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仮想の水 - Waterland of Inworld  作者: uota
第1章 誘い
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第1章 第40話 残された印

「このあたりだったよね。何か残ってないかな」スロウさんにノーキョさんが聞いた。


 水浸しになったところを少し探して「炭ばっかりだね」とスロウさんが言った。


「なにしてたんだろ」


「犯人は現場に戻るっていうし、やっぱり怪しいな」スロウさんはボートの去ったほうをじっと見ている。


「ほんとに片付けしに来たんじゃないかな」


「それなら、あのボートはどこに行ったと思う?」


「それはそうだな。島からボートで離れる人ってほとんどいないからね」


「それにあのボートは普通じゃない。えらく早くかった」


 スロウさんは去ったパーカーを犯人と確信しているようだ。燃えた木を片付けながら、何かみつからないかとまわりを探しているとコピが来た。


「お、コピ、お昼寝してきたかい?」少し元気になったような顔で頷くのを見て安心した。


「じっじ、これ」何かを手に持っている。


「これ、みつけた」とこちらに小さな手を差し出した。


「これは? ボタンかな。どうしたの?」


「ここにおちてた」


「え、今日みつけたのかい?」


「うん」


「ノーキョさん、スロウさん、ちょっといいですか」少し離れたところを探していた二人を呼んだ。


「これが、ここにあったらしいです」


「なんだろ、bかな?」スロウさんが指先で汚れを落としながら言った。


 スロウさんから渡されたノーキョさんが、「bかqだな。なにかのバッチかな。ボタンじゃないような」


「aでもcでもなくてbか、pでもrでもなくてqね」スロウさんがこれだけじゃ何もわからないと言いたげに首をかしげた。


「島では見たことないな……」とノーキョさんもお手上げだというようにつぶやいた。


「前から落ちてたのかもしれない」と言うと、「なかった」とすぐにコピが言った。コピが言うなら間違いない。だとすると、やはり火事のときに落とされたものだ。


 このあたりはノーキョさんが消火していたところですね」と聞くと、「そうなんです。もう1人いたけど島の人だし……でも、あとで聞いておきますね」


 3人で頭を悩ましているところにミリルさんが来た。


「みなさん、ゆっくり休めましたか? あ、コピちゃんも来てたのね。ごめんね寝ちゃって」


「温泉のほうは楽しめました?」


「ミリルさんも早く入ったほうがいいですよ。すごく幸せな気分になれるから。まだ、ネモネさんがいるんじゃないかな」とノーキョさんが言った。


「じゃあ、このあと行ってみますね。それで、オルターさん、ハトポステルが来てましたよ」


「誰からでした?」


「トラピさんから。これです」


「あ、ナミナさんが伝えてくれたかな」小さく巻かれた手紙を伸ばした。


「ミテホシイトコロ ガ アリマス リアヌシテイ ノ サーカスゴヤ デ マツテマス……」


「何かわかったんでしょうか」とミリルさんがこちらの顔色を伺っている。


「トラピさん、急いでいたのだろう名前も書いてない。もしかしたらナミナさんが書いてくれたのかもしれない」


 すぐに来てくれと言ってるように感じた。何をみつけたのだろう。トラピさんのことだからノートに関係した何かをみつけたに違いない。それも一度もメーンランドに行ったことのない私に来いというからには、かなり確信を持てる手がかりを見つけたのだろう。


「ミリルさん、トラピさんたちはいつまでの予定でした?」


「出る前には、2、3ヶ月と言われてました」


「ちょっと、戻ってすぐ返事を書きますね」


「オルターさん、火事の後は僕たちでなんとかしますから行ってきてください」とノーキョさんが言うとスロウさんも頷いた。


 次に船長が来るまで、一週間もないだろう。この年になって飛行船は考えられないから、船長に頼んで船に乗せてもらおう。早ければ2週間後はメーンランドだ。火事の後始末のほうは二人にまかせて、すぐに準備をしよう。新しい新聞も持っていかないと。あまりに遠いせいで今まであまり考えることがなかったメーンランドが急に身近なものになってきた。自分のまわりで何かが動き始めている気がした。

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