episode45 憤怒
最終話まで残り5話です。
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---from デビルフィッシュ side---
「ミスクロウが倒れた!」
吾輩は驚きの声をあげる。
「あいつは白井に預けていたはずですぞ。白井はどうしたのです。」
吾輩は帝王に詰め寄る。
ミスクロウは帝王の加護を受けた白井の元にいた。
帝王の加護 ドラウプニル
あれは強力な装備だ。
吾輩でもドラウプニルを装着した白井の相手は骨が折れる。
どんな相手であっても勝てるとまでは豪語しないが、むざむざ倒されるということはないはずである。
「白井も倒れました。」
帝王に変わって宰相ユミルが答える。
なんだと。帝王の加護を受けてなお、倒れただと。
「僕もミスクロウはお気に入りだったんだけどね。元はと言えば君が悪い。」
「なんですと? 根拠のない批判は喧嘩を売っていると考えますぞ。」
「ミスクロウは・・・君を慕っていたろうに。それに答えなかったのは君自身だ。」
む。それを言われると・・・。
吾輩は他の四天王とは違う。
他の四天王は王族やその補佐役など、いわゆる貴族である。
吾輩は違う。
吾輩は闘士出身である。
闘士とは一対一で闘技場で闘う戦士である。
吾輩はそのチャンピオンであった。
その実績を帝王に見込まれ四天王となった。
吾輩にとってもありがたい申し出であった。
闘技場の闘士には戦いを至上とする獣人出身者が多い。
吾輩もその一人である。
しかし、吾輩は強すぎた。誰も吾輩に勝てなくなっていたのだ。
強さとは己よりも強い相手と戦ってこそ高まる。
吾輩の強さもそこで頭打ちとなった。
その時に出会った帝王
吾輩は帝王に獣人をも超える可能性を見た。
即ち、神の力である。
神は吾輩から見ても全知全能の存在である。
全知全能ともなれば、また頭打ちとなっている吾輩の強さも更なる高みへ進むこともできよう。
この時に切り捨てた者がある。
ミスクロウである。
彼女もまた闘士であった。
女闘士ということで人気の闘士である。
帝王も贔屓にしていた闘士である。
彼女もまた獣人。強さを求めて闘士となった。
それ自体は珍しいことではない。
しかし、彼女は自分の強さの限界を感じていたようである。
その原因の一端に吾輩という存在があったということは薄々感じてはいた。
それは、そうだ。
目の前に吾輩という不敗のチャンピオンがいる。
申し訳ないが自分の限界を感じるのも仕方あるまい。
ミスクロウはそこで目標を変えたようである。
自身が強くなるのではなく、最強の子を成そうと考えたようである。
これは強さに価値観をおく獣人であればなんら不思議な感覚ではない。吾輩やミスクロウからすると他種族がおかしいのである。
客観的に見て、最強の獣人は吾輩である。
ミスクロウが吾輩にアプローチをしてきたのは獣人として不自然な事ではない。
もっとも、ミスクロウもこのようなことは苦手なのか、積極的な恋愛アプローチというよりは献身という言葉がふさわしい奥ゆかしいフォローやサポートがメインであったが。
その奥ゆかしいフォローは吾輩が四天王になっても続いた。
闘士を辞しを吾輩の副官になった。
帝王が「ミスクロウは・・・君を慕っていたろうに。それに答えなかったのは君自身だ。」
と指摘した通り、そのミスクロウの献身的なアプローチには気づいていたが、それに答えなかったのは吾輩である。
吾輩には更なる強さを得るために神に至らんとする目的があった。その目的とミスクロウの献身を天秤にかけ、吾輩自身の目的を優先させたのは吾輩である。
ふむ。両立する手もあっただろうと思う奴らもいるだろう。
だが、吾輩には一つの予感があった。
神に至らんと欲するということはいずれ獣人の身を捨てることになるのではないかと考えている。
帝国四天王となり神であろう帝王を間近で観察する機会が増えるにつれ
徐々に神至る道筋が具体的に見えてくるにつれ
そのような予感が現実めいている。
吾輩の今の本当の姿を見たまえ。
宰相ユミルに神は神でも亜神となる道を示され、実際に亜神となったこの姿を
全身に鱗。悪魔のような鉤爪に翼。蛸頭に付属する蛸足が増えた巨大な姿
まるで邪神。
この姿は吾輩の予感が正しいことを残念ながら示した。
この姿でミスクロウの求愛に答えるわけにはいかぬであろう。
「帝王も人が悪い。この姿で人並みの恋愛ができるわけがないだろうに。それがわかっているからこそ色男の白井に力を与え、ミスクロウとの接点を作ったのでは?」
「ふふふ、そうだね。僕はミスクロウのファンなんだ。できる限り彼女の幸せを願ったんだが・・・・上手くいかないものだね。」
ほう、帝王も怒りを表すか。
表面は平静を取り繕ってはいるが、その強く握りしめた拳から血が滴っているではないか。
帝王も長年の推しを倒されては平静ではいられぬか。
「いずれにせよ。ミスクロウは剣闘士時代からの朋友。彼女が倒されたとなれば仇を討たねばならぬ。」
吾輩は踵を返す。
向かうはただ一つ。
ミスクロウの仇であるレンジャーワンの元よ。
「ねえ。デビルフィッシュ。」
帝王が吾輩の背に声をかける。
「なにか?」
「さっき君は。容姿のことをきにしていたけど、ミスクロウはそんなこと気にしなかったと思うよ。」
「戯言を。」
「戯言じゃないさ。帝国四天王となった君を追いかけてミスクロウが僕のところにきて君の副官になりたいって言ったんだ。」
「ふむ。その話は聞いておりますが。」
「細部まで聞いちゃいないだろう? 僕は言ったんだ。四天王の副官は『魅入られた者』つまり守護者に一度喰われたものしか採用してないってね。そうしたら諦めて剣闘士を続けてくれると思ったんだ。」
「まさか!」
「そのまさかさ。ミスクロウは自ら守護者に喰われに行って『魅入られた者』になった。」
「帝王! あんたはミスクロウにそのような仕打ちをしたのか!」
吾輩は激怒する。
守護者に喰われると『願い』に支配されるように変質するという。
この帝王はミスクロウを変質させたというのか!
