第十陸話 【次の目標、新たな邂逅、師となる人】
どうも皆様、新年度いかがお過ごしでしょうか。
私は・・・うっ頭が・・・
それは置いておきまして、今回は一人称視点でやってみたいと思います。
理由は、三人称視点ではわかりにくい表現が多すぎるかも?ということに尽きます。
よろしければどちらがいいかなど、ご感想いただければ・・・
「戻ってきたか・・・」
どうやら強制転移とやらによって【始まりの街】の広場に戻されたようだ。
ふと周りを見渡すと周囲には沢山のプレイヤーがいて、彼らも自分と同じように戦場から転移させられたのだと思われた。
そういえば一緒に転移されたはずのロウが見当たらないが、どこに行ったのだろうか。
「とりあえず、ギルドマスターの所に行ってみるか」
これからどうするかを話し合っているプレイヤー達を横目で見ながら、最後にギルドマスターにあった場所である作戦本部のテントに向かうことにする。
仕方ないにせよ一気に前線から引き戻されたわけで、ギルドマスターたちとの連携がうまく取れていないように見える。
ならばこれからの事を相談する意味も含めて、ギルドマスターに会おうと思ったわけだ。
「しかしなぁ・・・人が多すぎる」
現在プレイしているほぼ全てのプレイヤーがいるわけで、これではこの広場から抜け出せない。
かと言って押しのけて進むのも忍びないと思うぐらいには、彼らの議論は白熱している。
さてどうしたものかと考えてみるが、いい案が浮かんで来ない。
「まあここにずっとしてもいい訳ではないな・・・」
ここは多少強引にでも前に進むべきだろう。
目の前で話し込んでいるプレイヤーに向かい、ひと声かけてから門に向かう通りに出る為に歩を進める。
多少肩がぶつかることもあったが上手くすり抜け、通りの入口までたどり着いた。
「それにしても篭城戦となると、先程のように大将首を狙う訳にも行かんな・・・」
思わず眉間にシワを寄せて思案の顔になってしまう。
自分個人の感情とすれば、ボスと呼ばれる奴らを倒すことによって大きい経験値を獲得したいところではある。
しかしそんなことをして自陣が陥落してしまっては元も子もないだろう。
「まあ俺が参戦したからどうこうという事ではないかもしれんがな」
まあギルドマスターのところに行けば何らかの命令がもらえるだろう。
無いなら無いで勝手に暴れるだけだ。ロウとのコンビネーション技も試してみたいところである。
猛者たちの技を見て回るのもいい。
自分がこのゲームで一番だと傲慢になる程、自分が強いと思ったことはない。強者から学ぶことは多いはずだ。
と、どちらにせよ向かうべきは門である。
「ふむ、やはり一般人は居ないな」
今までに見たことがないほど閑散とした街に新鮮な気分になりつつも、小走りで走り続ける。
ふと、どこに避難しているのかが気になりもしたが、門が目に飛び込んだところでその考えは霧散した。
「ん?よくよく考えたらここにいるとは限らんのか?」
今更ながら自分の無計画さに唖然とするばかりだが、門のすぐそばまで来ているのだ。
仕方ないかと考えながら門の脇にある通用口を駆け抜けると、今まさに解体されんとする本部テントがあった。
「おぉ!ヤマト!良いところに来た!」
こちらの姿を視認したギルドマスターは右手を上げながらこちらに声をかけてきた。
周りがテントを片付けている間、参謀らしき風貌の人、豪華な身なりをした魔術師風の衣装を着た人と何やら話し込んでいたようである。
「ええ、なにか御用でしょうか?」
自分にかけられた言葉は「いいところに来た」であった。
つまり、俺に何かをさせたいということで間違いないだろう。
「うむ、聞きたいことがあってのぅ。まずは敵についてじゃが、先ほどの天の声から察するに敵が撃退されたのだろう?何があった?」
言外に「お前がなにかしたのだろう?」と言われているということか。
ならばここは正直に報告するとしよう。ギルドマスターは上司でもあるのだから。
「ええ、私が単騎駆けで大将首を獲ったのが関係あるかと。指揮系統を失って霧散したのでしょう。この町を襲うことは諦めてはいないでしょうが・・・」
正直に自分の行った事と自分の考えを述べたのだが、俺の言葉を聞くなり眉間を指で揉みほぐすギルドマスター。
疲れがたまっているのだろうか?確かにこの災害とも言える災難を乗り越えようと奮闘しているのだから、疲れるのも当たり前といったところか。
