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episode24 VS アースドラゴン

---from akaihi side---

ぬう。


前回は様々な意味で不覚であった。


おそらく白い仮面の男。横山とかいうリサ姉の元研究仲間は我が「ドラゴンスキル」をもつモンスターを希望したところ、我が何とかできるレベルのモンスターを用意してくれたのであろう。


ところがあの様である。

ドラゴンブレス連発というシンプルな戦術に手も足も出ぬ。


仲間と協力して戦えば容易な相手なのにだ。


一人で進めようとした罰である。

視野狭窄になっていた。反省すべきところであろう。


あの戦闘のあと、大量に守護者が顕れた。

帰れという事らしい。


さすがに大量の守護者とは戦えぬし、目的は果たした。

その後、「地上」へ戻ると。


皆から叱責を受けた。

独断専行したことで心配かけたらしい。これも反省点である。


どこか行くときはアオイに伝える約束までさせられてしまった。

いたしかたないが、ライオンマンが「おお! 夫婦みたいだの。」と言ったのには困った。

アオイがすぐに「アホっ!」と切り返していたが。


一番、心に堪えたはその後にきたリサ姉のSNSである。

-----------------------------------------------------------------

ちょっと何してるの?

今は助けに来ない方がよい。というか今は来るな。

って前に書いたよね。

なんで来ちゃってるの?

私はとりあえず無事

前にも書いたけど今、守護者と厄介なことになっていのだよ。

科学者のプライドに賭けてなんとかしようと考えている。

というかその研究がちょっと楽しくなてきたのはちょっとした困りごとだがね。


と・も・か・く、今は絶対にくるなよ。

時期が来たら必ず教える。

それはそう遠くないはずだ.


その前に君に何かあったら困る。

私より君の方が大事なんだからな。


追記:石碑についてわかったら教えてくれたまえ。

------------------------------------------------------------------


ぬう。リサ姉にまで心配かけてしまった。


ただ、一つ分かったのは、あの白い仮面の男。

横山がいた緑の大空洞

その奥にリサ姉がいる。

そのことは確実である。


でなければ、このようにすぐにリサ姉からのSNSがくるはずもない。


うむ。

まだ、希望は消えてはおらぬ。


最近、密度の濃い毎日を過ごしているため遠い昔のことに感じられるが、リサ姉が遭難してからまだ2カ月経ってはいない。


以前、リサ姉が算出した限界想定日を我は覚えている。

その計算でいえば35日残っている


うむ。

我は気合を入れ直す。


不本意な形ではあるがドラゴンブレスは取得できた。

つまり複数のドラゴンと戦える準備が整ったことになる。

地の国攻略の刻はきた。


---from Lionman side---

ふうむ。

オレは自分の体を自分の意志で動かしてみる。

右手

左手

よし。まだ自分の意志で体は動く。


思いのほか、プロミネンス殿のあの魔法は厄介だ。


いや、我々には厄介だということであろう。

実際にあの場にこられたアオイ殿には何の影響もないようであったな。


あのプロミネンス殿が偉大なるタイタン殿の帝国から目付け役として派遣された副官を倒した魔法であるというのも納得できる。

帝王や宰相をも倒せる魔法といったか。

ということはプロミネンスは我々の正体・・・帝国中枢の正体に気づいているということであろうか?


ふうむ。


厄介なのは我々の祖国であるダンジョン自体が常に微弱ではあるが、プロミネンス殿が放った魔法と同質のものを発しているという事なのだ。


いや考察するに逆なのであろう。

プロミネンス殿は我々の正体に感づいて、ダンジョン自体から発する微弱なものを濃縮し放出する魔法にまで作り上げたのであろう。


ふうむ。


今まで気にも留めなかったダンジョンの発する微弱なものが、プロミネンス殿の魔法を受けて敏感になった体に非常に堪える。

体の許容量を超えそうになっているというのがわかる。


オレがオレでいつまでいられるか・・・


ダンジョンから離れた「地上」にいる分には問題ない。

しかし、この前、赤石殿を追ってダンジョン内の緑の大空洞へ赴いたとき、自分が人でなくなる感触を受けた。


正直、自分を保つので必死だった。


あの映画とやらの状況に似ている。


あの映画にはオレが魔術によって緩やかに弱体化されるシーンがあった。

まさに今の状況だ。


このまま映画のように裏切り者として戦う事も許されずに謀殺されるのであろうか?


