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episode27 石碑

---from akaishi side---

「我が国はなぜ、地の国と呼ばれているか知っているかね?」

地の国の王にこのように尋ねられたがわかるはずもない。

答えは「いいえ。」一択である。


なぜ、このような質問を我は地の国の王から受けているのか?

それは王が我々に帝国軍撃退の褒美を与えたいと申し出たからである。


特に褒美目当てではなかったので断ろうとした。が

「為政者という立場からすると無償の善意ほど怖いものはないのじゃよ。」

と言われてしまった。


むう。我は若輩者にてそういう事には疎いのだが、そういうモノなのであろうな。


そこで褒美は何かという話しになった。

地の国の貨幣をもらっても我らには意味はない。


そこで山吹は魔石を定期的に供給してもらうことを提案した。

ふむ。

リサ姉の研究所が崩落し、帝国との戦いが始まったあと、地上への魔石の供給は難しくなっている。魔石は新エネルギーとして、研究材料として地上で需要がある。

山吹の提案は的を得ているであろう。


地の国の王も大筋で合意し、交渉の末、褒美として半年の魔石無償提供を受けることになった。


地上の伊藤女史は魔石が半年とはいえ無料で手に入るのだ。

喜んでいるであろう。


それで話は終わりかと思いきや地の国の王は我とアオイにも褒美を与えたいという。

「怖いではないか。」

という。

ふむ。優柔不断の王は決定までは長いが、一度決めたらやりきるタイプらしい。

アオイは一振りの剣を貰った。

後で聞いたら特に理由はないが地の国の王の気持ちもわかるので、地の国の王が与えやすいものにしたという。

「地の国を帝国の支配から救った地上の英雄には剣がふさわしいでしょ。」

とアオイは言った。


うむ。地上では銃刀法違反になるので気を付けてもらいたいものである。


そして我はリサ姉が探していた「石碑」なるものを知っていないか尋ねた。

地の国の王は我に事情を聴いた後、しばらくの間沈黙していた。


彼の王の「しばらく」はどのくらいの長さなのかは察していただくしかあるまい。


そして冒頭の質問をしたのである。


我は地の国の王の冒頭の質問に「ない。」と答えた。

「うむ。我らは地底に住んでおる。その地底の研究が盛んなのじゃ。それで地の国と呼ばれておる」

うむ。話の先が読めぬ。

頷き、話の先を促す。

「のう。この地底全体。不思議とは思わぬか? 魔石という魔力を発する石を算出する。我らやモンスターなど多種の生物が生息する。中でも不思議なのが守護者と守護者の卵よ。どちらも生命を吸い込み別なモノに変えてしまう。このような化け物は地上にもいないのではないか?」


我は王の話をききながらヘドリアの副官 ダルを最後を思い出す。

ダルは守護者の卵に吸い込まれた。

その後、守護者の卵は変化しダルを姿をとった。

あの原石が変化したダルは確かに「別なモノ」であった。


地の国の王は話を続ける。


「のう。なぜあの化け物は守護者と呼ばれているか知っておるか?」


知るすべものない。

我はかぶりを振る。


「あの守護者や守護者の卵は普通に生活するだけでは滅多に会えぬし見つけれぬのよ。ただし、ダンジョン自体を壊そうとすると出てくる。壁を破壊するとかな。つまりはダンジョンの「守護者」なんじゃ。」


ふむ。確かに。

我は崩落した施設に残されていた研究成果のレポートを思い返す。

リサ姉は崩落した施設からの脱出を試みている。

それも通常の方法ではなく土の魔石を活用してダンジョン内に通路をつくるという発想をもって脱出を進めていた形跡がある。


そのレポートには守護者の卵とモンスターを組み合わせて土の魔石の作成に成功したということも書いてあった。


つまりは・・・

リサ姉は脱出や研究のためにダンジョンの理を破り、ダンジョンを守る守護者に囚われた。

ということか?


