第20話 え?出会って3日ぐらいですが?
時間管理って難しいんだよねぇ…
他のでもずっとそうなんだけど…
「ええっと、悪役はこういう時、
どう言うんだっけ?
こうかな?
フハハハハ、この娘を慰みモノに
されたくなかったら、
その娘を、お前が慰みモノにせよ!
…こうか!?」
そのオッサンは、ノリノリで
フィアを下着姿にして、棒読みの台詞を口にした。
それでも真剣に焦る俺。
「辞めろ! 辞めてくれ!!」
俺は事情が分かっていないので
本当にそれをされかねないと思ったのだ。
その台詞に目が横棒になるメイ。
「グレゴリアス卿、お戯れはおやめ下さい。
貴方は、修練に集中する清貧の誓いとして
確か、自ら去勢されたのですよね?」
そう言って、
出来もしない事をよくもまぁ口にすると、
彼女は呆れていた。
「え!?去勢!?
去勢ってアノ去勢!?」
それを耳にして
俺は思わず自分の股間に手を当てる。
現象を想像して、タマヒュンした。
想像するだけで恐ろしい単語だ。
「もう少し、状況を使いたまえよメイヴィア。
駆け引きで直ぐに手の内を晒すのは
良くないな…まぁ聖女らしいが…」
そう言ってオッサンも呆れ返す。
「本気で、こんな無茶な事を?」
メイは解けない拘束に抵抗しながら
彼を見上げて問いかけた。
「無茶な事かね?
ふむ…そうかもしれんな…
だが、私には時間がないんだ…
朝には帰路について
教皇宮殿に戻らなければならない。
支援軍の編成は急務なんだ…
多少の無茶でもやらんとな…」
言ってオッサンは天空を見て
月の状態から時間を推し量っていた。
その様子から、
本当に時間が無いという焦りを感じる。
「リョウさんが
【依頼】の祈祷をかけられても
ここまで抵抗してるのですから
私では不満という事でしょう?
私はフィアさんほど魅力はありませんし…
それに、昨日、今日、出会った相手と
いきなりそんな事をしろと言われても
色々、無理があります…」
そう言って彼女は彼を睨んだ。
「いやいや、不満とか、
そういうのじゃなくてね!
いやうん、メイヴィアみたいな可愛い子なら
誰だって襲いたいと思うから、
そこは卑屈にならなくて良いと思うよ!?」
俺はメイが自己卑下している事に
思わずフォローを入れる。
いや、うん、『聖女』って
言葉のバリアが無ければ
中々、ボリュームのある体を
してらっしゃるので、
襲いたい男は山ほどいると思います。
俺は声には出来なかったが
素直にそう思った。
「ふむ…この奴隷モドキの
嫁さんを相手にしてれば、
メイヴィアほどでも、獣になれんか…
まぁ、こんな赤ん坊を産む為に
生まれてきたような、
魅惑的な胸とかが相手では…
お前も嫁いだ後に、苦労しそうではあるな…」
そう言って彼はフィアを上下に揺らして
その豊満な乳をブルンブルンと揺らす。
「辞めろ!」
その暴力的な光景にまた絶叫する俺。
「私が嫁ぐ事前提で話をされるのは困ります!
リョウさんにも
御自分の御都合があるんですよ!」
メイは真っ赤になって彼の言葉に抗議した。
その言葉に一瞬、止まって
白い目でメイを見つめるオッサン。
「語るに落ちてるとは
そういう事を言うんだぞ、メイヴィア」
そう言ってオッサンは白目をメイに送る。
その時は何故かフィアですら
白目をメイに送っていた。
「はい?」
「はい?」
俺とメイのポカンとした顔と声が連なった。
一度、コホンと白々しい咳をした後で
気を取り直して、オッサンは口を開いた。
「彼の都合なんか知らんよ。
こっちは国レベルの問題を背負っているんだ。
もう私はお前を、
この”異世界”という魅惑の塊に
嫁がせると、そう決めたのだ。
そして聖女には消えて貰う。
私の中の決定事項だ。
我々は神官から代を重ねていった家系だが
もはや、他国の貴族とさして変わらん。
なれば、貴族同士の結婚など、
親の都合で決まるモノ。
そういう風に割り切ればいいではないか」
そう諭す様に彼女を強く見つめるオッサン。
その言葉にメイより、俺がカチンと来た。
「おい!