「勘違いしちゃいけない。ミスクロウは自ら望んだんだ。そこまで君のことが本気だったんだ。もう一度言うよ。その『願い』を受け止めなかったのは君の選択だよ。」
吾輩は立ち止まる。
やり場のない怒りが吾輩の中を巡っていた。
---from アオイ side---
私は山吹、赤石といったレンジャーワンの面々に伊藤女史を加えて検討会を行っていた。
簡単に言えば情報の整理だ。
私は白い空間で青いフードを被った神と思われる人物からあらたなドラウプニルのタイプを確認した時に『魅入られた者』についていろいろ情報を得た。
これから物事を進めるにあたって、ちゃんとこのあたりのことを理解して進めないといけない。
青いフードを被った神と思われる人物との邂逅はそう考えさせられるきっかけとなった。
ある意味、いい機会である。
理解して進むのと、理解しないで進むのでは今後の展開に影響がでると感じての判断だ。
「ええっと、整理する。」
私は順不同で『魅入られた者』に関する情報を箇条書きでホワイトボードに羅列する。
ついでに私の推論も書く。その方が議論が早そうだから。
マジックのキュッキュッという音が本部の事務所に響く。
1、「守護者」に喰われると「魅入られた者」になる
※喰われるとは物理的に口で咀嚼されるのではなく、守護者に触れ一度、吸収されるこ
と。
※二度喰われると理性を失う獣となる。
2、「魅入られた者」になると自分の「願い」を優先するように変質する
※能力も変わる?
3、四天王副官は「魅入られた者」である可能性がある
※メンドーサのような例外あり
4、救助対象のリサ教授と他の研究者も「魅入られた者」になっている可能性あり
5、「願い」を優先するように変質した場合。代わりに何らかのものが失われている。
※二度喰われると完全に理性を失うことから「失われたもの」は「理性」ではないかと推測されている。
6、失われているものは「碑石」という形で再収集可能
※土の国の技術(洞窟内に散らばっている失われたものを収集する技術)
※その「碑石」は土の国が帝国に占領されたときに装置ごと、帝国に奪われている。
※そのため、「魅入られた者」は帝国に逆らえない可能性がある。
帝国に逆らうと二度と失われたものが手に入らないため
「こんなところかしら。」
私はマジックの手を止める。
「うむ。わかりやすい。リサ姉を真の意味で救出するには帝国から姉の碑石とその装置を奪還すればよいのだな。」
赤石が腕組みしながら頷く。
うん、わかってたリサ教授命のアンタはそういう思考するよね。
「今までわかったことの整理ですね。それで、アオイちゃんが打合せしようと言ったということは、これに追加する出来事があったのですか?」
山吹が言う。
うん、こいつやっぱり勘が鋭いな。
そういえば「直感」ってスキル持っていたっけ。
私は山吹に促されてホワイトボードにマジックを走らせる。
7,神も「魅入られた者」となっているらしい。
「神? 急にファンタジーな用語が出てきたわね。」
伊藤女史が怪訝な顔をする。
まあ、そうだろう。
急に実在が怪しい存在の話をされてもね。
でも、私達レンジャーワンは実際に会っている。
「山吹。アンタならこの意味がわかるよね。一番最初にドラウプニルを神から譲られたアンタなら。」
「はい。あの三方のことですね。」
「ちょ、ちょっと待って。三方ってどういうこと? 私は一人しか会ってない。」
あれれ、私の想定と違った。
あのいけ好かない青いフードを被った、カグヤと妙に馬が合っている男からドラウプニルもらったんじゃないの?