「うーん。まるで守護者って白血球ですね!」

む。

一緒に話を聞いていた山吹が発言した。

「どういう事よ?」

同じく一緒に話を聞いていたアオイが山吹に尋ねる。

「仮にこの魔石の洞窟の通路が血管だとして、その血管の壁を破壊しようとする異物を取り込んでしまう。まさに白血球の働きじゃないですか。」

「なに? アタシ達はダンジョンを壊すバイ菌ってこと?」

「うーん。今までやってきたことを振り返ると否定できないかもしれませんよ。」


アオイと山吹の話を聞いて我は眉を顰める

リサ姉はダンジョンにとってバイ菌だったのか?

それで守護者に囚われてしまったのか?


複雑である。


「えー。うぉっほん。話を続けてよろしいかな?」

地の国の王が我らを見渡す。


我らは肯定した。


「いずれにせよ守護者はこの地底を文字通り守護しておる。そこでじゃ。先程、我ら地の国は地底を研究していると言ったことは覚えておるか?」


我は頷く。


「その研究の中でな。守護者や守護者の卵に飲み込まれ、守護者や守護者の卵に魅入られてしまったかのように変質してしまったものの研究もしておってな。その研究の成果の一つにお主が言う「石碑」がある。」



やっとだ。やっとリサ姉が望む「石碑」の情報を見つけた。

リサ姉は「石碑が並んでいる場所を教えろ」と言っていたな。


「それはどこに?」

我は端的に地の国の王に聞く。


地の国の王は我を見る。


長い、沈黙が訪れる。


「・・・帝国に奪われたよ。」


「む。」

帝国にだと? 


我はアオイと山吹と顔を合わせる。


「どうも帝国はそれが欲しくて我が国に攻め込み占領したと思われる行動が節々に見えてな。その石碑の部屋ごと持って行ったのよ。」


「ちょっと、その石碑ってなんなのさ?」

アオイが口をはさむ。


「・・・詳しくはわからんのだ。」

「ちょっと待ってよ。アンタの国で研究してたんでしょ。わからんはずないじゃない。」

地の国の王は目をしばたいた後、長い沈黙した。

そして口を開く


「・・・研究員もレポート、報告書の控えも帝国に根こそぎ奪われたのでな。途中経過しかわからん。その途中経過を今、思い出していたのだが、確か、守護者や守護者の卵のメカニズム・仕組みに関わるものであったはずだ。」


「仕組み? 詳しくは思い出せぬか?」


「ふむ。守護者は生命を飲み込むときに何かを取り出し、その取り出した隙間に何かを入れるらしい。その取り出したものを洞窟内の情報を集めて具現化させることに成功した。そのような研究だったと覚えている。」


「何かを取り出し、何かを入れる?」

我は眉を顰める。


仮に・・・仮にだ。


リサ姉が帝国の隙を狙って研究所を脱出したときに、土の魔石を活用したダンジョンの壁や天井を掘り進む。脱出手段を使ったとしよう。

土の魔石があれば土魔法と同じことができるらしい。ダンジョンの壁や天井を掘り進むこともできるらしい。

実際に研究所内に残されていたリサ姉のレポートにも書かれていたので出来るのであろう。


壁や天井を破壊し、脱出を図るリサ姉の前に守護者が現れるというのは今の話を聞く限りありえるであろう。


または天井や壁を掘り進むうちに守護者の卵も掘り起こすという事も十分ありうるであろう。


地の王が言う今の話によれば、守護者は通常のルート以外に出没するし、守護者の卵も通常ルート以外に出現する。

帝国軍やモンスターとの遭遇を嫌ったリサ姉が研究所から地上に脱出するにあたって、通常ルート以外を通ったことは考えられる。


では、その結果どうなったか?

考えたくはない。


非常に考えたくはないが、リサ姉たちはダルのように吸い込まれ変質させられた。


そして・・・


何かを奪われ、何かを入れられた?


だから、会うのを避けている??


