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episode33 チーム

--from 宰相ユミル side---


「ふむ。やはり単騎では難しいようです。いかがでしょう? パーティを組まれてみては?」

私は四天王候補である十人衆の一人豹頭の勇者ラーマが単騎むかったもののレンジャーワンに敗れ囚われたと聞き、残る9名の十人衆にチームでの進軍を提案してみることにしました。


別に変な提案ではないと考えております。


ダンジョンは軍の行軍には適しませぬが、四人程度のパーティで移動する分にはちょうどよいのです。

そこで四人がパーティとなり連携して道中のモンスターを倒しながら進むというのが定番でございます。

かの四天王も本当の意味で単騎での活動はしておりませぬ。


アオイ殿は必ず副官をつれておりました。

タイタン殿も部下を伴っての移動が多かったですな

デビルフィッシュ殿は単騎で動くことが多かったですが、そこはなんだかんだ言って世話焼き好きで苦労人のヘドリア殿が部下のメンドーサ殿の探査能力を活用し陰から見守ることが多く、本当の意味での単騎先行はなかったように思われます。


であれば十人衆の皆様方も単騎で挑む必要はないように考えております。


「そうだね宰相。レンジャーワンは3人だね。勝ちを狙うのであれば一人多い4名で行くのがよいだろうね。」


おお、さすがは帝王様

わかってらっしゃる。


帝王様の仰る通り、何も一人で行く必要はないのです。


十人衆の皆様方は顔を合わせております。

帝国最高戦力である四天王の称号が欲しい方たちであります。

ライバルとなる方たちとパーティを組むということに抵抗があるというのは理解できます理解できますが、ここは帝国の勝利を一番に考えてほしいところです。

「俺はかまわん。」

鬼人グランド様が第一声をあげました。

ありがたいことです。

こういう場は第一声が大事です。

流れが変わりますので。

「グランド殿、前向きな発言ありがとうございます。」

私は鬼人グランツ殿に頭をさげる。


「儂もいこうかの。」

氷剣の老戦士ミーミル殿も進み出てくれました。

「おお、ミーミル殿ありがとうございます。」

「待っていてもしょうがないからの。」

ミーミル殿は苦笑しました。

それから待っていましたが残りの十人衆は互いを牽制してか、進み出る方はおられません。

内心、困ったなと思いながら思案していると・・・

「ほれ、老人に働かせてどうする。若いもんもいかんか。」

とミーミル殿は十人衆の中で中では若手のエルフの剣士ルール殿、新規気鋭の魔術師 ルカ殿に声をかけました。

「はぁ? 私は見かけ若いかもしれないけどエルフよ。エルフ。そこんとこわかってないじゃん。少なくともおじいちゃんよりは長生きしてるんですけどー。」

エルフの剣士 ルール殿がミーミル殿に抗議する。

「ふん。それでも。その見た目。エルフの中じゃ若輩もんじゃろ。」

ミーミル殿は意にも介さない。

「はあ。仕方ないですね。もう少しレンジャーワンの研究をしてからと思ったのですが帝王様のご意向もあります。今回パーティを組ませていただきますね。」

魔術師ルカ殿が参加を表明してくれました。

ありがたいことです。


「前衛二人に後衛一人か中々バランスの取れたパーティだね。で、ルールさんはどうするのかな?」

ここで帝王様が発言しました。


言い方はは軽いですが、目が笑っていません。


「え、え、行くわよ。いけばいんでしょ。」

ルール殿がミーミル殿を睨みながらいいました。


「これで決まったね。僕が言うのもなんだけどいいパーティだと思う。最高の結果を期待しているよ。」

帝王様はニッコリ笑いました。



---from ライオンマン side---


「不思議なものだな。」

俺はレンジャーワンの3人を見て率直な感想を述べる。