メイヴィアの気持ちはどうなるんだ!?」
俺は会話に割り込む。
「メイヴィアの気持ち?」
俺の言葉に反応するオッサン。
「好きでも無い男に犯されて
聖女を引っぺがされるなんて
自殺してしまうかもしれないくらい
心の傷になるだろうが!!
そんな事も分からんのか!?
神官戦士の団長のクセに!!」
俺はそう強く叫んで、睨みつけた。
「ふむ…まぁそれは正論なのだがな…
今の場合においては
正論かどうかは微妙だが…」
「は?」
意味の分からない事を言うオッサンに
眉をひそめる俺。
メイは複雑な表情を浮かべていた。
「まぁ、確かに、こんな事は
もっと時間をかければ
自然と解決してしまうのかもしれんが
我々に時間が無い挙げ句に
ウチの子は、こういった感情を発露するのを
子供の頃から抑えつけられているのでな。
無茶な補助でもしてやらなければ
悪い方向にしか行かんだろう。
私は、この子の親では無いが
それが過剰な親心という奴だ」
そう言ってため息を付くオッサン。
「今のこの状況が最悪だろうが!!
頭、腐ってるのか!!」
俺はその言葉に激高する。
言うに事欠いて、
悪い方向にしか行かんとか
この状況以上に悪い事があるのか!?
「そういう所は、鈍いのか…
存在のアンバランスが面白いな…
いやまぁ、3日という時間では
認識すら、ままならんか…
それはそうか…
なら、もう言葉を交わしても堂々巡りだ。
私には時間が無いので実力行使させて貰う」
そう言ってオッサンは何か
『気』の様なモノを貯めるべく
力んでいた。
「ハッ!!」
そしてそれを発散する。
すると俺の体に軋みと痛みが生じた。
「何だこれは!?」
俺は突然、体全身に苦痛が生まれたことに、
驚くしか無かった。
「【依頼】の契約不履行による
ペナルティを強化した。
その娘を襲わなければ
どんどん、苦痛が増していくぞ。
【依頼】とは、そういう祈祷だ」
言って冷たい瞳を向けてくる。
「辞めて下さい!!」
「辞めて!!」
メイとフィアがその光景に絶叫した。
「ぐううぅぅうっ!!」
俺は体に増していく苦痛にとにかく耐える。
なんだこの名状しがたい苦痛は?
痛みから逃げようと体がもがき
足が勝手に動いて、メイに近づいていく。
もう拘束されて地に伏してる
メイとは直ぐの距離だ。
マズイ。
本能に近い何かが
彼女を襲おうと躍起になっている。
静まれよ、本能。
こんなのって無いだろう…。
「耐えるなぁ…
中々に凄い精神力だ…
そんなにこの嫁さんの方がいいか?」
そう言ってオッサンはフィアの胸を揉んだ。
「イヤァァァ!!」
フィアの絶叫が響く。
「辞めろ!! 辞めてくれ!!」
俺はフィアの悲鳴を聞いて
オッサンに懇願するしか無かった。
「ウチの姪だって、
十分な器量だと思うのだが…
ヤレヤレ…」
そうして、またオッサンは気を貯める。
「辞めて下さい、グレゴリアス卿!!
苦痛を与えて強行させるなんて!!」
更に圧を強めようとするオッサンに
メイは静止の声を上げた。
「では、お前はどうなんだ?
お前は?
