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episode25 地の国の男

---from King of Earth side---


ふうむ。どうしたものか?

先日、帝国が我が地の国を占領するために置いて行った2体のアースドラゴンが神の光のごとき光線によって一撃で倒された。

帝国からの独立の好機である。


今は儂たちは王城を追われ野に潜伏しているのであるが、幸いにして帝国は地の国の民には手を出していないようだ。


これは我が国のヘドリア参謀が帝国の四天王として働いているというのが大きいであろう。

地の国に何かあればヘドリア参謀は帝国に与する意味がないからのう。

言ってみれば我が国はヘドリア参謀にとって人質のようなもの


だからこそ我々は人質は人質らしくと、大人しくしていたのだが・・・


我々が変な事をしないように抑止力として存在していたドラゴンが倒されたということは帝国から独立の狼煙をあげてもよいということじゃろうか?


ふむ、困った。

ヘドリア参謀がいないとどう動いてよいかはわからぬな。


ヘドリア参謀の部下であるメンドーサは雷の速度で移動する雷獣を伝達係として使用する。


ヘドリア参謀の策の一つで彼女からの情報が逐一わしに入ることになっている。

その情報では青の国の第一王女であり魔法兵団長のであるヘドリア参謀と同じく、帝国四天王の立場であったアオイ殿が地上の勇者と合流し、レンジャーワンなる組織をつくり、帝国から離反。地底国家群の国々を帝国の支配から解放させているという。


先日のドラゴンを葬った光もそれなのであろうか?


で、あればレンジャーワンと呼応するべきか?

それとも今まで通り大人しくしていた方がよいのであろうか?


メンドーサの情報ではヘドリアは守護者と交戦し倒されたという。

実に無念であったであろう。

ヘドリア参謀は我が国を守りつつ、戦禍で離ればなれになった弟ゴセイを気にかけておった。


噂はいくつも聞こえてはきた。帝国の捕虜となった。反帝国レジスタンスに合流した。など。


その噂を頼りにヘドリア参謀は時間を作っては弟を探していたようだが。

それはかなわなかったか。

無念であろうに。


ともかく、我が国の事をかんがえるとヘドリア参謀が倒されたのであれば、我が国に人質としての価値は無くなったという事になる。

気に喰わなければ滅ぼしても構わない国だということでもある。


それであればいっそのことレンジャーワンとともに蜂起するか。

それとも、尚のこと従順を貫き災禍が来ないように雌伏するか。


コンコン


その時にドアがノックされた。

「はいれ。」

儂は入室の許可を出す。


中から私に付き従う騎士の一人が現れた。

「王に面会希望の方が見えられています。」


ふむ。

このタイミングで儂に面会とな?

一体誰であろう? 何の要件であろう?



---from yamabuki side---


いやあ。なんか天下分け目の決戦みたいです。


アースドラゴンを倒した翌日。

僕達は再びダンジョンを通って地の国にいきました。


ドラゴンはいませんでいした。

さすがの地底帝国もドラゴンの補充を翌日に行う事は出来なかったようです。

いいですね。

僕達のペースです。


その代わりに帝国の軍団が展開されていました。

なるほど、国と国を結ぶダンジョンの通路では軍団は展開できませんからね。

帝国は地の国で迎え撃つ作戦を取ったようです。


対する僕達ですが、

僕達、レンジャーワンにライオンマンさん、メンドーサさん、そして石の国から青年商工会会長のデンジさんとキュウさんがゴーレム軍団を率いて参加してます。


キュウさんが言うには

「せっかく『楽園』地上との取引がはじまったばかりやのに、隣の国にこちらを狙う帝国がいるのわかなわんわ。」

ということらしいです。


図らずも帝国軍VS解放軍という天下分け目の戦いっぽい


さて、軍団と言っても洞窟内の国で展開できる数は限られます。

敵の帝国兵は千にも満たないでしょう。

宰相さんや四天王デビルフィッシュさんもいないようです。

おそらく、タイタンとの戦いでそれどころではないのでしょう。


メンドーサさんの祖国 地の国を帝国から取り戻しましょう。


「スキーズ! 大砲の出番です!