赤石殿の日常を見て見る。

鍛錬・鍛錬・鍛錬である。

俺も付き合わされた。

それはよい。俺も強者との対戦は望むところ。

赤石殿との対戦は得るものも多い。

それにしてもストイックすぎる。

「おお、赤石殿。あまり集中しても効率が悪くなる。一休みはどうか?」

と誘ってみるものの。

「うむ。」と思案した後、

「いや、やめておこう。いざ、りさ姉の救出の場面になったときに体が思うように動かぬという後悔だけはしたくなくてな。」

と言って鍛錬を再開した。

俺が何かを言おうとすると機先をとり

「・・・それに、このように体を動かしていなければ、不安に押しつぶされそうでな。」

と珍しく、かすかに笑みを浮かべたのだ。


おお、不安というのは「りさ姉」のことであろうか。

確かに不安であろう。

確実に「りさ姉」を救出できる保証はどこにもないのだ。


そこまで言われると俺も二の句が継げぬ。

黙って赤石の鍛錬を見守るしかない。



次にアオイ殿の日常を見て見る。


赤石と真逆である。

高価な転移のスクロールを惜しげもなく使用し各地を回り、メンドーサ殿の雷獣を使用した通信を行い積極的に各所に連絡をとっている。

とにかくせわしない。

例えばだ。

母国である青の国へ行き国王と補佐役のカイと地上を含めた他国に魔法のスクロールを輸出品として交易するため、その魔法のスクロールの内容、そして数量を打ち合わせして

カイ殿に「まじかよ。こんなにつくるのかよ。」と顔を青くさせ。

青の国の王に「数ある魔法使いの中でも魔法のスクロールを輸出品として考えるのはアオイぐらいのもんだ。」とあきれさせていた。


また、石の国にも行き、青の国と同じようにゴーレムを輸出品として地上と交易するため、ゴーレムの内容、その数量を現場の職人であるファイブ親方と直に打ち合わせした。

その結果、ファイブ親方がその数量に渋い顔をし、その弟子であるキュウが「これは銭になりますなぁ。」と目を光らせ、同じく弟子のシン少年が「こんなに作るのかよー。」とあきれさせていた。


その青の国と石の国の打ち合わせ内容を元に地上に行き、伊藤女史と地底国家群と地上との交易内容を打ち合わせしている。


ちなみに伊藤女史はレンジャーワンを指揮し、帝国からの侵略を防衛し、地底国家の現存を確認。そのまま交易まで進めた功により出世したようだ。

俺には地上の制度はよくわからぬが、一役人から国防と外交を兼ねた長官になったらしい。


それはともかくアオイと打ち合わせした後、伊藤女史は

「OK! 特にゴーレムよ。ドラゴンがきてもけちょんけちょんにする。ゴーレムの制作を急いで頂戴。」

とアオイすらもげんなりするような無茶ぶりをしていた。

ドラゴンを倒すゴーレムの制作とは・・・彼女は何をめざしているのであろうか。気になるところではある。


奔走しているアオイ殿だが、ワーカーホリックという訳でもないようだ。

合間を見て地上のお店に行き喫茶店などをメンドーサと一緒に楽しんでいる。

「この幻のパフェって、幻なのに普通にメニューにのってるのね。」


おお! アオイ殿よ。そこはツッコんではイカン。


最後に山吹殿だ。


彼の日常は赤石殿に似ている。


赤石の日常が鍛錬鍛錬鍛錬であるのに対して山吹殿は研究研究研究研究、時々、ゲームというところであろうか。


明るい雰囲気で人に接する普段の印象と違い、一歩も研究所から出てこない日も珍しくない。かなりのインドア派のようだ。

俺のような男は、部屋にずっと引きこもって何かをやるというのは無理だ。どこかおかしくなりそうだ。

山吹のメンタル的な健康面を心配し「大丈夫か?」と声をかけると

「え? 大丈夫です。今はレンジャーワンなんてやってますけど、本文はリサゼミのゼミ生なんです。研究が本分なんです。りさ教授が戻ってきたときに研究が進んでないとどやされてしまいます。」と言って、研究室に籠った。


