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第12話 泉に水浴びに行こう

まぁ、ここまでは

フィアが埋没しない為のキャラ付け描写だったんで、

駄話といえば駄話

サラマンダーの資材を売った商館に

査定がどうなったかと、その代金を貰いに行く。


意外にあっさり払ってくれた。


もうちょっと値切り交渉とかがあるかと思ったが

元々品薄で依頼を出してきてたのだから

ここでケチっては次が無いという焦りか?


代金があっちの価値で600万円くらい

600金貨相当として取引が成立した。


だが支払い方はやや違う。


換金すると100金貨相当のサファイア宝石5つ

そして金貨袋に金貨が100枚だった。


挿絵(By みてみん)


600枚の金貨が入ってる袋なんかにすると

持てなくはないが、

ちょっと携帯するには笑えない重量になるんで、

100枚を越えたあたりからの金貨袋を

財布にするのは現実的でない。


なので、宝石類に圧縮して携帯するのが

100金貨を越えたあたりからの方法論だ。


ただ宝石に価値を圧縮すると

金貨そのものが必要になった時

換金をする過程が入ってくるので、

面倒でもある。


100金貨価値を全部換金できるかは

商館では値切り交渉の余地が出てくるので

元の価値から目減りしてしまったと

考えるべきか…


交渉力次第だが…


とはいえ、重量のある金貨袋を

持ち歩くわけにもいかず…


という事で、換金するなら、

宝石をくれた商館でやるのが

ベターというか…


宝石の価値値札も

保証書として書いてくれるし…


ともあれ、

あっさりと600金貨相当の報酬を得て

帰路に立つ俺達。


俺は貰ったサファイア宝石を分配する事にし

俺が3つ腰ベルト辺りに携帯し

2つはフィアに渡した。


フィアは宝石なんか、お恐れ多いと渋っていたが

もしもの時の為だ。


俺が何らかの事故で死んでしまって

フィアが天涯孤独になった時、

それなら先立つモノがあった方が良い。


そんな

2度あることは3度あるなんて

ことわざ通りになってもらうと困るが

一回、交通事故で死んでる身だからな…


どうしても、

「まさか」を警戒するようになってしまったのだ。


ただ、先立つモノがあったとしても

換金が出来なければ意味がないわけで

そういう金銭交渉や、金貨銀貨銅貨の扱いも

出来るようにならないといけない。


だから夜はお楽しみの前に、

フィアに最低限度の算数の勉強を教えている。


まぁ他にも、フィアと一緒に、

国語の勉強も並列でしてるんだが…


互いに文字が読めない身である。


そもそも最初から文字が読めないフィアと、

文字概念はあっても、概念と記号が一致しない俺。


俺の方がやや国語の勉強は有利だが

ほぼ、どんぐりの背比べだ。


まずは二人で

『これは何を表している文字か?』を学習し

その後で、簡単な足し算引き算を

フィアに稽古させていた。


農民の子だから、

もうそこら辺が真っ白なフィアだ。

知能レベルは小学生並みで、

経験則だけが年相応なのだから

そのアンバランスが何か面白い。


しかし、算数は金銭取引をする上で、

最低限必要な力。


こんな基礎的な力の欠如で、

商人達のだまくらかしが成立するのだから

算数といってもこの時代では侮れない。


というよりも、こうやってフィアの様な

アンバランスな知識状態の人を相手にすると、

何故、あの世界で小学校で算数を教えるのか

分かった気がした。


算術の最低限の基礎があるというのは、

それが無い世界に来ると素晴らしい事なのだ。


足し算引き算が出来るという、

たったそれだけで

金銭取引が出来るか出来ないかとか、

交渉の基礎ができるようになる。


市場のおばちゃんとかに、

銅貨でリンゴを売ってもらうとかなら

漠然とした経験則でなんとかなるだろう。


しかし、金貨100枚相当の宝石が7個とか

金貨70枚相当の宝石が4個とか

価値の掛け算と足し算が混ざってくると、

