第十伍話 【終結の時、蘇る刃、次の戦場】
この小説を待っていて下さった全国3/4人の皆様!
投稿が大幅に遅れてしまい!
(せーの)
申し訳ございませんでしたァアアアアアアアア!!(一人)
現実世界が忙しいのがいけんのんや・・・
そんなわけで、今回は大和くんの激戦に終止符が?
それでは、どうぞ!
「ギェィアアアアアアアアア!!!」
彼に与えられた龍の力が暴走して、彼の姿を見上げる程の巨龍に変身・・・した訳ではない。ただの猿叫である。
猿叫とは、前期薩摩藩士の使用する剣術にも見られた気迫を出すための動作である。
世間的には「チェスト」もしくは「チェリオ」と認識されているが全くそうではない。
流派や個人によって違うが、総じて首を占められた鶏や屠殺される寸前の豚の声に似ていると言われる。
そのあまりの叫びに、薩摩藩の藩主に「キチ○イだから、この剣術禁止な」と言われてしまうぐらいである。
それをこのヤマトという男が使う理由はただ一つ、剣術としてそれを修めたからだ。
この猿叫のメリットは力を通常以上に引き出せるし、声の音量で相手を怯ませることができる。
だがデメリットも存在する。まず「今から攻撃しますよ」と相手に教えることになるということ、そして一撃に全てを賭けるために周りに対して脆弱さを露呈することだ。
「ウガゥ!!」
そのデメリットもこの現状では考えるに値しない。まず彼の技量なら相手が察知したとしても対応できるし、周囲の敵はロウが牽制している。
その目を大きく見開いたヤマトは蜻蛉の型をとったままで、己の声を置き去りにするかのように突貫を開始した。
「ア ア ア ア!!!」
ヤマトが1歩ずつ踏み出すたびに速度が上がっていく。
ゴブリンナイトはヤマトの猿叫と気迫に圧されて初動が遅れたために対応できていない。
2人の距離が古い映画のように一瞬ごとに削り取られていく。
駆けるヤマトの足元に紫電が奔り、ヤマトの体がさらにブレる。
「グオオオオオオオオオオオオオ」
対峙するゴブリンナイトもようやく体を動かし始める。
だがヤマトの姿はすぐそこにある。
その為にゴブリンナイトが生き残るために取れる方法は手に握ったロングソードを交差して受け止めるために踏ん張ることしかなかった。
「ア ア ア ア ア!!」
既に亜音速に至ったヤマトがゴブリンナイトと衝突する時がついに来た。
亜音速にいるヤマトが紫電を纏った足で地面を踏む。地面に凄まじい力がかかるが、ヤマトは巧みにその力を剣に集中させる。
ゴブリンナイトは地面を踏み込んだヤマトが一瞬だけ完全に静止する瞬間、すべてのスキルを発動させて自身の筋肉を隆起させる。
「イェァアアアアアアアア!!」
「グオアアアアアアアアア!!」
二つの獣が衝突する。
凄まじい力をかけられているヤマトの剣は、空気をいとも簡単に切り裂いてゴブリンナイトに迫る。
ゴブリンナイトは地面をしっかりと踏みしめて交差したロングソードを握り直す。
衝突。
高く澄んだ音が響き、その後に金属同士が擦れ合う音が鳴る。
ヤマトの剣はゴブリンナイトが交差させたロングソードの一本を切り裂いたが、ゴブリンナイトはすぐさまその剣を放棄して最後の一本に全てをかけた。
その結果、次の一本には切れ目を入れるだけにとどまり、両者の鍔迫り合いが始まった。
「クッ・・・ガッ!さっさと往生せいやァ!!」
「グオオオオオオオ!!」
