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episode28 タクティクス

---from Chancellor Ymir side---

「ほう、それはそれは災難でしたな。」

私、宰相ユミルはミスクロウの報告を受けながら、別のことを考えていました。

彼女の報告は申し訳ありませぬが取るに足りませぬ。


ゴブリンキングが倒されたというだけの話ですので。

強いて言えば、彼女とゴブリンキングの相性が悪く心証がよろしくなかったということでしょうか。

あとでミスクロウのケアも必要かもしれませぬ。


それよりも


幸運なことに重要な情報がもたらされました。


偶然にも我ら帝国と同時にタイタンもアオイの勢力圏に攻め入っていたのです。

正直、タイタンが何の目的で急にアオイの勢力圏に攻めたのかは皆目見当もつきませぬ。

しかしながら、その結果が重要でした。


一つはタイタン達はレッドドラゴン3体を失ったとのことです。

これでタイタン軍に残るドラゴンはタイタン自身が駆るブラックドラゴンのみ。

ドラゴン、それも亜竜ではなくレッドドラゴン級となると不足したからと言って簡単に補充できるものではありませぬ。


今の状況であれば私とデビルフィッシュ殿で帝都奪還も可能でしょう。


二つ目はレンジャーワンの弱点が見えてきたという事です。

弱点、即ち3人しかいないということ。

彼らが脅威なのはレッドドラゴンすら一撃で倒すというその戦闘力です。


しかし、その戦闘力は3人そろってでしか発揮されませぬ。

今回、偶然にも我が帝国とタイタンが同時に攻め込んだことにより、その弱点を露呈しました。


具体的にはレッドが地の国にアオイとイエローが青の国と分散して対応しました。


奴らの勢力圏は青の国、川の国、石の国、地の国そして地上と五か国です。

川の国は石の国や青の国を通らなくては難しく、地上はタイタンに抑えられている帝都を経由する必要があるため直接、兵を送ることは難しいですが、それでも3か国には同時に兵を送る事は可能です。


さて、3か国に同時に攻め込んだ場合、彼の戦術姫はどのような対応をするでしょうか?

今から、楽しみですなぁ。


おっと、いけませぬ。

私の一存で進めてよい案件ではないですな。

早めに帝王様に具申しなければいけませぬ。



---from aoi side---


「まずい。」「まずいですね。」「まずいですわね。」

私と山吹と伊藤女史が同時に頭を抱える。


何がまずいかと言えば、今、会議で出されているお茶請けのことではない。

このコーヒードーナツは苦い珈琲との相性は抜群だ。

そば粉をいれているのがポイントらしい。


それはともかく。


私達が頭を悩ませているのは防御策についてだ。

前回、帝国とタイタン達が同時に攻めてきた。


そこで私達は手分けして迎撃した。

そこでまではいい。

山吹の機転で大事に至らず済んだ。

これもアイツの「幸運」スキルの効果だろうか? ああいったスキルはいまいち効果がわかりづらい。


それはともかく「手分けしてことにあたった」というのが重要だ。

今回は2方面からだったが、これが3方面だったらどうなるだろう?

その3方面から攻めてきたのが全てレッドドラゴン級だったらどうなるだろう?


ドラゴンを倒せる火力を持つ山吹なら戦える。

だけど、私や赤石では難しいだろう。

1勝2敗で負ける。


これは転移のスクロールが入手できるようになったから、レンジャーワンが3人しかいないという問題が解決されたようにみえたが、実際は解決してなかったということ。


理論と現実がズレるということはある。

それが些少なら修正しながら進めればよいが、これは致命的なズレだ。

このまま進めるにはリスクが大きすぎる。


「それに、これは私の立場からの発言ですがあなた達が地底の国々で戦っているときに地上を攻められた場合を私は危惧します。」

伊藤女史が不安を口にする。


そうか。


その可能性もあるか。


ええっと。

地上を攻める場合のルートは?