まあ、この戦いが終わったら存分に休むことをおすすめするばかりである。
「ど、どうやったのだ?並みの戦力ではなかったろう?」
横に居た参謀風の男が声をかけてきた。
細身にメガネと小脇に抱えた書類、戦場にあってわかりやすい参謀ファッションであるとも言える。
「いえ、大将の周りにはそこまで兵はいませんでしたね。総大将ではなかったのだと推測できますが」
それを聞いて参謀風の男は額から汗を拭う動作をして、一息ついた。
小さな声で「そうだよね・・・弱い奴だよね・・・?」と廃人のように呟くのが少し気味悪かったが、あんなインフォを聞いたら誤解するようなものか。
「ふふっ、あなた面白いわね」
横から聞こえた声に反応し、体ごと顔を声の方向に向ける。
おそらく3人いた魔術師風の人の内の誰かだとあたりを付けて振り向いたのだが・・・
「っ!?」
振り返るとすぐそこにフードをかぶっていて見えなかった顔を晒した魔術師風のローブをつけた女性がその顔を俺に近づけ、まるで品定めをするかのようにその紫紺の瞳を輝かせて俺の目を覗き込んだ。
それに若干驚いて後退しながらも、負けじとこちらも目を覗き込む。
「ごーかくかな!」
「アホか、困惑させるような事を言うな」
瞳を覗き込んでいた女性の頭に後ろから落とされた拳。
それは後ろにいた男性から伸びたものだった。
「すまんな、悪気は無いんだ・・・多分」
その男は腕に包帯を巻き、若干目の前の女性が纏うものよりも若干簡略化されたローブを纏っており、魔術師というよりも拳闘士といった風体だ。
灰色に寄った黒の短髪をローブから出した彼は、困ったようにこちらに言葉をかけてきた。
その男に殴られて紫紺の瞳に涙を浮かべた女性は、ローブに隠れていた黄金の髪を振り回して振り向き、非難の声を上げた。
「ちょっと!さらっと障壁突破してるのいいとしても、ぶん殴ることはないじゃない!」
「初対面にいきなり精霊眼での『見定め』をする奴にはこれぐらいがちょうどいいだろう?」
「ううぅ・・・」
威勢良く声を張り上げたのはいいが、完全にペースは男のほうに向いている。どれほど威勢よく迫っても男の方に焦る気配はない。
そうなれば気勢が先細りしていくのは彼女の方である。
むくれて頬を膨らましながら、黄金の耳から覗く長く伸びた耳をピクピクと動かして体を小さくしていく。
そうすると後ろの方でギルドマスターと小声で話をしていた最後の一人がフードを脱いで歩み寄ってきた。
小柄ながら見ていると不思議な感覚に陥る女性である、
「・・・ん」
「え?」
右手を差し出されて面を食らってしまい若干迷ったが、握手だろうと判断してこちらも右手を差し出す。
そして握手をした瞬間。
「・・・ッ!?」
「あ・・・」
「よっ」
「へー」
自分の体に悪寒が走り、直感が警鐘を鳴らした。
その直感に従い小柄の女性の小さな手を起点に投げるために全身の筋肉を駆動させる。
しかし言い合っていたはずの拳闘士風の男が一瞬で俺の横まで移動し、重心を掬うように蹴りを放ってくる。
だがただ棒立ちで蹴りを喰らうこともない、逆にその足を乗り越えつつ顎に向けて逆襲の蹴りを放つ。
「ほう・・・だがまだ甘いな」
しかし蹴りが当たると思われた瞬間、男が姿勢も変えずに半歩後ろに一瞬で移動した。
そうなると自分の蹴りは外れたこととなる、勢いを止めることができずに姿勢を崩してしまったため、男から追撃の蹴りが放たれる。
地面に一度伏せることで隙のケアをしようと思った瞬間。
「まてまてお前ら、血の気が多すぎるだろーが」
いきなり俺と拳闘士風の男の間に現れた長髪の男が、追撃のために伸びていた拳闘士風の男の鋭い蹴りを足で撃ち落としてこの戦闘を終わらせた。
倒れようとした体を起こし、膝をついた状態で状況の把握に努めては見ても、全く状況が把握できない。
「全くサミエル・・・いつも言っているが、初対面で刻印を刻もうとするのはよせ」
「・・・ごめんなさい」
俺が攻撃に出た時点で驚いた表情を隠そうともせず棒立ちしていた小柄な女性が、突然現れた男の言葉を聞いて少し体を小さくすると、素直に頭を下げた。
その時点で自分が何らかの攻撃を受けようとしていたのが把握できた。
「グランツ、どう考えても悪いのはサミエルだったろう?投げられるぐらいは見逃せ」
「はあ・・・次からは何かしでかす前に止めることにします」