農民の子ではパニックになってしまう。


100×7+70×4=700+280=980


なんていう簡単な計算。


それでもこれが出来るだけで、

周囲からスゲェと言われるのだ。

それが中世の知識感なのだ。


俺は難しい数学は分からない。

複利計算とか言われたら、

俺だってチンプンカンプンだ。


それでも、

ただの足し算引き算掛け算くらいなら

フィアに残せる知識の財産として、

教えることは出来る。


俺が冒険中に死んだ時の為、

というのもあるが、純粋に日常生活で、

常に俺だけで金銭交渉をするのも

煩雑な事だ。


同じ目的を持った集団が、

だいたいの事で行動が代替できると云う事は

全員の行動範囲に余裕が出来る。


単純に言えば、ちょっと計算が必要な買い物を

フィア1人で出来る様になるのは

それだけで楽だって事さ。


だから身になるお勉強というのは

イイ事なんじゃないかと思う。


不思議と、

たったそれだけの二人の勉強時間が

何故か俺には幸せな時間に感じれた。


学ぶというのは、きっと

同じか近しい目的を持った者達が

集団で取り組んだ時に、互いに血肉になって

自分の身に付いていくのだから

それは楽しい事なのだ。


強要されて学ばされる事と

自発的に必要を感じて学ぶ事は

互いに背反の関係なのだろう。


あっちの世界の様に

何のためにやってるのか分からない事を

延々と繰り返されるのは辛い事で、

他方、こっちの世界の様に

得た力が今の自分の必要に

ダイレクトに合致する事は楽しくて、

嬉しい事なのだ。


それがもし

あの時あの世界で分かっていれば

もしかしたら、あの世界でも

学ぶ事は楽しかったのかもしれない、

と、こうやってフィアとお勉強をしていると

思わないでもないのだが…


しかし、過去を思い出して

それは無理だな、とも、思ってしまう。


あの世界にはフィアが居なかった。


こうやって出来る事が増えるのを

一緒に喜んでくれる人が。


その有るか無しかは

一番大きなやる気の要素ではなかろうか。


だから、今という時間は幸せで

これでいいのだとは、思う。


思うのだが…


ただし、計算の練習に使う為の、

羊皮紙代が高ェ~~。


紙が話にならんほど、高ェ~~~。


いや、買えない事は無いんだが…

計算式のメモに使うには、

ちょっと、ねぇ?

って気持ちになる値段なんで

もう、羊皮紙の表も裏も、

計算文字のインクでびっしりですよ…


計算練習するための紙で困るとか、

あっちの世界では、

想像もできなかった事だった…。


紙が高ェェェェェェ。


紙って、凄い発明だったんだな…。


――――――――――――――――


ふふふ…精算しよう…


上手く600金貨分の金は入った。


だが…


大蛇の毒    100金貨

解毒薬      50金貨

損壊した大盾   30金貨

折れた小剣    10金貨

壊れた槍      3金貨

ポーション    10金貨

矢など消耗品    5金貨

新しく買った長弓 30金貨

小手の修理費   10金貨

緒経費       5金貨


今回の冒険で損失した総経費

合計 253金貨


ウヴァァァァァァ!!!!


貯蓄が450金貨相当だったんで

必要経費が貯蓄の半分以上必要だったぁ!?

討伐に失敗してたら泣くどころの騒ぎじゃ

なかったじゃん…

 

サラマンダー コエェェェェ!!!

沙羅曼蛇、いろんな意味でコエェェェェ!!!


1匹討伐するのに、

必要経費が253万円も飛んで

報酬は600万円!!


何その右から左へ大金が飛びまわる仕事って!!


それも討伐日数が、

準備諸々含めて10日近くかかったんで

日当換算で1日約34金貨(34万円)


なんやねん、そのおかしな日給!!


フィアと二人で割っても

日給17万円/個人 だと!?


そりゃ冒険者やって

一山当てようとか考える馬鹿も

出てくるわな! こんな給料じゃ!!


ただし、ワニと常人が戦ったら、

普通に死ぬが!!


