表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

第5話 ちょっと飽きたから護衛をしただけなのに

あっちから持ってくるついでに

文章書き足して、読むのが少し詰まらないように推敲

まぁ、本当の推敲するんなら、もっと原文を消去して

別の文にするとかしないとなんですが、取り急ぎ


飽きたというのは違うかもしれない。

ただ、「飽きた」という言葉しか

その時の感情を上手く表現できている

言葉を思い付かないというか…。


それが起きた頃は、

最初に来た時よりは強くなっていて

生活費を稼ぐ為にダンジョンに1人で潜り、

1人で化物を殴り殺していた頃だった。


それしか出来なかった2~3か月前は、

俺は酷く孤独だった。


最初に、素寒貧に近い状態で、この世界に現れた時は、

『万象強化』の力で強くなっても

元が低かったせいもあって

「並の冒険者」くらいのスタートでしかなく

冒険者で生きて行くかどうかを

悩むレベルの状態だった。


冒険者の実入りは確かに良いので

ともかく、これでやってみようと

なんとか続けていたのだが。


そんな最初だから、知り合った同輩と、

何とかパーティとして日雇い仲間みたいに組めた時は

「見た目よりは強いのな…」

と不思議がられる程度の存在だった。


だから最初はそこまで孤独でもなかった。


大変ながらも、

異世界で生きているという新鮮さに興奮し

新米の俺は、何となくな仲間と共に

一層の雑魚狩りで食費を稼いでいたモノだった。


そうやって、しばらくは初心者の生活を続けていると

おそらくはレベルアップなるモノをしたのだろう。


宿屋で1人でいるときに、

何やら、あの光の文字が宙に浮かんでは選択させられ

分けが分からんままに、上の1段と2段を選んでいけば

『万象強化』の能力が上がっていったのだった。


それが能力が上がるメニューであった事は

事後検証であったが。


しかし、そんな感じで強化の能力が上がっていく毎に、

「見た目のワリに強い」という

周囲が感じる印象が、笑いでは済まない成長に

見えだした様だった。


酒場で出会う冒険者仲間は

俺の急激な力の増加を疑い始めた。


”何やらアイツには秘密があるのでは?”

と、全くの正解を疑う程に。


(あ、これはマズイ…)


率直にそう思った。


異常な成長を見せる俺。


それは強化で能力が倍化した効果の

外側からの見立てでしか無かったが

外から見たら、たしかに「凄まじい成長」

にしか見えないわけで…


しかし外見はそこまでマッチョでもなく

見た目から類推できる筋力と、実際の冒険で見せる筋力

その乖離…


才能で片づけるにしても、すさまじい才能と判断するより

何らかの特殊能力、主には魔法的な奴か

そういった生まれながらの何かではないか?

と考える方が自然で、

それを日々、尋ねられるようになった。


特に俺は黒髪の異邦人の風体であったので

異国の地の出身は、生来的に特殊なのでは?

と、考えをまとめる人が多くなった。


このギャップがだんだんと問題になった。


果たして、浅い関係の仲間内に、

俺の『万象強化』の特殊性を開示していいモノか、

どうか。


そうこうしていると

いろいろと『先輩方』との軋轢が増えていき

結局、能力開示は多分ダメだと気付いてしまった。


中でもモルゲン先輩という

俺に強く突っかかってくる先輩とのやり取りは

やがて言葉を荒げる程になり

日々、仲が険悪になってしまったのだ。


そんな、生意気に超速で成長する後輩など

面白くないのが、たいていの世界の先輩だ。


それが『万象強化』の能力と分かった時には

どんな事が起きてしまうのか?