何時も己の感情を抑え続けて
操り人形の様にされていたお前は。
今も、そんな風に私の操り人形になっている。
そんな中で、お前の本音は」
オッサンはその時、
メイに非常に厳しい視線を送って
そう問いかけた。
その問いかけに、
メイはハッと地面を見つめる。
「私? 私の本音?」
それを問われてメイは
目の焦点が合わなくなった。
じっと地面を見つめていた。
「本音もクソもあるか!!
何処の誰が、こんな形で
犯されたいんだよ!!
いい加減にしろ!!」
俺は苦痛に耐えながら、叫ぶしかなかった。
そしてそのまま、その場に
四つん這いになって倒れる。
縛り上げられる苦痛に
立っていられなくなったのだ。
そのまま横に転がり、
仰向けになって寝そべった。
寝転がれば動けはしない。
それはそれで、動きへの抵抗になった。
「お前達の国の聖女だろう!?
大事な人じゃないか!!
水の大浄化だったか?
聖女様だけが使える祈祷!!
彼女が聖女でなくなれば
それだって失われるんだろうが!!
そんな、みんなの財産を、
国の上の揉め事で
失っていいのかよ!!」
俺は彼女が聖女で無くなると
恐らく困るであろう事を口にした。
その言葉を聞いて、メイとオッサンの目が
それぞれが異なった感情を伴って
見開かれた。
突然だった。
「またそれだ!!」
オッサンがその言葉に激昂した。
「異国の人間までそれを言う!!
吐き気がするその台詞を!!」
「何!?」
俺は正論を言ったつもりだが
オッサンは俺の言葉に反応して激高した。
その言葉はオッサンには
気持ちの地雷だったようだ。
俺は彼の地雷を踏み抜いた。
オッサンは吠える。
「ああ、何が聖女だ!神聖だ!
聖女のみの大奇跡だ!
どいつもこいつも、
目の前の事に踊らされて!!
そんな下らないモノを
さも大事な事として盛り立てる!」
「何だと!?聖女が下らない!?」
オッサンの謎の剣幕と主張に驚く俺。
「そんな”聖女様”に縋る事で
1人の少女でさえ居られなくなっている
そんな子が居ることには、誰も気付かない!」
「!?」
オッサンはただ吠えた。
俺はオッサンの言葉に驚いた。
「水の大浄化? ああ素晴らしいよ!
あれだけの淀んだ湖を、
ただ1人の娘の祈祷だけで浄化する。
奇跡だ! ああ、奇跡だとも!!」
「!?!?」
オッサンは俺が知らない事を
そこで言い出した。
「だがそのせいで、皆が忘れた!
大事な事を!
200年間、そんな事は誰もできなかった!
だから、神官達が交替交替で
何人もの小さな浄化の祈祷を重ねて
ずっと、ずっと、清めてきたんだ!
200年間ずっと!
ネレトイナ湖の大浄化を
私達が出来なかったわけじゃない!!
沢山の人手で実現してきたんだ!!
なのに、それを簡単に忘れた!
先人たちの、無いなりの努力を!!
たった1人の聖女に縋って
神官達は『サボり』を覚えたんだ。
その父親は、彼女の力で、権威まで高めた!
吐き気がする!
お前が言う大事な聖女の奇跡とやらは
我々に『怠惰』を生んだのだ!」
「!!!!」
オッサンの叫びに、ワケがわからないなりに
彼女が辿ってきた過去を感じる。
オッサンの目には彼女やその周辺は
そう見えていたらしい。
オッサンはそこでずっと憤った。
「彼女が聖女になってから
ずっと、清めの行事は、まかせっきりだ!
どいつもこいつも、初歩の『浄化』が
満足に出来ん!!
『聖女様には敵わないから』
『聖女様がおられるから』
『聖女様の力』『聖女様の力』
バカ共がっ!!」
オッサンはそこで己のメイスで
床を激しく叩いた。
廃墟の床が陥没する。
「そこに、勝手に聖女にされて
ずっと狼狽えて困りながら
聖女を演じ続けている女の子が居たことを
知っているか!?