まず、私達が通ってきた直通トンネルがある。

ただしこれは90度。

垂直に掘られているのでスキーズを利用しての移動専用。

地上付近には防御装置もある。

ここを通っての地上戦は難しいだろう。

また、このルートを知っているのはタイタン軍だけ。

帝国がこの垂直トンネルを知っている可能性は薄い。

それにタイタン軍が占拠している帝都を通らないといけない場所にある。

注意すべきはタイタン軍だけだ。


次に正規ルートを考えてみる。

地上に出るには新たに帝都に出現したダンジョンを通る必要がある。

となると帝都にいるタイタン軍を警戒していればよい。


ん。まてよ。

タイタンのいる帝都を抑えちゃえば地上への進撃を抑えることができないか?

そして水の国も帝都を抑えてしまえば攻められることがなくなる。


それに今の問題点はレンジャーワンの人員に対して守る場所が多いという事だ。

完全解決には程遠いが、守るところが少なくなれば軽減できる。


私はそのことを山吹、伊藤女史に伝える。


「地上が安全で、垂直トンネルや水の国。川の国を気にしなくてよくなるというのは魅力的ですね。ただ、地底のゴタゴタに巻き込まれてしまうのはいただけないですが。」

伊藤女史は思案顔だ。


「うーん。どうなんでしょ。こちらの都合で攻めるというのはなにか違う気がします。」

山吹も思案顔だ。


そうか。

そうだよなぁ。


私も帝国に毒されたかな?

帝国は身もふたもない言い方をすると侵略国家。


自らの国のためとなれば他国がどうなろうと厭わないというスタンスだ。


しかし・・・

普通なら伊藤女史や山吹の考え方が正道だろう。


『ねえ。お姫様』

「なによカグヤ。私は考え中なの。」

『タイタン様と戦う。デビルフィッシュ様と戦う。宰相ユミル様と戦う。帝王様と戦う。先程のお考えでのは敵対するものすべて滅ぼさないといけなくなりますわ。』

「む。」

『それが願いではないでしょうに。』

「まともな事いうじゃない。」

『ホホホ。おほめに預かり光栄ですわ。アンタには覇道は似合いませぬもの』


わーった。

わかったよ。

先程の、「帝都をとる」という私の策は下策でした。


しかし・・・


じゃあどうする?


「タイタンと手を組んではどうか?」

突然、赤石が口を開きます。


ビックリしたぁ。


いやあ。いることはいたんだよ。

赤石


でも、一言も発せず空気みたいになってたからね。

それが急に意見言うんだもの。

ビックリするよ。


「ヘドリアもおそらくそうするであろう。」

赤石はそう続けた。


---from yamabuki side---

うーん。

僕は考えます。


正直、甘く見てました。


最初。

ドラウプニルを貰って。

レベルやスキルといったものに触れた時、今思えば大変、不謹慎ですがゲームだ。

と喜んだんです。

そしてダンジョン攻略です。

まるで3DRPGみたいじゃないですか。

敵を倒すとスキルが手に入るというのもゲーム的です。


最初はスキルを上手に扱えませんでした。

でも、レーヴァティンの特訓以降。ちょっとコツをつかんだみたいです。


僕には赤石クンのように直接、切った張ったは難しく、そうではないスキルの使い方だと上手に活せるようです。


今ではレッドドラゴン3匹を倒せるようになりました!

