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episode26 願いを繋ぐ

---from misscrow side---


「フン・・・あのクソジイイめ。とんだ狸だ。」

伊藤は地の国からの撤退の最中、そう言って悪態をついた。


私達は地の国でのレンジャーワンと石の国連合軍との戦いで、ゴセイが暴走したのを潮に撤退した。


あのままいたらゴセイの暴走に巻き込まれるからです。



・・・それにしても、あのゴセイは何なのでしょう?

地の王の質問を受けるたびに体が崩壊し、しまいには風船のように体が膨張し、完全な化け物になってしましました。


その質問を白井にぶつけます。

あの、ホノカ様の研究所からゴセイを蘇らせたのは他でもない白井なのですから。



「フン、あれは死体を継ぎ接ぎで作ったリビングデッドだ。ゴセイとかいう奴そのものではない。」

「・・・・動く死体ですか。その割にゴセイとしての記憶が残っていたようでしたが・・・」

「だから、失敗した。」

「・・・失敗ですか。」

「ああ、あの資料を元に作成した。「記憶」も利用できると思い残した。ただ、「記憶」残したことで「感情」の消去に失敗した。それでエラーが発生した。」

「・・・エラーですか?」

「そうだ。「記憶」を活かすために「姉のための」というストーリーも追加してやったが、あのクソジジィ見事にストーリーの破綻を突いてきた。会ってもいない姉のためという「矛盾」さ。そこで「記憶」と「感情」がエラーを起こし自滅した。」

「・・・無理があったのですね。」

「フン、その「無理」は織り込み済みだった。あのジジィが裏切らなければな。」

「・・・先程からおっしゃっているジジイとは地の国の国王のことですよね。裏切るとは? どういうことですか?」

「あの戦いの前にクソジジィのところにいったのさ。帝国を裏切るなと捕虜になっているゴセイがどうなっても知らんぞと。それを裏切りやがった。」

「・・・地の国の国王のところにいかれていたのですね。」

「ああ、そうは言っても、あの王はどう動いていいかわからんだろう。だから台本まで用意したというのにな。その台本も駄目になった。」

「・・・・こう言っては何ですが、地の国の国王の判断は見事でした。地の国の独立を勝ち取るためにゴセイ様と独立を天秤にかけられての判断。為政者として地の国の国王が一枚上手だったということではないでしょうか。」

「フン!・・・あの王のことは調べた。優柔不断の王と言われているらしいじゃないか。その王が、あんな判断を下すか? シナリオを書いて、あのジジイに言わせた奴がいる。」