そういう状況では

能力開示など、リスクでしかなかった。


そのせいで、俺は遂に1人になった。


もう強化している状態の俺を

見られるわけにはいかない。


1人でやるしかない。


そう追い詰められて

俺は1人でダンジョンに潜る生活に陥った。


しかし、その頃から一層で盾と槍での盾チクに徹すれば

一人で稼げない事もない…ぐらいには強くなっていたので

俺は孤独であっても、日銭を稼いで生きて行くことは出来た。


そう、冒険中は孤独であっても

生きていける程度は、丁度に、強くなっていたのだ。


なので、ただ黙々と

1人で地下の一層に潜り、金を稼いだ。


完全な孤独というワケでもなかった。


酒場で酒盛りをする時ぐらいは

気を許せる良い奴も居た…


新米で冒険者になった奴とは

冒険者仲間としてはギクシャクしても

それなりに酒飲み友達にはなれたのだ。


でも、所詮、冒険者だ。

一攫千金に憧れ、

実力相応ではない地下層深くに潜って、

そして帰っては…こなかった。


昨日まで酒場で笑って飲んでた奴が

今日は帰ってこずに、

帰還した他の奴から戦死の報告を聞く。


それが冒険者だ。


そういうモノだった。


だから、孤独はより深くなった。


友達など作っても

失ったら寂しいだけだ…


と自閉症気味になっていた。


あっちの世界で、当たり前の様にあった

飯も水も風呂も柔らかいベッドも

時刻を把握する時計も…

何とでも時間を潰せるスマフォも

この世界には存在しないのだから

それらが無いという、ちょっとした苦しみは

日にちが積み重なる毎に

精神を病ませる大きなモノになっていった。


人間関係も生活の基礎も

自分の苛立ちを積み重ねるだけで

俺は酒に逃げ、眠りに逃げ、

冒険者の仕事に逃げていった。


だから、俺は、本当に孤独だった。


そんな俺だったが、孤独であっても生きては行ける。

貯蓄も400ゴールドぐらい出来て

少しだけ生活の余裕も出て来た。


(ああ、生活がまだ不安定でも軌道に乗った)


孤独であっても貯蓄ができると、

わずかな安心は得れる。


”少なくとも金があれば何かが出来る気がする”


そんな安心感を、貯蓄は促してくれる。

だから少しだけ、その頃の俺は幸せだった。


そういった

「心の隙」の様な時間が出来たからだろう。


不意に、


『何も冒険者はダンジョンに潜るだけじゃない。

 商隊の護衛っていう、旅も出来て金も貰える

 都合のイイ仕事もあるんだが?』


そう、酒場に依頼されてきた商隊護衛の求人を

マスターから紹介された。


きっと冒険者ギルドを管理している

マスターのボブには、俺が軽い鬱状態なのが

分かって居たのだろう。


俺にダンジョンの外に出て気分転換してみろと

そういう依頼を紹介してくれたのだ。


だからマスターの好意に従って

気分転換に、俺はその仕事を受けてみた。


商隊の護衛。


山賊、野党、乞食、

食うに困った連中は多いらしい。


貴族が戦争をすれば、必然、そんなのが生まれる。


だから、それらから商隊を守る

護衛の仕事が生まれるのも必然だった。


そしてそれをする荒くれモノが冒険者である事も。


しかし、考え方だ。

飯付きで旅が出来るという話なら

まぁやってみるか、ぐらいの気持ちにはなる。


一般的には、なんちゃての山賊よりは

真面目にダンジョンで戦おうとする

冒険者の方が強いと言われているのだ。


冒険者が護衛についている商隊を

真正面から襲おうとする山賊は

そう居はしない…と言われるのだから

気楽にやれる依頼だった。


なので観光がてらに商隊護衛という旅に出た。


気分転換にこの世界を見る度に。


そうだ、俺は冒険者なのだ。

ならこんな冒険をしないと。


そう思うと、俺の中の閉塞感も

少しは楽になった。


外の景色は草原に走る街道と白い雲だけだったけど

この世界に来て、ずっと街の中でくすぶっていたから

この世界の空気を、初めて吸った気分になれた。


そんな感じで、『行き』は良かった…

隣の街まで俺の街からの商品を輸送する『行き』は。


何事も無く、この世界の風景を楽しむ事が出来た。


そして到着した隣街で商人達がこちら側での荷を下ろし

帰る時の向こうの荷が積まれていった。


その中で俺はフィアに出会った。


出会ったと言っても、ただ見ただけだ。

奴隷用の檻に入られていくのを。


一瞬だけ、目があったとも思えたが

その時は俺の気のせいだと思い込んだ。


挿絵(By みてみん)