我はSNSを見る。

そこにリサ姉からのメッセージがかかれている。


この文面からは「いつものリサ姉」の調子で書かれている。


しかし、おかしいのではないか?


そもそも脱出失敗し、守護者に囚われ、変質させられた人間がいくらリサ姉とはいえ、通常通りのメンタルでいられるのであろうか?


このSNSに記載しているリサ姉は・・・


「うぉっほん。」

王の咳払いで思考から意識が戻る。


「それでな、その石碑はな。取り出された何かを洞窟内に点在する情報から抽出したものである。というところまでは記憶に残っておる。」


ぬ。

それならば合点がいく。


リサ姉はSNSで石碑の場所を欲していた。

その理由がいままでわからなかったが、取り出された自分の一部を取り戻そうとしているのであれば、理屈はあう。


そして、そうなると我がすべき行動は一つである。

「石碑は帝国にあるのだな。」

我は地の国の王に念を押す。

「うむ。帝国に石碑を抽出するための部屋ごと持っていかれたからの。じゃから褒美に「石碑」をわたすことは不可能なのじゃ。」

「いや、我が欲したのは「石碑の場所」である。その情報だけで褒美としては十分である。」

我はそう言って踵を返す。


次の目標は定まった。


帝国に行き、リサ姉の一部である石碑を取り戻し、その石碑をもってリサ姉にあう。

そしてリサ姉を地上へ戻す。


これのみである。


---from Titan side---

「あぁん。するってぇと何だぁ? 地上の勇者どもは地の国をあわせた四か国を手に入れたってことかぁ?」

俺はプロミネンスの報告に苛立った声をあげる。

「御意・・・青の国、川の国、石の国。そして今回の地の国ですな。順調に勢力を伸ばしておりますな。」


「ちっ。」

俺は舌打ちした。


多少苛立っているのには訳がある。

俺が占領しているのは帝都だ。


俺が反旗を翻すまでの間、地底国家群を統一した首都だけあって、様々な人種がいやがる。

まあ、それはいい。

今は俺の国だ。

俺の国に多数の人種が集まっているというのはすげぇことじゃねぇか。


俺を苛立たせるのはその多数の人種の中に多数の評論家がいるってぇことだ。

逃げ遅れて子の帝都にとどまっている帝国貴族。マスコミ。最近では帝都の治安を維持するための騎士どもまでもが夜の飲み屋で評論してるらしい。


しかも、その評論の論調がイラっとしやがる。


「帝国四天王最強は誰だ」

という評論だ。


帝国兵を率いるデビルフィッシュ

楽園「地上」の勇者を率いるアオイ


そしてレジスタンス率いる俺


さあ誰が最強か?


という構図で論評してやがる。


特に地上の

勇者の一人がアオイであると世のなかに知れ渡ったあたりから、そんな世論になってきたな。

そりゃそうか。行方不明になったと思われた四天王アオイが地上の勇者と一緒に祖国を取り戻したんだ。

話題になるわな。


俺も驚いた。生きてたんだな。あいつ。


ていうか、この構図だと俺はレジスタンスを率いていることになってやがるが、あんな弱卒なんぞ率いてねぇし、かってについてきただけだ。

しかも、帝国に滅ぼされた貴族どもで構成されてるだけあって弱ぇ。

役にたたねぇ。


あんなの率いてると思われてると思われてるなんざぁ俺の沽券にかかわる。


さらには今のところアオイの評価が高くなってやがる。

四か国を取り返しているからな。


アオイが四天王最強か?