「リフレッシュする暇がないであろうに。」

と心配すると。

「大丈夫です! ゲームでリフレッシュできてますから!」


い、いや。それはそれで心配なのだが・・・うーむ。



それは、それとして

「不思議なものだな。」

と改めて思う。


「何がよ。」

振り向くとアオイ殿をはじめとしたレンジャーワンの面々がいた。


「ライオンマン、最近、私達のこと探ってたでしょ。何してんの?」

おお! さすが戦術姫だ。

俺が3人を観察していたのは露見していたらしい。

「いや、不思議なものだなと思ってな。」

「だから、何がよ。」

「俺は強さに興味がある。」

「そんなんわかってる。赤石と同類でしょ。」

俺はアオイの言葉を受け、赤石を見るが、表情はうかがい知れない。

いや、赤石も表情が乏しすぎる。

表情筋も筋トレしてほしいのだが。

「そんで、なぜ私達を探ってたのさ。」

「おお。レンジャーワン。君らは強い。」

「なによ。急に。」

「急にではない。事実を言っている。ドラゴンと幾度となく対戦し撃退している。帝国の精鋭も退けた。もう一度言う。君らは強い。」

「・・・ずいぶんとかってくれるじゃん。で、それと私達のことを探るのはどうつながってくるのさ。」

「君らの強さの一つにチームワークがある。個々でも強い。その強い君たちが常に最適な行動・連携をとるのが強さの元だとみている。しかし・・・。」

「しかし?」

「君たちはチームワークをあまり意識していないように思える。どのようにして君たちの強みであるチームワークが生み出されているのか探ってみたのだが・・・。」

「だが・・・。」

「普段の君たちはチームワークどころか、接点が無いのだな、これは驚いた。」

アオイ達は俺の発言に互いに顔を見る。

今、気づいたという顔だ。

「かといって連携に齟齬があるとか、お互いに足を引っ張り合うとかもない。意見の衝突もない俺は数々のパーティを見てきたが、大なり小なりそういうのがあり、その調整で労力を割く。そのため戦力がかえって下がるときもあるそれがない。実に不思議だ。」

「ライオンマンさんの疑問がわかりました! それはきっとこういうことではないでしょうか?・・・」

と話を聞いていた山吹が話始めたとたん、メンドーサが

「だ、だ、だ、ダンジョン出入口の守備隊から連絡です! 帝国が攻めてきました。」

と慌てて伝えてきた。


ふむ。帝国め。なんとタイミングの悪い。




---from ルカ side---


「はあ、やはり守備兵がいますね。」

僕はつぶやく。

ちょっとうんざりしている。

目の前にゴーレムがいた。

敵はゴーレム生産国である石の国と取引があるから、守備にゴーレムがいるというのは想定内だが、それが4体いるのはうんざりだ。

倒せなくはないが手間である。

「えーっ。嘘っ信じらんない。」

エルフの剣士ルールさんが不平をならす。

その不満もわからなくもない。

確か、数日前の斥候の報告ではゴーレムは1体だったはず。

急に増強されたように思える。

「ラーマが攻めたからかも知れぬな。」

老剣士ミーミルさんがすらりと得物の魔法剣「氷剣」を抜き放ちながら言った。

なるほど、ラーマが攻めてきたので警戒を強めたということなのでしょう。


うんざりしつつも納得できます。


「俺はゴーレムが何体いようと構わん。」

鬼人グランツが上半身をあらわにし、筋肉を盛り上げます。

暑苦しい臨戦態勢ですね。


「儂もグランツ殿に賛成だ。まさか次期四天王を狙う十人衆の地位にいる人材がゴーレムごときで臆病風に吹かれているわけではあるまい。」

そう言って老剣士ミーミルさんが抜き身の「氷剣」を構えながら洞窟を出ます。

「ふん。吹雪っ!」

老剣士ミーミルさんが魔法剣を起動させる「真言」とともに「氷剣」を振るうとゴーレム達が魔法の吹雪に襲われ凍り付きます。


なるほど、ゴーレムと剣では相性が悪いと思いましたが、倒さずとも凍らせて動きをとめればよいという発想ですね。

初めはこの遠征。データが集まってからと思い、あまり乗り気ではありませんでしたが、味方の戦い方を研究するという視点で考えると全く無意味ではなさそうです。


「む。」


ゴーレムがモノアイから光の魔法弾を発射しました。

嘘ですよね。

あんな氷漬けの状態から反撃するなんて!