「そのお会いした一人ってどういう格好の方でした?」
山吹が落ち着いた様子で訪ねてくる。
「青いフードを被ってた。」
「なるほど、赤石クンも新たなタイプを得たときに神のような方にお会いしませんでしたか?」
「うむ。神かどうかはわからぬが・・・燃えるような赤毛の漢にあった。」
「僕は全身が金色にピカピカ光っている人物から新たなタイプを得ました。そのアオイちゃんがお会いした青いフードの男。赤石クンがお会いした赤毛の漢。そして僕がお会いした金ぴかの神様。この三方から僕はドラウプニルをもらいました。」
へー。そいつは知らんかった。
でも、それなら勘定が合う。
三柱の神からもらった三つのドラウプニルってことね。
「それで、そのドラウプニルを授けてくれた神様が『魅入られた者』ってどういうこと? 今の話の流れで行くと神様なのに守護者に食べられちゃったとでもいうの?」
伊藤女史が首をかしげる。
確かにそうだ。
全知全能の神様が私でも対処できる守護者に食べられる状況が想像できない。
だけど・・・
「あの青いフードの男は言ってた。理には勝てないって。」
この言葉を聞いて山吹や伊藤女史は考える仕草をした。
赤石は・・・腕を組んで難しい顔をしてるが正直何を考えているかわからん。
「OK・・・神様でも世の中の摂理やルールには逆らえないってことね。」
伊藤女史が考えつつ、自分の言葉を整理しつつ 言葉を選びつつ自分の考えを伝える。
「とすると守護者って何なのでしょうか? 普通のモンスターとは違うとは思ってましたが、それにもう一つ不思議な事があります。」
山吹が疑問を口に出す。
「守護者に奪われた理性を再構成したのが石碑だという仮説ですよね。そして、その石碑は魔石の洞窟内に散らばったものを収集してつくられると、だとすればですよ。なぜ守護者が奪ったものが洞窟内に散らばっているのでしょう? これだとまるで守護者=魔石の洞窟みたいじゃないですか。」
「あ!」
私は山吹の今のセリフに何か引っかかるものを感じた。
「どうしたんです?」
「いや、今の山吹の言った通りだとすると、何となく辻褄が合う気がした。」
「? アオイちゃんには珍しく曖昧ですね。」
「うん。まだ確証があるわけじゃないからね。」
私は正直に言う。
「よろしければ、その仮説? 直感?を聞かせてくれない? 仮説を積み重ねるのって大事よ。」
伊藤女史が聞いてくる。
「まだちゃんと考えがまとまっている訳じゃないけど。」
私は言いながら頭の中を整理する。
「私達、地底国家に住むものはそれこそ幼児のころから言い聞かせられている。守護者に近づくな。洞窟の壁を壊して守護者を呼び出すなってね。」
「昔話の鬼みたいな扱いという訳ね。」
伊藤女史が理解を示す。
「ふと思い出しましたけど、僕たちってドラウプニルを得て間もなくの初期の頃。随分無茶してませんでした? あのタイタン達、四天王が地上に向かってきて、僕たちもリサ教授を救うために洞窟を下っていたころです。もう洞窟の壁を壊すなどころか、階層そのものを吹き飛ばしてましたよね。」
山吹がちょっと遠くを見るような目でつぶやく。
「地底国家に住む私の率直な意見を言ってもいい?」
「はい」
「おったまげたわ! アホかと思ったわ! あんなに盛大に洞窟ぶっ壊して、守護者が大量にでてきたらどうすんだ。と思ったわ!」
「ああ、はい。そですね。」
山吹が若干引いている。
「その意見はもっともとして、アオイさんはなぜ、そのまま見て見ぬふりをしてたの? 守護者がでてくる危険性があったわけでしょう? そしてなぜ、守護者は出てこなかったのかしら?」
「最初の質問の答えはシンプル。いう暇がなかった。」
私は半目で山吹を見る。
「あー確かに。いきなり洞窟を吹き飛ばしましたもんね。」
山吹は私の半目に空笑いで応える。
本当なら、「見て見ぬふり? そんな暇あるか! ボケェ。いきなり洞窟の壁を壊しやがって。守護者出てきたらどうすんだ。あんときの私は何がなんでも生き延びなきゃならんかった。青の国を開放する目的があったから。その目的が潰えたらどうすんじゃー!」
と怒鳴りつけたかったが、やめておく。
言っても栓が無い。
もっとも、あの頃の私は生き延びるためという目的があった。何が何でも青の国を私自身の手で救うために。
だから、あの頃の私は山吹や赤石。そして地上人が洞窟を破壊して守護者に襲われたとしても、それは自業自得と考え、すたこらさっさと逃げることを考えていた。
まだ死ぬわけにはいかない。
当時の私はそう考えていた。
守護者には遠距離攻撃がないことは周知の事実。
逃げに徹するのなら問題ない相手だから。
もちろん今は違う。
青の国を帝国から取り戻してくれたことは感謝してもしきれない。
また、楽園『地上』との青の国との交流も開始された。
青の国の王族として、どれだけ恩義を感じているか!