ふうむ。


オレはこぶしを握る。


いずれにせよオレがオレでいられる時間は短いらしい。


で、あればオレは最後まで戦士でありたい


覚悟を決めようか。


---from yamabuki side---


「ちょ、ちょっと待ってください。」

僕は赤石クンの提案に待ったをかけました。


赤石クンが言うにはドラゴンブレスのスキルを手に入れた=ドラゴンのドラゴンブレスを相殺する手段を手に入れたということになるということらしいです。


つまり数分しか戦えないヴァン・アース状態に頼らなくても良いので複数のドラゴンと戦う準備ができた⇒地の国にいるアースドラゴン2体を相手にする準備はできた⇒地の国に行く準備ができた。

という図式のようです。


気持ちはわかります!


でも、ここはあえて「待った」させてください。


まだドラゴンブレスのスキルを一度も試してないのです。


どんなメリット・デメリットがあるかも不明です。


もしかしたら赤石クンのスキル「幻獣の角」のように額にランスのような角が生えるなんて予想外な副次効果もあるかもしれないのです。


ここは一回試すべきです。


はい、僕は慎重派なんです。


という訳で郊外の山にやってきました。

ここは前回、ヴァン・アースによる垂直トンネルを試すにあたって、事前実験した場所です。


ここでスキル「ドラゴンブレス」の試験をします。

前回、ここでヴァン・アースの実験した後が残っています。

なんか今回も地形が変わりそうですが、気にしたら負けです。


伊藤女史、アオイちゃん、赤石クン、ライオンマンさん、メンドーサさん、その他のスタッフが見守る中、実験が始まります。


まずは変身します。


その後、空飛ぶ船スキーズを呼びます。


「スキーズ。ドラゴンブレスです!」

『イエス、マスター』


なんとスキーズが変形し始めました。

主砲が5つに増えました。

船べりが竜のうろこなのか炎なのかトゲトゲしいデザインに

船首像に竜の頭がついてます。

ちょっと暴走族のやんちゃなデザインを連想しちゃいました。

「夜露死苦」なんて書いていたら似合いそうです。


ちょっと派手過ぎて僕のセンスとはかけはなれてますが、今回の実験はスキル「ドラゴンブレス」の試射です。

我慢しましょう。


それになんか体が変です。

変形しているだけで何かが吸い取られているような

僕はステータスを確認します。


その間にもスキーズは淡々とドラゴンブレス発射準備を進めます。

5つの主砲をターゲットである山にあわせました。

『ドラゴンブレス準備完了。3・2・1照射』

スキーズのアナウンスとともに5つの主砲から山に向かってドラゴンブレスが放たれます。

いままでのスキーズの主砲とは比べ物にならないエネルギーの奔流です。


山にクレーターのようなくぼみができました。


「これは・・・」

伊藤女史、アオイちゃん、赤石クン、ライオンマンさんが難しい顔をしてます。

メンドーサさんは単純な威力に驚いているようですが・・・

ちなみに僕も難しい顔をしているでしょう。


「これは駄目ね。いやまるっきり駄目じゃないけど使いどころが難しい。」

アオイちゃんが口を開きます。

「ど、ど、どどうしてですか? すごい威力でしたよ。これならドラゴンのブレスもふせげるんじゃあ?」

メンドーサさんが疑問を口にします。

「おお、威力は問題ない。まぎれもないドラゴンブレスだ。だがな、時間が掛かりすぎる。発射準備している間に逆にドラゴンブレスを食らっているだろう。」

ライオンマンさんが腕を組み難しい顔をします。

これで半裸でなければシリアスにきまったのですが。


それはともかく、ライオンマンさんの指摘が全てです。

変形に時間が掛かる、照準に時間が掛かる、充填に時間が掛かる

これでは戦いに不向きです。


それにもう一つ問題があります。

「思いのほか魔力がとられます。」

僕はいいました。