俺はため息をついて今回の仕事を振り返った。


まぁ、生きて帰ったんだから良としよう。

依頼も無事に達成したのだから…


結局貯蓄も積まれて、

450金貨+600金貨ー185金貨(実必要経費)

865金貨


ただし、サラマンダーに破壊された武具を

消耗品と見立てて全て買い戻すとしたら

865金貨ー68金貨=797金貨


まぁおよそ800金貨分の貯蓄は

積み上げられたとみていいか。


なので、おおよその目安で考えてる

1000金貨で諸々諸経費含めて家を買うという

目標金額に近づいた!


流石、一攫千金!

一攫千金!冒険者!


いやね… 大破した大盾を作り直したり

買うかどうか迷ってる小剣の4本目とか

槍の買いなおしとか、武装の見直しによる

追加経費とかも確かにいるけど…


でも、後、1か月、ゴブリンを毎日狩るか

もうちょっと3層の、

報酬の良いのを狩るかしてれば

1000金貨を余裕で越えれそうだ。


ようやく余裕を以て家が買えれる範囲に

貯蓄の射程が入ってきた。


家を買うだけでは、終わりにならないが

持ち家が無いと何も始まらない。


「でも、ご主人様…

 その…そんな1000金貨なんて

 凄いお金で、

 お家を作らないといけないんですか?」


フィアが眉をひそめて

貯蓄残高を確認して興奮している俺に

そういう質問をしてくる。


「べ、別に私、ご主人様となら

 金貨100枚程度の小さな家でも…」


と、真っ赤になって提案してもくれる。


うん…そういう言い方が可愛くて、困るぞ、うん。


まぁ、フィアのいう事も、もっともだ。


ただ単純に『家』を買うというか

”作る”だけなら

実はDIY込みで

100金貨ぐらいで建てれるんだ…

下手したら50金貨程度でも…


短剣5本分程度のお金で家がな…


あっち換算で100万円~50万くらいか…


だがなぁ…家といっても

フィアが考えている『家』と俺が考えてる『家』の

イメージが違うといいますか…


「何でそんな貴族様が住むような

 豪邸を建てられたいのですか?」


と随分前に聞かれたのである。


うん、カルチャーショックというか、

なんというか…


フィアの思っている『家』とは、

土間しかない部屋1つに、木を最低の支柱構造にして

土塀を重ねて、藁を敷いて『住めるだけ』にした所だ。


いわゆる

『貧しい農民の住む家』

なんだ…。


フィアはそこにずっと住んで来て、

両親とおばあちゃんと妹と弟の6人で

ギュウギュウ詰めだったというのだから

農民の生活感と家って、そんなモン。


そうやって、

我慢すれば1部屋でも6人住めるのだから

別に豪邸に住まなくても、2人くらいなら

100金貨で資材を買って来て、

城壁の外に小さな農民家を

自分たちで建てればいいのでは?

と考えているわけで…


うーん、だからフィアが考えているのは

俺が知ってる『家』とは

全然違うんだなぁぁ~


っていうか、

俺があっちの世界の家を

『標準の家』と考えてしまうから、

イメージの断崖があるんだけど。


俺達にとってはフツーの家であっても

この世界基準で考えると、

あれは豪邸だったんだ…


そもそも、自分たちで建てるという、

最初から

DoItYourself(DIY)で

家を作るのが当たり前の時代に

それも村の仲間が自然と手伝ってくれて、

建築のための人件費がほぼゼロになる社会で

わざわざ、

城壁内に高い家を建てるのは何故ですか?

と問われると、俺も答えに窮する。


いや農民村の共同体に入ってないので

人足を雇っても俺達は

人件費がゼロにならないのだが。


それでも自分達で家を建てるのなら

どうとでもなるんじゃないか?

資材なら森で木を自分で切って

取ってきてもいいのだし…


という理論が、普通に出てくるのが

この時代だ。


なるほど、分かる…

分かるよフィア。


それは俺も迂闊だった、盲点だった。


家の資材や家の建築費くらい

自分の労働力でなんとしろ

という考え方は。


だがね! ここは譲れない。


俺には『風呂』が要る!


『風呂』が必要なんだ!!