なんて噂もでているらしい。


あいつは昔からそうだ。

個人ではそこまで強くねぇくせに。きっちりやるべきことをやってきやがる。


ジョーダンじゃねぇ。

俺があいつの下なんざ許されることじゃねぇ。


ここらで、ちょいとお灸をすえてやろうじゃねぇか。


「おい、プロミネンス、ライト、ファイア!」

俺は信頼する奴らに声をかけた。



---from Grand Chancellor Ymir side---  


「目障りですな。」

まったく目障りというものです。

タイタンはともかくとしてアオイまで背くとは。


それにしてもあの娘。

上手くやったものです。


地上偵察任務を利用し「地上」の戦力を味方につけ

自分自身は「行方不明」を偽装


その後、状況を見て地上の戦力とともに祖国である青の国を開放。


そこで正体を隠す必要がなくなったのか、その後は堂々と正体を気にせず活動し、川の国、石の国、地の国を帝国からの解放を大義名分に勢力下に収めておりますな。


さすがが青の国が誇る戦術姫といったところでしょうか。

みごとに結果を残しますな。


それに比べ

和平交渉からの地の国開放を狙ったヘドリアは迂遠過ぎますなぁ。

直接、暴力に訴えたタイタンは帝都を鮮やかに奪った後、祖国解放どころか息切れし身動きできなくなってますし。

レジスタンスは論外でしょうな。ただスローガンをかかげるだけで、何もできずにタイタンにくっついてまわっている。


帝国からの祖国解放という目的を見事に達してますな。


それだけに・・・


「目障りですな。」


「おい、おい宰相。何かするつもりかい?」

帝王が笑いながら私の憤懣に答えます。相変わらず目は笑ってはおりませぬが。

「宰相。できれば今はそっとしてほしいな。僕は今ハートブレイクなんだ。愛しの諸兄にあえたというのに振られちゃったからね。」

帝王はそういって肩をすくめました。


軽い感じで話されてますが、その落胆は想像を絶するでしょう。

そこためにこそすべての準備をしてきたのですから。


「強引にはできぬのですか? ここには地の国から奪った彼らの一部があります。一緒に出なければこれを壊すぞと言えば・・・」

私は目の前に並ぶ石碑を見ながら進言しようとしましたが、とたんに強烈な殺気をあてられました。

帝王様の殺気です。

出過ぎた進言をし過ぎたのかもしれません。

「失礼いたしました。」

私はあわてて引き下がります。


そうですな。かのお三方は帝王様が望まれた方。彼らを傷つけるなど微塵たりとも考えてはいかぬことでした。


「素直にアオイ嬢の仕事ぶりをたたえようよ。僕は囚われの諸兄を解放してあげることができなかった。彼女は囚われの祖国と両親を開放した。彼女は僕にできなかったことを成し遂げたんだ。」


「なんと、寛大な。・・・しかし、おそれながら我が帝国最大の研究成果をもたらし続けているホノカ様を呪い返しで害し、ゴーレム産業を持つ石の国。そしてこの石碑の秘密を知っている地の国まで勢力を広げている状態は看過できませぬ。」

「はははっ。宰相は僕達と一緒に逃げてきた帝国貴族の訴えに悩まされているからね。帝国貴族がメイドや執事。単純労働力替わりに便利なゴーレムの供給が途絶えたことで煩いのだろう? まあ、宰相のいうこともわかるよ。この石碑の秘密を握る地の国にまで勢力を伸ばしたのはいささかやりすぎだね。」


「! では・・・。」

「で・も・だ。どうするんだい。デビルフィッシュも負けたそうじゃないか。まあ当然だけどね諸兄の加護を得ているのだからね。1対1ならまだしも諸兄の加護を受けた3人相手ではデビルフィッシュも難しかろう。同情するよ。」

「デビルフィッシュ殿はまだまだ強くなります。彼は神になることが願いです。いっそ神になってもらいましょう。」

「・・・彼は二つの顔を持っている。正義の赤い顔と悪魔の黒い顔。その二つがきれいに融合された時こそ善悪を超越した神になる。そう信じているそうじゃないか。」

「・・・ええ、ですからホノカ様の遺した研究データを元にその融合のお手伝いをしたいと思います。」

「うーん。その方法だと確かに神の戦闘力を得ることは可能だと思うけどね。それで誕生するのは真正の神ではなく邪神だよ。」

「彼はそれでよろしいのではないでしょうか? 彼の願いは神のごとき強さなので。あの蛸の化け物が帝王様やあのお三方の域まで上り詰めようとはそもそも烏滸がましいのです。」

