episode35 大衆の英雄
35話まできました。
皆様のおかげです感謝!
最終話50話までお付き合いよろしくお願いします。
---from 白井 side---
「フン、十人衆も口ほどにもなかったな。ここは俺がいこうか。」
俺は残った十人衆を眺めて言う。
「おい。」
と隣にいるミスクロウが俺の足を踏み、発言に注意を促すが知ったことか。
ここに居並ぶ十人衆に俺が遅れをとるとは思えない。
案の定、十人衆の中でまだ、戦っていない奴が騒ぎだした。
まあ、予想通りの反応。
フン、気にするまでもない。
今、この広間にいるのは
帝王様、宰相ユミル
四天王最後の一人、デビルフィッシュ。
その副官。ミスクロウに俺
アオイの姉であるブルーフェイスとその一派
武闘派ブルータス、二丁斧使いのマンタ 魔道具使いパパイア 空間魔法使い ゴンザエモン
そして、俺が槍玉にあげた十人衆の生き残り
龍人ミズカミ 植物の精霊使いスミス 蜘蛛人間ハッサク
エルフの剣士 ルール 魔術師 ルカ
そして、元タイタン副官 プロネミンス
今回、俺の挑発に特に騒いだのは植物の精霊使いスミスだ。
蜘蛛人間ハッサクは植物の精霊使いスミスほど騒いでないが苦い顔をしている。
龍人ミズカミとプロネミンスは謎の沈黙をしているし、エルフの剣士ルールと魔術師ルカはレンジャーワンとの戦闘で心が折れているのか消極的だ。
この両名は自然と消えるかもしれんな。
「フン、事実を言ったまでだ。」
俺はさらに挑発する。可能であれば十人衆の一人や二人を正当防衛としてここで斬っておきたい。
「事実というのなら、貴公とミスクロウ様はどうなのです? 貴公が受け持っていた石の国や地の国を制圧されてアオイの勢力の伸長を許したのはどなたでしょう?」
植物の精霊使いスミスが怒りを隠さずに話してきた。
「フン、話のすり替えが上手なようだ。今は全敗の十人衆の話をしている。」
「なんだと。ここで実力をしめしてもよいのですよ。」
植物の精霊使いスミスが周囲から茨の蔓を吹き出す。
これが奴の戦闘スタイルらしい。
「フン、面白い。やるか。」
俺は大剣を抜く。
やるなら、やり返すまで。
「武力で主張を通そうとするとは野蛮な真似はおやめください。」
宰相ユミルが苦い顔で制止する。
まあそうだろうな。
数少ない駒が同士討ちで消耗するのは避けたいよな。
「とはいえ、これでは折角、帝国最強武力である四天王を超える猛者をと思い候補生として十人衆を集めましたが意味がなくなります。どなたか打破していただけませぬか?」
「私一人でよいのならやりましょう。」
と進み出たのが蜘蛛人間ハッサクだ。
意外だな、先程までギャーギャー騒いでいた植物の精霊使いスミスではなく蜘蛛人間ハッサクがでてきたことに。
「あー、私は一人の方がやりやすい。 ですから控えていたんだがね。えー、方法問わずということであれば私がいく。その方がよい。他の十人衆と同等に無能扱いされるのも癪になってきましたしな。」
「無能ですと、貴公、それは聞捨て出来ない。」
植物の精霊使いスミスがまた騒ぐ。
「フン、それならお前も行けばいいじゃないか。騒ぐだけが能か?」
俺が皮肉を言う。
俺の言葉に反応したのが蜘蛛人間ハッサクだ。
「あー、やめていただきたいですな。繰り返しますが私は一人の方がやりやすい。えー、特に植物の精霊使いスミスは植物を操る。そして私は虫を操る。虫は植物を餌とします。私の攻撃範囲に下手に入られると餌にしかならない。ということなのですわ。」
「なんですと、私が餌だと!」
植物の精霊使いスミスが今度は蜘蛛人間ハッサクに噛みついた。
「ええい、品の無い争いはやめていただけますか。ではハッサク殿お願いいたします。是非、四天王に変わる存在であるということを私たちに示していただきたい。」