あの日本人なら、

どうしても入らないといけない『風呂』

それを作るには、そんな土間1つの土塀と藁の

住むだけで緊急に作った家じゃダメだ!


マスターも、

空いてる空き家を借りれば良くないか?

という賃貸物件の方向性を薦めてくれたが

賃貸に『風呂場』なんかあるわけねーだろ!!


いや、無いと断定するのも性急ではあるが、

それでもまず無いな…

貴族級の屋敷でなければ。


普通に考えて最初から排水構造を作らないと、

風呂場なんかできねーんだよ!

使った水は、

どっかに流さないといけないんだから。


公共の下水施設なんか

街を治めてる貴族様がわざわざ

私財を投げて作ってくれるわけねーだろ!


下水道レベルで自分で考えて

作らないといけないんだ。


もう、自分で家の構造を設計しね~と

風呂場付きの家なんか手に入らね~んだよ!!


だから1000金貨

(いろいろな税金とか諸経費込みなんで

 家の実体部分は600~700金貨ぐらいだろうが)

の予算を目途に家を作らないといけないんだ!!


ここは妥協はしねぇ!


俺は風呂付の家を手に入れて

風呂場でフィアと毎日、泡泡プレイするんだよ!

洗いっこするんだよ!

嫁をピカピカにするんだよ!


こればっかりは譲れねぇ!!!


という風にフィアに熱弁したら、呆れられたが

その後には嬉しそうになって、

頑張りましょうと抱きしめられた。


そんなわけで

目標のゴールに向かって、

ラストスパートのお金稼ぎを

頑張りたかったのだけど…


鍛冶屋の爺さんに、ぶっ壊れた装備を見せて

修理云々の話をしたら…


「アホか! こんなにぶっ壊れた装備

 修理するより、新しく作った方が早いわ!

 買え!!商品棚にあるからっ!!」


って怒られて、買いなおしになった。


まぁそれはそう。


最初からそのつもりではあった。


それはそれで、そういう流れになったんだけど

1つの装備だけ問題が…


前に改良版で作って貰った板金付きの木の大盾の

無残に破壊された有様を見た爺さんが腹を立て、


「もっと強度の高いのを新しく設計するから

 出来るまで1週間は待っとれ!」


と言われてしまい、大盾の更新の為に

待機時間が発生してしまった…


せめて壊れた得物の替えをと、

融通が利く槍を3金貨で買いなおし…


何か自分のスタイルにピッタリな武器はないかと

既製品の武器陳列棚を見ていると…


そこに運命的な出会いが…


「おおお、なんだこれは…」


俺は商品棚に置いてあった

その武器を手にして、震えた…


「この絶対に刃こぼれなんかしない

 壊れる事に最も強靭そうな、この武器は…

 ああ! この武器は!!」


俺は、あまりにも凄まじい

剛性と強靱性を放つその武器に魅入られる。


これだ!

これなんだ!!

俺が今求めているモノは!!


俺はようやく出会えたのだ…


俺が実戦で求めていた、継戦能力と強靭性の塊

その体現のようなモノを…


それは…


鉄の槌(メイス)


俺は5金貨で、

ただの鉄の暴力を手に入れた。


――――――――――――――――


そんなわけで、身を守る大事な得物

『大盾』の新しいのが出来るまで

俺たちは休暇にする事にした。


日帰りで南にあるハルル泉に

水浴びをしに行こうという事で

いわゆるバカンスと洒落込んだのだ。


海が遠い山岳地帯のこの地。


沐浴などの水浴びは、川で出来なくもないが

人目のない所で水浴びして

キャッハウフフしたいので

川の源流の1つであるハルル泉に行って沐浴を…


そう沐浴だ…


キレイキレイだ。


そうよ、高級石鹸は買った。


風呂場で熱いお湯でゴシゴシではないが

もう我慢ならん。


頑張って毎日、湯桶とタオルでフィアを拭いてるが

最低の汚れと臭いを取るのが精いっぱい。


艶々(つやつや)の肌にしてやるのは程遠い。


なにより夏。


こっちの世界にも四季があり、

今は夏で、そこそこの暑さ地獄だ。

あっちの世界の様な灼熱ではないのだが

『扇風機』さえない、この世界。


窓から入る風だけが

冷を取る手段なのだから、話にならん。


こういう時は、全身で水浴び

水浴びしかないんだ!