普段の戦闘は短いせいか、あまり魔力を意識する場面がありませんでしたが、思いのほか魔力が減ります。


最初、スキーズが変形したときに何かが吸い取られているような感覚を受けたのでステータスを確認しました。


すると魔力現象の表示が現れました。そしてその数値ががどんどん減っていました。

あの変形を維持しているだけで魔力が減り、ドラゴンブレスを放つとまた魔力が減ります。


「ぬう。連発できるか?」

赤石クンが眉間にしわを寄せ尋ねます。

「難しいですね。僕の魔力がどこまで持つかによります。」

正直に答えます。

ここで虚勢をはっても意味はありません。


「はい、ここまで。今の話を総合すると連発できないという点でヴァン・アース状態とかわらないわね。となると地の国にいるアースドラゴン2体の相手はできないということでしょう。ここは無理する場面じゃないわ。準備不足で地の国へ攻め入るのは無しよ。再考願うわ。」

伊藤女史が結論を述べました。


---from Ms. Ito – Diplomat side---


ふう、あぶない。あぶない

また、危険な場所に彼らをいかせて、彼らを失うところだったじゃない。

彼らがいなくなったら誰が(私を)守るというのよ。


まったく、赤石クン、焦りすぎよね。

一人で守護者大量発生エリアにむかったときいた時、本気で焦りましたからね。

死にたいの?

本当に。


死んだら切り札のヴァン・アースもできなくなるのよ。

そうしたら誰が(私を)守るのよ。


まったく・・・

メンドーサさんには悪いけど

しばらく留保、留保。


石の国とも取引出来て、ゴーレムの輸入が始まったばかり

これから青の国とも魔法のスクロールでしたっけ、それも交渉して輸入を考えられるところになっている。

今が一番、良い状態なのよ。

あえて危険を冒す場面ではないわ。

そう、現状維持よ。現状維持。


死んだら、好きなドラマも 大越屋の焼き鳥も食べれなくなるんだから。


ちょっと赤石くんの気持ちを考えるとかわいそうだけどね


---from Shirai side---


「よくもまあ、ドラゴンを2体も手なずけたたものだ。」

オレは地の国に陣取るアースドラゴンを見て呆れた声をだす。

「・・・まあ、無理はしましたね。」

ミスクロウがぽつりと呟くように答える。

「そうだな。」


このアースドラゴン2体捕獲の経緯は知っている。

ミスクロウの上官、四天王デビルフィッシュが叩きのめしたのだ。

オレもその情景を見ていたが、人化魔法を解いて真の姿を発揮したデビルフィッシュはドラゴンとまともに戦い勝利するだけの力をもっていた。

もちろん、当のデビルフィッシュもドラゴン相手ではボロボロではあったが


四天王内で評価がタイタンやアオイよりも評価が控えめなのは、一対一の格闘好きのバトルジャンキーだかららしい。戦略も戦術も、それどころか兵を率いるという事は一切できない。

逆に言えば、個人の戦闘力だけで四天王になった実力者という訳だ。


そのデビルフィッシュの副官のミスクロウがここにいるのは、そのドラゴンを御するためだ。

そのついでにオレもいた。

レンジャーワンが石の国の次にここを標的にすることはわかっていたからな。

まずはあいつらを戦闘不能にできるようにしないとな。

「ふん。それにしてもドラゴン2体とは贅沢な布陣だ。それだけ重要な地なのだな。」

「・・・重要な地ではある。それ以上に帝国貴族が石の国のゴーレムが欲しいとうるさい。石の国を取りに行くポーズが必要。」

「ふん。そのためのドラゴン2体か。面倒なことだ。」

「・・・ドラゴン2体いれば、レンジャーワンといえども無理。」

「そうだろうな。」

あのレンジャーワンの最終兵器は一発撃って終わりのようだ。1体は倒せるが2体は難しいだろう。


デビルフィッシュも1体相手でボロボロになっていたな。。

1体づつ倒していったから戦えていたが、2体同時は無理だろう。


オレならいけるか?