『イエス、マスター』


スキーズの大砲が戦場に鳴り響きました。


---from aoi side---

「久しぶりね。こういうの。」


私は機械仕掛けの鳥フギフギに乗って敵軍に向かって魔法弾幕をばらまいている。

もう一方の機械仕掛けの鳥ムニちゃんも空から爆撃弾をばらまいている。

地上では機械仕掛けの狼の一体、ゲーが超振動を伴う遠吠えで、広範囲にわたって敵を翻弄している。


『あら、四天王時代を思い出しましたか? それとも青の国魔法兵団長時代?』

私の独り言にカグヤがツッコミを入れてきた。

いつものことなので慣れてきた。

「んー。両方? ねえ。私って不幸よね。」

『はい。』

「ちょっとカグヤ。そこは否定する話の流れじゃないの?」

『え、否定してほしかったのですか。』

「当り前じゃない!ったく。私って青の国にいても帝国にいても戦いばっかりなのよ。」

『はい、アンタの本質は戦士ですからね。』

「アンタって言うなっ。でね「地上」の同年代の娘見て思ったのよ。青春してるなぁって。」

『・・・羨ましかったのですか?』

「うーん。どうなんだろうね。ただ、「地上の娘」達が幸せそうに見えた。そんで私はいつか死ぬかもしれないと思って、どうにかしようとしてるんだけど結局、死と隣り合わせの戦場にいる。不幸じゃない?」


そうなんだ。

モンスターに倒されて死ぬのが嫌だから、青の国を守ろうとして姫の身分でありながら魔法兵隊長になっり、ダンジョンからのモンスターの侵入を防ぐ仕事をした。


帝国に殺されるかもしれないと思ったから、帝国が攻めてきたとき必死に抵抗した。


帝国に殺されるかもしれないと思ったから、四天王時代、指示に従った。


そして『地上』の預言書のような映画を見て、帝国にいると地上の戦士に倒されると思ったから、逆に今、地上の戦士の方にいる。


全部、死にたくないからと行動した結果が、危険と隣り合わせなんて我ながらどうかしていると思う。


『戦術姫』

「うん? どした? いつになく真剣な声出して。」

『栓無きことを言ってもしかたありません。アンタはアンタなのです。地上と地底国家群の価値観は違う。生き方も違う。アンタは生き延びるために戦っているのでしょう。であれば生き延び切ってください。』

「・・・はいよ。そのために知恵も魔力も全力で働かせてるよ。この戦いに挑むための準備も想定できる範囲でやりきった。・・・それに・・・お喋りの時間はここまでのようね。」


目の前に飛行する帝国四天王副官ミスクロウが迫ってきていた。



---from akaishi side---


うむ。

我は最前線を駆けていた

アオイは空中からの魔法攻撃。山吹は砲撃による遠距離攻撃にバイク軍団を後方から生成して前線に送り出す役目がある。


自然、最前線は我になる。


うむ。

アオイや山吹の援護のお陰であろうが十分に戦える。

我は内心、敵兵の弱さに安堵した。


どちらかと言えば気がかりなのはライオンマンである。

我は人の機微に疎いが、そんな我でも気づくほど精彩を欠いている、


少し前から、口数が減り、行動も鈍い。


今も我の少し後方で戦っている。

あ奴の性格であれば我と競うように最前線に出そうなものであるが・・・


ふと、空中戦を繰り広げているアオイとミスクロウの戦いが目に入った。

うむ。

ミスクロウとライオンマンはともに四天王デビルフィッシュの副官である。

ライオンマンは帝国脱出のいざこざの流れで、我らの味方をしてくれている。

が、さすがに同僚とは戦えぬということであろうか?

その迷いが精彩を欠いた戦い方になっているのか?