単純な膂力や腕力においては、ゴブリンナイトに分があるのは間違いない。だがヤマトは上手く潜り込んで下からカチ上げる形に持ち込んでいる。これではゴブリンナイトはその全力を出すことができない。
ふたりの力が拮抗し始め、一歩も引かずにせめぎ合う。
しかし突如、2人の力が交差するこの場に異変が起こる。両者の足元に徐々にヒビが入り始めたのだ。
そもそも亜音速の足の踏み込みを受け止め、さらに衝突の瞬間の衝撃まで飲み込んでいるのだ。もはや地面を結束させている力にも限界が見え始めていた。
そして地面が割れて2人を中心に小さなクレーターのようなものが形成される。
「そろそろ決めさせてもらうぜ・・・ッオオオ!!」
地面が割れて体勢を崩した両名は数歩分はなれることとなった。
その隙を見逃さなかったのはヤマトである。
アーツ【壱之太刀】を発動させて崩れた重心を無理やり戻しながら、斬撃を放つための体制に移行する。
それでもやはり勢いが微妙に足りない。瞬時に判断したヤマトは、片足に紫電を発生させて強力な磁気を発生させた。
「グガ?!」
大地から発せられている磁気が踏み込みの足が纏っている磁力を引きつけることで、地面に吸い込まれるかのように右足が踏み出される。それに引かれるかのように体が前に瞬間的に加速した。
それにゴブリンナイトは驚愕で目を見開き、それでも何とかロングソードをヤマトとの間に滑り込ませた。
ヤマトの肉体がうねりを上げ、筋肉に包まれる骨を押しつぶすかの様な音を鳴らす。それでも進むヤマトは、再び蜻蛉の型からの切り下ろしを放つための準備を終える。
衝突。
金属が砕ける音。
ヤマトによって地面ギリギリまで振り抜かれた剣は無残にも砕け散ってしまっており、その刀身はもはや数センチも残ってはいない。
対して自身のロングソードを砕かれ、その衝撃を受けて頭部から血を流してはいるものの、いまだ大地に両足で立つゴブリンナイト。
「グルゥア」
武器をなくした敵を相手に勝利を確信し、その凶悪な顔をさらに歪ませるゴブリンナイト。
その太い右腕を握り締めて、怠慢とも呼べる動きで振りかぶった。武器などは無くとも、防御力など無いようなものであるヤマトを屠るのには十分すぎると言って良い。
その時のゴブリンナイトは予想外の襲撃者をようやく黙らせることができたと思い、失念していたのだ。
目の前の牙を抜かれたはずのモノに感じた恐怖を。
「獲物を前に舌なめずりか・・・二流以下のやることだな」
ゴブリンナイトからはヤマトの体が影になって見えなかった場所、そこには砕けて使い物にならなくなった剣がある。
ただし、ヤマトに握られた柄に超高電圧の紫電をまとって。
その紫電は徐々に柄から砕けた刀身の破片に向かって行き、すべての刀身の欠片に行き渡っている。
それは紫電によって照らされる光の道であり。
獲物を狩る彼の牙である。
「俺を前に一度でも気を抜いたら・・・」
ゴブリンナイトが未だ折れぬ彼の牙に言い知れぬ恐怖を感じた。目の前の彼を早く屠るため、その拳を振り抜くために肩の筋肉を駆動させて拳を加速させようとする。
瞬間。
地面を走っていた微かな光の道を一層の光を放つ紫電が駆け抜けていき、最後の刀身の欠片に行き着く。それと同時に最後の刀身の欠片が光の道を戻り始めたのである。
欠片の一つ一つを回収していきながら光の道を戻っていく欠片達。そして一瞬で光の道の終着点である柄に集まった刀身の欠片は、紫電を纏う刀身を復活させた。
「掻っ切るぞ!!」
ゴブリンナイトが振るった拳よりも早く、復活した剣はヤマトの期待に応えて再度振り抜かれた。
斬!!