そこで、泣くことも我慢して
聖女だからと、気丈に振る舞っていた子が
居たことを!!
どいつもこいつも
誰も、この子を見やしない!
見るのはいつも『聖女の看板』だ!!」
オッサンは何度も何度も床をメイスで叩く。
その言葉にメイはハッとなって
ずっと床を見つめて瞳に涙を滲ませた。
「だったら聖女など要らぬ!!
神官がどんどん怠惰になるのなら
聖女など必要があるか!!
努力を忘れ、勤勉を忘れ、研鑽を忘れ
謙虚を忘れ、信仰を忘れ、己を忘れ
女神への感謝さえ忘れてしまう!
そんな聖女が、どうして信仰に必要か!」
オッサンは心の内を全部吐き出して
ただ、恐らく彼らの内情に
怒りをぶつけるしか無かった。
その言葉を聞いて、
メイは思う所があったのか
床をじっと見つめて震えていた。
俺はその叫びを聞いて理解した。
こんな無茶苦茶をするオッサンだが
それでも、心の内では
聖女ではなく、姪っ子に思える女の子の
”メイヴィア”の事をずっと
思っていたのだという事を。
それは歪んでいても親の愛だった。
しかしだからこそ、俺の中の何かが許せない。
俺はオッサンに向かって口を開いた。
「だったら、尚更じゃねぇか!
時間がねぇのは分かるけどよぉ
ポッと出の良くわからん冒険者じゃなくて
『女の子』のメイヴィアが
この世界で出会って好きになった男と
こういう事は
しなくちゃならねぇんじゃねえのか!?
そこまで思うなら
こんな事を強制してどうするんだ!?」
俺は痛みに耐えながら
それでも、自分の体を押さえつけて
祈祷の効果に抗って、そう叫んだ。
そうか、俺も思い違いをしていたらしい。
どんなに『聖女』と呼ばれようが
そこにいるのは、可愛い女の子なんだ
そういう事を。
そう思ってメイを見ると
メイは瞳を涙で潤ませていた。
「仕方が無かろう!
真っ当な出会いなんかよりも
ただ革命寸前の国で奔走してたのだ!
だが、この子と出会う男は
何時でも後ろに引いていく!
『この子は聖女だから』と!
神聖不可侵という暗黙の了解が
誰もこの子の心を護らない!
なら、強制でもしなければ
誰がこの子を護るのだ!?
私はもう行かなければならないのに!」
その姪っ子心配オジサンは、ただ叫んだ。
自分の大事に思っている家族が
この世界で一人ぼっちな事を。
その言葉に俺はある一種衝撃を受ける。
それは俺ですら、
反省しなければならない事だった。
そう、俺も確かにメイヴィアが
『聖女』と分かった後は
心の距離を取っていた。
可愛い女の子だと思ったが
身の上がそんななら、
神聖不可侵なのだろうな、と。
無意識にそう思わされていた。
だが、それはいけないのだ。
それでは彼女はどうしても孤独になる。
俺とは違う種類の孤独だが
それでも、その孤独もとてもつらい孤独だ。
そんな簡単な事も、
俺は分かっていなかった。
だがオッサンは強いから、
聖女を必要としないから
彼女を聖女ではなく、
『女の子』で見れていた。
本当は一人で泣いている少女の姿を。
だからこその、この絶叫だ。
なるほど分かる。
理解はできる。
でもだ!
でも、だからこそだ!
「気持ちは分かる!
アンタが、メイヴィアを
聖女ではなくて、女の子として
親みたいに心配してるのは
よ~く分かった!
俺だって彼女の前から逃げたしていた
腰が引けていた男共と同じだった事は
謝らないといけない事だ!
でも、やっぱり、こんなのはダメだろう!?
こんな強制は、ダメだろう!?
俺は気に入らねぇんだよ!
昔から強制って奴は!
メイヴィアが良い男に出会えるまで
護衛して欲しいなら、俺にそう言えよ!