これ以上、不毛な言い争いを避けたいのだろう。
宰相ユミルが中に入り、蜘蛛人間ハッサクの出撃が決まった。
ふと、無言を貫いている帝王様を見る。
薄く笑っていた。
あの笑みはどう意味だ。
---from 赤石 side---
我は今、地上の道場でライオンマンと一緒にスパーリングをしている。
珍しくライオンマンからの誘いである。
強者であるライオンマンと戦えるまたとない好機である。
我はありがたくその申し出をうける。
うむ、やはりライオンマンは強い。
遠距離では竜巻を発生させる風魔法で牽制し、時に錐もみ回転しながら突っ込んでくる。
近距離では爪による攻撃を行ってくるがそれが本命ではなく、その爪を避けた隙に組み付いてくる。基本的にはサイドスープレックス狙いだが、それを踏ん張ると両腕を背中の上で締めあげ、こちらがサイドスープレックスを防ごうと踏ん張った力を逆利用して投げっぱなしのダブルアームスープレックスで放り投げてくる。
うむ。ドラウプニルによる変身で赤き鎧を纏っていなければ何度死んだかわからぬ。
「うむ。強いな。」
我は素直にライオンマンを称賛する。
「おお、赤石殿のような強者に言われると素直に嬉しいものだな。」
「安心した。」
「おお。どうした急に。」
「魔石の洞窟内で苦しそうにしてたのでな。」
「そうか。赤石殿にまで気を使わせたか。」
「うむ。洞窟内では今のような動きにキレがない。」
ライオンマンはいつのころからか、魔石の洞窟内にいるとき限定で原因不明の体調不良になった。そのため最近は余程の危機が無い限り専ら地上にいることが多い。
「おお、そうか。そうか。さすが赤石殿。」
ライオンマンはそう言って黙った。
快活なライオンマンとしては珍しき光景である。
我も黙る。
元々、饒舌な性分ではない。
「なあ、赤石殿。いってみたいところが2件あるのだがつきあってくれぬか?」
しばらくの沈黙の後、ライオンマンは真剣なまなざしで言った。
---from カク side---
私は帝都の兵士だ。
治安維持等が仕事だ。その仕事になかに国境であるダンジョン出入口を守るという仕事がある。
その件で、実質的な現在の帝都の支配者であるアオイ様直々ににめっちゃ怒られていた。
もちろん俺だけではない。ダンジョン出入口の守りを担当する兵士全員だ。
「アンタ、バカなの? 死にたいの?」
説教はその言葉から始まった。
「確かにアンタたちの役目は国境にある出入口を守ること。だからと言って馬鹿正直に『出入口』
を守ってどうすんの?」
? どういうことだろう? 俺たちの役目は『出入口』を守ることだ。
出入口を守ってはいけないのだろうか?
「よくわかってないって顔ね。この『出入口』ってどう? 広くない?」
この洞窟の出入口は広場になっている。
周りには民家もなく、狭い地底国家群の中では戦いやすいフィールドの一つだ。
「戦いやすいところで戦うことの何が悪いのでしょう? 何で注意受けてるのかわかんないです。」
俺の隣にいた少年兵バドが小声で俺に言う。
安心しろ、バド。俺にもわからん。
「広い場所って戦いやすいよね。それは敵も戦いやすいって意味だよね。つまりこの場所では『場所』による有利不利は生まれない。」
あ! そうか、俺たちが全力で戦えるってことは敵も全力で戦えるってことか。そんで敵の全力と俺の全力を比較したら・・・うん、敵の全力の方が強いわな。
他の兵士も俺と同じことに気づいた奴がいるらしい。
周囲がざわつきだした。
「更に! この場所だと大軍を展開できる。アンタら、大軍と戦いたいの? 大軍と戦って、それで勝てるの?」
そういわれると考えさせられる・
俺達だけで大軍と戦うのは無理難題だろう。
っていうと何か。俺達は無理難題やってるのか?