まあ、あいつらは政治的駆け引きもなにもなく「当り前だ!」というだけだろうけどね。
それならせめて赤石の大切な人であり、山吹の恩師であるリサ教授を救出するのに手を貸してやろうじゃないの。
じゃないと女が廃る。
「そうね。レポートは目を通しましたけど洞窟壊したのは事前の作戦というよりは現場の判断みたいですし、止める暇は無かったというのは分ります。では、なぜ実際に守護者は出てこなかったのでしょうか?」
私は伊藤女史の質問に軽く頷く
「その疑問点もっとも。それも辻褄が合うんじゃないかと思った。」
「さっきの山吹くんが言った『守護者=魔石の洞窟』という話ね。」
私と伊藤女史は山吹を見て頷く。
「詳しく聞かせてくれないかしら?」
「守護者=魔石の洞窟ならいろんなことが説明がつく。と思った。例えば・・・そう。なんであのモンスターが守護者と呼ばれているか知ってる?」
「守護者という名前ですから、何かを守るためでしょうか? 今までの話の流れからすると魔石の洞窟を守るためのモンスターということということでしょうか?」
山吹が言う。
「そう。ダンジョンを守護するモンスター。ダンジョンが破壊されたりしたら出現するとか、まさにそうでしょう? それで守護者とダンジョンが一つの生物だったとしたら辻褄が合う。」
「OK・・・そういうことね? 魔石の洞窟が攻撃を受けた場合の防衛手段として守護者がでる。守護者は魔石の洞窟の一部だから守護者が食べたものは魔石の洞窟の中に散らばっている。ん?? んんん?? 待った。待って。ということは。」
伊藤女史が青ざめた顔をでこちらを向いた。
そう、この仮説が正しければ、伊藤女史が気づいたように・・・そういうことになる。
「私達がダンジョンと呼んでいるもの、アンタ達、地上人が魔石の洞窟と呼んでるもの。これは生物ということになる。」
私はできるだけ平坦に告げた。
できるだけ感情を乗せないように。
「確かにそう考えると辻褄が合いますが・・・そうなると帝国を含めた地底国家群はダンジョンという名の生物の中にいるということですか??」
山吹が難しい顔をした。
そりゃそうだ。
生物の中で生活してますなんて、ショッキング過ぎる。
私なんて故郷の青の国がモンスターの腹の中にあるということになるんだ。
「そう考えると辻褄があう。」
私は努めて感情を排して山吹の問いに答えた。
「さっきの魔石の洞窟を破壊しても守護者が出なかった件も説明がつくのかしら?」
伊藤女史が指を机に叩きながら聞いてきた。
「ダンジョン内でも守護者が出るところ、出ないところがあった。採掘場とか。今まではそういうことだろうと思っていたけど、ダンジョンが生物なら違う推測もできる。」
「違う推測・・・。」
「そう、ダンジョンが生き物だとして、どこまでがダンジョンという生物なのかということを考えれば自ずと解答でてくる。」
「そうか!そうですね。ダンジョンが生物だとしたら、範囲はどこまでかということですね。無制限だと地球そのものがダンジョンという生物になってしまいます。」
山吹が指を鳴らす。
「そう、地球がダンジョンという生物というのは考えにくい。どんな生物でも大きさというのがある。おそらく地上付近はダンジョンという生物ではなく、本当の洞窟じゃないかな?というのが私の考え。」
ふとみると伊藤女史が考え込んでいる。
その後に顔をあげて私を見た。
「OK・・・疑問点を潰したいの。いくつか質問していいかしら。」
「ええ、もちろん。」
「守護者は喰った人間をなぜ解放するのかしら?すべてを養分にかえてもよくては?」
「いくつか考えられるけど、養分として全てが必要ないからというのが違いかもしれないと考えている。」
「とすると、奪われたもの。おそらく「理性」がダンジョンというモンスターにとって必要なものと考えている訳ね。」
「・・・これから話すのは突飛なこと。それを踏まえて聞いて。仮にそのダンジョンというモンスターには「理性」がなかったとする。でも守護者を通して「理性」のを取り込めるとしたら。そしてダンジョンというモンスターが「理性」を必要としていたら? だって 「理性」がないと考えることすらできないから。・・・地底に住む私達はダンジョンというモンスターにとって「理性」を提供する「餌」になる。」
「確かに突飛な話ね。でもつじつまが合う。だからダンジョンというモンスターにとって餌として地底に住む人たちが必要ってわけね。それを食べる器官が守護者。」
「そう。そしてダンジョンというモンスターには神も勝てない。なぜなら、住んでいる世界そのものだから。ダンジョンから見ると人も神も『理性』を供給する餌でしかない。」
山吹がそこで手をあげる
「それだと辻褄が合わなくなりませんか? ダンジョンがモンスターという生物なら「餌」を欲望のままに食べてしまいそうですが。実際にはダンジョンの壁を壊すなどの攻撃を受けた時にしか守護者が現れないのですよね。」
むむ、さすが山吹。
鋭いところをついてくる。
「例えばそう。蜘蛛のように罠を張るモンスターと考えるのはどう? ああいうのは積極的に狩りをせずに、じっと獲物が罠にかかるのをじっと待っている。」