いずれにせよ、

我も経験があるが「迷い」をもった戦いは危うい。


「ぬうん」

我はスキル「レールガンM2」を連発する。

このスキルには弾となるものが必要だが、ここは戦場。いくらでもある。

何を弾にしているかはあえて言わないでおこう。

このレールガンM2連発であらかた周囲に敵がいなくなった隙にライオンマンに近づく。


「おお、あいかわらずスゴイな。」

ライオンマンが得意の風魔法で敵を吹き飛ばしながら声をかけてきた。

「うむ。お主もな。」

我はライオンマンに近づいたはいいもののどのように声をかければよいかわからぬ。

しばらくライオンマンと一緒に戦う。

「? どうした?」

何かを察したライオンマンが声をかけてきた。

うむ。しばらく黙考する。

かけるべき言葉を考える。


こういう時にアオイならすらすらと言葉が出るのであろうが、我には悔しいが難しい。

ある意味戦闘よりも高難度である。

しばらく考えた後に我は口を開く。

「動きに精彩がない。まだプロミネンスの魔法の影響が残ってるのか?」


ライオンマンは目をしばたき、しばらくのち口を開いた。

「おお! オレを心配してくれてるのか。優しいな。」


我はそのライオンマンの言葉にしばらく、どんな回答がよいか黙考した後、

「うむ、大切な“友”である。」

と答えた。


それを聞いたライオンマンは破顔一笑した。

「わっはっはっ! そうか“友”か!」 

しばらく笑いながら敵を蹴散らした後、

「うれしい言葉だ。では、“友”に心配かけてはいかぬな。“心配かけぬための真実“を話そう。」

「ぬ? 真実だと?」

何であろう想像もつかぬが悪い予感がする。

「実はな。」

「うむ。」

「苦手なのよ。このような集団戦が。」

「む?」

想定外の言葉に我はしばし固まる。

あれほど強いライオンマンが集団戦が苦手とは理解し難い。

「オレが得意なのは組み合いからの投げといった格闘戦だ。」

「うむ。」

我はうなずく。

確かにライオンマンの組んでからのダブルアームスープレックスなどの投げは脅威である。

組んでから常に2択以上を問われる投げの技術を持っている。

「ところがこのような集団戦では1対1で組んでいるタイミングが無い。」

「うむ。」

「だから苦手なのよ。」

ライオンマンが自嘲気味に笑った。

「ふむ。」

「おっと、これはオレだけではないぞ。我が偉大なる主であるデビルフィッシュ様も同じ。また我が尊敬する同僚であるミスクロウも同じ。言ってみればデビルフィッシュ様の軍団はそのような性格の集まりなのだ。」

ライオンマンは上をむいた。


そこではアオイと帝国のミスクロウが1対1で空中戦を繰り広げていた。

「おお! さすがは我が尊敬する同僚であるミスクロウ。上手に1対1の場をつくったな。」

ライオンマンはニヤリと笑う。

そして我に向き直すと

「心配かけたな“友”よ。だが、得意、不得意だけの話だ。オレに気にせず戦場を駆けるがよい。このような機会滅多にないぞ。」

ライオンマンはそう言って笑った。



---from Lionman side---


おお、強いな。

つくづくそう思う。

地底では珍しい軍団戦であったが、結局はオレ達の勝利である。

残る敵は白井とかいう白いフルアーマーの戦士と我が尊敬する同僚であるミスクロウに30名程度の帝国兵のみ。


うむ。軍団戦とはいえ万余の軍団同士がぶつかるならいざ知らず、百名前後がぶつかる規模であれば、個々の戦力がモノを言うという事であろう。


帝国も我が尊敬する同僚であるミスクロウがアオイ殿を抑えて空中からの攻撃を阻止していたが、いかんせん後方の山吹殿をノーマークにせざるを得なかったのは痛かったであろう。