「ふーん。まあ任せるけど。けっこう時間はかかると思うよ。その間、放置かい? さきほどまでの宰相は今すぐにでも何とかしたいという雰囲気だったけど。」

「そうですなぁ。しばらくはこれ以上勢力を拡大しないように嫌がらせで新兵を送りますか・・・思わぬ人材が出てくるかもしれませぬ。」

「それなのであれば宰相一つお願いがあるんだ。」

「なんでしょうか?」

「前回は一度に諸兄3人にお会いしたから難しかったと思うんだ。一人ひとりを説得して回るのはどうかと思ってね。」

「なるほど、新兵を送ると同時に彼らをレンジャーワンを一人ひとり孤立させることができるかどうか?できるとしたらどのタイミングか?探りましょう。」

「さすがは宰相。話が早くて助かるよ。」


さて、どのように嫌がらせしましょうかな?



---from Mendoza side--- 

えっ・・・・ええっ・・・こんなたくさん。

あ、ああああーっ

い、いや、こ、こんな・・・受け止めきれないかも・・・た、大変っ


私は各国にちらばっている雷獣の報告を受けて慌てた。

地の国に帝国の新手が

青の国にタイタン軍のプロミネンス、ライト、ファイアが攻めてきたのです。


いままでこんなことはありませんでした。


ですから転移のスクロールで順次、撃破できたのですが、同時に攻めてきたりはしませんでした。


地上の勇者達の力は絶大です。


神と等しき力を持つといわれるドラゴンすら一撃で倒します。

でも、その力は3人そろって発揮されます。


そう、彼らの弱点は3人しかいないということです。


そう、対応できるのは一か所だけなのです。


多方面から来られた場合、受け止めきれません。


青の国、地の国どちらかを捨てることになります。

ど、ど、どーしたらいいのでしょう。


私ではまったくわかりません。


「た、た、大変です。」

私はあわててレンジャーワンの元に走りました。




---from aoi side---

「なるほどねぇ。」

アタシはメンドーサからの報告を受けて思案する。

こういう時に司令官が動揺するのは悪手だと魔法兵隊長時代に嫌というほど思い知ら背れている。


目の前には報告をくれたメンドーサに赤石、山吹、そしてライオンマン、地の国の王もいる。


敵はすでに攻めてきている。

すばやく戦術を決める必要がある。


まず、ライオンマンは地の国に残り帝国にあたってもらう。プロミネンスの魔法と相性が悪すぎる。

それに目の前に地の国の王がいる。

地の国を捨てるという戦術は一時的にでもない。


では、青の国は?

青の国の第一王女であるアタシが青の国を見捨てたとなると今後、難しくなるだろう


「アタシが青の国へ転移のスクロールで行く。赤石、山吹、ライオンマン、メンドーサこの国を頼んだ。」


アタシは決断し伝えた。


「ぬう。それは・・・」

赤石が何かいいかけたが、そんなの聞いている時間はない。

このような場合は迅速がいい。


ただ、一言。

「すぐに終わらせて助けに来てくれるんでしょ。」

そう言って赤石の分厚い胸板を叩く。


赤石は少し面食らった表情をした後、

「当然。」

と言った。


アタシはそれをみて笑い転移のスクロールで「青の国」へ跳んだ。


※※※※※※※※※※




「なんだこりゃぁ」

青の国を見たアタシは頭を抱えた。


この地底国家群での戦いは防衛側が有利というのが常識。

なぜなら国家間を繋ぐダンジョンは狭く軍隊の移動に適さない。


つまりダンジョンの入り口で待ち構えていれば、常に少数の攻め手としか戦わないことになるので防衛側が有利なはずなんだ。


それがどうだろう。

帝国軍に展開されている。


なぜか?