オレのスキル「斬魔剣」


魔法は斬れる。

ゴーストも斬れた。


ドラゴンブレスも斬れるなら戦えるが・・・

それを試す気にはならないな。


斬れなければ「死」が待っている。

そんな博打を打つ必要はないな。


あいつらレンジャーワンもそうだろう。

博打を打つ必要がない。

この戦場は停滞するだろう。


伊藤女史なら

「今が一番、良い状態なのよ。あえて危険を冒す場面ではないわ。現状維持よ。」

とでも言うだろう。


その場面が思い浮かぶようだ。

思わず、笑ってしまう。


なんだかんだ言って、彼女が一番、やるべき事を理解している。


この魔石の洞窟と呼んでいた洞窟を採掘していたのも、研究していたのも、そこから生み出される利益が目的だ。


戦うのが目的ではないのだ。

その点を彼女は理解している


そういう意味では彼女はブレないし、利益を計算して判断するだろう。


そういう意味では帝国に派遣された後藤よりも現実的だし

オレよりも目的を理解している

優秀な女だ。


「・・・何を考えている。」

ミスクロウが上目遣いでオレを見る。

と言っても別に変な意味じゃない

単にオレの背が高いだけだ。


ただ、なぜか伊藤女史のことをミスクロウに言うのは憚られた。

同じ女性だからだろうか?


「レンジャーワンのことだ。」


オレは嘘をついた。


「あいつら、この国に来ないで大人しくしてるのが気になっただけだ。」


「・・・レンジャーワンにはメンドーサがいる。メンドーサの諜報能力であれば、こちらにアースドラゴン2体いることは把握しているだろう。よほどの馬鹿じゃなければ攻めてこない。」

「ふん・・・そうだな余程の馬鹿じゃなければ攻めてこないだろうな。」

オレは煙草を燻らす


その時だ。


巨大な閃光が目の前を通過した。


「「なっ」」


オレとミスクロウは同時に驚く。


その閃光が過ぎ去った方向を見ると。

この国に鎮座していた2体のアースドラゴンが先程の巨大な閃光で貫かれ倒されていた。


「「なっ」」


さらに驚いで閃光が放たれた方向を見ると一体の巨人がいた。


「・・・あれはヴァンアース。! まさかレンジャーワンか!」


オレは手に持った煙草を取り落とした。

レンジャーワンは馬鹿を通り越してクレイジーならしい。



---from akaishi side---


うむ。伊藤女史には頭が上がらぬ。


地の国にアースドラゴンが2体いて、進めなくなっているという問題。


彼女は我が考えていたドラゴンブレスをどう防ぐかという思考ではなく、別な切り口で、しかも何の強化もせずに解決してしまった。


「もう、しょうがないわね。本当は石の国との交易が始まった今、変なことをして現状をかえたくないんだけど・・・。」

と彼女は前置きして打開策、いや、彼女の言い方では企画書か。

その案を提示してくれたのである。


「ヴァン・アース状態の砲撃の威力を理解している? 山に綺麗に穴を開け、地下に垂直トンネルをつくれるくらいトンデモナイものなのよ。そのアースドラゴンの位置はメンドーサさんの雷獣を使った調査でわかるのでしょう。だったらその2体のドラゴンが同一射線上になる位置からヴァン・アースを打てば2体同時に倒せるじゃない? ドラゴンといえど生物でしょ。山を貫通する力は防げないでしょう。」


もっともである。


アオイが

「ちょっとまって。その方法だと戦闘開幕からヴァン・アース状態になる。ヴァン・アース状態になると消耗する。その後の継戦が難しい。」

と疑問を呈したが


「なんで、その後に継続して戦闘する必要があるかが私にはわからないわ。ドラゴン2体を倒したら、洞窟に引き上げたらいいじゃない。それだけで大型モンスターは戦闘できない。狭いからね。洞窟にはモンスターも出るのでしょう?自然に足止めしてくれるわ。それにこちらには予備戦力のライオンマンさんがいるわ。石の国のゴーレムを借りたっていいじゃない。消耗しているとはいえライオンマンさんとゴーレム軍団と一緒なら追っ手を追い返すぐらいはできるんじゃないかしら。 ドラゴンだって次の日すぐに用立てできるようなものではないのでしょう? 次の日なら居ないのじゃないかしら。」