こんな、強姦する下郎役なんかより
護衛だったら喜んでやってやるからよぉ!!」
俺はあまりの事に
脊髄反射でそう返すしか無かった。
その言葉でメイは更に瞳に涙を潤ませる。
そうだ、メイヴィアは孤独なのだ。
誰かが護ってやらなければならない子なのだ。
だからずっと側にいる”つがい”を
強制的にでも作りたい。
その気持ちは分からんでもない。
それでも『今』の俺は、
それが納得できなかった。
だから俺は吠えた。
「強制なんて、心の納得が無い繋がりなど、
どうして何時までも続くと思えるっ!?
そんなモノはまやかしだ!!
人間には納得が必要なんだよ!!」
俺はそう叫んだ。
それは本当は、
俺のあっちの世界での実感でもあった。
納得の出来ないキツイ仕事を振られて
強制的に上に従わされていた
あっちの世界で拘束され続けていた俺。
そんな自分の中で、
ずっと押さえ続けていた感情。
それが今のメイと僅かにダブる。
そうか。
そういう事か。
『納得がいかねぇ
気に入らねえんだよ!』
ついついこんな事を、
この世界で口走ってしまうのは、
そういう事か。
俺は叫びたかったのだ。
あっちの世界で、その言葉を大声で。
そうだ、大都会の真ん中で、
みんなが同じように隠している
この気持ち。
それを俺は叫びたかったのだ。
みんなと同じように。
そうだ、この思いを絶叫したい。
今は叫べるこの身だから!
だからこの世界で
俺は思いを連呼する。
「納得いかねぇんだよ!!
メイが幸せになれねぇような、こんな話は!
こんな気に入らねぇ話があるか!!
ふざけんなっ!!
自由だろうが束縛されようが
幸せになれなきゃ、
何の意味もねぇだろうが!!」
俺は絶叫した。
あっちで絶叫したかった思いを
メイに重ねた形で、この世界で。
その言葉でメイの瞳が涙と共に輝いた。
何がどうなのかは分からないが
その言葉が彼女を揺るがしたようだった。
そして視線を変えて
どうやらフィアの方を見たらしい。
フィアとメイの視線が交差していた。
俺からは完全には分からなかったが
位置関係から見てそのハズだった。
2人は目で何かを会話していた。
何を会話していたのか
よく分からない。
だが、何かを会話しているように
俺には見えた。
色々と視線が交錯するその会話。
僅かな時間だったハズなのに、
何故か濃密な会話を
繰り返していたように思えた。
そしてそれが終わったぐらいに
「もう、しょうがないですねぇ
私の御主人様は…
こんな事、続けてたら
そのウチ本当に大変な事になりますよ?
どうして知らないのに
そんなにピンポイントなんですか…」
そう言ってフィアは呆れていた。
不思議な言葉だった。
え?どういう事?
俺はフィアの言葉の意味が分からず混乱する。
その言葉を受けて
メイは嬉しそうに笑った。
その時、不思議な事だが、
俺は、とっさにある事を思い付いた。
この苦しみの中から状況を打開するための
唯一の逃げ道を。
あの邪神の顔を思い出して、
思わず舌打ちする。
だが迷っている場合ではなかった。
「メイ! 万象強化だ!」
「はい?」
俺は苦しみに耐えながら声を出し
メイは突然の事にキョトンとする。
「俺の異能の万象強化を
君にもかける!
俺とフィアは元々の
冒険者としての基礎修練が足りない。
けれど君ほどの実力の神官なら
俺の万象強化で強化されたら
俺達なんかより、遙かに強くなれるハズだ。
だから、強化されれた後にそのまま逃げろ。
こんな馬鹿な事、続ける必要なんかねぇ
どっかに逃げて、ただの女の子として
好きな男でも見つけろ!」
俺は真剣なまなざしでメイにそう叫んだ。
「ほう、興味をそそる話だね」
俺の周囲に何の隠蔽もできていない
絶叫の提案を聞いて、オッサンがそう反応する。
「私も見てみたいな…
この子が君の強化を受けると
どれくらい変わるのかを…」
そう言って、ニヤニヤとするオッサン。
俺だってどうなるかなんて分からない。
だが、最後の賭けだ。
俺に残された手はこれしなないんだ!