「・・・本当ですか?」

「フン・・・予測だがな。戦術姫あたりがあやしい。それよりもだ、ミスクロウ。」

「・・・何でしょう?」

「先程から眉間にしわが寄っているぞ。フン・・・死体を利用するような倫理に欠ける策は苦手か。」

「・・・正直、好ましくはありません。戦いは己の鍛えた武と武の競演が美しいと考えております。」

「フン・・・さすがはデビルフィッシュの副官様だ。」



---from aoi side---


「ふうむ。青の国の戦術姫。改めて久しぶりじゃな。」

地の国の王が私にむかって頭を下げる。

「ええ、今朝ぶりでしたね。」

私はそういって笑い返した。

「ふうむ。もう腹芸は終わりか。それにしても驚いたぞ。今朝、お主が現れた時には。」

「この地の国を帝国から解放するにあたって、事前に王様に筋道は通した方がよいでしょうから。」

「ふうむ。さらに驚いたのは姫の進言通りに進んだことじゃな。」

そう言って地の国の王は3冊の資料を取り出す。

私が書いたシナリオだ。


「可能性を提示しただけですよ。川の国でゴセイ様の偽物が現れました。今回も同じことが起こる可能性がありました。その可能性を台本化しただけです。」


「ふうむ。いや、いや、この台本は助かった。これがなければ都度都度、考えなければならなかった。」


それはやめてくれ優柔不断の王と呼ばれているアンタが考えると日が暮れる。

そのために様々なパターンを考え、3つに絞り、台本化して渡したんだから。

「ところで姫や。」

「はい、なんでしょう?」

「これで我が国は占領されていた帝国から再び独立を果たしたと考えてよいのじゃな。」

地の国の王は笑いながら軽い調子で質問してきました。ただし目が笑ってません。


ああそうか。


彼の王は私を青の国。または「地上」という未知の国の使者として見てるのか。

要するに「帝国に代わって青の国や「地上」が地の国を占領しないよね。」と念を押しているわけだ。


私は苦笑する。

なるほど優柔不断の王は心配性の王でもあるわけだ。

これは、これで、時間は延々とかかっても、なかなか誤った判断をしない名君かもしれない。


「はい。その通りです。」

「ふうむ・・・」

地の国の王が黙考をし始めます。

長い、長い。


「青の国や「地上」とやらには利が無いではないか?」


ああ、そういうこと。

確かに為政者はボランティアだと安心できませんよね。

「それなら「交易」してみてはいかがでしょう? 隣の石の国は「地上」の食糧と引き換えに「ゴーレム」の輸出を開始したようですよ。「交易」なら「地上」にも利が出ます。その方が安心ですよね。」

「ほう。交易とな・・・・。」

しばらく地の国の王は思案する。


長い、長いよ。


「なるほど、分かった。そなたらは支配ではなく交流を望むのだな。」

「ええ。その方が楽しいでしょ。」

私はニカッと笑った。

「ふうむ。そうであるな。大いに迷ったが帝国のシライという将軍の提案を却下し、戦略姫の提案を受けてよかったことになるかのう。」


! 帝国からも使者が来ていたのか・

私が訪ねたときはそんな事一言も言ってなかったぞ。

こんの。狸親父め。


「帝国からも使者がきていたのですね。」

「そうなのじゃよ。しかもお主と同じく台本まで用意してきよった。」

そう言って1冊の資料を出した。

「まったく、どちらの提案を飲もうか迷った。迷った。」

優柔不断の王が判断に迷ったのであれば本当に迷ったのであろう。

もし仮に地の国の王が白井の提案で進めたならと考えるとゾッとする。


「ま、戦術姫の提案にのってよかったぞ。独立も果たし、まだ見ぬ楽園「地上」との交易ができる。上出来ではないか。」

私は乾いた笑い声で応対し気疲れする地の国の王との会談を終えた。


---from akaishi side---


何と理不尽な事か。。


あれだけヘドリアが会い焦がれた最愛の弟は化け物になって倒れた。

いや、我が倒した。


いや、あの後の調査でゴセイは既に死んでおり、脳に残る記憶を元に禁呪で生み出されたリビングデッドであるということであるらしい。


我には小難しいことは分らぬが、要は第二の生を受けたにも関わらず、ヘドリア・ゴセイの姉弟は互いに会えず、互いにその気持ちを確認することもできず、道半ばで倒れた。


そして、第二の生を受けたゴセイを倒したのが我である。


何と理不尽な事か。


どんっ!

ぬ。

後ろから蹴られたようだ。

振り向くと腕を組み仁王立ちになっているアオイがいた。


「まあた。変な思考の海にはいってるでしょ。」

「む。」

「最近、アンタが考えていることわかるようになってきたわ。どーせ。ヘドリアの弟を自分で倒したって一人で悩んでたんでしょ。」

「む。」

なんでアオイは我の考えがわかるのであろうか?

我自身が言うのもなんだが、他人に感情を悟らせるほど表情豊かではないと思うのだが。


「一人で抱え込むなってぇの!」

アオイが大喝する。さすがに一軍を率いた経験があるだけあって堂に入っている。

「いい。ゴセイは既に死んでいた。OK? 理解している?」

「ぬう。しかし動いていた。自分の意志で話をしていた。第二の生を授かったといってもいいのではないか?」

「ああ・・・そういう解釈をしているのね。」

アオイは天を仰いだ。

我は眉を顰める。

我の解釈が間違っているのだろうか?