というわけで、二人で泉に水浴びに行った。


冒険者装備をリュックに入れて

大きなリュックを背負って、徒歩の小旅。


ゲームの様な、歩いてたら化物が出てくる、

面白おかしい遭遇などなく、

まぁ、居て小動物に出会うか出会わないか。


いや、そんなモンですよ、準街道なんて。


そんな歩いてたら定期的に

化物に遭遇するんなら、

騎士団はフル回転で討伐任務に従事しないと

領地をロクに治める事もできないじゃない。


なので『危険地域』と分かって居る

化物のねぐら以外は、

この世界の街道などは普通に安全だった。


むしろ危ないというなら

怪物より人間の山賊の方が出るくらいだ。


ただ、俺が大きな山賊をやったので

最近はかなり山賊も下火らしいが…。


そして、何だろう、

体内時間で3~4時間くらいか?

朝から出発して太陽が真上に来てるのだから、

5時間くらい経ったか?

そんなぐらいに、

水浴び場として、そこそこに皆に知られてる

ハルル泉に到着した。


おお!! 

幸運な事に誰もいないじゃないか!!


こんな夏なので、

もう少し、水浴びで人が居るかと思ったが

まるで俺達だけの貸し切りの様に、

誰もいない!


「早速入ろう! 入るべきだ!」


俺は汗でねっとりしてる服にうんざりし

リュックをそこにおいて、

おもむろに服を脱ぎだした。


「ご、御主人様、は、早いですよ!」


落ち着きのない俺の仕草に呆れているフィア。

しかし、彼女も汗にまみれており

また、昨今のサラマンダー討伐で溜まっていた

『まみれ』も残っていて、

水の溜まり場に息を飲み

俺に遅れながら服を脱ぎだす。


簡易的に作った水着!


いや、胸と股を布で隠してるだけの

水着と無理に言い張るしかない状態だが

水場で着る衣装だから、これは水着だ!


挿絵(By みてみん)


けしからん体に布をまとわせると

とてもけしからん感じになってしまうが

まぁそれは仕方ないだろう。


豊満な体を持つ美少女なんだから、

仕方ない。


そして俺たちは、

泉にダイブして泉水浴を楽しみ始めた…


…のだが、まず最初にする事は、

全身を布でゴシゴシ。


体中を水で浸してるのだ。

今だ!今しかない!


もう半年ぐらいは、残ってるかもしれない

全身の『まみれ』よ! 

清い泉の水で洗い流されるがよい!


「はぁ~~生き返ります…」


フィアも己の体の『まみれ』を落とし始めて

歓喜の声を上げた。


ああ、なんていう全身を洗える事の喜びよ!

だからこれで自分よ、分かるだろう!?

『風呂場』がどうして必要なのかを!!


これだよ!


これが毎日、『自分の家』で出来るから、

風呂場は貴重なんだ!


二人で、全身、水まみれになって、大喜びし

今までの汚れを落としている時、俺の目が光る。


「は~い、フィア~~

 キレイキレイの時間だよ~~」


そう言って、俺はタオルと高級石鹸を取り出し

高級石鹸をタオルにゴシゴシと擦り始める。


「え!? ご主人様、何ですかそれ…」


生まれて初めて見るであろう、

高級石鹸で泡泡になったタオルに

頬を引きつらせて、俺に対峙するフィア。


まぁ、泡泡って言っても、

あっちの世界の様な

『すっごく泡立つ』とかいうモノではなく

この時代の石鹸の、

それなりの泡泡でしかなかったが。


それでも泡立つ石鹸が一般的ではない世界で、

貴族が使う高級石鹸。

フィアにしてみれば、恐怖の対象でしかないだろう…


「ふふふ、嫁を綺麗にするのは亭主の仕事よ

 おとなしく、泡泡になるがよい」


そうして俺はフィアに襲い掛かって、

彼女を洗浄し始めた。


「え!?ご主人様!? 