その反撃を受け、老剣士ミーミルは断末魔を上げる間もなく吹き飛びます。


これはゴーレムの情報を上方修正しなければいけないかもしれません。

氷魔法を受けても動き、頭部のモノアイから光魔法を放ってくる。

かなりの強敵です。


「うげぇ。まじっ。あのジジイ。ゴーレム怒らせるだけ、怒らせといて吹き飛んだじゃん。」

エルフの剣士ルールさんが悪態をつきます。

「ふむ。怖気づいたか小娘。逃げるなら逃げても俺は構わんぞ。」

鬼人グランツはそういうとゴーレムの光魔法を躱し、拳で一撃粉砕しました。

強いっ。

氷魔法で動きを止められていたとはいえ、石人形ゴーレムを一撃ですか。

それともゴーレムの防御力は実はそこまで高くないのでしょうか。


その鬼人グランツ目掛けて残った3体のゴーレムから光魔法の弾丸が発射されました。

うーん。もうちょっと将来の四天王の座を争うライバルである鬼人グランツとゴーレムの動きを研究したかったのですが、仕方ありません。


「glitra!」

僕は魔法を唱えます。


この魔法はいくつか条件がありますが、簡単に言えば魔法を反射する魔法です。

全てではないですが、光魔法なら反射できます。


鬼人グランツを狙った3体のゴーレムの光魔法は反射の魔法にあたり、文字通り反射。

逆に3体のゴーレムのモノアイを破壊しました。


鬼人グランツがゴーレムにむかって駆けます。

そしてもう1体を再び拳で一撃粉砕しました。

どうなってるんでしょうね。この人の拳は。


ともあれ残るは2体。


あれぇ? あれれぇ?


残る2体のゴーレムが倒されていました。

その横にはエルフの剣士ルールの姿がいます。

状況的に剣士ルールが倒したのでしょうけど、いったいどうやって?