「うーん。壁を壊すのをじっと待ってるのですか? 思いっきりダンジョンの階層を壊した僕が言うのもなんですが、あのような切羽詰まった状況じゃないと壁を壊すなんて発想なかなか出にくいですよ。」
むう。確かにそうだ。
罠を張るにしたって、普通は通り道に張るだろう。
わざわざ、壁は壊さない。
「ちょっと待って。こう考えるとどうかしら。守護者は言ってみれば白血球のように異物を排除するのが仕事。こういうのはどう?」
「ちょっと待って。それだと私達地底国家群に住んでいる人はばい菌ってことになる。」
それはものすごく嫌だ。
「全部が全部ばい菌扱いはしてないんじゃないのかしら? 普通に生活している分には守護者は出てこないのでしょう?」
「ええ。」
「だとしたら、ダンジョンの壁を壊すような・・・言ってみれば異物だけを排除するダンジョンにとっての免疫器官。それが守護者。こんなのはどう? さっきの仮設よりは矛盾がないのではないかしら。」
伊藤女史がここまで言ったとき、メンドーサから通信が来た。
「帝都に敵が現れました。・・・これは・・・敵は四天王デビルフィッシュ様です!」
私はすぐに立ち上がる。
山吹も赤石も立ち上がった。
ちなみに赤石は無言で云々言いながらこの場にいました。
ええ、一言も発してませんが。
いましたよ。ええ。
それはともかく四天王デビルフィッシュが相手なら本気でいかないいけない。
仮説の打ち合わせ検証も一旦ここまで。
「いくよ!」
私の号令に山吹、赤石が頷く。
私は帝都に向かうべく転移のスクロールを発動させた。
---from 赤石 side---
「ぬう。」
我は目を見開く。
デビルフィッシュは帝都の郊外にいた。
実に堂々とである。
一兵たりとも連れてきていない。
単騎である。
その状態で帝都の守護兵に囲まれてた。
敵ながら素晴らしい胆力である。
「ふぉふぉふぉ。来たかレンジャーワン。」
デビルフィッシュが鋭い眼光をこちらにむける。
「ずいぶん余裕ね。私達が来る前に帝都を攻めることもできたでしょうに。」
アオイが挑発とも呆れともとれる発言をした。
「ふぉふぉふぉ。吾輩は知っての通り軍人ではない。一格闘家よ。国盗り城盗りなんぞに興味はない。さらにいえば弱者をいたぶる趣味もない。」
デビルフィッシュは自分を取り囲む帝都の守護兵を見つつ薄く笑った。
睥睨という表現が合う。
守備兵は見られただけで怖気づいたか、腰を抜かすものもいた。
無理もない。
このデビルフィッシュという男。
帝国軍とタイタン軍との戦争で巨大な邪神ともとれる姿を見せている。
ここにいる守備兵はその姿を見ている。
勝ち目がないと悟っているのであろう。
それでも守備兵の本分を全うしようとする姿は天晴である。
「吾輩が興味があるのは強者との戦いだけよ。のう。レンジャーワン。お主らミスクロウを倒したのか?」
デビルフィッシュの蛸頭が赤から黒に変わった。
「そうね。今は敵味方にわからているからね。その辺、恨みっこなしじゃない?」
アオイが相変わらず挑発ともとれる物言いを続けている。
ふむ。なんであろう。
アオイも元帝国四天王である。
四天王同士の対抗心・競争心のようなものでもあるのであろうか?
「ふぉふぉふぉ。確かにそうだがのう。ミスクロウは吾輩が闘士時代の同志でな。理性ではわかるのだがどうしても感情がはいる。」
「もっとシンプルにいいなさいよ。かたき討ちがしたいって。」
「ふぉふぉふぉ。青の国の小娘が生意気なことをいう。ほれ、その姿で良いのか? 変身しなくともよいのか? 今のままでは一瞬で勝負がつくぞ。」
「ふん。言われなくても!」
アオイがドラウプニルを起動させる。
同時に「An armor changes Wodan」の機械音が鳴り響く。
アオイの体が青い全身スーツに覆われる。マントのような青藍のパーカーとフレアスカート。鍔の広いとんがり帽子に杖を装着。
「Completion! The magicians・blue」
機械音と共にアオイは青を基調とした魔法使いに変身した。
山吹もドラウプニルを起動させる。
「An armor changes Frey」の機械音が鳴り響く。
山吹の体が派手な黄色の全身スーツと軽鎧に覆われる。
フルマスクのようなヘルメットに頭部が全て隠される。腰には大剣、背にはマントを装備
「Completion! The Commander・yellow」
機械音と共に山吹も黄色を基調とした軽戦士に変身した。
我もドラウプニルを起動させる。
「An armor changes Tor」の機械音が鳴り響く。
我の体が派手な真紅の西洋甲冑に覆れる。
腰回りは大きなスカート装甲。肩の倍はある巨大な肩当に、膝から下もフレア装甲。左手には腕には炎をデザインしたようなシールドが装着される。
「Completion! The Fighter ・RED」
機械音と共に我も真紅の重装戦士に変身した。
「ふぉふぉふぉ。そうでなくては、今の吾輩には勝てぬぞレンジャーワン。」
デビルフィッシュが蛸頭についている八本の蛸足をつかい鋭く突き入れてくる。
まるで槍である。
その槍が・・・
「ぬう。」
まるで無限とも感じられるように伸びてきた。
前までのデビルフィッシュには無かった能力である。
今まで隠していた?