後方からバイク軍団の突撃や空飛ぶ船スキーズの砲撃を好き放題やられるのであれば、軍団が崩れるのは当然。


もちろん赤石殿も見事に前衛を果たし山吹殿に敵を近づけさせなかったというのもさすがだ。


いいチームだ。

レンジャーワンは。


いいと言えば先程の赤石殿の発言には驚いた。

オレを“友”と呼んでくれた。


どちらかといえば人に頼るのが苦手で、独断専行気味の赤石がだ。

りさ教授のことで視野狭窄になりがちな赤石がだ。

嬉しいことではないか。


人は変わることができるのだな。

人は成長するのだな。


と嬉しく感じられる。


正直、赤石の指摘通り、オレの体はプロミネンスの魔法を受けて以降芳しくはない。

特にダンジョン内では強い影響を受ける。


だが、これほど嬉しい言葉を、これほど成長を感じられる言葉をかけてくれるのだ。

成長を見せてくれるのだ。

この程度の不調ごときで休んでいるわけにはいかぬ。

オレが赤石とともに残りの帝国兵をこの地の国から追い払わんと歩を進めた時、帝国兵の中から意外な男が出てきた。


その男はフルフェイスの兜を脱ぎ捨てこう言い放った。

「おらの地の国の侵略者ども。これ以上の侵略は地の国参謀長ヘドリアが弟ゴセイが許さねぇ!」


おお! あれは確かに偉大なるヘドリア殿の弟ゴセイ殿ではないか。

いつぞやの川の国で出会った樹木のモンスターが化けたのではなく正真正銘のゴセイ殿なのか?

であれば彼が帝国の味方についている。というのはある意味ドラゴン以上に厄介かもしれぬ。

なぜなら、この地の国自体がオレ達の敵に回る可能性がでてくる。


オレ達はいままでは解放者だった。


帝国に占拠された地底国家群を帝国から解放する。

だからこそ、そこの国民の反発は気にしなくてもよかった。


しかし、今回は地の国の代表ともいうべき偉大なるヘドリア殿の弟が帝国についたとなるとオレ達の立ち位置が解放者から侵略者に変わる。


おお! まさかドラゴンを用意できなかった代わりにこのような隠し玉でくるとは。

ここからの一挙一動即でこの国そのものが敵に回るぞ。


うーむ。どうする?



---from misscrow side---


「・・・まさか、このような戦い方があるとは?」


素直に私は驚いている。

戦いとは己の培った体力・技術を競い合うものだとばかり思っていた。

あとは強いて言えば「数」か?


私の主である四天王デビルフィッシュ様も同様の考えです。

今は数奇な縁で敵に回っている私と同じく副官のライオンマンも同じ考えでしょう。


実際に一騎当千の力を持つレンジャーワンは私達帝国軍を圧倒していた。


それを、あの『地上』から帝国に寝返った白井は別なアプローチで止めた。

そのアプローチとは?


白井が住処としているホノカ様の研究所。

そこに巨大ビーカーで保管されている各国の要人。

具体的に言えば地の国の要人、地の国元参謀長ヘドリアの弟 ゴセイを蘇らせたのだ。

そして味方の戦士とした。


白井の策は当たり、あれだけ優勢だったレンジャーワン率いる石の国のゴーレム軍団は止まった。

この決戦の地である地の国の将、ゴセイを敵にした場合、地の国全体が敵になると想定したらしい。白井の思う壺だ。


「・・・どうやって蘇らせたのだ?」

ホノカ様の研究所で白井がゴセイを蘇らせたとき私は驚いて白井に聞いた。

「フン・・・ここにマニュアルがあるではないか。」

そういって白井はマッドサイエンティストでこの研究所の元所有者ホノカが書き記したのであろうレポートの分厚い束を見せた。


・・・これを読んで、理解し、実行したというのか!

私は驚いた。


いわゆる研究データなので専門用語で書かれている。

さらには書物のようにまとめられているわけではなく、いわばホノカ様のメモ書きが乱雑に書いているだけの走り書きだ。

それを専門家ではない白井が読み解き、しかも実践して成功させたというのか!

それもこのような短期間で。


「・・・どれだけの頭脳を持っているのだ。」

「フン・・・頭脳? それで出来たら苦労はしない。」


この時、彼は明らかに機嫌を損ねていた。

何か拙いことを言っただろうか?