「あれはリビングデッド。人造のアンデッドモンスター。ゾンビ。体はゴセイのものではあるけど、自分の意志で話をしているかどうかはあやしい。」

「む。どういうことだ。話していたではないか? 自分のことをゴセイと認識していたではないか?」

「・・・死んでも脳のデータは残っている。生前の脳に残るデータを元にしているだけ。もっと言えば、そのデータを元に生前のゴセイであればこのように対応したであろうという行動をなぞっているだけのアンデット。自分で考えているわけでもなく、意志で行動しているはけでもない。さらに言えば帝国の味方になるように別のデータを入れられているようにも思えた。いずれにせよゴセイの体とデータは使っているけど、ゴセイとは別な個体。あくまでもあれは人を襲うモンスター。もっと言えば悪霊化始めたモンスター。」

「悪霊化?」

「アンデットは生前の行動を脳に残るデータを元に繰り返す。そこに何かのエラーが発生すると自己制御ができなくなり暴走する。それが悪霊化。」


ぬう。

とするとあの巨大化したのが悪霊化ということか。

そして、ヘドリアが会いたかったゴセイは既に死んでいて、脳にあるデータ通りの行動をしていただけだと。


いや、しかし。


「ゴセイは姉の死を知ったとき嘘だと叫んでいた。それもデータだというのか。」


我には信じにくいのだ。

あれは姉の死を受け入れることが出来ぬ、あの思いこそ、本心ではないのか?


「データ。」


それに対するアオイの回答はそっけないくらい簡単なものであった。

アオイの表情も平坦。いや、あれは無表情と言えばいいのか。


「ただし、ゴセイが生きている間は必死に姉のヘドリアを意識していたんでしょうね。ヘドリアが倒れた事実を受けいられず、狂い、暴走するくらいに。」


その狂うほどの「想い」は「データ」なのか?

そのことを受け入れるのは抵抗がある。


アオイが我に近づく、そして背伸びをし

我の胸を拳でこついた。


「・・・大事なのは後悔することじゃなくて、その「想い」を引き継ぐことじゃない?」

「む。」

「ヘドリアは何を願った? ゴセイは何を願った?」

「む。」

「帝国に祖国が支配され続けられること?」

「違う。」

ヘドリアは地の国が帝国に蹂躙されぬよう帝国の将として働く道を選んだ。

ゴセイはどうやら、その後に聞いた話だと、祖国に戻らずレジスタンスなる地下組織に属し、祖国解放のために動いたらしい。

「平和」「解放」手段は違うが「願い」は同じ


「どちらも祖国に帝国が支配されないように「願った」。そう言いたいのだな。」

「正解。」

アオイはニッコリ笑って片目を瞑った。

「なら、私達が成すことは?」


アオイの問いにしばらく考えた後、

「この地の国を二度と帝国に支配されぬようにしよう。」

我は大きく頷いた。


---from yamabuki side---

「・・・バカでしたね。ゴセイ様は」

メンドーサさんがゴセイさんを埋葬した簡易な墓地の前で誰に言うでもなく呟きます。


いつものドモリ癖もありません。


「バカとは辛辣ではないか? その胸のうちを聞いてもいいだろうか?」

彼女の隣にいたライオンマンさんが困惑顔で尋ねます。


「・・・バカですよゴセイさんは。ヘドリア様は地の国を守るために帝国に降りました。でも、帝国はヘドリア様を抜擢しました。そして四天王の一角に据えました。別に人質のように軟禁されてたわけじゃありません。会おうと思えばいつでも会えたんですよ。」


確かにその通りです。

いわゆるヘドリアさんは身もふたもない言い方をすると人質でした。

ところが、ここが帝国の変わったところで人質らしく軟禁せずに、登用しました。

それも四天王にです。


地の国が離反しないようにヘドリアさんを人質に。

ヘドリアさんが離反しないように地の国を人質に


どうもそんな変則的なことをやっていたようです。


いずれにせよ、帝国四天王の一角ですから会おうと思えば確かに会えたはずです。


「でも、ゴセイ様は会いに来ませんでした。地の国にも戻らず、後で聞いたらレジスタンスに所属してたんですね。変に意地張って。その挙句に帝国に捕まって、あげくにアンデッドモンスターにされて・・・何してるんでしょうね。」