 何でしょう!? ええ!?」


俺の突然の洗浄に、目を白黒させるフィア。


「俺が居た、

 あっちの異世界では、誰もが毎日してた事だ。

 体を石鹸でキレイキレイにしなければ、

 そのうち、病気になるのだ。

 なので、おとなしく、洗われるがよい」


そう言って俺はフィアに

泡泡石鹸タオル攻撃を続ける。


「ひぃぃ~~!!

 ご主人様がいたっていう

 遠い国って、誰もがこんな事を!?

 相変わらず信じられません!」


フィアは相変わらず、

異世界転生してここに居ますという

俺の正直な説明が理解できずに、

俺は遠い異国からやってきて

遠い異国は物凄い文明の国だったらしい、

的な理解で言葉を返している。


まぁ、その解釈でも、

そこまで間違いではないか?


異世界とか言われても、

そりゃ分からんだろうし…。


ともかく、

今まで水洗いでは取り切れなかった汚れも

この石鹸を併用すると、落ちる!


おお!落ちるぞ!フィアの汚れが!!

そして、フィアの本当に美しい肌が

艶々(つやつや)になるではないか!


やぱり風呂だ! 風呂しかない!

風呂は素晴らしい!

風呂に入らないと我慢ならない!!

日本人気質、万歳!!


風呂万歳っ!!


俺は何故、家を建てなければならないか

自分の信念の大元をそこに見つけ出して、

よりやる気がでた。


建てるぞ!風呂付の家!

毎日フィアを泡泡付けにするぞ!!

おおおお!!


そんなエネルギーが爆発し、

泡泡になったフィアの肢体に欲情もし


「あ、すいませんフィアさん

 ちょっともう、俺、ダメっすわ…」


そうして俺は己の欲望に負け

真昼間なのに、フィアとのイチャイチャを

泉の中で始めてしまった…


「えええ!? ご主人様、

 ここでですか~~~!!!」


俺に石鹸で洗われながら、

更に外でイチャイチャが始まった事に

彼女は絶叫をするのだった…。


………


所で、この泉、川の源流なんだけど

ここに高級石鹸の泡泡流すって

川の汚染になっちゃうんかね?


やっぱそうよね…


へへへへへ

ちょっとぐらいなら

水で希釈されるよね?


ね?


――――――――――――――――――――


嫁と大ハッスルした後に、

持ってきていたテントを立てて

抱き合いながら余韻を楽しむ。


ああ、体から垢が落ちた状態で

抱き合うって良いなぁ…

やっぱ、風呂っすわ風呂。

人類には風呂が必要だ。


タオルのような布で

濡れているフィアの髪を拭いてやりながら

どうやって風呂場を設計するかな、と

DIYを当たり前の様に要求してくる、

この世界に悩んでいた所…


「あ、あの御主人様…

 その…嬉しかったですけれど…

 赤ちゃんは、まだ作らないって…

 言われてませんでした?」


フィアは俺の胸の中で真っ赤になりながら、

それを尋ねてくる。


うぉっと、それをツッコムか…


いやまぁ、その、勢いというか

やっぱねぇ…嫁とイチャイチャすると、

ついついって、あるじゃん?


いや、計画的じゃなくて、

勢いというか叙情を優先しちゃうというか

まぁそういう奴だったけど…

でもねぇ…

元々、子供が欲しい相手なんだから、

こう、こっちの我慢もさぁ…


というのは、

間違いなく俺の油断か慢心なんだろう。


でも、もう家を建てるのは射程距離なんだ。


そしてこんな、

家を建てるのがDIY当たり前の時代に、

あっちの世界みたいに

1~2か月でポンと建つわけもなく

何処の土地に建てるか? から、

土地に基礎を作って支柱を建てて…

とか、やりだしたら、

2~3か月は普通に飛ぶでしょ?