「それよりも、これは戦闘で役に立つぞ。」

彼は巨大ビーカーから蘇ったゴセイの方を叩きながら。そう言った。

そしてそれは現実になった。

蘇ったゴセイがフルフェイスの兜を脱ぎ名乗りを上げたとたん戦場が止まった。


やがて戦場となっている地の国から一団が現れた。

「あ、あ、ああの旗は地の国の一団。」

敵軍から声が上がった。

フッ・・・あのどもり声はメンドーサか。懐かしい相変わらず人前は苦手なようだ。


おっと、いけない。

今は戦場に現れた地の国の一団に注視しなければならない。


「フン・・・今更何しにきやがった。ドラゴンに怯え何もしないことを選択した奴らが。」

白井が悪態をつく。


ああ、そうか

白井はこの地の国のいきさつを知らないからな。


この国は最初から何もしないを選択したわけじゃない。

最初は帝国の侵略に抵抗した。


それはもう過激に陰湿に抵抗した。

参謀長ヘドリアとその弟のゴセイを中心に。


ヘドリアの性格もあったのであろう、帝国が直接攻めると、徹底した遅延作戦を行い、その裏で謀略を駆使し背後の切り崩しを行い。常に帝国は撤退を余儀なくされた。


ヘドリアの策はそこでとどまらない。

帝国貴族を裏で動かし「反戦」の機運を帝国内で作り出そうとしたのは宰相ユミル様も驚いていた。

結果、宰相ユミル様自ら乗騎の三つ首龍とアースドラゴン2体を人化魔法でダンジョンを通れるサイズにして地の国に進行。

そこで人化魔法を解き三つ首龍とアースドラゴン2体による圧倒的な力でヘドリアの謀略を文字通り力で叩き潰した。


その後、ヘドリアは祖国を守るため捕虜として帝国に下り、逆に強いものは敵であっても正当に評価する帝王のスタンスによって四天王に抜擢されているのは周知のとおり。


一方、弟のゴセイは滅ぼされた国家の王族重臣を中心に組織されたレジスタンスに所属し、抵抗していた。帝国に捕まりマッドサイエンティストであるホノカ様の実験材料になるまでですが。


つまり、白井が言うように「何もしない」を選択したわけではない。

過激に陰湿に抵抗して、そのヘドリア様・ゴセイと旗頭を失っただけ。


王はヘドリア様に思考を依存している優柔不断の王で有名ですし、残念ながら即断の人ではないですので旗頭には難しいでしょう。


そして、その地の国の旗頭の一方であるゴセイこの戦場に現れ、呼応するように地の国の一団が現れた。さあ、どうなるか。

いや、私の興味はそれよりも白井の方。

どうなるとみているのだ白井は?

私は常に苦虫を潰しているような顔をしている白井の顔を見たが、その表情から意図は読み取れなかった。


「ゴセイかっ!お主、生きておったか。」

地の国の一団から一人の老人が騎士に支えられて出てきた。

・・・あれは確か地の国の国王か。


「んだ。ゴセイだ。国王様お久しぶりだ。」

ゴセイは現れた地の国の国王に騎士の礼をする。

「うむ、無事で何よりだ。連絡がないので死んでいたかと思ったぞ。して、なぜ帝国軍の一員となっている?」


・・・彼の国の王様の読みは正しいです。彼は一度死んでビーカーの中に入っていたのですから。


「姉さまは帝国の四天王として働いている。おらはその姉さまの真似をしてるだけだ。」

「姉の真似? ヘドリア参謀の真似か。」

「んだ。お姉さまの力になるだ。」

「ふうむ??」

地の国の王は大きく首を傾げます。

そしてしばらく黙考します。


・・・長い。


さすがは優柔不断の王と呼ばれるだけはあります。

ヘドリア様を起用しするだけあり、決して明晰とは言いませんが暗君ではないはずですが、とにかく即決の人ではないですね。


ちらりと横を見ると白井の苦み走った顔がさらに苦み走ってますね。


「ゴセイよ。」

王がようやく口を開きます。

「はいっ!」

「お主、姉には会ったのか?」

「いんや会ってねぇだ。」

「ふうむ? おかしいではないか? 姉の力になると言っておきながら姉にあっていないとは? お主、姉の意向を確認したのか?」

「え? いや、その??」

「ふうむ? ゴセイや。お主、帝国に今、いるのじゃろ? 姉の居場所は知っとるのか?」

「え? いや、その??」


・・・なんか、ゴセイの様子がおかしいです。

地の国の王の質問に答えられずにいるのは別にいいのですが、その質問を受けるたびに物理的に顔が歪んでいます。 これは???