拳闘士風の男に対しては説教や嗜めるという意味よりも、苦言という意味合いを多く含んだ口調だった。
それを受けてため息をつく彼は、気苦労人と呼んでいいだろう。
「エルリアは・・・もうお前ら全員、常識的に行動しろ」
「一括りにされた!?」
だんだんめんどくさそうになった男は最後の女性をスルーし、一括りで苦言を呈した。
それに対して異議を唱える彼女を男はひと睨みすると、ギルドマスターに向き直った。
「もう寸劇は終わりかのぅ?」
「申し訳ありませんルーカス殿」
「王国最強の呼び声もあるファルケンに頭を下げさせることができるとは、ワシもまだまだやれそうだの」
にこやかに会話する両人だが、聞き逃せない単語もいくつか出てきている。
ファルケンと呼ばれた男が王国最強であることにも驚きだが、ギルドマスターがそんな男に頭を下げさせるほどの力を持っていることにも驚きである。
どちらも只者ではない・・・ギルドマスターは只のお調子乗りのジジイぐらいにしか思っていなかったのだが・・・
「さてヤマト、お前を待っていたのはまさにこの男に関係するのぅ」
「この人にですか」
正直今の一瞬の攻防に割り込んだ時の体捌きを見るだけでも、ファルケンという男はかなりの実力があると思われる。
そもそも他の三人の対応から考えてもこの男はこの集団の中で最も上の位置にいることがわかるというものだ。
「うむ、この男と共に戦場を駆けて欲しいのだ」
「・・・理由を聞いても?」
「お前に期待をかけているからさ、坊主」
ギルドマスターからの言葉は自分でも考えていた「強者の動きを学ぶ」ということだろう。
しかしなぜ自分なのかがイマイチわからない、そんな疑問をぶつけてみると、答えは話題の男から帰ってきた。
「雷嵐龍と契約なんて前例無いし、神系モンスターの眷属を調伏するなんてうちの国でも多くはいない。そんな奴に期待をかけるのは普通ってもんだろ?」
「な、なるほど」
「そういうことじゃ」
なんともまあ、説得力のある理由だ。
しかしそんなに期待がかかっていると聞かされるとなんだか気恥ずかしい気にもなるというものだろう。
疑問も解消したところで、今度は向こうが質問を投げかけてきた。
「で、坊主は俺に付いてくるのは了承ってことでいいな?」
「もちろん、願ってもないことですよ」
ファルケンの言葉に口角をあげて頷く。
強者の戦闘が見られるのだ、否はない。
「あ、言い忘れとったが、その男に弟子入りしてもらおうかとも考えとる」
「え?」
「ま、坊主の戦闘を見てからだけどな」
驚愕の発言とはこういう事を言うのだろう。
ファルケンという男に師事するということは少しの抵抗を覚える。
自分には未だ超えることの出来ていない師が居るのだ。
その人を差し置いて誰かに師事するとは・・・ゲームだからいいか。
「わかりました、度肝を抜きましょう」
「はっ、言うねぇ。ま、期待してるぜ?」
いや、違うんだこれは。
あの化物に教えを乞うているからこそ、この人を師としたとしても極端に剣筋を直されることはないだろう。
剣筋や型、構えを極端に修正されることがないなら、他の誰かを師としても問題ないだろうと思われる。
という完璧な理由を持っていれば、特に気が咎めるということもない。
あの化物もゲームの中には口出ししないだろう・・・多分。
「まあ、そういうわけで二人で行動して欲しいのぅ。どこを担当するかはファルケンが知っておる」
「了解です」
俄然、この戦闘が楽しくなってきたというものである。
目標はこの飄々とした男の顔を驚愕に歪ませること。
容易にこなしてみせると意気込む。
「じゃ行くぞ、坊主」
「了解です」
「うむ、行ってこい!」
いざ、戦場に赴くか。
「あ、言うのを忘れておった。ダグトンから連絡が来ておったのぅ、あと数十分で完成だそうじゃ。必要なら戦闘中でも取りに行くといいかものぅ」
「ルーカス殿、忘れ事が多くなってきてませんか?」
「え?」
ギルドマスターが絶望の顔をする中、その場の人たちの思いは合致した。
(締まらないなぁ・・・)
さていかがでしたでしょうか。
一人称視点への変更への感想、誤字脱字、言葉の誤用等ございましたら感想をお願いします。
さて、今回の裏話ですが。
実は考えていた雷動の新用法を今回お披露目する予定でしたが、次回以降になりました。
それと今回出てきた4人は今後も出てきます。