半年くらいはかかるかもしれない…


てな事を考えると、

今から家を建てる案件を始めても

稼ぎながら目標金額に到達するのは、

時間的に当然の事で

土地を買う所のフェーズで見れば、

今の貯蓄でも場所の購入を

真剣に検討しなければならないんだ。


つまり、家を買う、建てるという事は、

もう既に始まってるんだ。


となると、まぁ、

嫁の願望も並列に叶えてやるのも

悪くはないのかなぁって、

そういう油断もあるじゃない?


いや、快楽の欲望に負けただけなんだけど

好きな子に、

相思相愛で我慢とか出来ないってよ…


それに、あえて言い訳をさせて欲しい。

言い訳はあるんだ!!


抱き合いながら、いつものフィアの言葉。


「私、もう16で、

 このまま身籠れば初産は17ですから…

 ちょっと遅れてるか、いえ、まぁ、普通でしょうか…

 早ければ良いってモノでもないと

 言われてますけど

 18で初産とかになったら、

 流石に心配になりますし…」


という、『え!?』って台詞をまた口にする。


「隣の家のミオちゃんは16で初産でしたし

 嫁に入ったのは14の時でしたから…

 結婚して1年で妊娠というのは、

 まぁ、普通というか…

 歳の離れたメグ姉は、

 早くて15で初産でしたけど

 その2年後には2人目を生んでましたし、

 もう凄いスピードで…

 だからやっぱり、遅れてるというのは、焦ります…」


と、彼女の妊娠感を口にされて、

ドギマギする…。


彼女が子供が欲しいという願望を持つのは、

農村社会の同調圧力という奴か…


「そもそも、おかしいとは思ってたんです…

 同世代の子が14くらいで嫁入りしてるのに

 私は15になっても親から縁談の話も出なくて

 弟と妹の世話をしてたら16になってましたし…

 村のみんなからは、フィアちゃんは可愛いから

 嫁の貰い手に困らないね…って言われてたのに

 全然、そんな話が来ないと思ったら

 その…親に奴隷で売られるとか言われて…」


と、辛そうな顔になって、

年齢問題を口にする彼女。


うーん、何からツッコんでやればいいのか…


フィアと話をしてて驚いたのが、

結婚も出産も俺たちの世界とは

段違いに早いって事だ…


いや、逆なのだろう…

俺たちの世界が遅すぎるのだ。


前に、

「いや、17歳でも十分、早いでしょ?」

と言ったら

「17歳で初産でしたら、

 2人目を生むのが19か20ですよ?

 3人目を生むのが3年おきなら23で、

 4人目が26

 5人目が29で、6人目なんて、32…

 32で6人目なんて生めるでしょうか?

 母は頑張ってましたが…」


と、彼女は頭を抱えていた…


うん、なんだろう

農村社会の多産主義…


俺の驚きと、

俺の世界での妊娠模様を口にしたら


「ご主人様が住んでて滅んだという東方の国は

 お伽話に出てくる、

 エルフか何かの国だったんですか!?

 文明が私たちより遥かに進んだ、

 魔法の王国だったみたいですけど…

 寿命が80歳くらいで、

 女の人が妊娠するのが30歳でも普通とか

 私たちの世界からは考えられませんよ!!

 私たちの寿命が

 だいたい50歳くらいなんですから

 15歳で初めての子が、

 運よく生き残れたら30歳で成人

 30歳くらいで運が良ければ、

 お祖母ちゃんになれるんですよ?