いや、そんな風には感じられなかった。
我は慌てて後ろに避けるのではなく横に避けようとして、嫌な予感がし、スキル「幻獣の角」を使い、大跳躍をして躱した。
「ん!」
「うわっ!」
アオイと山吹の声がして振り向くと、デビルフィッシュの複数の蛸足が、アオイと山吹の首を絡めとり絞めておる。
ぬう。
先ほど、マージンをとらずに横に避けていればこうなった訳か。
「ふぉふぉふぉ、そうれ絞首刑だ。デモンペンデユラム!」
デビルフィッシュはアオイと山吹の首を蛸足で締め付けたまま大きく、弧を描くように、振り子のように振り回した。
ぬう、いかん。
あのまま地面に激突したならば、いかにドラウプニルの防具があるとはいえ首が折れる。
我は素早く地面に激突寸前のアオイと山吹の位置に滑り込む。
我が肉体をクッションとし、両名の首を守るためである。
「ぬうっ!」
想像以上の衝撃が我を襲う。
遠心力でたたきつけられた大人二人分の衝撃は伊達ではないということかっ!
我は二人の首が折れることを防いだものの、その衝撃のダメージで無様に地に膝をついた。
「なぜ、そのような無駄な事をする?」
デビルフィッシュが憎悪を隠そうともせずに我に問う。
「ぬう。」
我にはデビルフィッシュの問いの意味がわからぬ。
無駄な事ではないのだが・・・。
わからぬと言えば、ついさきほどの我らレンジャーワンと伊藤女史との会議の内容もそうである。最近、我のわからぬことが多すぎる。
「なぜ、そのような無駄な事をする? と聞いている。」
デビルフィッシュが苛立ったような声を上げた。
この漢がこのような声をあげるのは珍しい。
「なんのことだ?」
我は逆に問う。
本当にデビルフィッシュの質問の意味が分からぬのだ。
「お主の目的はなんだ?」
デビルフィッシュは憎悪をたたえたまま我に問う。
「知れたこと。リサ姉の救出である。」
これは変わらぬ。譲れぬ。
「ふむ。吾輩もそう聞いている。お主が今とった行為は、その“リサ姉”の救出に何か関係があるのか?」
デビルフィッシュは我に指を指す。
その指がわずかに震えている
「無駄だ。無駄に傷ついただけだ。“リサ姉”を救いたいのであればわき目もふらず目的にむかえばいい。なぜそれをしない?」
我は思案する。
思案する。
思案する。
うむ、自分の気持ちを伝えることのなんと難しいことか
考えて、考えて、考えてやっと近い言葉をひねり出すことに成功した。
「リサ姉が喜ばぬ。」
デビルフィッシュがピクリと反応する。
「それだけか?」
うむ。もっと伝えたい気持ちはあるのだが我には難しい。
顎を引き肯定を意を示す。
その後のデビルフィッシュは驚くほど激高した。
「意味がない! 無駄だ! “リサ姉”を救いたいのならまっすぐ“リサ姉”の元へいけばいいだろう!なぜ、こんな無駄な事をする? この二人を庇ったところで“リサ姉”が救えるわけではない。違うか?」
なぜ、デビルフィッシュがこれほどまでに激高するかは正直、我にはわからぬ。
だが、今のデビルフィッシュの質問には答えられる。
「意味はある。リサ姉の救出には二人の力が必要である。」
「なんだと。」
「二人だけではない。メンドーサ殿、伊藤女史殿、カイ将軍殿といった皆の協力が必要である。」
「何を戯けたことを! 吾輩はお主を評価している。こと戦闘力については比類ない。四天王を、帝国の精鋭を跳ね除けたのは誰ぞ。同じように全ての障害を吹き飛ばし、“リサ姉”の居場所に向かい“リサ姉”を救出する。それだけではないか?」
「リサ姉はおそらく守護者に喰われ「魅入られたもの」になっている。」
「ふむ? それがどうしたというのだ?「魅入られたもの」であろうが何だろうが救いに行けばいいではないか? 逆に「魅入られた者」になったということはダンジョンに適応した者になったということだ。野垂れ死ぬ心配がない。救出まで猶予ができたということだ。安心ではないか。」
「我にはよくわからぬが・・・これだけは理解した。『魅入られた者』は理性を奪われ「願い」を優先するらしい。」
「うむ。それがどうした?」
デビルフィッシュは反応しない。