「えーもう、めんどいしー。カワイクないしー。埃まみれじゃん。」

当の本人はぶつくさ文句をいっていますが、本当に彼女がこの一瞬でゴーレム2体をたおしたならば、相当の実力です。

しまった。

鬼人グランツに意識を向けすぎていました。

彼女の戦いも記録しないといけませんね。



「うーん。ゴーレム4体でも足止めしかできないか。これは防衛策の根本的な見直しが必要。」

この声に振り向くと、元四天王。青の国の戦術姫アオイが二人の男を引き連れて現れました。

彼女、彼らが噂のレンジャーワンなのでしょう。

その背後にヘドリア配下であったメンドーサ。

デビルフィッシュ様の副官ライオンマン

さらに背後に兵士たちの姿も見えます。


僕達がゴーレムと戦っている間に駆け付けたというところでしょうか。


「ずいぶんきましたね。」

僕は杖を構えます。


「俺は構わん。弱い奴ほど群れる。」

鬼人グランツが低く構え臨戦態勢に入ります。


「ちょっとーっ。私は困るんだけどー。」

エルフの剣士ルールがそう言って、地面に手をかざす。

すると地面から背中にトンボの羽が生えた女剣士(?)が何十名と現れました。

たしかシルフとかいう精霊に近いモンスターです。

かなり存在が希薄なモンスターなのですがここまで実体化させている個体を見るのは初めてです。

このような実体化されたシルフを複数喚べるということは普段はちゃらんぽらんでも十人衆に数えられる実力があるということなのでしょう。

「さらに倍っ! af-kárr adj. atbeini n。」

剣士ルールが魔法を唱えるとその羽の生えた女剣士がどんどん増えていきました。

なんでしょう。この魔法。始めて見ます。

「さあ、いくっ! いくわよー。やっちゃってー。」

エルフの剣士ルールの号令で増殖したシルフが一斉にレンジャーワンに襲い掛かります。

戦闘開始です。


---from aoi side---

「うーん。ゴーレム4体でも足止めしかできないか。これは防衛策の根本的な見直しが必要。」

私は目の前の状況を見て頭を抱える。


あの4体のゴーレムは石の国のゴーレム職人キュウと青の国の元戦士カイの合作。

青の国が得意とする魔法技術をゴーレムに組み込んでみた。・・・なんだけど足止めにしかなっていない。これなら従来品と変わらない。


『ねぇ。お姫様。』

「なによカグヤ。今、目の前に敵がいてめっちゃ忙しいんだけど。」

『ゴーレムは防衛用で運用されるのですよね。』

「んー。運用はそうなんだけど、それだけだとな―。と思ってね。敵を一人でも多く倒さたら楽じゃん。」

『攻撃は最大の防御と地上の書物にも書かれてましたわね。』

「そうそう。」

『それで光の攻撃魔法を組み込んだというわけですわね。』

「・・・なんか引っかかる言い方するじゃん。言いたいことあればいいなさいよ。」

「ほほほ、百戦錬磨の戦術姫に私ごときが意見するなんて烏滸がましいとおもいませんか?」

「・・・(# ゜Д゜)言えっつってんの!」

「いえね。守るためのモンスターなのに守備を強化しないというのはどうかと思いましてね。」

「だから、それは・・」

『はい、はい。攻撃は最大の防御ということですね。ただ・・・。』

「ただ?」

『赤石様の鍛錬を見る機会が多いのですが、一つを極端に鍛えるのではなく、満遍なく地道な基礎力の向上に努めてらっしゃいます。高い基礎力があるからこそ強力な武器も活かせるということなのではないかと考えた次第です。』

「わかった・・・OK。今回は私が間違ってた。一芸だけとびぬけてもダメってことね。攻撃力は光魔法搭載で良いから。次は守備力の強化ね。地の国は材料の鉱物に詳しいから地の国へ相談がよいかな。」

『そうですね。あとは、折角、川の国もお仲間なのです。彼の国の魔力運行技術も取り入れてみてはいかがでしょう。』

「体の中の魔力の流れを良くして、魔法効率をあげるという考え方ね。」

『そうです。お姫様の国とは魔法に対する考え方が違うので抵抗はあるかと思いますが、魔法で動くゴーレムには有用かと。』

「ゴーレムを動かす魔力の流れがよくなると運動性能があがるか・・・試す価値がありそう。」

石の国のゴーレムをベースに

青の国の魔法技術で攻撃力を上げ

地の国の鉱石に関する知識で守備力をあげ

川の国の魔力運行技術で運動能力をあげる。


面白そうだ。


『ところでお姫様。』

「うん?」

『戦闘には参加しなくてもよろしくて?』

「え?」


周りを見ると、もう戦闘が始まっている。

赤石は変身して、敵の一人、鬼人と1対1の勝負をしているし

山吹も変身して錬金スキルと炎の剣レーヴァティンの合わせ技で呼び出した炎のライダー軍団で、敵の一人、エルフの剣士の呼び出したシルフ軍団に対抗している。


ライオンマンもメンドーサもその戦闘に加わっていた。


あれ戦闘してないの私だけ??


「ああーっ。もう! カグヤがいらんこと言うからで遅れちゃったじゃないっ!」

私は慌ててドラウプニルを操作する。

「An armor changes Wodan」の機械音が鳴り響く。

私の体が青い全身スーツにつつまれる。そしてマントのような青藍のパーカーとフレアスカート。鍔の広いとんがり帽子を被り。杖を持った。魔法使い然とした姿と変わる。


「Completion! The magicians・blue」

変身完了の機械音と同時に青い魔法使いに変身した。


私は敵の一団目がけてマジックミサイルの魔法を撃ちだす。


呼応するように敵の一団の中から魔法使いが現れて魔法を唱えます。

「glitra!」

この魔法は・・・「反射」の魔法!


慌てて私は今いる場所から逃げる。

私の放ったマジックミサイルは反射されて、私がいた場所を攻撃した。


あっぶねーっ。

変身して運動能力が上がってなかったら、自分の魔法で自分が倒される間抜けを演じるところだった。


『お姫様。』

「何よ。カグヤ。」

『無様ね。』

「うっさいカグヤっ!」


そんなやりとりをしていたら、相手から魔法弾がとんできました。

「うわっと、と、と。」

慌てて躱します。


ふーっ いけないいけない。

今は、戦場。ここは戦場。

「カグヤっ! アンタのスキル借りるよ。」

『ほほほっ 素直でよろしい。』

「うっさいカグヤっ! 『胡蝶の舞!』」

私がスキルを発動すると魔法の蝶の大軍のカーテンが出現する。

この蝶の大軍のカーテンは魔法を無効化する。


これに触れた敵の魔法使いが第二弾として放った魔法弾は消滅。

ついでに敵のエルフの剣士が呼び出したモンスター軍団も魔法で体を維持していたのか消滅した。


---from ルカ side---


「「は?」」

僕とエルフの剣士ルールは間抜けな声を出しました。


敵のアオイがスキル「胡蝶の舞」を発動させたとたん、エルフの剣士ルールが呼び出したシルフも僕の魔法も打ち消されてしまいました。


自分で放ったマジックミサイルを僕の「反射」の魔法で跳ね返されて慌てていた敵将アオイを見て「なーんだ。元四天王って言っても大したことないなぁ。」と思っていましたが、たった一つのスキル発動で状況がひっくり返ってしまいました。