メンドーサさんがライオンマンさんの問いに答えるというよりは、目の前のゴセイさんの墓に叱りつけるように言葉を紡ぎます。


いや、実際に叱りつけてるのでしょう。

なぜ、会いに来なかったのかと。


ライオンマンさんは目をしばたいた後

「そうか。」

とだけ言いました。


しばらくの沈黙のあと、

「おお! そうだ山吹殿。」

とライオンマンさんが唐突に僕に声をかけます。

「オレは地上にいる間、様々な事を体験させてもらった。その中にある本との出会いがあった。」

僕はライオンマンさんの話の意図が分からず、とりあえず笑顔で返します。

「人は様々な「願い」を持っている。その「願い」を「夢で終わる人」と「願いをかなえる人」の違いは何かという本でな。」

「へー、興味深いですね。それで違いは何ですか?」

「人に助けを求めることができる人は願いをかなえることができるそうだ。」


なるほど。

ライオンマンさんの言いたいことがわかりました。


ゴセイさんは地の国を帝国から守る・開放するというお姉さんと同じ願いを持っていながらお姉さんに助けを求めなかった。

だから、このような結果になり、願いを叶えられなかったと。


「そして山吹殿。我らの仲間にも人に助けを求めるのが苦手なタイプがいる。彼をゴセイ殿のようにはしたくはないものだ。ぜひ、願いをかなえてもらいたいものだ。そうは思わぬか?」


ああ、なるほど確かにいますね。

助けを求めるのが苦手な人が


赤石クンですね。

確かに背景も似てます。

ヘドリアさんとゴセイさん

りさ教授と赤石クン


確かに赤石クンとゴセイさんを同じ目には合わせたくないですね。


「「はい!」」

と僕は返事しました。

あれ?

メンドーサさんも僕と同じタイミングで返事をしたようです。


メンドーサさんの方を見ると少し照れたような顔をして

「ゴセイさんと同じ結果になるのは絶対ダメです。」

とこれまた珍しく、力強い言葉が返ってきました。


その時です。

メンドーサさんが別のの反応をしました。

「!・・・ら、ら、ら雷獣がこの国へ敵兵の侵入を察知しました。帝国軍です。率いてきた将は・・・・まさか。」

「敵の襲来なら急いでいかないと。敵の将は誰なんですか?」

「し、し、し、四天王デビルフィッシュ様っ・・・。い、い、い、いままでこちらの戦線には出てこなかったデビルフィッシュ様がなぜ?」


僕はスキーズを呼び出します。

移動するには空飛ぶ船スキーズが便利です。


ふとみるとライオンマンさんが難しい顔をしていました。

確かにデビルフィッシュはライオンマンさんの上司にあたるかたです。

上司と戦うのは気が引けるでしょう。


「ライオンマンさんは残ってください。」

僕がそう言うと。

「おお! 何を言う。せっかくの偉大なる四天王が一人デビルフィッシュ様と戦える機会ではないか! オレもいくぞ。」

ライオンマンさんはそう言ってスキーズに乗り込みました。

えーっと、ライオンマンさんの思考がわからないのは僕だけでしょうか?


---from akaishi side---


「久しぶりだな同類。」

敵将、四天王デビルフィッシュが我を見るなりそのように笑う。


ここは地の国の中にある国と国を結ぶダンジョン通路の出入口の一つ。帝国につづくダンジョンの出入り口である。

ここにデビルフィッシュは帝国兵数十名とともに陣をはっていた。


我らはメンドーサの雷獣を使っての連絡を受けて、この場にアオイとともに急行したのだが、ご丁寧にデビルフィッシュは攻め込まず、この場を動かず待っていたらしい。


「ふむ。待っていたのか。」

「ふぉ、ふぉ、ふぉ。その通りだ地上の勇者よ。吾輩はそなたへのリベンジにきたのだからな。」

「リベンジ? それを言うならまだ、イーブンであろう。」

「ふぉ、ふぉ、ふぉ、謙虚な事をいう。確かに初戦はデーモンスピアに貫かれそなたは地に付した。その後、そなたの掌底が吾輩の脇腹にきまり吾輩は倒れた。イーブンと言えるかもしれぬが、大切なのも最後に戦場に立っていたのは誰かということだ。最後に立っていたのはお主だよ。地上の勇者よ。」