このことについては既知のことなのであろう。
「我はリサ姉の『理性』も救出せねばならぬ。」
「どうやって?」
「帝王のところに碑石があるらしい。それが魅入られた者になった者の理性と聞いた。まずはそれを取り戻す。」
「・・・・。」
「それには我一人では難しい。アオイ殿、山吹殿を含めたみんなの力が必要である。」
我はアオイ殿と山吹殿の首に絡みついた蛸足を握る。
その腕に力を籠める。
「ぬうん!」
デビルフィッシュの蛸足を握りつぶした。
「かはっ。」
アオイと山吹の首に巻き付いていた蛸足がとれると同時に、息ができるようになったらしい。二人が呼吸を再開する。
「なんだと! 握力だけで吾輩の蛸足をっ!」
デビルフィッシュが叫ぶ。
「アオイ殿、山吹殿は我がリサ姉の救出に必要である。その必要な人を 大切な人を害するのであれば容赦せぬ。」
我はデビルフィッシュに突っ込んでいく。
デビルフィッシュは残った蛸足を槍のようにして迎撃してくるが、その技はもう見切っている。
スライディングで躱し、デビルフィッシュの股の間に到着。
そのままデビルフィッシュの太ももを抱え上げ、プロレス技の投げっぱなしパワーボムのように放り投げる。
デビルフィッシュが地面に頭から叩きつけられ、衝撃がひろがる。
大ダメージだ。
しかし―。
これで倒れるデビルフィッシュではあるまい。
「ぬおおおおおッ。」
肩から背中にかけて力を入れる。腰を捻転。腕を鞭のように広げ体に巻き付ける。
「吐ーッ!」
捻転を戻すと同時に高速で 掌底をデビルフィッシュにむけてて突き入れた。
体がバネが戻るかのような速度で回転する。
そこから速射で繰り出される大砲のような我が最も得意とする片手突き。
『Mjollnir hamme』
機械音と同時に右腕装着されている二回りも大きな円筒形の腕あてから放電。
電撃が走る。
デビルフィッシュのボディに命中。
「ぬおおおおおっ!」
同時にデビルフィッシュが吠えた。
ぬう。
さすがはデビルフィッシュである。
我が得意の片手突きを受けて倒れぬとは。
「なぜだ。それだけの力がありながら、なぜ独力でことを成そうとせぬ。」
うむ。先程から感じていたがどうも話がかみ合わぬ。
それになぜかデビルフィッシュは怒りを俺に向けている。
それは単に俺が敵だからということではなさそうである。
ふむ。
我がごちゃごちゃ考えても埒が明かぬな。
「デビルフィッシュよ。なぜお主は怒っているのだ。」
直接聞くことにする。
なぜか この漢は怒っていた。
我と初めて対戦した時の余裕綽々の姿も、好敵手を喜ぶ闘士の姿もない。
ただ、ただ怒っていた。
その理由がわからぬ。
「吾輩が怒っている?」
デビルフィッシュは我の言葉に戸惑い、そして高々と笑った。
「怒っている? そうだ。怒っているとも! 吾輩は強さを信奉する闘士である。最強を超え神に至り更なる強さを求める求道者である。そのために、その目的を達するために吾輩はそれ以外のすべての欲求を捨てた! 吾輩の獣人としての肉体ですら、そしてミスクロウのようなかつてともに闘士として戦った同志の気持ちですら! 目的を達するという事はそういうことだ。目的を達するために不必要なものをそぎ落とさねばならぬ。なのになぜ、お主は目的以外の無駄な事をしているのだ!無駄、無駄、無駄ではないか!」
うむ。
すまぬ。
言っていることがよくわからぬ。
だが、しかし
我が一見、リサ姉の救出とは無関係な事をしているように見えるのが、奴にとって腹立たしいのであろうというのは何となく理解した。
うむ。
すまぬ。
やはり、いっていることが理解できぬ。
我一人ではリサ姉の行方を調べることはできぬ
我一人ではリサ姉の奪われた理性である石碑のところまでたどり着けぬ
我一人では石碑を取り戻したとして、どのように「魅入られた者」となったリサ姉を元に戻すのか、まったく見当がつかぬ。
我は一人では何もできぬ。
聖人君子を気取っているわけではない。
他の協力が我には必要である。
その協力者が危機に陥っている事を救う事になんの無駄があろうか?