僕の魔法もルールのシルフの軍団も夢のように消え去りました。

これは打つ手がありません。


目の前には鬼人グランツと戦っている赤い戦士以外の戦士がずらりと並んでます。

あ、これは負けますね。ハイ。

自然とエルフの剣士ルールと目があいました。

これは逃げの一手です。


---from グランド side---

ふん。

俺は右腕をふりかぶり目の前の赤い戦士へ振り下ろす。

鬼人の俺は2mを超える。

対する赤い戦士も人間にしては背が高いが、せいぜい170㎝か180㎝程度であろう。

どうしても俺のパンチは振り下ろしになる。

俺のパンチは自分が言うのもなんだが並ではない。

ゴーレムですら一撃で破壊する。

その一撃を目の前の赤い戦士は丸い盾を上手に使い衝撃を逃がし、するりと俺の懐に入る。

「吐―っ!」

赤い戦士の掌底の一撃が俺のガラ空きの脇腹に入る。

くっ。なんと重い一撃だ。

俺は気が付くと膝をついていた。


なんだこいつは。

俺は片膝をつきながら、目の前の赤い戦士を睨む。

技術が違う。この技術を習得するまでにどれだけの鍛錬や実践を積んだのだろう。

そう思わせるに十分な「技」だ。

なんというか人間離れしている。

まるで何かの物語のヒーローだ。

だが!