麻布を着て、酷く汚れていたが、

ぱっと見だけで容姿は可愛らしく、

体つきもそれなりに豊満な少女。


首輪と鎖を見れば、なんとなく分かる

奴隷という奴なのだろう。


世間話的に商人にその子の話を聞くと

農民が食うに食えず、娘を『性奴隷』として

売りに出したという。


いわゆる「口減らし」という奴だ。


大家族の農民が食うに困って

親に奴隷として売られた娘。


それがフィアだった。


それを聞いて、胸が痛んだ。


この世界とは、そういう世界なのだ。

俺たちがいた世界の過去と同じ様に。


そんな話に、胸は痛んだが、

しかしこっちも生きるだけで精一杯なのだ。


貯蓄が400ゴールド程度の俺が、

親に奴隷として売られた可哀想な娘を買う?


いやいやいやいや、無い無い無い。


理性の俺が、ヒーローをやりたがる自分の願望を

速攻で止めて、自分の身の丈を直視させる。


そう、冷静になれ。

俺よ。


俺の貯蓄は400ゴールド。

400ゴールドなのだ…。


でもあの子、凄く可愛くて…

おっぱいもおしりも大きくて…


興味がてらに商人に話を振って

あの子はどれくらいの値打ちかと聞くと

処女の娘なので、性奴隷の作法を学ばせれば

貴族が1000ゴールドは出すだろう

もっと磨けば2000~3000もあり得るかも

と目利きしてるという。


俺達の街に性奴隷も扱う商館があるので

そこに連れて行って作法の勉強になるだろうから

街まで商隊で護送するのだと。


そういう話だった。


なるほど、金を積めば奴隷が買える世界か。


”なら俺が金を出して買うのもアリかもしれない”