それに・・・リサ姉は研究一筋で、自らの危険も顧みずフィールドワークと称して未知のモンスターが徘徊する 魔石の洞窟内に研究所をつくる天才なのか馬鹿なのか悩む困った人ではあるが、決して研究という目的のために他の物事を疎かにしてたわけではない。
むしろ、「電子レンジ、プラスチック、抗生剤。この世の発明品は偶然からできている。偶然をつかむためにはいろんな接点が必要。」と言って、興味の赴くままに様々な事に手を出したのが彼女だ。
実際、彼女の研究所には家庭菜園を超えた畑もあれば、対モンスター兵器として重火器もある。
研究が忙しいので、それほど交友関係が盛んとは言い難いが、それでも我と言う恋人は作っているし、彼女の無茶ぶりにつきあうスタッフも大事にしている。
我が仮にアオイ、山吹を見捨ててリサ姉を救出できたとしても、「あんた馬鹿?」と叱責されるであろう。
だからこそ
すまぬがデビルフィッシュの言っていることが理解できぬ。
ただ、なんとなくだが感じるものがある。
「うぬは後悔しているのか?」
それが怒りの原因かと感じた。
「後悔? 後悔だと? 吾輩は強さを信奉する獣人である。そしてその獣人の中で最強となった者である。その最強を超えんがために、最強を超えた強さを手に入れるために神にならんと欲した者である。そこに何の後悔があろうかっ! 見よ。神となった我が姿を! これでも後悔していると思うかっ!」
デビルフィッシュの体が巨大化する。
全身に鱗。悪魔のような鍵爪に翼。蛸頭に付属する蛸足がさらに増殖し、うねうね波のようにうねっている。
「うーん、私だったら後悔してるかな。」
声の方を振り向くとアオイであった。
先程のデビルフィッシュの攻撃のダメージから復活したらしい。
「そうですね。この姿は正直、モテそうにありません。」
山吹もまた辛口を言い出した。同じくダメージから復活したらしい。
「うむ。大丈夫か?」
「気遣いアリガト。紙一重で躱したから失敗した。」
「僕なんて躱す間もなかったですよ。」
うむ。首へのダメージであったから心配したがこの分では大丈夫であろう。
「お返しはしっかりしないとね。おいでゲーくん!」
アオイが機械仕掛けの狼を召喚する。
巨大な機械仕掛けの狼は口から衝撃波を放出。
デビルフィッシュの動きをとめる。
「この程度の衝撃波で亜神となった吾輩をとめれると思ったか!」
ぬう。デビルフィッシュは衝撃波に逆らい地を覆う無数を蛸足を振り上げる。
「思ってないですよ。スキーズ! 大砲の出番です!」
『イエス。マスター!』
山吹が空飛ぶ船、スキーズを呼ぶ。
スキーズの主砲がデビルフィッシュに照準をあわせる。
スキーズの砲門から放たれる砲撃。
「ぬおおおおおおっ!」
デビルフィッシュは無数の蛸足を並べ壁にして防ごうとする。
ぬう。
衝撃波を受けここまで動けるとは亜神というのは伊達ではないということか!
なんと理不尽なことか!
デビルフィッシュは壁にした蛸足を犠牲にしてスキーズの砲撃を防ぎ切った。
「まだ! おいでフレキちゃん!」
間髪入れずアオイが機械仕掛けの狼をもう一体召喚する。
召喚された機械仕掛けの狼は無数の鎖を地から呼び出し、デビルフィッシュをその鎖でもって拘束する。
「ふぉふぉふぉ。小娘! これで亜神となった吾輩を封じたつもりか!」
ぬう。
いかん
鎖の数よりも、デビルフィッシュの蛸足の方が数が多い。
津波のようにうねりをもってアオイを襲う無数の蛸足。
「お願いします。スキーズ。」
山吹が空飛ぶ船スキーズをアオイと蛸足の間に滑り込ませる。
防波堤とする。
もちろんただの防波堤ではない。
スキーズには大砲がある。
砲撃で反撃する防波堤である。
大量の蛸足の波がスキーズの砲撃を受け、蛸足を吹き飛ばされつつも防波堤となっているスキーズ。そしてアオイ、山吹に向かう。
蛸足は物量にものをいわせ、スキーズを絡めとる。
うむ。この光景は見たことがある。
山吹がやっていたゲームで難破船を襲うクラーケンのような絵面があった。
まさにその再現である。
このままデビルフィッシュの蛸足の物量で押し切られるかという場面だが・・・
うむ。
間に合った。
我はデビルフィッシュを袈裟懸けに斬った。
一刀両断である。
「な・・・に・・・?」
デビルフィッシュが驚きの目で我を見た。
うぬの目には骸骨の顔をした死神の顔が映っているだろう。
やったことは単純である。
アオイと山吹が時間稼ぎしている間にドラウプニルを操作し新タイプであるeinherjar・REDに変更。
この状態で巨人を呼び出すと、通常のシアルフではなく黒と赤のカラーリングで巨大両手持ちの直剣を持つ骸骨頭の巨人が現れる。
この巨人。
シアルフとは違い、制御が難しく、長期戦に向かぬ。
それどころか直剣を一振りするのがやっとである。
そのため、アオイと山吹が陽動し、我が一振りで決着をつける状態をつくる必要があった。
その甲斐はあった。
この死神の一振りは強靭な耐久力と再生力をもつ亜神となったデビルフィッシュを人たちで切り裂いた。
「あ・・・・が・・・ふぉふぉふぉ・・・神を殺すのは死神か・・・。せっかく全てを捨て去ってここまできたのだがな・・・。」
うむ。
デビルフィッシュのこと最後と思える言葉に何と答えるのが正解であろうか?
いや、深く考えまい。
我が深く考えたとしてたかが知れている。
我は答えず倒れ落ちるデビルフィッシュを見下ろす。
「・・・・。」
そのままデビルフィッシュは倒れた。
最後にミスクロウと奴は言っていた。
それがどんな意味を持った言葉なのか、それこそ神ならぬ我ではわからぬ。
【あとがき】
デビルフィッシュのラストバトルでした。
【次回予告】
最後の四天王が倒れた今、攻める好機と判断したレンジャーワンは帝王の下へ
しかし、宰相ユミルが彼らの前に立ちはだかる
次週、episode46 宰相
毎週 日曜日 9時30分 更新
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