「ふむ。」

「さあ、いくぞ同類! 皆の者手出し無用ぞ。」

そう言ってデビルフィッシュは前進する。

「ふむ。アオイ、手出し無用だ。」

我もデビルフィッシュの前進に答えるように変身。

そして前に進む。


デビルフィッシュの蛸頭が赤から黒にかわる

口からプロレスの毒きり攻撃ではないが、黒い墨が吐き出される。


デビルフィッシュの初手は分っている。

黒い墨もわかっていたら何とでも避けようはある。

サイドステップで墨攻撃を躱し、ミドルキックを叩きこむ。

「ふん!」

デビルフィッシュは肘と膝でミドルキックをブロック

「デモンスピアっ!」

蛸顔についている八本の蛸足が槍のようにとがり、我の体を串刺しにしようとする。

「ぬうん。」

前回はその攻撃を受け、串刺しになり動けなくなったが二の轍は踏まぬ。

円運動で背中に回り回避し、その隙だらけの背中にフロント・ハイキック。

デビルフィッシュは体をその場でしゃがんで我のフロント・ハイキックを躱し、回転。同時に蹴りを繰り出す

ぬう。水面蹴りか。

この体制で足を刈られてはたまらぬ。


無理やりではあるがフロント・ハイキックの体制からスキル「幻獣の角」を発動し片足・軸足で大きく後方に跳躍する。

変身後の力であれば無理な体制からの人間離れした跳躍も可能となる。


デビルフィッシュは水面蹴りの後、黒い墨を吐いたが、その時には我は跳躍して空にいるためいない。


そのままスキル「幻獣の角」の権能。空中2段跳躍を活かして空中を蹴り。空中跳び蹴りの体制でデビルフィッシュに急降下する。

「吐―っ!」


「うぉおおおっ!」

避けるか、防御の体制をとるかと思ったがデビルフィッシュはどちらも選ばなかった。

横に捻りを加えて跳躍し縦回転の蹴りで=空手でいう胴回し回転蹴りで迎撃してくる。


ぬう。まさか迎撃を選ぶとはっ!

我と奴の蹴りが交差する。


我の体がデビルフィッシュの胴回し回転蹴りを受けて吹き飛ぶ。


奴は?

奴はどうなった?


我はすぐさま体制を整える。


ふむ。

我がとび蹴りのダメージは相殺されたか。

幾多のモンスターを倒した、我がとび蹴りを食らいダメージを受けつつも立ち上がってくるとは。


「ふぉふおふぉ。愉快、愉快。地上の勇者よ。この吾輩とここまでの格闘戦を演じることができるとは。」

「ふむ。我はその時よりは成長したか?」

「もちろん。素晴らしいの一言に尽きる。」


「そして、その成長ごと喰らってやるわ。」

デビルフィッシュの顔が黒から赤に変わる。


そして接近するやミドルキックを放つ。

あんこ型の体形から繰り出される重量級の蹴り。

まともに受けるとガードしたとしてもダメージを受けるであろう。


我はそのミドルキックに付き合わず、大きくバックステップで躱す。

「!」

その避ける行為を読んでいたかのようにデビルフィッシュは大きく横に捻りをいれてこちらに跳躍する。

また、胴回し回転蹴りか!

しかも、位置が悪い。蹴りというよりもデビルフィッシュの巨体が降ってくるような形となった。


「おお! 踏み込んで投げよ。」


! 我は外野からとんできたアドバイスに従い、避けるのではなく逆に踏み込む。

そのままデビルフィッシュの尻をキャッチ。

そのままプレス気味に投げ捨てた。


アドバイスをしたのは誰か?

と周りを見るとアオイの近くに空飛ぶ船スキーズ。そして山吹、メンドーサ。そしてライオンマンがいた。

ふむ、彼らもこの戦場へたどり着いたか

そして先程のはライオンマンのアドバイスであったか。


あののアドバイスのお陰であのまま全体重を乗せた胴回し回転蹴りを食らうことなく、その威力をそのまま相手に返すことができた。


我が礼の代わりにライオンマンに対して頷くと、ライオンマンめサムズアップで応えた。

「ふぉふぉふぉ、誰かと思ったらライオンマンではないか。」

デビルフィッシュが立ち上がる。

「おお! 偉大なるデビルフィッシュ様お久しぶりですな。」

「うむ。それでそちらの陣営で戦って、少しは強くなったか?」

「おお! それを偉大なるデビルフィッシュ様にお見せしたいと考えていたのですが、先にお楽しみ中でありましたな。その戦いが終わりましたら是非、お手合わせをおねがいしたいところです。」

「ふぉふぉふぉ。そうだな。この地上の勇者との戦いが終わったらぜひ、その「強さ」試してみたいものよ。」


ぬう。なんだこの上司部下は?