とか一瞬、思わないでもなかった。


まるでゲームの世界なら、

「俺が買おう」と即断即決して強く言ったかもしれない。


しかし、この世界はゲームとしては厳しい。


『最低1000ゴールド

 磨けば2000~3000ゴールド

 処女の初物プレミアムが付けば

 貴族は喜んで欲望の捌け口に

 それだけの金額を支払って買うだろう逸材』

等と言われたら、最初から白旗だった。


俺は英雄でもなければ、全てを敵に回して喜べる

頭のおかしい善人でもない。


400ゴールドを稼ぐのすら

ヒーヒー言う、しょーもない冒険者だ。


「あんな可愛い子なのに

 貴族の玩具になるのか…

 それも親に売られて…」


そう呟いて、俺は遠目からその子を見つめた。


俺はその子の暗澹たる未来に切ない思いになったが

だからといって、何かが出来るとも思えなかった。


ただ警邏の仕事を帰り道も全うしようと

心を鬼にするしかなかった。


せめて後半年は俺がこの世界で暮らして

金を稼いで貯蓄していれば、

1000ゴールドくらい支払って

彼女を買う事も出来たかもしれないが

払える財産が400ゴールドではなぁ…。


せっかく作ってもらった装備類を丸ごと売って、

ようやく1000ゴールド揃えれるかどうかって所だ。


俺が彼女を金で買って引き取るとか

言ってしまえば、今の状況では無理ゲーだった。


なので、あんな可愛い子…

自分のモノに出来たら

こんな灰色に見える生活も変わるかもなぁ

という気持ちにさせられる子も

苦い思いをしながら諦めるしかない。


あっちの世界の俺と同じ様に

こっちの世界の俺も無理なモノは無理と

何時もの様に諦めるしかなかった。


そこで、俺と彼女の縁は切れてしまうハズだった。

元々、見るだけの縁という奴が。


そのハズだった。


そんな何時もの人生を狂わしたのは、山賊だった。


そういうモノが出るから護衛を数人雇った

という事なのだから、

出るという確率は元々あったのだ。


しかし、必ず出るモノでもなく

護衛がいるなら、中々、襲ってくるモノでもない

という気の緩みが、その商隊には悲劇となった。


帰りの道中で山賊に襲われた。

俺たちは応戦するしかなかった。


食うに困った農民が山賊になると聞かされたが

中々どうして、もう山賊歴も長いのか

統制が取れていて、強かった。


困った事に、

『万象強化』の能力を見せるわけにもいかず

敵はおろか味方さえも

騙し騙し戦わなければならなかった。


自分だけをこっそりと自己強化して、

その賊達に応戦する。


1人1人は、所詮、逃亡農民だ。

身のこなしやらなんやらは恐ろしくなかった。

だが集団戦に慣れているので

仲間のフォローが早く、

1対多数の動きが冴えていて、

1人を倒すのも手こずる。


盾役と槍役を複数人で分担してるので

厄介なこと、この上なかった。


それが後の俺とフィアとのフォーメーションの

アイデア元でもあったが。


俺は何時もの盾チクに徹して

確実に雑魚の山賊から屠っていき

人数を減らす仕事に徹した。


この時、この仕事で突発的に組んだ

なんとなくの護衛の仲間まで全体強化していれば

賊に蹂躙される事も、無かったかもしれない。


しかし、実の所、俺はこの時までは

よく分かっていなかったのだ。


『万象強化』は

自分が強化したい他の人間にも作用する、

等という事を。


それが分かったのは

フィアを冒険者補助として連れ出して

その流れで強化の実験をしてみたからで

孤独で心が閉じ気味だったこの頃の俺に

そういう発想が無かったのは仕方が無い。


ここで俺は「魔」がさした。


いや護衛仲間が1人、目の前で殺されたのを見て

形勢や不利と感じたからだろうか?


俺はこの時、他の護衛と商人を囮にして

漁夫の利で、山賊の首領を後ろから屠って

賞金首の賞金でも、いただいてしまおうかと考えたのだ。


今振り返ってみれば、酷い話である。

依頼主を囮にしようだなんて…。


しかし、奴隷を普通に扱うような商人だ。


この世界では、

それが普通の感覚だったのかもしれんが

俺はやっぱり好きになれなかった。

だから商人にそこまでの親愛は無かったのだ。


いや美少女を奴隷で扱う連中に

無意識に怒りを覚えてたのかもしれない。


ともかく、300ゴールドほどは

賞金首として値があるだろうと

商人が目利きした山賊の首領を、

商人と他の護衛が戦っている間に

強化の能力を使って後ろから近づいて

刺し殺して、賞金を貰おう

等という事を思いついてしまったのだ。


迎撃が任務なのだから、それは仕事の範疇だよな

という心の言い訳を上手く作りながら

俺は思い付くと同時に、即座に動き始めた。


山賊の首領だけに狙いを定めて

本来の仲間との共闘を、俺は放棄したのだった。


仲間の護衛の1人は致命傷を負い

しかし、相手の山賊の命も同時に奪っていく。


互いの乱戦と消耗戦。


そして商人が敵の首領に切られ

最後の護衛も同時に切られ、山賊の幾人かしか残ってない、

互いに死にまくった状況で…

俺は背後から、首領を槍で貫いた。


いや、この結果が俺の

そもそもの能力限界だったかもしれない。


背後隠蔽からの奇襲。


それぐらいしないと殺せないくらいは

この首領は強かったのだと思う。


まともに組み合って、

戦闘技量で勝てる自信は無かった。


だが、結果は結果だ。


相手が如何に強かろうが

もっとも油断した戦闘の終わりに

背後から強化の入った俺の槍で突かれたのだから

そりゃまぁ、死ぬ。


護衛の多くを倒した山賊の首領は

俺の背後からの一撃で、あっさり倒れたのだった。


そして、多分、その首領の強さが、

山賊の結束力の源だったのだろう。


首領の唐突な死によって

俺の実力は一瞬で過大評価されてしまった。


怯える表情の生き残った山賊共。


それに気づいて好機とばかりに

槍を振り回して山賊をもの凄い形相で睨んでは、

意味不明の雄たけびを上げる。


完全なブラフであったが効果はてきめんだった。


残りの山賊達は恐怖に顔を歪め

それぞれが、ちりじりに逃げ出した。


それは鮮やかな逃げ足で。


かくして山賊達の商隊への襲撃は終わり

俺だけが、商隊の関係者として

生き残る事になったのだった。


いや、関係者ではなく

「荷」としては、フィアも生き残った人間か。


山賊が檻を壊わして、

その身を奪おうとしたのだろう。

彼女は檻の外で衣類を乱して倒れていた。


しかし、そこに残ってる以上、

彼らの戦利品として

持って行かれることは無かった様だった。


山賊の首領を倒して、

残りが逃げたのを見届けたら

直ぐにその子の元にかけ寄ったが

ぱっと見で大きな傷がある様には見えなかった。


所々、腕などに僅かにアザが

増えたような気はしたが。


短いスカートを脱がされそうになった形跡もあったが

こんな乱戦の中で、頭のおかしくなった山賊に

戦闘中に強姦された、

というわけではなさそうだった。


いや、雰囲気からして

強姦されかけたが、

首領の死で山賊達が未遂で逃げていった

といった所か?