「チッ・・・調整不足か?」

調整不足? 何か不穏な言葉を白井がつぶやいてます。

人に対して調整不足とは何でしょう?


「ふうむ。儂はヘドリア参謀の懐刀メンドーサから逐次、報告を受けていたのじゃが。ヘドリア参謀が「地上」との和平を望み動いていたのは知っておったか?」

「え? いや、その??」

「んん? ゴセイや。わからぬか? のう、そこに青の国の戦略姫がおるの。」

「ええ。お久しぶりです。」

レンジャーワンの青い魔法使いが変身を解きます。青の国第一王女であり四天王の一角。アオイ・ミナーモ姫が姿を現します。


どよめきが我が帝国軍から出ました。

地上の勇者の一人「青の魔法使い」の正体が帝国四天王の一人であり青の国の第一王女アオイであるといことに驚いているのでしょう。


彼女は慎重に青の国が解放されるまで正体を隠していました。

帝国内でも地上の勇者の一人「青の魔法使い」の正体はアオイの副官カグヤではないかと言われていました。

青の国開放後、正体を隠す必要がなくなったため彼女は正体を隠さなくなりました。

そのため私はレンジャーワンの青の魔法使いの正体を知っていましたが、まだ帝国全体にその情報は浸透していません。

帝国最高戦力である四天王が帝国を離反し帝国を攻めてきているという事実に我が帝国兵は驚いているのでしょう。


「お久しぶりじゃ、戦略姫。ところでお主はヘドリアとともに行動していたとメンドーサからの報告を受けていたがまことか?」

「ええ。ヘドリアは地上に和平を提案してました。」

「ふうむ。して、そのヘドリアの望んだ和平はどうなったのじゃ? 和平が成ったという連絡はなかったが。」

「それを説明するためにまずは地上人の事情を説明してもよろしいですか?」

「ふむ。お願いする。」

「地上人は洞窟の研究をしていました、もっと言えば洞窟から産出される魔石です。」

「魔石か。あれは魔力の無い人間でも魔法が使えるようになる。便利なものだ。研究するというのは理解できる。それで?」

「その研究所を洞窟内に建てておりましたが崩落事故で地底深くに落ちました。」

「ふうむ。」

優柔不断の王はしばらく黙考します。

長い・・・長いなぁ。

「もしかして先日の大地震か!」

「ええ、その可能性はあります。」

「それは災難でしたな。当然、救助には向かわれたのか?」

「はい。それが私が今、参加しているレンジャーワンの本分です。」

「ふむ。なるほど、お主が今、所属している地上の勇者達は地底への侵略が目的ではなくてあくまで救助が目的だという事じゃな。地上の事情はわかった。それでヘドリア参謀の話とどうつながるのじゃ。」

「ヘドリアは地上との講和の前段階として共に研究所の捜索をすることを提案しました。」

「ふうむ。なるほど、いきなりではなく小さな信頼関係を積み重ねることからはじめようとしたのじゃな。ふうむ。ヘドリア参謀らしいのう。」

「はい。しかしながらその最中に不運にも守護者に遭遇しました。」

「うむ。メンドーサからの報告で聞いておる。不運じゃった。」

「はい。不運でした。ヘドリアはその守護者との戦いで、守護者に魅入られた帝国の副官ダルの剣を受け、道半ばで倒れました。」

「なんとっ! ヘドリアが倒れたのはメンドーサからの報告で聞いておったが、そのような経緯があったのか!」

「う、うそだぁ!」

突如、ゴセイが叫ぶ。そして物理的に顔が体が歪む。

「あの姉さまが倒れたなんてうそだぁ。」

それは涙なのか、謎の体液が歪んだ体から飛び散る。

「嘘ではない。繰り返すが・・・そちはヘドリアの懐刀であるメンドーサを知っておろう。儂はそのメンドーサからの報告を逐一受けていたのだ。詳細は今、知ったかったが。それでだゴセイや。」