と伊藤女史はその疑問を一蹴した。


うむ。こうなるとわからぬのは1点だけである。


「なぜだ?」


「え?」


「どちらかと言えば地の国に行くのを反対していたのではないのか? それなのに意と反する提案をされた?」


この我の問いに、伊藤女史はわが顔をまじまじと見た後、

「その顔よ。」


「ぬう?」


「いっぱしの男子がしていい顔じゃないわ。捨てられたペットのような顔してるじゃない。」


と少し困ったような顔で伊藤女史は答えてくれた。


ともあれ伊藤女史の作戦は成功。

ドラゴン2体はヴァン・アース状態による超遠距離で倒した。


我々は急ぎ石の国へ転移。

そこから石の国と地の国を結ぶダンジョンに移動。来ると想定される追っ手を迎撃予定である。


「アオイちゃん。一つ疑問があるのですが?」

山吹が敵を待っている間にアオイへ質問する。

「何?」

「敵の帝国は一度、石の国を征服してます。転移でくる可能性はあるのではないでしょうか?」

「? ああそうかマーカーの存在を知らないのか。」

「マーカーですか?」

「そう転移のスクロールは万能じゃない。マーカーを置いている場所にしかいけない。だからマーカーを書き換えちゃえばこれなくなる。」

「なるほど。であれば敵が転移のスクロールで追ってくる可能性はなさそうですね。」

「そう。敵が来るとしたら、この洞窟の正面。」


我は二人の会話を聞きつつダンジョンの正面を見据える。

先程のヴァン・アース状態でほぼ力を使い果たしている。

さらに通常であればヴァン・アース状態解除後、変身も若干のタイムラグがあったのち変身が解かれるのだが、今は無理して変身を維持している。

しかし、この消耗度だと、ほぼスキルは使えないといってよい。

我が体術のみで敵と格闘することになろう。


だが不安はない。

ここはダンジョンの狭い場所。2名が横にならぶのが限界である。

そうなると大がかりな魔法は使えぬ。

遠距離から削り、我とライオンマンとの二人で削った敵を倒す。これで充分である。

後詰には、アオイ、山吹、メンドーサの他に石の国の青年会会長デンジが率いるゴーレム軍団もいる。


「て、て、て・・・敵、帝国兵索敵反応あり 接近中。会敵まで3分40秒です。」

メンドーサが慌てて告げる声に皆の緊張が高まる。


最初は魔力残高のあるライオンマン、メンドーサ、そしてゴーレム軍団の遠距離攻撃で敵を削る。我らは射線の邪魔にならぬよう道を譲る。


「ろっ、ご、5 4 3 2 1…、き、き、来ます!」

慌てたメンドーサがろれつの回らない口調で告げる。


「おおっ。ようやく出番か! くらえい! サイクロンクローっ。」

挨拶とばかりにライオンマンが竜巻呪文で先制。

次いでイエローがスキル「錬金」でバイクを作成。突撃させる。

いつものような多数ではなく一台なのは先程のヴァン・アース状態のために消耗しているからであろう。それでも我と違いスキルをつかえるのは感心する。もっともこの狭い洞窟内で大軍展開は難しいが


二人の攻撃と同時にゴーレム達の岩石射出一斉攻撃が開始される。まあイシツブテを投げているシンプルな攻撃であるが狭い避けようのないダンジョン内でゴーレムという人外の投げるイシツブテは210㎞を超える。当たり所がわるければそれだけで倒れるであろう。


敵が視認できるところに現れる。

戦闘になるまえにこちらの遠距離攻撃は既に放たれている。

先制の優位はとった。


「・・・っ斬魔剣!」


ぬう。敵の中に白井がいたか。

奴得意の斬魔剣でライオンマンの竜巻魔法がふせがれる。

「おお、さすがは偉大なる帝国。この程度の奇襲ものともせぬか。いくぞ。レッド」

「うむ。」

我とライオンマンは接近するために走る。


その間に、敵はイエローのバイクの突撃。ゴーレム兵のイシツブテ攻撃を受け、あるものは倒れ、あるものは怪我をした。うむ、充分数を減らした。これなら消耗の多い我でもいける。