これってすごいことですよね。


実はあの後 LEVELも3上がりました。


いやあ、ゲーム的ですよね。


そのうちにタイプ変更できるようになり。


そして今度は国盗りSLGみたいな展開になっています。

どこをどうやって攻めるみたいな。


ここでふと思いました。


【このゲームって誰が作ってるんだろうって】


ゲームってルールを作る人がいるから成り立つわけです。

これが仮にゲームだとしたら、作っている人がいるはずなんです。


普通に考えると、僕にドラウプニルをくれたあの3人です。

お礼って言ってましたからね。

僕が楽しめるようにてくれたのかなー

と思ってました。


でも、【違う】と僕のスキル「直観」が告げています。


話しは横道にそれますが、僕が素人ながらあまり大怪我しないでこれたのはスキルの「直観」と「強運」のお陰だと思っています。

ですから、それだけ「直観」には信を置いています。


なぜ、このように僕が考えたかというと、地底の国々の暮らしを見てしまったからです。

当り前ですが、普段の暮らしはゲームではありません。


それをゲーム化しようとしている何かしらの意思を感じると「直観」さんは告げています。

何かこう、あの3人や帝王、タイタンですらうまく動かされているような気がしています。


ここで僕はこの流れに流されないようにしようと思います。


先程、アオイちゃんがタイタンのいる帝都をとるのはどうかという提案をしてきました。

国盗りSLGであれば最適解です。


でも、僕はそこで暮らす人たちを見てしまいました。

ゲームではないのです。

実際に暮らしているのです。


仮にゲームメーカーがいるとして、「りさ教授の遭難」も「あの3人がドラウプニルを僕に与えたのも」「アオイちゃんが帝国から離反したのも」「タイタンが帝都を奪取したのも」

更にはもっと遡って「地底帝国という統一国家ができたのも」そのゲームメーカの思惑なのであれば少しづつそのゲームメーカーの思惑から外れてみたいと思います。


---from Titan side---

「ちぃ。」

俺は舌打ちをする。

最悪だ。


あ? 何が最悪かって?

レッドドラゴン3体失ったことだよ。

あれはぁ。簡単に補充できねぇんだよ。


そうなると、どうなるかってぇと

こうなるわけだ。


そう言って俺ぁ二通の手紙をぶん投げる。


一通は帝国からだ。


内容はシンプルだ。

これから攻めるとよ。

わざわざ手紙をよこす余裕が気に喰わねぇ。


まあ、実際余裕だろうな。

宰相が乗騎の三つ首ドラゴンを駆り、1対1ならドラゴンと戦えるデビルフィッシュが二人できたところで、対応できるのは俺だけだ。そしてさすがの俺も二人相手は厳しい。


これでまだレッドドラゴンがいれば話は別だがな。

忌々しい。


もう一通はアオイからだ。

「争うのはやめて手を組まないか。まずは話あわないか」だとよ。

足元見てやがるのが気に喰わねぇ


この手紙がアオイ達と戦う前なら「弱腰になって俺様を頼ってきたか。」と笑うところだが状況が違う。


俺達はアオイのところに攻め込んで、レッドドラゴン3体を失う大敗したところだ。

その直後ってのが気に喰わねぇ。

言い方は柔らかく言ってるが、これはアレだろ。

「レッドドラゴンが攻めてきたって迎撃できるんだぞ。お前ら逆にレッドドラゴン失って大変だろ。大人しくこっちにつけよ。」っていう事実上の降伏勧告だろ。


・・・いつから、こうなった?

俺達ぁ、帝王すら帝都から追い出すことができる実力者だぞ。

それが一転窮地に追いやられている。


気に喰わねぇ。


俺ぁ集まってきている部下どもを見る。


プロミネンス・ライト・ファイアといった子飼い

レジスタンスと名乗る、旧国家群の王侯貴族ども

そのレジスタンスの実働部隊を率いるブルーフェイス一行ども

そして帝都陥落と同時に俺に鞍替えした元帝国貴族ども


だめだ。


誰も彼も帝国どころかレンジャーワンに勝てるとは思えねぇ。

帝国貴族なんざ、帝国が攻めてきた時点で再度、帝国に寝返る未来しか見えねぇ


唯一戦力に数えられるのはプロミネンスか?

あいつはデビルフィッシュの副官 ライオンマンを倒す寸前までいったからなぁ。

それ以外はどうにもできねぇだろ。


「タイタン様。両方は相手できませぬ。アオイ殿と手を組んでみてはいかがでしょう?」

「あぁ?」

俺ぁ、話を進めた相手を見る。

レジスタンスと名乗る、旧国家群の王侯貴族の一人だ。


何言ってるんだぁ。こいつはぁ


俺は頭をめぐらせる。


ああ、そうか。

こいつらレジスタンスは帝国に滅ぼされた元王侯貴族で構成されている。

こいつらの目的は自国の王侯貴族に再び返り咲くことだ。

その目的に照らし合わせると、帝都に居座って動かねぇ俺よりも、他国を開放しているアオイの方が都合がいいってわけだ。


駄目だぁ。こいつら

アオイがきたら寝返る未来しか見えねぇ。


(。´・ω・)ん?