確かにアオイ様達、レンジャーワンの皆様がくるまでどうしようもなかったという事実がある。
「うーん。そのためにゴーレムがいるのではないんですかね?」
バド少年がぼそっと言った。
そうだよ。最初、1体だったゴーレムが4体配備された。
このゴーレムが守備の要なんじゃないか。
「そこ。」
アオイ様がバド少年の発言を耳にしたらしい。
バド少年を見据えていった。
「そのゴーレムが倒されたの理解してないの? 事実から目をそらしているの?」
アオイ様の鋭い舌鋒がバド少年に向く。
バド少年は言葉に詰まったが、この時期の少年らしい向こう見ずさで
「だったらどうしたらいいんです。」
と反論した。
その言葉にアオイ様は大きく頷き。
「洞窟内で戦いなさい。」
と言った。更に
「洞窟内は知っての通り大軍は無理。せいぜい、3〜4人。なら四体のゴーレムで制圧できる。わざわざ、敵が全力を出せる場所で戦うなんてバカなの? 死にたいの?」
と言葉を続けた。
アオイ様が言っているのは特別な戦術ではない。古くから言われている事だ。言ってみれば基本中の基本。
「ダンジョンの移動は大軍は適さない。」
この基本がやれてなかったということか。確かに自ら死地を作っていると指摘される訳だ。
逆に言えばレンジャーワンの方々は基本ができている。だから強いということなのだろう。
「うーん。理屈はわかるのですが、なんか納得いかないです。」
隣のバド少年が拗ねた顔をしている。
わかる。
俺も感情と理性の整理がついていない。
俺はバド少年の頭を撫でた。
---from 赤石 side---
「ぬう。」
ここは。
我はライオンマンにつれられて、ある私立高校に近い公園にきた。
ちょうどお昼休みの時間帯だからであろう
目の前には高校生が友達やカップルと昼飯を食べている。
既に食べ終わったのか球技で遊んでいるものもいた。
が、我とライオンマンにとってここは異世界。
場違いであるというのはわかる。
皆が奇異の目で我らを見ていた。
ライオンマンがいつもの半裸ではないのが救いと言えば救いである。
「ここに連れてきた理由は?」
我はライオンマンに問う。
「おお、まずは座ろうか。」
ライオンマンは近くのベンチに座った。
「赤石。お主は年齢でいえばあの高校生とおなじであったな。」
「うむ。」
「比較してどう思う?」
「うむ。」
我は思案する。
どう答えたら正解かはわからぬが・・・
「彼らと我は別世界の人間である。とは思う。」
と答えた。
「おお、赤石殿もそう思うか。俺もな、そう思ってな。確かめようと思ったのだ。」
ライオンマンは大きく頷き、一つの漫画本を珍しく着ている服のポケットから取り出した。
「いま、流行っている本らしい。」
「ふむ?」
我はライオンマンの話の要領を得ないままにその本を受け取った。
いわゆる格闘漫画。バトル漫画である。
世のなかの理不尽を、主人公がバトルで打ち破り勝利していく。
「この漫画の主人公。赤石殿に似ておらぬか?」
「ふむ。」
我はページをめくりながらその漫画を眺める。
言われれば似てなくもないが・・・この漫画の主人公ほど器用でもなく、顔も普通である。つまりは
「我はこの主人公ほどの英雄ではない。」
と言って我は本を返す。
「おお、俺から見ると赤石殿ほどの英雄はいないのだがな。見よ、この囚われのヒロインを救出するため地底深くに住む竜を成敗する主人公を。ドラゴンと戦う赤石殿のようではないか。」
ふむ。そういわれると、そうかもしれぬが・・・
「これは俺の勝手な妄言だが・・・。」
そう断ってライオンマンが言葉を続ける
「俺はな赤石殿に興味があった。神に最も近いといわれる偉大なるデビルフィッシュ様を退け俺とも互角の戦いを演じる。赤石殿をな。そこでふと考えた。もしかして赤石殿が特別に強いのではなく、地上の若者が皆、赤石殿のような戦闘力をもつのが普通なのでは?とな。そこで地上の同年代の者を観察した。」
ふむ。その結果は明白である。
「我は客観的に見て他の高校生とは異なるとは自覚している。」
「おお! そうなのだ。そうなのだ。スポーツで仲間と汗を流したり、異性とデートしたり、友達と買い物したり、イベントにいったり、あるいは趣味に没頭したり、いずれにせよ赤石殿と似た類型は存在しなかった。ただし・・」
「?」
「一つだけ類型があった。」
そういってライオンマンは手に持つ本を軽くたたいた。
「この漫画の主人公。つまり地上の一般的な男子が抱くヒーロー像。それが赤石殿だ。」
我は眉をひそめる。
褒めても何もできぬぞ。
「ここまで俺の勝手な妄言を話しした。この内容を俺自身、どうとらえていいか定まっていないのだが・・・だがな赤石殿。」
「うむ。」
「何か、無理をしていないか?」
「無理? とは?」
「おお、自覚してないのであればよい。だが、常人とは違う生き方をしている赤石殿が俺には何か尋常ならざる無理をしているようにしか思えぬのだ。」
その言葉にしばし思案する。
・・・
よくわからぬ。
「我はりさ姉を救う。それだけである。」