いやいや、山賊達…

戦闘中に何やってんねん…。


「娘さん、無事か…」


俺は倒れてその場で泣いているその子に、

そう声をかけた。


その子は俺に声をかけられても

その場で、ずっと泣いていた。


犯されかけたショックだろうか?


「たすけて…」


その時、彼女はそう言った。


挿絵(By みてみん)



その言葉を聞いて、

俺はもの凄い顔になって押し黙る。


「わたし、生き残っちゃった。

 でも、このまま街に行ったら

 貴族の慰みモノにされます…

 たすけて…」


彼女は短く、そう呟いた。


俺の顔が更に険しくなる。


彼女は、今はなんとか、

命や山賊達からの貞操は守れたが、

それも幾ばくかの事でしかなく

このまま奴隷として売られると、

暗い人生しか待ってない…

という事に、苦悶の声をあげたのだった。


「聞いた話では

 地方領主の次男の方は

 少女を犯して、切り刻んで

 殺して楽しむと言われてます…

 私、売られたら死んじゃう…」


彼女は彼女が聞き及んだ話を

口にして、命乞いをした。


その言葉に、これ以上なく顔を歪める俺。


「は?少女を犯して、切り刻んで殺す?

 何だその変態は…」


彼女からもたらされた情報は

俺が理解するには、あまりにも無理な

非常に猟奇的なモノであった。


「あなた…私を優しい目で

 見てくれてた人…

 おねがい…たすけて…」


重ねて彼女は俺に救済を求めた。


その時、俺は胸を貫かれるような思いになった。


俺だけが彼女を一方的に見てたと

思い込んでいたのに

あの瞬間に、彼女も俺を見ていたのだ。


僅かな希望として。


俺は、俺個人に救済を求められた事に

狼狽えた。


「無理だ…君を助けたら足が付く。

 助けたいのは山々だが

 今度は俺が山賊になってしまう。

 せっかくあの街で生きていける基盤が出来たのに

 君を連れて別の街に逃げるなんて

 そんな事、出来るハズも…」


俺は、そう呻いて震えた。


その言葉を耳にして

彼女の目が僅かに見開かれた。


俺はその時、少しばかり迂闊だったのだ。


「…連れて逃げる?」


彼女は俺の言葉を聞き返した。


「それしか無いだろう?

 俺は、あの街で、冒険者として登録されている。

 君を連れ立ったら、あの街では暮らせなくなる。

 相手があの街の貴族なのだろう?

 助けるなら、よその街に連れて逃げるしか無い」


俺は合理的な説明をしたつもりだった。

逃げるなら、方法論はこうしかないと。


しかし、

もう既にもっと根源的な本音が漏れていた事に

俺は気付けなかった。


それを彼女は聞き逃さなかったのだ。


「私を助けたいと、思ってくれるんですか?」


キョトンとしながら彼女は俺を見つめて

そう尋ねてきた。


「当たり前だろう。

 美少女は生きているだけで価値がある。

 助けれるなら、助けたいさ」


俺はそこで、

俺の『あっちでの感覚』を口にした。


こっちでは平民は貴族に逆らう事が

精神的に出来ないよう、

子供から服従心を刷り込まれえているという。

そんな、当たり前の事も知らずに。


「…………

 助けれるなら…助けてくれるんですか?」


「そりゃ出来るならな!

 だが、せっかく慣れた街を

 放棄して逃げ出すなんて…」


彼女の顔は少しだけ明るくなり

俺は事の重大さに真っ青になっていた。


俺がズレた事で揺らいでた時に

彼女は意を決して口を開いた。


「だったら、貴方が私を買って下さいっ!