「戦い」と「強さ」に関わることは最優先。

ライオンマンが帝国ではなく敵である我らと一緒にいることも「強さ」に関わるのであれば問題ないという。通常の上司部下の関係から考えると理解不能である。


まあ、好都合でもある。

ライオンマンが再び敵となることは今の会話からすると無いと思ってよいであろう。


「おい。まずは我が相手だ。忘れたか。」

そう言って我は拳を振りかぶる。

「ふぉふぉふぉ。忘れてはおらんよ地上の勇者よ。」

デビルフィッシュは足を引いた。


我の拳がデビルフィッシュを吹き飛ばすとともに、デビルフィッシュのミドルキックが我を吹きとばした。


デビルフィッシュは土を払いながら立ちあがった。

「ふぉふぉふぉ。これはこれで楽しいが、いささか泥仕合見てきた。次もあるようだ。そろそろ勝負を決めねばなるまい。第2ステージに移行しようではないか?同類?」


「ぬ? 第二ステージとはなんのことだ?」


「ふぉふぉふぉ。こういうことよ。見よ、神に至らんとする吾輩の力を。」


ぬう。デビルフィッシュの体が巨大化する。

ゴセイのような暴走での巨大化ではない。

人化魔法をといた巨大モンスターのような

本来の姿を取り戻したかのような

そのような巨大化である。


容姿まで変化した。

前はあんこ型の体形に蛸頭といった容姿であったが、巨大化した今はさらに化け物のようである。

全身に鱗。悪魔のような鉤爪に翼。蛸足が増え、それぞれが手足のように動いている。

デビルフィッシュは「神に至らんとする姿」と言ったが、正直、神というよりはモンスターである。

少なくとも我はこのような造形に祈ろうとは思わぬ。


「ふぉふぉふぉ。地上の勇者よ。お主もまた第2ステージで戦うすべをもっておろう。ダンジョンの通路ではこのような戦いはできぬが、ここであればこのような姿で本気で戦う事ができる。早く第二ステージへくるがよい。」


ぬう。奴のいう第二ステージとは巨大化して戦うということか。


つまりは赤い巨人シアルフを呼び戦えと。

だが、これは「戦い」になるのか?

我は奴の変わり果てた姿をみて逡巡する。


あの人体からかけ離れた姿では少なくとも「格闘戦」はできないであろう。

となると戦いは相手の守備力を高火力でいかに押し切るかという戦いとなる。


我が方の一番の高火力はヴァン・アース状態からの攻撃であるが、あれは我一人の力ではない。

アオイ、山吹。そしてその眷属達の力を結集して成しえる高火力である。


うむ・・・


いままで一対一の勝負であった。

それを奴の言う第2ステージになったからといってタイマン勝負をやめるというのは違うのではないか?

ならばここは一人で戦うべきであろう。


「来るがよい。我が眷属 シアルフ!」

我は眷属である赤き巨人を呼び出す。


我の足元に巨大な魔法陣が展開される。

その魔法陣からせりあげるのは巨大な真紅のフルアーマー。

30m程度であろうか巨体。背にも2基の推進器。両肩には山羊頭を意匠した肩当がついている。


我はいつものようにシアルフと同化しようとしたところ背中を蹴られた。

振り向くと腕を組んでいる変身後のアオイがいた。


ぬ? 怒ってるのか?