跳ね上げられた刀身はゴブリンナイトの体を切り裂いた。
血飛沫を吹き上げながら倒れていく死体を背に、ヤマトはまだ辛うじて結束を保っている剣を鞘に戻し、鞘の上から刀身を撫でる。すると剣は結束していた力を使い果たし、鞘の中で崩れた。
「つかれた・・・でも一応剥ぎ取っておかないと」
無理をしたことによって悲鳴を上げる体を引きずりながら、ゴブリンナイトの死体までたどり着いたヤマトはスキル【解体】を発動させた。
その時である、視界の端に仮想ウィンドウでポップアップが開いた。
『プレイヤー【ヤマト】によって指定討伐対象が討伐されました』
『それによってイベントは強制的に次のステージに移行します』
『次のステージは【市街戦】です』
『30分後に【始まりの街】に対してモンスターの攻勢が始まります』
『全てのプレイヤーは【始まりの街】に転移します』
『それに伴い、全プレイヤーのHPとMPを最大値まで回復します』
なんと、この森から出ていたモンスター軍を統括していたのが、先ほどのゴブリンナイトだったようである。
そのためにこの森林から出現するモンスターはこれで打ち止めとなり、次は【始まりの街】での【市街戦】になるとのことだ。
強制転移&全回復とは、これからも激戦が続くことの暗示であろうか。
「まあ、俺の剣・・・砕けちゃったんだけどね」
「グルゥア・・・」
砕けた剣の収められている鞘を外側から撫でるヤマト。同時に少し肩を落とす。
それを見たロウはヤマトの横に寄り、慰めるかのように尻尾でヤマトの背中を撫でる。
ヤマトはロウの頭を撫でることを慰めの礼として返した。
そんな2人の目の前にまたもやポップアップが表示される。
『強制転移まで、後10秒』
『強制転移まで、後9秒』
『強制転移まで、後8秒』
『強制転移まで、・・・』
強制転移で【始まりの街】へ飛ぶまでのカウントダウンのようだ。いきなり転移すると驚くであろうプレイヤーへの配慮であろうか。多数のプレイヤーが「いきなり飛ばされるよりはマシ」とありがたがっているまさにその時。
「急げロウ!手当たり次第でいいから“武器”を集めるんだ!!」
「グオォ!」
森の中で一人と一匹は落ちている武器を手当たり次第にかき集めていた。もちろんヤマトの武器の代用品である。
彼らが武器を慌てて集めているのにも、もちろんいくつかの理由がある。
その最たるものに、耐久値というものがある。
武器防具には使用すると同時に減る装備耐久がある。耐久そのものの数値だけではなく、減りやすさという値もあり、それらを総合して装備耐久としているわけなのだが。
そんな装備耐久、難点の一つに「余りにも使用適正レベルから逸脱したSTR値だと、壊れやすくなる」という仕様がある。これはDEX値が高ければ高いほどに軽減されていく傾向にあるのだが・・・
ここで、先ほどの戦闘でレベルアップも果たしていたヤマトの、現在ステータスをご覧頂こう。
ユーザー名:[ヤマト]
種族:ヒューマン
職業:アサシンLV2(+2)
LV:22(+2)
STR:44(+4)
VIT:12
AGI:44(+4)
DEX:13
INT:1
MND:1
LUK:1
称号:速撃の疾走者・複撃一刀・龍の契約
装備スキル
1:剣LV.17(+2)
2:直剣LV.17(+2)
3:闘気術Lv.2(+1)
4:直感予知LV.2(+1)
5:隠密LV.11(+1)
6:雷動LV.2(+1)
7:閃撃LV.2(+1)
8:壱之太刀LV.3(+2)
9:雷電操作LV.2(+1)
10:龍魔法LV.1
小規模アップデートで配置や細かい所の意匠が変わったこのステータス画面であるが、見ていただきたいのはこのステータスの中でもSTRとDEXの値にある。
『STR:44』に対して『DEX:13』となっている。
つまるところ、武器が早く壊れるのだ。それが脆いものならばさらに壊れるのが早くなる。
そこでヤマトは質より量作戦を実施。とにかくたくさんの武器をアイテムボックスに押し込むことにしたのである。
「急げ、間に合わなくなっても知らんぞ!」
「ウガウガウ!」
鬼気迫った様相で武器を拾い集めるヤマト、それを助けるロウ。
ロウがヤマトの言葉に対して返した言葉の意味は「わかりました親方!」とでも言ったところであろうか。
とにもかくにも、ポップアップに表示された秒数が0秒になってその場から一人と一匹が消えるまで、彼らは必死に武器を集めていた。
さて、いかがだったでしょうか?
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