、この宰相ユミルのこの魔法は極寒の吹雪と同時に召喚された無数の巨大な黒蛇のダブルパンチで攻める魔法なのでしょう。
しかし、地面がマグマの海と化しているため無数の黒蛇は何の戦力にもならずマグマの海に落ちて言ってます。
「いまならヴァン・アースで宰相を倒せる。」
「「!」」
アオイちゃんが冷静に戦況を見て提案してきました。
「おいっ! 俺の得物をとるんじゃねぇ!」
マグマの海からタイタンの呶鳴り声が聞こえてきます。
「これから、この糞野郎を俺様がぶちのめすんだからよ。」
「ハァ、ハァ、ハァ。本当にわかりませんね。なぜ、こんな無益なことを。」
宰相ユミルが肩で息をしながら訪ねる。
「ヘン。わかんねぇか。ああ、そうだろうよ。自分の「願い」さえよければいい。っていう周りが見えてねぇジコチュー野郎はよ。」
「なんですと愚弄は許しませぬぞ。」
「はあ。なんでテメェの許しがいるんだ。ドアホ。 まあいい、いずれにせよこれで最後だ。理由がわからねぇまま死ぬのは嫌だろう? 教えてやんよ。」
「死ぬ気は毛頭ないですが、後学のため教えていただきたいものですな。」
「テメエらは俺の国を滅ぼした。その探し物のついでにな。」
「なるほど、復讐ですか? 確かに復讐するのであれば四天王を含めた全ての将が倒された。今だとやりやすい。そんなとこですかな。」
「ちげぇよ。」
「? 違う?」
「俺は 俺自身が腹立たしいんだ。俺は俺自身に煮えたぎるくらいの怒りがある。赤の国 戦士団長なんて肩書貰っときながら、いざというときに守るべきものを守れなかった怒りがな。」
「・・・・。」
「いまさら国の復興なんざ、俺の役割じゃねぇ。だから復讐なんかじゃねぇえよ。これは、ただ、守るべきものを守れなかった俺自身への怒りがある。この怒りを鎮めるには、国を滅ぼしたテメェを超えなきゃならねぇ。だから、何度でも、何度でも挑む。それだけよ。 それだけじゃなくある男との約束もあるしな。さあいくぜ、gørvi gørvi bryrja brynju-bítr bál n!」
「迷惑な。」
「先に迷惑をかけた奴が言ってんじゃねぇよ。」
タイタンが魔法を唱えるとマグマの海の中から炎の鎧をまとったタイタンが現れました。
その身にまとう炎の鎧はタイタン自身の憤怒を纏っているかのようです。
同じく炎の巨大な両手剣を携えています。
「ぬう。あれはタイタンの奥の手。」
赤石クンがぽつりと呟きます。
「おい、レッド。約束を果たすぜ。píli!」
タイタンが短く魔法を唱えると緋色の鎧と剣を持つタイタンの体が矢玉となり、マグマの海に沈んで死に体の左腕から生まれしドラゴンの体を貫通。巨大な穴をあけ、そのままの勢いで宰相ユミルに突っ込みます。
「自らを炎の砲弾と化す。それが切り札ですか。では私も出し惜しみはなしですな。私も自らを生贄としましょう!。」
宰相ユミルに炎の弾丸と化したタイタンが突っ込みます。
極寒の吹雪の中での灼熱の弾丸という急激な温度変化が原因でしょうか?
着弾とともに爆発と大量の煙が視界を覆います。
はっきり言いますと。煙で全く見えません。
やがて、戦場に変化が現れました。
極寒の吹雪が消えます。ということは宰相ユミルは倒れたのでしょうか?
同じくマグマの海も消えます。タイタンも倒れたのでしょうか?
煙が晴れたその先にはいままでのどんなドラゴンよりも大きな超巨大な水晶のドラゴンがいました。
ただ、その水晶のドラゴンのお腹に巨大な穴が開いています。
状況的にこの水晶のドラゴンが宰相ユミルがドラゴンクリエイターのスキルで自らを生贄として呼び出したドラゴンなのでしょう。そして、その真ん中の穴はタイタンの攻撃によるものと思われます。
ではタイタンはどうしたのでしょう?