「おいっ!」

アオイが我に吠える

「私達が成すことは?」


ぬ。先程の問いか。

あの時は・・・

「この地の国を二度と帝国に支配されぬようにする。」


「そう! アンタの仕事は一人で戦う事じゃない! 二度と帝国に支配されぬようにすることっ。」


む。

そういわれるとそうだが・・・


「レッド。あのデビルフィッシュを撃退することが最優先です。」

山吹が我の方を叩いた。

いつのまにか山吹も変身している。

「イエロー・・・。」

「ライオンマンさんが言ってましたよ。『人に助けを求めることができる人は願いをかなえることができる。』そうです。」

我はライオンマンを見る。

彼はサムズアップで応えた。

「レッド。ヘドリアさんの願いを繋ぎましょう。みんなで戦いましょう。ヴァンアースで行きましょう。」

山吹が大きく頷きながら言った。


ぬう。我はまた一人で突っ走ろうとしていたのか。

確かに我が一人で戦う事はヘドリアの願いを繋ぐことにはならぬ。


「うむ。ブルー。イエロー頼む!」

アオイと山吹は大きく頷いた。


山吹がスキーズに指示する。

『イエス。マイマスター。・・・・収束』

スキーズが機械音を発し発光。


アオイも眷属である機械仕掛けの獣たちを呼ぶ。

その機械仕掛けの獣達も発光する。


発光した6体が我とと同化しているシアルフに収束する。


『ヴァン・アース権能収束・発射準備

セイズ解放。 ガント充填、三神解除。標的“デビルフィッシュ半神体” 目標位置クリア”。ガンド充填300% 対反動制御オールクリア。ヴァン・アース権能発射準備クリア』


スキーズが制御をおこなっているのであろう。

アナウンスが流れる。


「つまらん。つまらんぞーっ。臆したか! 神聖な一対一の戦いに水を差しおってっ!いいだろう。ドラゴンをも倒す、神に近づかんとする吾輩の真の力見せてくれるっ!」


デビルフィッシュはそのように叫ぶと増えた蛸足を槍状態に変えて我らを貫かんと迫る。

サイズがサイズなのでその蛸足の槍一本、一本が電柱のような太さの槍である。

無数のミサイルがとんできているような迫力で迫ってくる。



我は冷静に必要なエネルギーが充足されたことを確認し、技に移行する。

「吐ーッ!」

我の気合と同時に速射の掌底をでエビルフィッシュにむけてくりだす。

『Gungnir』

機械音と同時に我が掌底から繰り出される力の奔流。

向かうは巨大化・・・いや真の姿を現したデビルフィッシュ。


ヴァン・アースから放たれた力の奔流は奴の蛸足が変化した無数の槍を飲み込み、デビルフィッシュを貫き 吹き飛ばした。


それを見たデビルフィッシュが引き連れてきた帝国兵も撤退した。


ふむ。

地の国を帝国から守れたようだ。


我はヘドリアの願いをつなぐことができたのであろうか・・・



---from devilfish side---

「ふーふーふー。」

吾輩の神に至らんとする神体をものともせずに貫くとは。


それよりもあの地上の勇者が一対一の勝負ではなく、確実な勝利だけを目指してくるとは

あの考え方は・・・戦術姫と呼ばれた四天王アオイの思考。


ふぉふぉ、彼女の存在を失念していた吾輩のミスか。


「・・・デビルフィッシュ様 ご無事でしたか!」

扉を開けて部屋に来たのは副官のミスクロウか。それに白井もいるのう。


「吾輩は無事である。ちと遊びが過ぎたがの。」


「なぜ、こちらに? 帝都の守りにいなくてよいのか?」

白井がメガネをクイッとあげながら訪ねてくる。


「ふぉふぉふぉ。あちらの戦場より、こちらの方が面白そうだと思ってきたのよ。まさかドラゴンをも倒す吾輩の真の姿でも敗れるとは思わなかったがの。それに・・・。」

「それに?」

「宰相ユミルが煩いのよ。地の国を奪われるのが嫌なららしい。」

「? 石の国のゴーレム産業ならわかるが、地の国になにかあるのか?」

「ふぉふぉふぉ。石の国というよりも石の国の王家に伝わる秘伝じゃな。「石碑」とかいうものに関わるらしい。」

「石碑?」

「ふぉふぉふぉ。吾輩も詳しくはしらぬ。ただ、それが吾輩が目指す「神」に近づくものであれば、吾輩も欲しいがの。」

「フン。それが狙いか。」

「男と生まれたからには最強を目指すべきであろう。最強とはなにか? 「神」だ。と吾輩は思っておるよ。どうだ白井? 違うか。」

「フン、あんたらしい。」

白井は笑いおった。

ふむ、地上の勇者よりも白井の方が吾輩と同類かの。


【次回予告】

快進撃を続けるレンジャーワン。

帝王軍とタイタン軍が同時に動き出す。


次週、episode27 石碑

毎週 日曜日 9時30分 更新

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