「・・・ら、ら、ら、雷獣さん、お願いっ。」

メンドーサが雷獣を使った電魔法を放つ。

網目のような雷の網が敵を分断する。


うむ、うまい。


魔法を斬る能力のある白井ではなく、その後ろを狙ったか。

後続の帝国兵は雷の網に囚われ倒れていく。


これで我らが相手をするのは生き残った数名の帝国兵と先頭を進む白井。そしてミスクロウとかいった将官のみである。


「おおおおおおっ!」

ライオンマンがミスクロウに接近。

生き残った帝国兵達が阻止しよとするが、ライオンマンの爪の一撃で倒されていく。


「・・・隙が多いぞ。」

ミスクロウが錫杖のような杖でライオンマンの喉笛をつく。


ぬう。危ないか。


「ふん。戦場で気を散らすとは、それでも戦士か?」

ぬ。白井が乗騎ともども肉薄しその大ぶりな剣を振りかぶる。

「斬魔剣っ!」

白井が我に向かって、その大ぶりな剣を叩きつける。


うむ。その重量のある大剣では、その動きしかできぬ。

ならば我も対処しやすい。


足運びによる円移動で白井の斬魔剣を回避。

そのままの流れで隙だらけの脇腹に突きを入れる。


上記から転げ落ちる白井。


ぬう。


追撃を入れたいが、白井の乗騎が邪魔である。


ぬ。


白井の乗騎が何かを唱える。


気が付くと我は洞窟の壁に吹き飛ばされていた。


「気をつけろレッドっ。その乗騎は神獣白澤。魔法を使うぞ。」

アドバイスをアオイからもらう。


ぬう。乗騎も戦力なのか。

しかも魔法を使うとはやっかいな。


ただ、威力そのものは高くはないな。

この赤い鎧の防御力を突破できる威力はない。


再び白井が乗騎に乗り大剣を大上段に構え我に向かって突撃する。


「Aurr!」

アオイが魔法を唱える。

白井の周囲の地面が泥沼に変わる。


「ふん。2度、同じ手はくわん。」

白井は乗騎の上に立ち上がり跳躍。

泥沼の範囲から脱すると、そのまま我に接近し大剣を振り下ろす。


我は円運動による回避を行い、ハイキックを延髄に叩き込む。


「くっ!」

白井がよろめく


ふむ。先程と同じく横腹への突きがくると思っていたか。

頭の守りがお留守になっていたのを狙ったが、綺麗にきまった。


ふむ、先程と違い白井の目の前に乗騎がいない。追撃の好機である。

我のハイキックで倒れかけた白井の顎にアッパーを

アッパーで軽く宙に浮いた白井の横腹にミドルキックを

ミドルキックでよろめく白井の頭を両手でサンドして横に捻る。


白井は我と同じく戦闘用スーツで身を覆っている。しかもその戦闘用スーツはフルアーマー。見るからに防御力は高い。

打撃を繰り返す場合。その防御力に挑むことになり効率がわるい。

だが捻り技であれば関係ない。

特に白井のフルアーマーは関節の可動域と機動性を犠牲にして守備力をあげるコンセプトのようである。


このような捻り技が決まりやすい。

スキルによるごり押しができぬ今、このような技が必要になる。

多少、危惧したが我の技は十分通用するようだ


白井を捻り投げの形で地面にたたきつける。


「! ・・・撤退です。」

ライオンマンと対峙していたミスクロウが白井の危機を察し、我と白井の戦いに乱入。

転移のスクロールを利用して退却した。



---from shirai side---


目を覚ますと天井が見えた。

建物内だ。


洞窟内で戦っていたはずだが?