 私は性奴隷ですっ!」


「は?」


その時、彼女は絶望的な未来から

唯一の救いを求めて、

一世一代の賭けに出たのだった。


その言葉に、俺はポカンと口を開ける。


「な、何を言ってるんだ!?

 君は、商人いわく、

 1000ゴールドの価値がある子だぞ!?

 俺は手持ちが400ゴールドしかない。

 とてもじゃないが、金が足りない!!」


俺は彼女の素っ頓狂な提案に

素っ頓狂な声で返した。


ここでも俺は本音をダダ漏れさせていた事に

何一つ気付けなかった。


「・・・・・・え?

 お金の問題なんですか?」


「は?」


彼女はまたキョトンとして

俺の返事に目を丸くしていた。


「お金の問題って!!

 400ゴールドだぞ!

 400ゴールドっ!!

 400ゴールドでも俺の全財産だぞ!?

 これが無くなったら

 明日の飯も満足に食えないんだぞ!?

 それでも足りないんだぞ!?

 残りの600を借金でもしろってのか!?」


俺は彼女的には論点が違うところを

一生懸命に主張した。


しかし、単純に考えると

最低でも1000ゴールド、

1000万円の価値なのだ。

1000万円、

助けるためにポンと支払えと言われたら

400万円しか全財産が無い俺が

狼狽えるのは当然だろう。


だから、俺的には、これは自然だったのだ。


しかし、俺はこの時、

自分がよく分かってなかった。


つまり金があるなら買いたいくらいには

そして貴族相手だろうが

先に買えるなら分捕りたいくらいには

俺が好意的に彼女を見ているという事を。


「お金が足りたら、

 買ってくれるんですかっ!?」


彼女は俺の言葉に食いついた。


「え?あ?

 ああ? え??

 そりゃ、俺が2000も3000も

 ゴールドを持ってたら、

 1000ゴールド出しても

 買いたいくらいの君だが…」


そう俺は迂闊を続けた。


彼女の瞳が、その言葉で輝いた。


「だったら私を買うために

 私を犯してくださいっ!!」


彼女は突然そう言って、自らの服を脱ぎ始める。


「はぁ!? 何言ってる…

 っていうか、何で脱いでるんだ!?」


俺はそんな彼女の突然の奇行に

仰天の声を上げた。


「どうせこのまま、奴隷商の所で売られたら

 貴族の玩具にされて、なぶり者にされて

 殺されるだけです。

 でも貴族の方は、処女の娘を好むと聞きました。

 処女だからこそ、1000ゴールドもの

 お金を出すのだと」


「ああ、俺もそう聞いたが…」


俺は彼女の悲壮な言葉に

そして一糸まとわぬ姿になった事に

仰天して視線を反らす。


「なら!処女で無くなれば

 私の価値は転落します!」


そこで彼女は逆転の発想を俺に示した。


「はぁ!?

 まさか俺に抱かれて、

 自分の値打ちを下げるつもりか!?」


彼女の目論見を聞いて唖然とする俺。


「幸い、ここに山賊に襲われた跡があります!

 山賊に襲われ、その場で処女を奪われた事にすれば

 私の商品価値は転落します、だからっ!!」


彼女はそう言って、腕のあざを見せ

さっきまで山賊に強姦されかかった証を示しては

必死に食らいついてきた。


「馬鹿な事を言うな!!

 もっと自分を大事にしろっ!!」


俺は自暴自棄にも思える彼女の提案に

常識人ぶった言葉をかける。


「ならっ

 私をどう大事にしたら

 私は大事にできますか!?