レジスタンが寝返るってぇことはブルーフェイス達もってぇことか?

「おい、ブルーフェイス。」

「はい。なんでしょう。」

相変わらず本心が読めねぇ笑顔だ。

「テメェも同意見か?」

俺の問いにブルーフェイスは珍しく間を置いた。

なんだ? 何を考えていやがる。

「私は私のマイスイートハニーに嫌われてましてね。彼女のところに行きたいのですが、いけないのですよ。」


は?


あーっ、確かにこいつは青の国を裏切った奴だったな。

それでアオイの奴が帝国に敗北したと聞いてる。

なるほど、こいつはアオイのところにはいけねぇわな。


ここまで話ししたところに文字通り物理的な衝撃が走る。

なんだぁ?

地震か?


いや、これは何かがこの建物にぶつかったとしか思えねぇ。


そこに伝令がくる。


「帝国軍が現れました!」


ちぃ、さっきの衝撃はあいさつ代わりってことかよ。


俺はチラリと集まった野郎どもを見る。

帝国貴族はぁ裏切るだろうな。

この戦いに計算できるのはプロミネンスとブルーフェイスぐらいか

この手駒でどう絵を描くかな?


俺は考えがまとまらないまま立ち上がった。



---from Blueface side---

ふーむ、困りました

なぜか上手くいかないんですよね。


青の国に帝国が攻めてきたとき、これは対抗するに無駄だと思いました。

なにせ相手はレッドドラゴンをつれてきてますからね。

これは逆に帝国に味方して、私の高貴な血を残した方がよいと考えました。

私の高貴な血が絶えるのはこの世の損失です。

その方が私の栄達にもつながります。

攻められて負けて敗戦国の王族として処刑されるか、逆に勝つ側について栄達するかの2択であれば迷わず後者を選びます。


そして帝国に味方し、帝国が青の国を手に入れる手助けをしました。


ところが、帝国は、そんな私を。最大の功労者の私を評価せず、軟禁し、逆に徹底的に抵抗したマイスイートハニーを評価して四天王のポジションを与えました。


おかしいです。


その四天王のポジションは最大の功労者である私が座るべきポジションなのです。

確かにアオイは可愛らしい妹ですが、それだけなのです。


しばらく軟禁状態がつづいていましたが、タイタンが反旗を翻し帝都を奪取したおかげで私の運命も好転しました。

その時にタイタンと行動を共にしていた亡国の王侯貴族で組織されたレジスタンスや昔の冒険者仲間であるブルータス達に救出され、そのままタイタン軍に味方することになりました。