俺はフィアにやったように
意識を集中し、強化をしたいと思う
その人を心の中で念じた。
これでいつも
フィアに万象強化が作用するのだ。
だったらメイは?
「力が…沸いてきます…
これ…何でしょう…
感覚が研ぎ澄まされる感じ…
何か全ての五感が冴えているのに…
それでも、それが自然に扱えて…」
メイに力が”繋がった”と感じた感覚の後
メイがそう言った。
やった!どうやら成功だ!
フィアも強化が成功したらこうなるから
成功に違いない!
「君の祈祷で、その拘束を解けないか!?」
俺は彼女を抑えている黄色い膜を見て
そう言った。
「試してみたいです…
この今の研ぎ澄まされた感覚で…
【我らを守護する水の女神よ、
我らを縛るあらゆる制約をその力で解き給え】」
メイがそう詠唱するや、
彼女の祈祷が発動し
彼女を抑えていた、
拘束の祈祷は霧散していった。
「ほぉ…メイヴィアの実力では
まだ私の【拘束する捕縛の膜】は
解けないと思っていたが…
君の異能が作用すると、
私の祈祷を解くほどになるのだな…
それは恐ろしい…」
そう言ってオッサンは
特にどうとする事もなく、それを見守っていた。
油断している!
「今だメイ! 逃げれるぞ!」
俺はそう叫んだ。
だが…。
メイはそのまま立ち上がって歩いて
俺の前に歩いて来たのだった。
「何してるんだ!!
あの化物から逃げるのは
今しかないだろう!?
早く逃げろ!
万象強化の力があれば
君なら逃げれるハズだ!!」
俺は彼女の愚図な行動に絶叫した。
「え?だって貴方
今、言ったじゃ無いですか」
メイはじっと俺を見て、そう言った。
「は?」
彼女の言っている事の意味が分からず、
俺は間抜けな返事をする。
「どっかに逃げて、ただの女の子として
好きな男でも見つけろ!って…
そう言ったじゃないですか…
だから、来ました…」
そう言って彼女は笑った。
「はぁぁぁ!?」
俺は彼女の頓狂な言葉に
ただ唖然とするしか無かった。
「冗談を言ってる場合じゃなくて!」
そう俺が慌てた所に、
彼女が俺を抱きしめる。
「無理しないで下さい。
その祈祷は抵抗を続ける程に
貴方に苦痛を与えるのですから…」
そう言って彼女は俺を強く抱きしめる。
「辞めろ、この祈祷は
俺の意志をねじ曲げてでも
体が動いてしまうんだ!!
そんなに近づかれると!!」
俺は体から湧き出す痛みに耐えながら
自分の体がメイを襲おうとするのを
それでも抑えつけた。
「いいですよ…
私を犯すのならそれでも」
そう言って彼女は俺の顔に
自分の顔を当てて抱擁する。
「何言ってる!良いわけあるか!」
俺は彼女の言葉に反発した。
「私って、
そんなに魅力がありませんか?」
メイは不満そうな顔になってそう言う。
「いや、魅力はあるよ!
襲いたくなるくらい十分あるから!