姿が見えません。
「ガ、ガ、ガ・・・・ソレ、ヲ・・・ヨ、コセ・・・。」
巨大な穴が空いているにも関わらず、巨大な水晶のドラゴンが動き出します。
狙いは僕たちの持つドラウプニル。
まるで宰相ユミルの執念が乗り移ったかのようです。
「うむ。今、介錯せん。アオイ、山吹。」
赤石クンが僕たちに合図を送ります。
僕たちは頷きました。
「来るがよい。我が眷属 シアルフ!」
赤石クンが眷属の巨人シアルフを呼びます。
赤石クンの足元に巨大な魔法陣が展開されます。
その魔法陣から30mもある巨大な真紅のフルアーマーが出現しました。
その巨大なフルアーマーと赤石クンが同化します。
アオイちゃんも機械仕掛けの鳥2体。機械仕掛けの狼2体 機械仕掛けの騎馬1体を呼びます。
赤石クンと同化したシアルフが大きく股を開き、腰を捻転。片手突きの構えをとります。
『収束』
スキーズが発光します。
アオイちゃんの眷属である機械仕掛けの鳥2体。機械仕掛けの狼2体 機械仕掛けの騎馬1体も同時に発光します。
発光した6体がシアルフに収束します。
『ヴァン・アース権能収束・発射準備 セイズ解放。 ガント充填、三神解除。標的クリスタルドラゴン。ガンド充填300% 対反動制御オールクリア。ヴァン・アース権能発射準備クリア』
スキーズが制御を開始します。
「吐ーッ!」
赤石クンが速射の掌底を水晶のドラゴンにむけてくりだす。
『Gungnir』
機械音と同時に赤石クンの掌底から繰り出される力の奔流。
「ソ、レ、ヲ、ヨ、コ、セ.」
水晶のドラゴンが突っ込んできました。
力の奔流がその水晶のドラゴンを飲み込みます。
力の奔流に飲み込まれ断末魔の咆哮とともに水晶のドラゴンは消滅しました。
『LEVEL UP』
『スキル:ドラゴンクリエイターを獲得しました。』
『アテンション:ドラゴンクリエイターは予期せぬ戦闘手段により獲得したためエラーが発生しました。スキル獲得は無効です。』
ドラウプニルからアナウンスが流れます。
ヴァン・アース状態で敵を倒すとエラーがかかりスキル獲得できないというのは理解していたのですが、ドラゴンを生み出せるスキルはちょっと惜しかったです。
「大丈夫か?」
そんなことを考えていたら赤石クンの声が聞こえました。
僕のことをいっているのかと思ったら勘違いでした。
赤石クンの目の前にはタイタンが横たわっています。
そのタイタンに向けての言葉でした。
「へっ。大丈夫に見えるか?」
タイタンが赤石クンに応えます。
タイタンの姿はボロボロです。全身ケロイド状の火傷跡に覆われ、煙が吹いています。
自らの魔法の威力に耐え切れなかったのでしょう。
「俺のことを気にしてんじゃねぇ。リサ教授を助けるんだろ?」
「うむ。」
「リサ教授を助けるには帝王のところにある石っころが必要なんだろ?」
「うむ。」
「帝王のところにいくに一番邪魔な奴は片付いた。あいつは、宰相ユミルはドラゴンを創る。ほっとくとドラゴンだらけになるからな。」
「うむ。」
「俺はテメェとの約束は果たしたぜ。テメェはテメェの本願を果たせ。」
そう言ってタイタンは赤石クンに手を伸ばします。
赤石クンが手を伸ばしタイタンの手に触れるとタイタンの手は灰となって風にのって消えていきました。
「ちぃ。俺ぁ。ここまでか。・・・おい、アオイ!」
「何?」
アオイちゃんが前に出ます。
その表情からはアオイちゃんがどういった感情をもっているかわかりません。
「帝王がいなくなったら地底国家群を実質的に率いるのはテメェだ。俺の・・・赤の国をよろしく頼むぜ。」
「嫌。アンタがやればいい。」
「フン。俺が国を率いる器じゃねぇってことは嫌でも分かった。俺は宰相ユミルに一矢報いたるだけが精いっぱいの器だった。俺や宰相ユミルを倒した責任だ。嫌だ言ってるんじゃねぇ。」
「私は私の国を救いたかったそれだけ。」
「フン。それだけで済まねぇってのは分ってんだろ。 だから青の国が解放されてもその赤石の願いを叶えてやろうと付き合ってやがる。そいつの願いもかなえる手助け・・・頼むぜ。」
「言われなくとも。」
「ならいい。」
そう言うとタイタンの体は全て灰となって消えた。
【あとがき】
宰相ユミルとタイタンはここでリタイヤです。
【次回予告】
宰相ユミルを倒し、遂に帝王の元へたどり着いたレンジャーワン
遂に雌雄を決する時がきた!
次週、episode47 帝王
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