今度こそ運がむいてきたと思いました。

なにせあの帝王から帝都を奪取する実力者のもとにつくことができたのですから。


ところが今、帝国の逆襲を受けピンチになっています。

かといって、地上と手を組み、もう一方の勢力であるマイスイートハニーのところにいくには難しいでしょう。


青の国を裏切った私を許すとは思えません。


このままでは帝国にタイタン軍として倒されてしまうでしょう。


それだけは避けなければなりません。

この私の高貴な血を絶やすことがあってはいけないのです。


なかなかうまくいきません。

が、こんな時こそ知恵の使いどころですね。



---from Titan side---

「ふーっ。ふーっ・ふーっ。」

俺ぁは息を整える。


やっぱツレェな。


俺ぁ、目の前のデビルフィッシュを睨む。


「ふぉふぉふぉ。タイタンよ。せっかくの四天王同士のバトル。楽しもうではないか。」


ちぃ。笑ってやがる。

四天王同士っていってもテメェはずば抜けた格闘能力だけで四天王になったアホだろうが。

俺ら戦術も含めて四天王に起用されたのとは違う。


とは言え、この格闘バカとは一対一の状況で戦うのは改めて不利だ。


とはいえ一対一ではない戦いをするとなるともっと不利だ。

俺ぁ、デビルフィッシュの後ろで楽しそうに見学している帝国軍を見る。


宰相ユミル。そしてその宰相がのる三つ首ドラゴン。

これだけでも脅威なのにアースドラゴンが2体

そして、その軍団。


対する俺達は。

プロミネンス、ファイア・ライトにブルーフェイス一行と軍団しかいない。


まともにぶつかれば負ける。


だからデビルフィッシュが俺たちが戦場に到着したときに「せっかくだ。サシで勝負しよう。」と言った時は、ありがたかった。

敵がドラゴンを率いているという有利を、奇襲できるという有利をわざわざ捨ててきてるんだからな。

ここでデビルフィッシュを倒せば、まだチャンスはある。


そう思っていた。


だが、実際はどうだ。

この格闘一辺倒の蛸頭に苦戦中だ。

我ながらざまぁねぇ。


それに、デビルフィッシュはまだ遊びだ。

こいつは真の化け物に変化する。

本人は神とか言ってるがな。

あれはぁ、バケモンだ。


いま、この人サイズの内に倒さなければならねぇ。


まともにぶつかれば、負ける事はわかった。

ここからは魔法もスキルも組み合わせていく。

卑怯とは言うなよ。


俺ぁスキル「魔闘術」を発動させる。

多量の魔力と引き換えに攻撃とスピードを2段階引き上げるスキルだ。

地味だが効果は抜群だぜ。


再び、俺ぁインファイトにするために近づく。

へへっ。こういうのは好きだろ。


「おお、楽しもうぞ。くるが良いタイタン。」

案の定、デビルフィッシュは上機嫌で待ち構えていた。

軽くジャブからパンチを繰り出す。

軽くとは言ったが魔道具ファイヤーナックルを装備しているからな、触れたらやけどするぜ。

やけどをきらい、俺のパンチをかいくぐりミドルキックを放ってきやがる。

こいつのミドルキックは重くて嫌なんだよな。

だが、展開は狙い通り。

ここで俺ぁ。オーバーハンドで殴りにかかる。

「ふぉふぉふぉ。そんな大ぶりなパンチが当たるとでも。」

デビルフィッシュが余裕をもってわずかな動きだけで躱す。


ふん、当たるとは思っちゃいねぇよ。

俺はテメェの格闘に付き合う気はないからな。

そのオーバーハンドで繰り出したパンチを地面にたたきつけ。

「ガラ空きだぜっ! melta diki」

魔法を唱える。

火と土の複合魔法。溶岩の穴をつくる魔法だ。

コイツをデビルフィッシュの足元に出現させる。


「ぬおぉ。なにぃ!」

デビルフィッシュの野郎は突然足元が溶岩となり、なすすべもなく溶岩の穴に落ちる。

「燃えろぉぉ!」

ダメ押しとばかりに魔道具ファイヤーナックルで殴りつけ溶岩の穴にデビルフィッシュを押し込む。


「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」

デビルフィッシュの断末魔の叫びだ。

真の姿を出す前に倒すことに成功した。

ざまぁみやがれっ!