俺も次期四天王を狙う十人衆の一人。

ここで折れるわけにはいかぬ。


ふと周りを見ると不思議な蝶の大軍が戦場を覆っていた。

その蝶に触れるとエルフの剣士ルールが呼び出したモンスター、シルフが消滅していく。


あの蝶の軍団は聞いたことがある。

元四天王アオイの副官カグヤのスキルでその蝶に触れると魔法が消滅するというものだったはず。それをアオイが使っているのか。


ふむ。あのシルフは元々は存在が希薄なモンスターだ。それを魔法力で実体化させている。逆に言えば魔法力が無くなれば消滅する。

ならば、あの魔法を消滅させる蝶は天敵のようなものであろう。


一斉に俺達の軍勢は消え、俺とエルフの剣士ルール。魔術師ルカの3人だけになる。


それどころかエルフの剣士ルール。魔術師ルカも逃げる算段をしているようだ。

まあ、わからなくもない。

魔法を主力とする二人ではこの魔法を消滅させる大量の蝶が飛び回る空間で活躍することは難しいだろう。


逃げるなら逃げろ。

それはそれで構わん。

俺は俺一人で俺の力を試しにきたのだ。


この程度の逆境。

力でねじ伏せる。


俺は魔法の巻物スクロールを取り出す

「Fimbul!Jǫtunn!Fimbul!draca!Fimbul!Óscópnir!sœkja!  fé!」

慣れぬ口調で呪文の詠唱を唱える。


俺の封印が解ける。


俺の体が元に戻る。


同時に視線がぐんぐん上に上がる。


赤い戦士が豆粒のように見える。


そう、本来の20mを超える巨大な鬼の姿に俺は戻った。

普段は移動やら生活に支障が出るため、魔法で人と同じ大きさにしているが、これが俺の生来の姿だ。


さあ、赤い戦士よ。

いかに修練を積んだ技術をもってしてもこの体格差はどうしようもあるまい。

文字通り力で粉砕してくれる。


---from 赤石 side---


「ぬう。」

我は目の前の戦士を見る。

剛腕の強敵である

その剛腕

当たれば負けるという緊張感を強いられる。

ライオンマンやデビルフィッシュと相対する時とは違う緊張感である。


うむ。悪くない。


我は盾でいなすと懐に入り、得意の片手突きを横腹に突き入れる。

変身で強化されている状態で、この突きを放つと大抵の敵は吹き飛ぶのであるが、この強敵は片膝を地についただけである。


うむ。頑丈である。


我は少し距離をとる。


このまま締め技に移行し意識を落としてもよいが、地底の人々は我らの常識が通じぬ。距離を取った方が安全であろう。


ところがそれが裏目にでたらしい。

目の前の戦士は魔法の巻物スクロールを取り出し呪文を唱えた。

これは知っている。

人化魔法解除の魔法である。

見る間に目の前の戦士は巨人と化した。


ぬう。慎重すぎたか・・・理不尽な事か。


いたしかたない。

「来るがよい。我が眷属 シアルフ!」

我は眷属を呼ぶ。


我の足元に巨大な魔法陣が展開。

その魔法陣からせりあげるのは30mもある巨大な真紅のフルアーマー

その巨大なフルアーマーと我は同化する。


「ぬう。」

我は逡巡する。

同じく巨大化で戦おうと思いシアルフを呼んだが

目の前の戦士がシアルフより背が低いのである。


これでは体格的に同格の戦いとはならぬ。


相手の戦士が剛腕パンチを放つ。

ぬう。巨大化する前と戦い方が変わらぬ。

もっと純粋な格闘戦を楽しみたかったが仕方あるまい。


我は殴りかかってきた腕を取り、脇固めに移行。

腕関節を極めたまま倒れこむ。


「ぐあああああああっ!」

間接を極められた痛みで敵の戦士が悲鳴をあげる。


うむ。帝国との戦いで思うのだが、ライオンマンやデビルフィッシュといった一部の例外を除き、このような関節技に脆いように思える。


そのグラウンド体制のまま相手の背後に回り

「吐―っ!」

相手の後頭部を掌底で叩き潰した。



---from アオイ side---


「おお!相変わらずの強さであるな。」

ライオンマンが戦い終わった私達を称賛する。


「うむ。」

「当然っ!」

「ありがとうございます!」


私達レンジャーワンの面々は各々の言葉でライオンマンの讃辞に答える。


「そ・れ・で、アンタの目的は達せたの?」

アオイが近づいて問う。

「目的とな?」

「私達の強さを調べてたじゃない。」

「おお!そのことか。うむ、おかげで理解できた。」

「原因は何? 私も興味ある。」

「あ、そんなこと調べていたんですね。僕も気になります。」

「うむ。」

山吹も話にのっかってきた。赤石はわかりづらいが視線を見るに興味はあるのだろう。

「レンジャーワンの強さの秘訣。チームワークの要は・・・。」

おい、ずいぶん引っ張るな。

たのしんでるなこいつは

「目的と役割が明確なのだ。だから強い。」

ライオンマンから返ってきたのは意外な答え。


でも、私にはその答えで十分。理解できる


役割は確かに明確だ。

赤石は格闘戦専門。だから敵の大将のところにむかっていって格闘戦をする。

山吹は一時期、格闘戦の真似事をしていたことがあったけど、今はあまり自ら前線に出ずスキーズの大砲や、炎のバイク軍団で敵の雑魚を一掃することに徹している。

私は中距離から魔法弾を撃ち、赤石や山吹のフォローするだけ


目的もそうだろう。

りさ教授救出。これだけ

このほかに自らの利益も何も求めていない。


『あら、お姫様。アンタはちがうでしょう。』

カグヤがちゃちゃをいれる。


確かに違っていた。

私は帝国にいると倒されるという予言を見て死にたくないと思ったから『地上』側にいる。

さらに踏み込んで言うなら・・・祖国を帝国に奪われたまま死ねないと思ったからだ。


でも、両方ともその願いはかなっている。

私は今、『地上』側のメンバー。『地上側のメンバー』になっている私は予言通りにはならない。そして『地上』のみんなのお陰で青の国を取り戻すことができた。パパ、ママにも会えた。

それなら・・・

「恩は返さなくっちゃね。」

私はカグヤにそう言った。

【次回予告】

半数近くを失った十人衆。

次の相手は? そしてアオイに危機が迫る。


次週、episode34 クライシス

毎週 日曜日 9時30分 更新

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