地の国の王はゴセイに向き直ります。

「お主はヘドリア参謀の力になると言っておったな。ヘドリア参謀は我が地の国が帝国に蹂躙されぬよう帝国に降った。そして配下となった。すべては我が国を思ってのこと。平和を思っての考動。そして、「地上」とも「戦い」ではなく、「講和」を望んだ。これもまた「平和」を望んでのこと。お主の行動はヘドリア参謀が望んだ「平和」と結びついておるか?」

「え? いや、その??」

ゴセイの体が物理的にさらに歪む。

「だから聞いたのじゃ。ヘドリア参謀の気持ちを聞いたのかと。もっとも、既にヘドリア参謀はこの世にはいないがの。であればゴセイよ。いまのお主の行動は「姉のためではない」ではないか。何のためじゃ。」

「え? いや、その?? ごぼっつおお。」

ゴセイの口から謎の体液がでてきた。

「うむ。我の口からも一言よいか。」

レンジャーワンのレッドとかいう奴が前に出ました。

「ふうむ。お主は地上の勇者か。」

「うむ、ヘドリアの最後の言葉を彼に伝えたいのだ。」

「ほう、儂も聞きたいの。彼女は何といっておったかの?」

「うむ。彼女はこう言っていた。」


そう言ってレッドはヘドリアの今際の言葉を伝えた。


----------------------------------------------------------

「私にはね弟がいたの。」

「・・・。」

「私の国が亡ぶときに離れ離れになったの。」

「・・・。」

「アタシね・・・今でも思うの。あの時、諦めずに探していたら・・・ってね。」

「・・・。」

「アタシね・・・諦めないあなたがうらやましいわ。」

「・・・。」

「だからね。何があっても諦めないでね。アタシが言うのもおかしな話だけれど。」

------------------------------------------------------------





---from akaishi side---


ぬう。

何だこれは!

我はただ、ただ驚く。


我はヘドリアの言葉を伝えただけである。


ヘドリアはおそらくリサ姉を探す我の姿を、弟を探す自分の姿に重ねていたのであろう。

でなければ、今際の際に弟のことを我に話したりはせぬであろう。


だからこそ本当にヘドリアの弟に会える時が来たのであれば、その言葉を伝えたいと思っていた。


そして会えた。

川の国で出会えたようなモンスターが化けた偽物ではない。

本物に。


それがヘドリアの言葉を伝えたとたん。

化け物になってしまった。


「嘘だーっつ!」


と叫ぶと同時に体が膨張。20m級の巨大な肉塊のようなグロテスクな化け物にである。

背後に小さな悲鳴が上がった。

あれはメンドーサのか。

確かにメンドーサはヘドリアの弟であるゴセイを慕っていた。そのゴセイが化け物に変わり果てた姿を目撃した。衝撃であろう。


「おお! あれは、もしや合成獣か?」

ライオンマンが不快な声をあげた。


合成獣!?


帝国のホノカとか言ったマッドサイエンティストがつくった禁断の化け物

ライオンマンの同朋を取り込んだ合成獣と戦ったことがあるが、確かにその姿にである。


つまり、ヘドリアが探し、探していた弟は

今際の間際までヘドリアが気にかけていた弟は

帝国に捕まり合成獣にされていたという事か。



何と理不尽な事かっ!


---from yamabuki side---


となりでメンドーサさんが泣いています。

ヘドリアさんの弟ゴセイさんが目の前で変わり果てた巨大な化け物になったのを目撃した時から。


彼女はずっと耐えていました。


帝国兵の一人がフルフェイスの兜を脱いで、ゴセイである。と正体を現した時から


彼女は一度、川の国で失敗しています。

モンスターが化けた偽のゴセイが現れた時に駆け寄り、危うく命を散らすところでした。

ですから、今回は耐えて黒子に徹しています。


想像するにいろいろ聞きたいことはあるでしょう。


なぜ、帝国軍にとか

なぜ、地の国にもどらないのとか


それを押し殺して、耐えた挙句、ゴセイは化け物になりました。


その前兆はありました。


地の国の王が矛盾点をつくほど

彼の精神にダメージをあたえるほど


彼の顔、体が物理的に歪むのです。

しまいには変な体液までも噴き出ていました。


その挙句、巨大なモンスターとなり、無差別に暴れています。

まずは手直にいた帝国軍を蹴散らしています。

敵味方の分別もないようです


次に襲い掛かるのは帝国と僕達の間に出現した地の国の一団でしょうか?