よし! あとは宰相ユミルと三つ首ドラゴン。そしてアースドラゴン2体をどうにかすれば勝てる。


俺ぁ、背後に控えるブラックドラゴンに乗るべく走る。

この後、宰相ユミルの駆る三つ首ドラゴンと戦うに必要だ。


-その時。

「・・・ぐあぁ。貴様っ!」

ファイアの声が聞こえた。


見ると


ファイアがブルーフェイスの仲間である手斧を両手にもった赤い魔法使いの格好をした三角髭の老戦士マンタに背後から斬りかかられ。


同じく、ブルーフェイスの仲間であるおさげのビキニアーマーを装備した戦士が放つメガネビームに胸をつらぬかれていた。


「なっ、ファイアっ!」

なっ。何がおきてやがる。


崩れ落ちるファイア。

その姿がスローモーションに見える。


ファイアの横にいたライトが剣を抜く。

が、ライトの後ろにまわったブルーフェイスの仲間。僧侶の格好をしたマッチョのブルータスが首を絞めて落としやがった。

「さあ、行きましょう。」

いつのまにかブルーフェイスとその仲間ゴンザエモンがオレの乗騎であるブラックドラゴンに乗っている。


「あいつら・・・まさかっ!」


俺は嫌な予感がして走る。

そうこうしているうちにブルーフェイス一行全員がブラックドラゴンの背に乗る。

「ブルーフェイスの旦那。本当に乗れるんですよね。」

「私を舐めないでいただきたい。この程度はもんだいありません。」

そんなやり取りのあと、ブラックドラゴンはブルーフェイス一行を乗せて飛び上がり。


「なぜだっ!」


ブラックドラゴンの主人は俺だ。

俺以外を乗せるなんてありえねぇ。


そう思ってよくよく見ると、ブラックドラゴンの首に隷属の首輪という魔道具が装着されていた。

隷属の首輪は簡単に言えば奴隷にしてしまう魔道具だ。

あいつら俺のブラックドラゴンを奴隷にして盗みやがったっ!


そのままブルーフェイス一行を乗せたブラックドラゴンは白旗を振りながら、帝国の宰相ユミルのところへ不時着した。

「はあ。また裏切りですか。節操のない・・・。」

宰相ユミルがため息をつきながら、それでもブルーフェイス一行を迎え入れている。

「裏切りとは人聞きが悪い。私は帝国に勝利とブラックドラゴンを献上しにきたのです。」

「まあ、宰相さんのいうこともわかるがここは頼むわ。」

「お願い。お願い。」

「そうっスよ。今ならブラックドラゴンいないので余裕でタイタンを倒せちゃいますよ。」

「そうだぜ。目の前の勝ちを取りに行こうぜ。」

ブルーフェイス一行が思い思いに勝手な事を述べてやがる。

「・・・はあ、まあいいでしょう。確かにタイタン子飼いの戦士も倒れ、相手にブラックドラゴンがいなければ、こちらの敗北は万が一にもありませぬな。」

ちぃ。宰相ユミルはブルーフェイス一行を迎え入れやがった。


確かにこれでは勝ち筋がねぇ。

ライトやファイアの容態も気になる。

くそぉ!ここは撤退か。


「タイタン様!」

プロミネンスが慌ててくる。

「どうしたっつ!」

「ここで元帝国貴族が裏切りました。退路を断たれています。」

「・・・・!」

裏切るとは思ったが、ここでか。


「ふうむ。勝敗は決したようですな。タイタン殿。かつての同輩。思うところはありますが、帝国を裏切った罪は重い。ここで討ち取らせてもらいましょう。」

宰相ユミルがそう告げると同時に俺が先程、魔法で作った溶岩の穴から何かが飛び出した。


何かがって言ったが、そこから飛び出してくる奴ぁ一人しかいない。


くそったれ。死んでなかったのかよ。

溶岩でも死なないとはな。化け物め。

「デビルフィッシュ!」


「ふぉふぉふぉ。吾輩は神に至らんとするもの。この程度で倒されるわけにはいかぬ。」

復活したデビルフィッシュは真の姿となっていた。

全身に鱗。悪魔のような鉤爪に翼。蛸頭に付属する蛸足が増えた巨大な姿に。


さすがに溶岩の中にいたためノーダメージではいかなかったらしい。

全身がケロイド状になっていた。


それも一瞬。

ボロボロとやけどのダメージを受けた鱗が 皮膚が 触手が地に落ちると、新たにぬめりを帯びた奴の体が戻ってきた。


なんてデタラメな再生力だ。

この再生力で生き延びやがったのか。


「ふぉふぉふぉ。宰相殿には感謝せねば。宰相殿の神に至る御業のお陰で溶岩に落ちようとも生き延びることができる神のごとき体を手に入れたわ。」

「まだまだですぞ。デビルフィッシュ殿。今回は機を逃してはなりませぬので、神に至る御業をいったん中止して、此度の戦にさんかしてもらいましたが、戻りましたら再び御業の続きを受けていただきます。そのためにも、速やかにあそこにいるタイタンとレジスタンスを倒していただかないといけませぬ。」