 そんな歳に初産なんて…」


と、呆れられた。


ああ、そういうモノなんだ…

自分たちの平均寿命から逆算して、

自分たちの社会生活の年齢による

行動を決めていくんだ…


50歳で死ぬなら、

30歳くらいでお婆ちゃんになって

45歳でひいお婆さんになって…とか…


一般的な寿命までに

流行病とかで生き残れるか

どうかも怪しいから、

だからみんな生き急ぐわけか…


その生命観に、俺は唖然とさせられた。


「でも、そんな急いで作らなくても…

 6人も人生で生むとか、

 子だくさんになって

 大変じゃないか…」


と、俺はその時、迂闊な事を聞いたのだが…


「6人、無事に生めたって、

 どうせ残るのは2人か3人です…」


そうフィアは寂しそうに言った。


「え?」


俺は彼女の言葉に眉をひそめる。


「私、生きていれば、

 本当は5人姉弟だったんです…

 6人目も出来ていたのかも…」


彼女は寂しそうに笑った。


「本当は5人って?」


意味が分からない俺は、

それを何気なく聞いてしまった。


「私が長女で生まれた後に、

 次女のリア、弟で長男のモグが

 2年後、2年後毎に、生まれたんですけど…」


彼女は一呼吸置いた後に、呟いた。


「妹と弟…8歳と6歳の時に、同時に病気で…」


そう言って、彼女は寂しそうに微笑む。


「えへへ…お父さん、跡取りが欲しかったから

 モグが生まれたときは、物凄く喜んでて…

 溺愛してましたから…

 リアが病で息を引き取って、

 モグも何も言わなくなった時

 お父さんに言われました…

 『お前みたいにブクブク太ってる子がいるから

  栄養がお前に取られて

  妹と弟が死んだんだ』って…」


そう呟いて、彼女は俺を抱きしめる。


「その後も、次男のゴアと末妹のネアも

 生きるか死ぬかの病気にかかって、

 なんとか生き延びて…

 もう次男のゴアだけは、

 絶対に成人させたいからって…

 だから…」


「…だから?」


「奴隷として売られて、リアとモグの分まで

 ゴアを生かす糧にさせてくれって…

 お父さんに…」


言って彼女は涙ぐんだ。


「私を売ったお金で、

 神殿が作る高価なお薬が買えるから

 それで家は生き残れるって…

 へへへ…

 そうですよね…

 こんなブクブク太ってるだけの、私なんかより…

 家が継げる弟が生き残った方が…」


そう呟いたときに、

俺はフィアを強く抱きしめた。


そんな馬鹿な!


こんな豊満な体の美少女が、

ブクブク太ってるだけの子だと!?


そんな馬鹿な!


でも俺は知らなかったのだ…


この時代の新生児死亡率が、

俺たちのいた世界からは

信じられないほどに高かった事なんて…


10歳になるまでに、

流行り病で亡くなる確率が高すぎて

6人子供を産んでも、2~3人しか残らずに

人間社会を維持するだけで精一杯だったなんて…


フィアの様に、

妹弟が普通に亡くなっているなんて

そんなの農村の子なら、

誰だってそうだなんて…

知らなかったんだ…


フィアが子供を欲しがる、

半ば本能的な強迫観念は

そんな生まれた子供が死ぬのは

当たり前と考えている

社会通念から生まれている事で…


そんな世界は

おかしいと指摘するのは

子供が病気で死ぬ事が普通でない世界に

生きていた者だから出来る事で…


子供の頃の児童病が、

薬で簡単に治る世界に居た俺には

子供が当たり前の様に死ぬなんて

実感できないから…


医者がほぼ存在せず、神殿の神官の祈祷だのみで

しかしそれは貴族と商人がほぼ独占しているから

農民の子はやっぱり、死ぬしかない社会だって

それがよく分かってないから…


だから俺は、項垂れて…

そして、ほんの小さな優しさの偽善が…

まぁせめて、フィアを妊娠させて

彼女の安心を作ってやれればと…


そう考えて…


なら…


嫁の色香に惑って、

夫婦イチャイチャでハッスルしても

仕方ないだろう?


とか、言い訳してみるが…


いや、やっぱり、欲情に負けてるだけか…


そうさ、負けたんだよ

俺はフィアの色香に。


しかし、親曰くのブクブク太ってるだけの体は

子供を孕ませるのには魅力的な肢体であって…


社会の強迫観念だろうが、

本人が望んでいるのなら

それでいいじゃないか…


なぁ?


俺はそういう自己弁護をして

またテントの中で

フィアの体を弄び始めたのだった。

さて、こっから先の13話から

『この話』のエンディングまで

ノンストップが始まるので、準備運動みたいなモノでした

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