それは阻止しなければなりません。


「メンドーサさん。ゴメン。ゴセイさんは・・・。」

僕が言いかけた言葉をさえぎってメンドーサんさんは言いました。

「はい。倒してください。あれはゴセイ様ではありません。帝国がゴセイ様の亡骸を弄んでいるのです。安らかにしてあげてください。」

メンドーサさんはいつものような、自信なさげな、どもり口調ではなく、力強く言い切りました。


ああ、そうか。


メンドーサさんの本領発揮は雷獣を活用した電波による情報交換。情報収集です。


合成獣のゴセイさんを調べたのでしょう。

懸命に。


そして、その結果を僕に伝えたのですね。

「はい。当然です。」

僕はメンドーサさんに伝えました。


---from aoi side---

「レッド! イエロー! 呆けてる暇はない。一気に行くよ!」

私はゴセイが巨大な化け物に変身したのを見てショックを受けて動けずにいる赤石と山吹を促す。


私もショックだが思考をとめるわけにはいかない。

考えるのは後だ。

『感情に流されない・・・戦略姫の面目躍如ですわね。』

カグヤが真面目に言っているのか、揶揄っているのかわからない発言をする。

「流されてる場合じゃないっ・・・ってそんなんだから浮いた話の一つも私にないのかな?」

『あらあら、どうしたのです?普通の乙女のような恋愛でもしたいのですか?』

カグヤの揶揄に考える。

普通の恋愛? アタシが。考えるまでもない。

答えはNOだ。


目の前で地の国の重鎮ヘドリアの弟が化け物化しても、常にこの戦闘に勝つためにはどうしたらいいかと考えているような女だ。


センチメンタルな事は戦闘が終わってからやればいい。そんな事を考えているような女だ。


目の前の元ゴセイであった巨大モンスターを見て、同情ではなく弱点と攻めるタイミングを頭の中で計算しているような女だ。


こんな女には無理だろう。

「へん、言ってみただけ。」

私はカグヤに強がった。



私は5体の機械獣を呼び出し終結させた。


スキーズは最初から山吹が呼び出している。


赤石は赤い巨人 シアルフを呼び出し同化した。

『制御はこちらで行います。レッド様は攻撃をあてることに集中ください。』

スキーズがアナウンスする。


「・・・うむ・・・」

赤石がそれに応じる。


『収束』

スキーズが機械音を発するとスキーズが発光。

フギちゃん、ムニムニ、ゲーにフレキ スレイブも呼応するように発光する。

発光した6体が赤石と同化しているシアルフに収束する。


『ヴァン・アース権能収束・発射準備

セイズ解放。 ガント充填、三神解除。標的“ゴセイ様”。

ガンド充填300% 対反動制御オールクリア。ヴァン・アース権能発射準備クリア』


スキーズが言葉通り制御をおこなう。

アナウンスが流れる。


「許せっ! 吐ーッ!」

赤石の気合と同時に速射の掌底を目標にむけてくりだす。

『Gungnir』

機械音と同時に我が掌底から繰り出される力の奔流。



ドラゴンをも倒す、力の奔流。

狂って制御を失った合成獣と化したゴセイでは防ぐすべもない。

一撃粉砕された。


ヘドリアの姉弟は・・・互いに会うことなくダンジョンに消えた。



【次回予告】

敵として死んだゴセイの姿にそれぞれ思いを馳せるレンジャーワンの面々

その彼らに最後の四天王がついに戦いを挑んできた。


次週、episode26 願いを繋ぐ

毎週 日曜日 9時30分 更新

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