「ふぉふぉふぉ。ということだ、タイタン。お主とは同じ四天王の同輩という縁もあり、吾輩もいろいろ思うところはあるがここらでご退場願おう。」


・・・。


俺ぁは首をゆする。


ふー。


ここまでか。


目の前には真の姿を見せたデビルフィッシュ

三つ首ドラゴンにまたがる宰相ユミル

アースドラゴン2体

裏切ったブルーフェイス一行に隷属させられた俺のブラックドラゴン


後ろには裏切った帝国貴族ども


勝ち筋が無ぇ。


どこで舵取りを間違えたか。

いや、それも今となってはどうでもいいか。


降伏は・・・無ぇ。

帝都を奪ったんだ。

降伏したところで晒し物になって処刑されるだけだろう。


なら、勝敗なんざ。そんなの関係ねぇ。戦って、戦って、戦いぬいてやる。



---from devilfish side---

ふぉふぉふぉ。さすがはタイタン。

絶体絶命のこの場面で闘志を燃やし向かってくるとは。

あっぱれ。


思えばタイタンは四天王の中でもとびぬけてていた。

その最たるものは副官殺し。


帝国は強者を愛するがゆえに敵国の強者を四天王に登用としてきた。

同時に裏切らぬように副官を派遣した。


アオイにはカグヤ殿

ヘドリアにはダル殿

吾輩にはライオンマンにミスクロウ

そしてタイタンにはファスト殿


その帝国から派遣された副官はそれぞれの担当する四天王に対抗できるピーキーな能力をもっておる。


わかりやすいのはアオイとカグヤ殿の関係であろう。

魔法を得意とするカグヤに魔法無効化のスキルをもつカグヤ殿だ。

いくらカグヤ殿が超絶魔法を繰り出そうとも、カグヤのスキルで無効化されてしまうであろう。


その帝国の目論見を逸早くつぶしたのがタイタンだ。

彼の副官はファストといった。

とりたてて優れた武勇があるわけではないが、彼は「炎吸収」のスキルをもっていた。

これは炎を吸収し、場合によっては吸収した炎のエネルギーを無属性の魔力の塊として跳ね返す。

炎の魔法使いであるタイタンには相性の悪い相手だ。

だからこそ楔になりえた。

そのファストをタイタンは倒した。

その時点で奴は帝国と対等になった。つまりは四天王筆頭となった。


そのタイタンを今、吾輩が尊敬の念をもってひねりつぶしてくれよう。



---from Titan side---


「スキーズ。大砲の出番です!」

『イエス。マスター!』

「ドラゴンブレス!」


うおっ。なんだ。

それにこの声はっ!


驚く俺の前に5筋の光線が走る。

この光はドラゴンのブレス攻撃か!

それもレッドドラゴン級の!


5筋のドラゴンブレスの内、2筋のドラゴンブレスは帝国の2体のアースドラゴンを撃破。

他のドラゴンブレスは宰相ユミルの騎乗する三つ首ドラゴンを吹き飛ばし、

ああっと! ブールーフェイスに隷属させられた俺のブラックドラゴンまで吹き飛ばしやがった!


そして最後の一筋は、化け物化した巨大なデビルフィッシュに命中。

奴の巨体に巨大な穴を穿ちやがった。


俺ぁ慌ててブレス攻撃をしたと思われる後方を振り向く。


「ちっ」

俺は舌打ちをする。


先程の声で予測はついてはいた。

けどよう、本当にいるとはこの目で見るまで確信が持てねぇじゃねぇかよ。


俺が振り向いた先には奴らがいやがった。


空飛ぶ船にのった地上の勇者 レンジャーワンの姿が。




---from akaishi side---


「ぬう。あれは帝国軍か。」

我は空飛ぶ船スキーズに乗り、眼下に広がる軍勢を見下ろす。

「そうね。こちらにはタイタンの軍勢ね。どうやら、帝国軍が帝都奪還に動いたのと鉢合わせしたみたいね。」

アオイが難しい顔をする。


うむ。


我らは帝都を抑えているタイタンとの和平交渉のため帝都に赴いた。


事前に使役する雷獣による電波通信が可能なメンドーサに御願いし、こちらの意向をつたえていたため赴いたとていきなり襲われるという事はないのではないかを考えてはいたが、まさかタイタンが帝国に攻められていたとは想定しえぬ事態であった。


戦況を俯瞰するにタイタンが劣勢であるようだ。

敵にドラゴンが合計四体。前に見たことのある宰相ユミルの駆る三つ首ドラゴンやアースドラゴン2体。それに黒いドラゴンもいるようである。


対するタイタンのドラゴンはゼロ。


いかにタイタンと言えどこのドラゴンの数による差は大きいであろう。


それにあれはデビルフィッシュであろうか?