 このままでは、私は貴族のなぶり者で

 殺されてしまいますっ!!」


そう言って俺に抱き掛かって

わっと泣き出す彼女。


その彼女の逃れられない暗澹たる未来を口にされ

俺は自分の常識論が薄っぺらい

逃避の言葉だと思い知らされた。


身の上とは、この世界ではそれほどのモノなのだ。

貴族に狙われる平民とは、そういう…


そうだ…

ここで見放すと、彼女には地獄しか待ってない。


しかし…


だからといって…。


「行きずりの男に初めてを差し出して

 それで君は幸せになれるのかっ!?」


俺は、あまりにも唐突で

滅茶苦茶な要求に、自分の気持ちを

彼女の気持ちの様に代弁した。


それだけ俺は、彼女の度胸にビビっていたのだ。


「確かに私は恥ずかしい事を求めています。

 人として落ちぶれた事を。

 でも、貴方は、私を大事にしてくれる気がするんですっ

 少なくとも…農民はみんな、

 奴隷と同じと思っている貴族様なんかよりは

 ずっと…ずっと……」


そう言って、更にわぁと泣き続ける彼女。


その言葉で俺の心は致命的な一撃を食らった。


そうだ、価値観が違うのだ。


”市井の人間など、慰みモノにしても構わない”

とか普通に考えている貴族様がいる世界で

俺は何故、俺たちの世界の常識論を口にしてるのか?


この世界の価値観は、この世界でしか測れないのに。


果てしない生き地獄なら

ちょっと優しそうな冒険者の方が

遙かにマシだという理屈。


その非常な突きつけに俺は衝撃を受けた。


俺は俺の認識の甘さに苛立ちを覚えるしかなかった。


そして、何より

俺が自分で作った縛りにも、飽き飽きしてた。


こんな豊満な体の美少女に全裸で抱きつかれ

助けるために抱いてくれと懇願され

それに狼狽えている俺という矮小さに…


俺の中の常識論が告げる

『無理だ』という言葉に

俺自身が飽き飽きしていたのだ。


無理かどうかなんて、

やってみなければ分からないだろう!?


そんな『俺の限界』に、この世界に来て順応しだした

『この世界の俺』が、飽き飽きして、

自分にいら立って、俺に罵声を浴びせた。


2回目の人生なら、

ちょっとくらい無茶をしてみせろとも。


ああ、そう2回目の人生…


前の人生が完遂したわけでもないが

唐突に始まった第2の人生…


前回の何もして来なかった自分に対して

今回の何かが出来るかもしれない自分が

それでも何もしないのか?


そう思った時、俺の心臓は

鼓動をドクンと鳴り響かせた。


心臓が高鳴る。


何かが出来るかもしれない

誰かに何かをしてられるかもしれない

そんな予感を感じて、

俺は自分の心臓を高鳴らせた。


俺は強い視線で彼女を見て、口を開いた。


「後悔しないんだな!?

 何も分からん男に

 初めてを奪われることになっても!?」


俺は、彼女に念を押す。


「そんな言葉を、わざわざ言ってくれる人に

 どんな後悔を私はすればいいんですか?

 今、さっきまで、山賊に

 何も言われずに犯されかけてたんですけどっ!!」


そう言って、檻から出された後に

あわや犯される寸前だった事を告げて

難しい顔をする彼女。


もうそこで、俺の何かが壊れた。


ああ、もうこの子、俺の嫁にしよ…

この子を貰わないと、何かがダメだ。


何かは分からないけど、何かがダメだ。


そう思った。


そう思って、俺に覚悟ができてしまった。


そう、俺はこんな事態になるまで

ずっと抑え込んでいた『俺の中の圧迫感』に気づかず

そしてその限界が唐突に訪れて、爆発してしまったのだ。


俺の中で、今までずっと膨張していた

『この世界で生きている』という『苦しみ』。


『帰りたいけど帰れない』という

どうしようもない絶望が、俺の中で反転して

俺の中の無茶をしたいという願望の

アクセルを踏んだ。


だから彼女の望み通り…

俺は彼女をその場で抱いて

彼女の処女を奪う事にしたのだった。


山賊に襲撃されて、その場で山賊に犯された

という作り話の証拠を作る為に。


最初に比べると、かなり読みやすさがマイルドになったんですけど

こうやって、読みやすさを上げていくと

元々の文章にあった「勢い」って奴が

無くなっていくのがね


文として舌足らずなモノでも

文字列に「勢い」があったら

それはそれで、面白い時があるんで

勢いを殺さずに文をマイルドにできたらなぁって

何年も思ってますが、出来ないんで、そろそろ諦めます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>文として舌足らずなモノでも >文字列に「勢い」があったら 最近のAI文章にはうんざりしているので作家さんのそのままの「勢い」は楽しいですよ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