「そうか。なんかすまんな。最近、体調がすぐれず気が弱ってるのかもしれぬ。不要な心配がこう心から沸き起こってきてな。」
「うむ。養生するがよい。」
「おお、そうさせてもらおう。ただ、偉大なるデビルフィッシュ様が出てきたら別だ。かの御仁は俺の目標である。その時は出撃するぞ。」
「うむ。うぬの方が無理をしているではないか。」
「む。そうか、そうだな。違いない。」
そう言ってライオンマンは笑った。
---from ハッサク side---
「あーっ。何なのだ、これは。前に進もうとしても進めないではないですか。」
私は目の前の光景に呆然としております。
目の前には4体のゴーレムがおります。
そのゴーレムが光の魔法を放ってくるのです。
それこそ今いる洞窟内を隙間なく、間断なくですな。
まるで洞窟そのものが光の攻撃魔法に隙間なく埋まっているような状況なのです。
これはさすがに非常に難しい問題です。
僅かな隙間があれば私が使役する蟲達は移動することができますが、その隙間がありません。
かといって光の攻撃魔法を耐えつつ進軍するだけの耐久力は蟲達にはありません。
あー。これはレンジャーワンとかいう地上の勇者と戦い私の実力をしらしめるどころか帝都にすらたどりつけないではありませんか。
まずい。これはまずい。
えー、他の十人衆の面々は敗れたとはいえ帝都にはたどり着いたのです。
帝都にすらたどり着かないで敗れたとなれば十人衆最弱のレッテルを貼られるかもしれませんな。それはとても許しがたいことです。
かといって洞窟全てを覆う間断の無い光魔法の射線によって私は洞窟内の広間にくぎ付け。
一歩も進めません。
ぐぎぎぎ。
こうなったら守護者が出てくるのを覚悟で洞窟の壁を破って進むか・・・。
「ほら、やっぱりここにいたでしょ。」
「そうですね! アオイちゃんの言ったとおりです。」
不意に背後に声が聞こえ慌てて振り返ります。
ここには私しかいないはず・・・っ。あれは元四天王 青の国のアオイ姫!
そしてその仲間の金色の戦士!
何故かアオイ姫がこの洞窟内の広間に忽然と現れました。
し、しかーし! これは好機でしょうな
ゴーレムの光魔法の射線はどうにもできませんでしたが、相手が生身の人間なら話は別です。我が蟲達の餌食になってもらいましょう。
いや、ブレインイーターという脳を食らう蟲をつかって生きながら傀儡にするにも「ありでしょうな。
そうですな。そうしましょう。
今からあのアオイ姫の肢体が我が物になると思うと楽しみですな。
ふふふ。
運が向いてきました。
このままレンジャーワン二人を傀儡にできたなら、十人衆の誰もが成しえなかった快挙です。
さあ、蟲達よ地上の勇者を喰らうが・・・え。あ。
目の前に巨大な機械仕掛けの狼が現れました。
「ねえ。この場所だと洞窟内にしては広いから全力出せるとおもったでしょ? でも残念。この場所だとアタシも眷属の1体は出せるの。 いけ!フレキ!」
巨大な機械仕掛けの狼が吠えると衝撃波が蟲達を潰し、あああっ、私の体も・・・・。
---from 山吹 side---
「すごいですね。あっという間に倒しちゃいましたよ。」
僕は素直に感心する。
アオイちゃんのとった防衛戦術に
4体のゴーレムに連続で魔法攻撃を行わせることで洞窟内を一切通行できない状態にします。
そうすると敵はこの広間に身を隠すしかなくなります。
その間に僕達レンジャーワンが悠々駆け付け。
敵が身を隠しているであると最初から想定されている洞窟内の広間に転移のスクロールで移動。
背後から攻撃を行う。
さらに言えばこの広間は僕達の眷属1体は召喚できるスペースがあります。
そこから今回でいえば衝撃波を武器とする機械仕掛けの狼。フレキを呼び出し。衝撃波で攻撃。
敵はその衝撃波でなすすべもなく倒されてしまいました。
敵の動きを制限し、特定の場所へ誘導。僕達がかけつける時間も稼げます。
これであれば兵士も傷つくことはありません。
アオイちゃんの戦術家の一面を見せつけられた戦いぶりでした。
「それはいいけど、どうも敵は蟲使いみたい。こういう相手はゾンビみたいにしつこいし厄介だから、消毒ヨロ。」
とアオイちゃんはぷいっと横を向きました。
照れているのでしょう。
かわいいところもあります。
さて、かわいいお姫様に頼まれましたし、ここ一面消毒作業しますか。
僕はそう言ってレーヴァティンから炎を出現させ、敵がいたあたりを神の炎で焼き尽くす作業を開始します。
それにしても敵はまだ宰相ユミルをはじめ、ミスクロウや白井さんなど戦力を残しているはずです。
いつくるのでしょう?
来た時が勝負の時です。
そこで戦力を削ぎ、カウンターで一気に帝王にせまり、りさ教授の一部であり、りさ教授が帰れない原因でもある石碑を返してもらう時です。
ちょっと不謹慎ですが、早く攻めてきてほしいところです。
【次回予告】
遂に十人衆の一人が本領を発揮。
山吹が得意としていた戦術をやぶる。
次週、episode36 緑の世界
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