理由は目の前にいた。


タイタンの3人の部下、プロミネンス、ライト、ファイアがそれぞれレッドドラゴンに騎乗していた。


さすがにおそらく帝国の必勝方法。

人化魔法でレッドドラゴンを人サイズにしてダンジョンを移動。

出たところで人化魔法を解除したのだろう。


さすがにレッドドラゴン相手では青の国の兵の実力では戦えない。

しかも、それが3体。


ドクン。


やめろ。

青の国が敗れた日がフラッシュバックする。


あの時ですらレッドドラゴン1体だった。



アタシはプロミネンスを睨む。

あいつ、人化魔法のスクロールをもっていたっけ。

ライオンマンの件といい、タイタン軍の中で最も厄介なのはあいつか。


「これは、元四天王アオイ様ですな。レッドドラゴン3体相手にどのような立ち回りを見せていただけるのか、四天王の実力見せていただきたいですな。」


プロミネンスが邪悪な笑みを見せた。



---from Misscrow side---


「おいっ。この戦いに勝てば四天王にしてくれるってのは本当なのか。」

目の前の指揮官。キングゴブリンのサンバが唾を飛ばしながら私に尋ねる。

「・・・宰相様はそうおっしゃられた。」

私は唾をハンカチで拭いながら答える。そのハンカチはその場に投げ捨てた。

「はっはっはー。ついに宰相様もこのゴブリンの王の力を理解したのだな。」

私は何も答えないどう見てもデビルフィッシュ様をはじめタイタン様、ヘドリア様、アオイ様と渡り合えるような実力があるようには思えない。


まあ、対する地の国もそこまでの実力はない。

国を守りたければダンジョンの出入り口を抑えればよいのに、その基本すら出来ていない相手だ。


いや、一応は門番をおいて守りを固めていたが、あまりの弱兵でサンバ一人で対応できてしまった。逆に敵の罠ではないかと疑ったほどだ。

お陰で容易に地の国に攻め込むことができた。


まあ、レンジャーワンには敗れるであろうが所詮は嫌がらせ。

ちょっとでも隙を見せると地の国がとられると思われることが重要。


「・・・期待している。」

期待を込めずに私が言うと真に受け取ったか、

「はっはっはー。このゴブリン王が見事、四天王になった暁には副官にしてやるよ。アンタはスタイルもよいし、いろいろ使ってやるぜ。」


・・・なんというか。

始めてですね。こんなに早くレンジャーワンに倒されたらいいのにと思った将軍は。


「!」

その時、私のスキル【直観】が働きます。

私は直観に従い空へ飛び立ちます。

地面が発光しました。

よくみたら、魔法陣が地面に描かれています。

その魔法陣が発光しています。


「・・・トラップ型か。」

なるほど、地底国家群の防衛の定番はダンジョンの入り口で迎え撃つことです。

地の国は間抜けにも出入口を抑えていないように見受けられましたが、それは違ったようです。

ちゃんと 迎え撃つ定番の方法はとっていたようです。

それが兵士ではなくトラップ型魔法陣だったということでしょうね。


魔法陣に電撃が走ります。

サンバ率いるゴブリン軍団がその電撃で倒れます。

サンバは王を名乗るだけありますね、一応、生き残っています。


それにしても電撃魔法ですか。

となると使い手は・・・

「・・・メンドーサ。」

私がつぶやくとメンドーサが現れました。

なるほど、彼女はヘドリア様の副官。ヘドリアに常に仕えた地の国の将。

まずは彼女が地の国を守るのは筋道でしょうね。


「ぬああ。痛い。痛いじゃないかっ! 小娘っ。このゴブリン王の配下を倒し、この王を傷つけるとはっ! その罪、死すら生ぬるい。捕らえた後、ぎたぎたに蹂躙してくれるわ!」