オレは体を起こす。

首に痛みが走る。


そこは最近、専ら拠点にしているホノカの研究所だ。

ホノカがレンジャーワンに敗れて空き家になっているのを我が家同然として使っている。


ここにオレがいるという事は敗れたということか。

首の痛みを抑えつつ、煙草に火をつける。


「・・・怪我しているときぐらい煙草はやめたらどう?」

ミスクロウが現れた。

この女。

表情が読めないが心配はしてくれてはいるのだろう。

オレをこの場所に避難させたのも彼女に違いない。


「こればかりはやめられない。煙草がある帝国が悪い。」

「・・・無茶苦茶な理屈ね。」

彼女はコトリとオレの前にカップを置いた。

いい香りと湯気がたっている。

オレは香りを味わう。

「フン、紅茶か? 地底でもあるのか?」

「・・・地上産だそうよ。最近出回っているようね。」


なるほど、地底でも地上の紅茶が楽しめる。

おそらく地上との交易をしている石の国からなのだろう。

そこから各商人の手を渡り徐々に帝国を含めた各地底国家でも地上のものが手に入るようになったか。

伊藤女史の交易が徐々に実を結んでいるようだ。


「・・・珍しい、そんな顔するなんて。それほど紅茶が好きだったの?」

「いや、嫌いだね。」

「・・・なら、なんでそんな顔を?」

「そんな変な顔してたか?」

「・・・ええ、珍しく笑ってた。」

「笑ってた? オレが?」


しばらく、考えて、

「なら、そうなのだろう。」

と返事にならない返事をした。

「・・・あなたってわからない。」

オレは眉を顰める。

「唐突になんだ?」

「・・・嫌いな紅茶をみて笑う。この悪趣味な研究所を棲み処とする。・・・理解不能。」

「フン。」

オレはミスクロウの指摘を受けて、棲み処としているマッドサイエンティスト、ホノカの元研究所を見渡す。


奇妙な合成獣。他国の重鎮、そして同僚だった後藤。

それらが個々の巨大なビーカーに入り浮かんでいた。


それはまるでホルマリン漬けの標本だ。


ふん、確かに悪趣味な部屋だ。

自嘲する。


だが、今のオレに必要な部屋だ。

今は「温かい家庭」のような部屋はいらない。


オレは巨大ビーカーに浮かぶ元同僚、後藤を見る。

少しでもミスをすると俺もまた後藤のようになるだろう。

ああ、そうだ。今、必要なのはこういう部屋だ。

覚悟を継続するために必要な部屋なのだ。


「フン、オレの趣味を理解できんとはな。」


オレのセリフにミスクロウは一言


「・・・馬鹿?」


ちょ、ちょっと待て、馬鹿はないだろう。



---from aoi side---

「お主のお陰でドラゴンを倒すことができた。我が盲を開いていただき感謝する。」

あの唐変木の赤石が手放しで喜んでいる。


そりゃそうだろう。

手詰りだった状態が解消されたんだから。


これで彼がリサ教授から命じられている「石碑」探しも進むだろう。

赤石が青の国、川の国、石の国と各国を攻略するたびに「石碑」がないか捜索しているのを私は知っている。


ちなみに赤石が感謝しているのは私にではない。


アースドラゴンを2体を気づかれないような超遠距離から、2体同時に倒せる狙撃位置を割り出して一撃で倒す


という思いつきそうで、思いつかない作戦を立案した伊藤女史に対してだ。


私と山吹は今回の戦いではあまり活躍していない。


ヴァン・アース状態になったことで消耗し戦力にならなかった。

特に「魔法使い」である私は魔力が無くなるとできることは極端に少なくなる。


だから、今回の戦いで赤石が私にではなく伊藤女史を評価するのは正当なのだが・・・


「なんか・・・もやもやする。」

『あらぁ・・・戦術姫。戦術家のプライドを傷つけられましたか?』

「うっさい。カグヤ。だまれ。」

『ええっ。せっかくお姫様が嫉妬しているのに黙れなんて。嫌ですわ。こんな機会滅多にないですから。』

「ん? 私が嫉妬してる?」

『あら、あら、気づいてないのですか。』

コロコロとカグヤは笑った。


まったく、この元付人兼秘書兼副官兼護衛兼監視役のカグヤは人が困っていると喜び勇んでやってくる。倒されてスキルになったにも関わらずだ。


それにしても、私は伊藤女史に嫉妬しているのか。

「そーか、そーか。」


カグヤには癪だが、自分の今の心の動きが客観的にわかり、なんとなくスッキリした。

戦術姫は嫉妬なんてしてる暇はないんだ。

私はセルフコントロールのために大きく深呼吸をした。



【次回予告】

ドラゴンを倒し帝国に支配された地の国を解放すべく動き出すレンジャーワンと石の国ゴーレム軍団

圧倒的な戦力差で残った帝国兵を倒していく、そこに現れたのはヘドリアの弟だった。


次週、episode25 地の国の男

毎週 日曜日 9時30分 更新

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