巨大な化け物がタイタンと対峙している。


このままタイタンが帝国に敗れるとなったら我らも一大事である。


「まずは、あのドラゴンとデビルフィッシュさんを何とかします!」

山吹はそう言うと空飛ぶ船スキーズに搭載されている5門の大砲をそれぞれドラゴンや巨大な姿となっているデビルフィッシュにむける。

そのあとドラゴンブレスのスキルを発動。

このスキルはスキーズがドラゴンブレスを撃てるようにする準備・変形の時間が必要なため戦闘中の活用は難しいが、戦闘開始前の今であれば有効に打撃を与えることができるであろう。


「スキーズ。大砲の出番です!」

『イエス。マスター!』

「ドラゴンブレス!」

山吹がスキーズにドラゴンブレスを指示

スキーズに装着されている5門の砲身からドラゴンブレスが放射される。

そのドラゴンブレスは帝国の4体のドラゴンに命中。少なくともアースドラゴンの2体はこれで倒した。

さらに巨大な化け物の姿となったデビルフィッシュにも命中。

体に巨大な穴を穿つ。


「むう。」

デビルフィッシュ。

何と理不尽過去とか!あれで倒れぬか。


「レッド。ボーっとしていない! いくよ。」

アオイが声をかけてきた。


うむ。その通りだ。


「まずはデビルフィッシュからでいいね。」


アオイが標的の指示をくれる。


正直ありがたい。

1対1、または有象無象相手なら順番など考えなくてもよいが、この場面はそうではないだろう。倒すべき優先順位を決めてくれるのは助かる


「来るがよい。我が眷属 シアルフ!」

「おいで! フレキ!」

我とアオイが同時に眷属を呼び出す。


アオイが呼んだのは巨大な機械仕掛けの狼フレキ

フレキは自身の召還と同時に無数の魔法の鎖を地面から召還。

デビルフィッシュを絡めとる。


ドラゴンブレスで貫かれ体に大穴を開けているデビルフィッシュは抵抗らしい抵抗できずに鎖にからめとられるがままである。


「ふむ。デビルフィッシュよ。とどめだ。」


肩から背中にかけて力を入れる。腰を捻転。腕を鞭のように広げ体に巻き付ける。

「吐ーッ!」

捻転を戻すと同時に高速で 掌底をデビルフィッシュにむかって突き入れた。

体がバネが戻るかのような速度で回転する。

そこから速射で繰り出される大砲のような我が最も得意とする片手突き。


『Mjollnir hamme』

機械音と同時に右腕装着されている二回りも大きな円筒形の腕あてから放電。

電撃が走る。


「■■■■!」

デビルフィッシュの体が爆散し、倒れる。



「GYAAAA!」

間髪入れず別な場所から急な雄たけびがあがる。


見ると先程のブラックドラゴンが暴れている。

ぬう?

あれは逆に帝国を攻撃している??

近くにいた・・・ぬう。あれはアオイの兄達ではないか?

そのアオイの兄たちを蹴散らし、帝国の宰相ユミルを攻撃している。


「ヒャッハー! 先程の攻撃で隷属の首輪が外れたか!来いブラックドラゴン!」

タイタンが走り、ブラックドラゴンに騎乗する。


ぬう。そういえばタイタンはブラックドラゴンに乗っていたな。

あれはタイタンのブラックドラゴンであったか。


このまま、タイタンはブラックドラゴンとともに帝国軍の中に突入。

暴れまわる。


我らもその動きに追随する。


我らとタイタンは帝国を撃退し、撤退させた。



【次回予告】

今回の戦でもっとも痛手を被ったのが帝都を本拠としたタイタン軍であった。

その機を逃さず戦術姫率いるレンジャーワンが帝都へ進撃する。


次週、episode29 タイタン

毎週 日曜日 9時30分 更新

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