サンバがメンドーサにむかって突撃します。


「basta!」

メンドーサが捕縛の魔法を唱えます。


「うぉっ。」

突撃中に捕縛の魔法を受けたサンバは勢い余って地面に転がります。


「おお。残念ながらお主にかまっている時間はないのだ。」

そういうなり、岩の陰から獅子の顔をした裸の魔物が現れます。

「・・・チッ、ライオンマンか。」

ライオンマンは地の転がったゴブリン王サンバを無理やり立たせると爪で幾度も切り裂き、瀕死になったサンバの両腕をクラッチして締め上げ、そのままの体勢でサンバの巨体を持ち上げそり投げでぶん投げました。

ライオンマン得意の人間風車という投げ技です。

サンバはきりもみ状に回転しながら後方に吹き飛びます。。


そこにいたのはレンジャーワンのレッド


「ぬおおおおおッ。」

彼が腰を捻転。腕を鞭のように広げ体に巻き付けます。

「吐ーッ!」

捻転を戻すと同時に高速で 掌底を敵にむかって突きを放ちます。

速射で繰り出される片手突きと同時に『Mjollnir hamme』という機械音と電撃が走り、その電撃がきりもみ状に回転しながら吹き飛んでいるサンバを貫きます。


あれではさすがのタフネスを誇るゴブリン王も耐えることは無理でしょう。

倒されてしまいました。


「おお! 偉大なるデビルフィッシュ様に仕えるミスクロウではないか。久しぶりに俺と勝負するか。」

ライオンマンが満面の笑みを浮かべて近づきます。


「・・・冗談ではない。」


彼が得意なのは接近しての投げ技です。

何を好き好んで全裸が標準の変態と組み合わなければならないのでしょうか?


「つれないのう。」

ライオンマンは心底残念そうに言います。

この変態。格闘バカめ。


「戦う」という願いのためなら敵にすらなるという彼の気持ちが全く理解できません。

デビルフィッシュ様は理解できるのか容認しているようですが。

それに四天王付きの副官である私達は本来帝国に逆らえないはずなのに・・・


「・・・私には貴方が理解できない。」

「おお。どういうことだ? 強いものと戦いたい。競いたいとは思わぬか?」

「・・・そのために大切なモノをなくしても?」

私の問いにライオンマンは珍しく真剣な表情で考えました。

「ミスクロウよ。」

「・・・何?」

「何が大切なものは自分自身が決めるのだ。他人が決めるものではない。」


・・・。


私は転移のスクロールを広げます。

「おお、どうした? もう戻るのか。」

「・・・白けました。」

私はそう言って転移のスクロールを使い戦場を去りました。


---from aoi side---


「あー。えーと。どういうこと?」

アタシは吹き飛ばされた3体のレッドドラゴンを見て途方にくれる。


「なんで、助けに来たのにそんなにジト目になってるんですか。」

山吹が抗議している。

「いやあ。だってさあ。青の国はアタシの国なのよ。」

「はい。」

「アタシが責任をもって守り通す責任がある。あ、もちろん、一人でやるって意味じゃないよ。アタシは赤石と違うからね。地の国で戦っているみんなが来るまでの時間稼ぎぐらいはできるって意味。一応、元帝国最高戦力、四天王の一人だからね。」

「はい。でもドラゴン3匹は相当きついのではないでしょうか?」

「相当なんてもんじゃないよ。キツイメーター振り切ってるよ。レッドドラゴン1体で青の国は負けちゃったんだからね。それを3体なんて無理を突破してるから。」

「ですよねー。」

「でも、みんながすぐに地の国に来た敵を片付けて来ると信じて時間稼ぎで粘りに粘ってやるって覚悟決めた・・・のに、なんなのこれは! ドラゴン全部倒れちゃってるじゃん。」

「いやあ。なんといいますか。僕もビックリしてます。まさか『ドラゴンブレス』のスキルがこんなに強いなんて。」

「強いなんてもんじゃないじゃない。アンタが呼び出したスキーズが大砲からドラゴンブレスを放ったら敵のドラゴン3体倒しちゃったじゃない。アタシの覚悟返してよ!」

「ええーっ。それは理不尽ですよ。」

「うっさい。それにしても「ドラゴンブレス」のスキルだけじゃこういかなかったでしょうね。スキーズとの相乗効果でしょうね。大砲が最大5門あるから、5発撃てるし、連発も可能ときている。スキーズだけでドラゴン倒せるようになってる。」