そんな事に腐らないで、今は!!」
俺はずっと慌てて、言葉を繰り出す。
「じゃぁ犯して下さい…
私の聖女を…」
そう言って彼女は微笑んだ。
「何言ってるの!?」
俺はその言葉に
心臓が止まりそうになった。
「私…ずっと前からなんですけど…」
「え?」
「聖女、嫌だったんです…」
彼女は寂しそうに笑って、そう言った。
俺はその言葉に、ただ胸を打たれた。
「ずっとずっと、本当の自分を抑えつけて
聖女の役割に忠実たろうと、
してましたけど…
本当はそれが、嫌だったんです…
叔父や貴方のおかげで、
ようやく気付けました…」
言って彼女は俺をギュッと抱きしめた。
「だからといって…」
俺は頭の中がパニックになった。
「ずっと私は苦しんでいたの…
聖女っていう私に…
だから…ねぇ…」
彼女は瞳を輝かせて俺をじっと見て…
「私を聖女から助けて下さい…」
彼女はそう言って
俺に口づけをした。
俺は頭が真っ白になる。
唇が離れて、俺はフィアの方を見た。
フィアは苦く笑って
困ったような顔をしていた。
「御主人様…
困ってる女の子がそこに居ますよ?
私みたいに、助けてあげて下さいよ…」
僅かに体を震わせながら
少し涙ぐんで…俺にそう言う。
「いや…でも…
だからって、行きずりの…
そんなのは…」
「私の事、嫌いですか?」
メイはそう尋ねてくる。
「いや、そんな事は…
でも、そんな好きか嫌いかなんて
たった3日程度で…」
俺はそう言って狼狽える。
「私は好きですよ…
惚れちゃいました…
いわゆる一目惚れです…」
メイはそう言って
俺の顔を自分の胸に埋めた。
「はぁ!?一目惚れ!?」
素っ頓狂な言葉を耳にして
俺は狼狽え続けるしか無かった。
メイが、俺に、一目惚れ?
そんなの何時?
いや、一目惚れか…
いや、そんなだったっけ?
まぁ、友好的に会話はしてたけど…
え?でも…
「フィアさんも一目惚れって
聞きましたけど?
変ですかね?」
そこで追い打ちで
メイはそう言ってくる。
その言葉を受けて思い出す。
あ、そうか…
そういえば、後で聞いた話で
俺が助けたそうな視線を
フィアに送ったときに
一目惚れに近い何かを感じたって、
フィアが言ってたっけ…
あ、そうか…
あ…
え?
ええ??
えええええ????
そんなのあるの!?
あの時はフィア1人だったから、
フィアのその言葉に、そんなモンかって
変な納得はしたけど…
は?
メイも!?
え?
「まぁ良いじゃ無いですか…
正確な所はどうかなんて…
卿の導きのままに動くのも
主体性が無いかもしませんけど
好きになったのは事実なんですから
だから、私の聖女を犯して
ついでにお嫁に貰って下さい」
そう言ってまたメイは
俺に唇を重ねた。
俺はそれで理解能力が吹き飛んで
ただの、アッパラパーのバカになった。
これがね、「それから7日くらい経過した」とか
時間を吹き飛ばして親密性が上がりましたとか
抽象的に状態の遷移が起きてますを使えば
楽なんだけど、
それだと矛盾も起きるんよね
7日もあれば流石に隣の街に到着するだろうし
隣の街で何されるかわからんなら、
オッサンが街に入る前に絶対に止めるし…
となると、泳がして貰える時間は3日くらいか…って
逆算すると
「せいぜい3日で、親密度を上げろって!?
無茶なwww」
っていうので、困って、しゃーないんで
異世界人なのが垣間見れて、凄く興味津々になって
ハマっていく…
というのと、元々、しかけてたギミックの
奴隷の嫁を滅茶苦茶大事にしてるのを見て
スゲー羨ましくなる、っていうので
3日という超特急で惚れましたって
言い訳作ったけど…
苦しいかなぁ…
初期構想だと、
「ボンヤリ好意は出来てたんだけど
オジサンのマジキチな手段に全員抵抗できずに
既成事実だけ先に出来て、後から感情が付いてくる・・」
とかにするか? 個人的には面白いな。
いや、それってエロゲ展開だな…
流石にR18か…
R15まで落とすなら
同意の段階までは進まないとダメか?
て事で、初期構想からちょっと「まろやか」にしたんだけど
うーん…
やっぱ、難しいな、ここのパート…
構想の6割消化できたくらいかな?