「ええ、ある意味当初の目的は達成してます。ドラゴンブレスのスキル取得は単体でドラゴンと戦えるという事でしたから。ただ、僕はもう魔力ないので戦えないですけどね。」

「そうか。そうだよね。ドラゴンを倒すだけの威力をもったスキルが無償なわけないか。そ・れ・よ・り・も。なんでアンタこっちの戦場にきてるのさ。当初の作戦じゃ。地の国にいて、集中戦力で短期で戦闘を終了させて、その後、青の国に集まるっていう戦力集中を崩さない作戦だったじゃない。アンタがこちらにきたら、戦力集中どころか戦力分散になってるんだけど。」

「みんな、アオイちゃんのこと心配だったんですよ。だから、みんな合意のもと僕がきました。結果的に戦力分散だとろうと何だろうと勝利条件を満たせばクリアですよ。」

「・・・勝利条件ってなにさ?」

「みんなが無事でいる事。一人として欠けたらそれは僕達にとって勝利じゃないんですよ。」


・・・へえ。そんな勝利条件考えたこともなかった。

山吹、そんなこと考えてるんだ。


「お、おのれぇ。」

アタシ達がその声に驚き振り向くと倒されたレッドドラゴンの陰からプロミネンス、ライト、ファイア達、タイタンの部下が出てきた。


なるほど、彼らは運良いのかどうかはともかく、生き延びたらしい。

大怪我はしてるけどね。


「どうする? まだやる?」

アタシはプロミネンス、ライト、ファイア達に向けて殺気を放つ。


正直、めっちゃ覚悟を決めたのに、何もすることなく戦闘が終わって不完全燃焼。

こいつらぶっ飛ばしておきたい衝動に駆られる。

『八つ当たりですね。彼らもかわいそうに。』

今まで沈黙していたカグヤがツッコミを入れる。

「うっさい。」

『こういう時、赤石様はなんとおっしゃってましたかしら。そうそう、何と理不尽なことか!でしたわね。その理不尽な状況を自分でつくるのはどうかと思いますが。』


「しょうがないじゃん。レッドドラゴン3体。それこそ何と理不尽な事か!じゃない。タイタンは何考えてるの、ほぼタイタン自身が参加してないだけで全戦力じゃない。」

『はあ・・・タイタン様はあなたと同じ戦術家なのですわ。だから帝都襲撃も成功させました。今回も戦術の基本。戦力集中なのではないでしょうか?』

「なに? アタシの戦術が今回はタイタンに敗れたってこと?」

『ようやく気付きましたか! はい、そのとおりですわ。』

こんにゃろ。実態があれば一発ぶん殴っているところだ。


「・・・撤退します。」

何か言いたそうなライト、ファイアを抑えてプロミネンスが転移のスクロールを使用し撤退した。


アイツが一番厄介だな。

地道にコツコツ目的のために努力していくやつ。

ああいうタイプが最後の勝利を手にするんじゃないかな。


いずれにせよ。

同じく「戦力集中」を狙いながらタイタンは集中した戦力を相手の一番弱いところにぶつけることができた。アタシはできなかった。

アタシもまだまだということか。


そして山吹に向き直す

「改めてありがとう。助かった。」

山吹はそれを見て目をぱちくりさせてたが、やがてニカッと笑うと

「どういたしまして!」

と応えた。


【次回予告】

帝王軍とタイタン軍の同時侵攻。そしてレッドドラゴン3体の危機を退けたレンジャーワン

一方、タイタン軍はレッドドラゴン3体を失い大幅な戦力ダウンとなった。

そこに着目する宰相ユミルと戦術姫アオイ。

それそれが目的のために動き出す。


次週、episode28 タクティクス

毎週 日曜日 9時30分 更新

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