第三十九話「魔力授入」
おい、これって"転移魔石"じゃねぇか!!
大昔、まだ魔法陣なる技術が生まれる前、人々はこの希少な魔石を使って転移魔法陣を描いた。
転移魔法陣に出口と入口を設定することで、一方通行でのワープを実現したのだ。
後に転移魔法は魔術の発展によって理論化され、任意の座標を組み込むことで好きな場所へワープできるようになる。
現在ではこの転移魔石を使ってワープする者はほとんどいない。
ロストテクノロジーというわけだ。
その理由は予め出口と入口を設定する煩わしさや、一方通行でしかワープできない不便さに加え、この魔石自体が入手困難になったことも大きい。
いつの時代も有限な資源は貴重というわけだ。
しかし、この石を使う利点もある。
魔術による転移魔法陣は魔力を消費し切ると消失する。
せいぜい十数回の転移が関の山だ。
一方で、転移魔石を使った魔法陣形成は理論上半永久的にその効力を持つ。
故に、出口と入口を重ねて描けば半永久的に別の場所へワープし続けることが可能となる。
『魔法石研究家クラウス・ダリアの採掘日誌より』
俺は違う場所に放り出され、別の転移魔法陣が発動し、また別の場所へ飛ばされ続けていた。
シュンッ――あぐっ。
シュンッ――いいぃっ。
ヒュンッ――うぅっ。
ヒュンッ――えっぐ。
シュンッ――オエェ……。
シュンッ――いつまで続くんだ……。
もう何十回もワープしている。
このワープループから抜け出すには零式魔術を使って魔力を無力化するか、魔法陣ごとぶっ壊すしかない。
空虚なる旋風を四方に放ち、部屋ごと吹き飛ばせば抜け出せるかもしれない。
一か八かで印を結ぶ。
我は風に導かれし者。
風は空を裂き、無をもたらす。
風は成長を遂げ、壮大なる旋風を起こす。
四風烈華の如き、その力を我に与えよ。
空虚なる旋……
突如、視界が暗くなり意識が遠のいてゆく。
全身から力が抜け、血の気が引いたような目眩に襲われる。
ど……うして……
まるでMPが底をついたかのように、体が魔術を放つことを拒んでいる。
ウーズとの戦いで魔力を使い過ぎたか。
いくらアイズたちの魔力を借りていたとはいえ、あれほど強力な魔術を連発していれば、そりゃ魔力切れにもなる。
体感的に今の魔力量は風魔術二〜三発が限度。
そんな状態でも俺は転々と洞窟内をワープし続けている。
考えろ、絶対に何か他に抜け出す手段があるはずだ!
部屋から部屋へは約一秒で移動する。
何かに捕まるにしてもワープが速過ぎて体が引きちぎられてしまう。
すると、一瞬女性のような姿が視界に映り込む。
その間一秒。
水辺?
洞窟内に水が湧き出ているというのか?
どうやら百二十回ワープするごとに、同じ場所へ戻ってきているようだ。
次の百二十回では赤色の長い髪の女性が水浴びしていることがわかった。
さらに百二十回後その女性が全裸であることがわかった。
その女性は俺には気づいておらず周辺に人影もない。
彼女に助けを求めるしかない。
俺は全裸の女性に向けて風を送った。
シュッシュッシュッ。
滞在できる時間は実に一秒。
彼女が気づいたかどうかを確認する時間すらない。
シュッシュッシュッ。
頼む、次が最後だ。気づいてくれ。
シュッシュッシュッ……。
魔力が底をついたのがわかる。
全身から力が抜け、薄れゆく意識の中でも、俺は目紛しくワープを繰り返していた。
◇
ゴク……ゴクッ……
夢を見ているようだ。
横たわっているが身体は動かない。
チュパッ……
大きく柔らかいものが口元に当たり、何かが流れ込んでくる。
舌先を動かすと何やらコリコリした箇所があり、どうやらそこから液体が出ているようだ。
無味ではあるがとても懐かしい味。
ゴクッ……チュパッ……
遥か昔に俺はこの液体を飲んだことがあると本能が告げている。
液体が全身を駆け巡り不思議と活力が湧いてくる。
重たい腕を動かしその正体を確認する。
とても柔らかく手では収まり切らない、まん丸とした形状。
俺の顔ほどの大きさで二つある。
必死に吸引していたおかげかある程度身体が動くようになった。
そして、俺は目を開いた。
真っ白なモチ肌の爆乳!!
俺、授乳されてるじゃねぇか!!!!
赤髪の女性が俺に授乳している謎シチュ!!
どういう状況ですかコレ??
洞窟で爆乳美女に授乳されておるのでふか?
冷静に考えるとエロいとか嬉しいの前に若干の恐怖心が湧いてくる。
思わず反射的に身体が仰け反る。
しかし女は俺の頭をガシッと掴むと、無理矢理その豊満な乳に顔を押し付けた。
「おお、ようやく目が覚めたか!」
おっぱいに埋もれて呼吸が乱れてくる。
乳に溺れてるぞ俺。
乳攻めで殺されるゥゥゥ!
無抵抗な俺に女はなんの悪びれもなく、
「遠慮はいらねぇ。もう少し補給していけ!」
と、強制授乳を続けた。
時折胸の隙間からチラッと彼女の顔を見上げるが、表情一つ動かさない。
無言で乳を吸う四十歳をどう思うだろうか?
俺はこの融合異世界では十五〜六歳に見えるとは思うが、中身はまぁまぁのおっさんである。
勿論憧れのシチュエーションの一つであることに変わりはない。しかし唐突に突きつけられるとそれを拒んでしまう自分がいる。
実際問題、ミニノックスはピクリともしていない。
もし、ミニノックスが盛っていたら、あの伝説の授乳○○とかしてもらえるのだろうか?
この役立たずがぁ!
ちょっと前の猛りはどうしたよ?
いかんいかん落ち着け。
危うく本来の目的を忘れるところだった。
いいか、ヘヴゲはエロゲじゃねぇ。
俺は○○コキをされるためにここへ来たんじゃない。
地震龍グラムヘルの侵攻を止めるためにここにいる。
まずはアイズを見つけ出し、グラムヘルの眠臓を癒す。
そしてヌフラムの門へと至るのだ。
そんな葛藤をしていると女は満足したのか、ようやく強制授乳を解いてくれた。
そして恥ずかしがる様子もなく服を着だす。
つか何なんだこのヘンタイ女は。
長い赤髪に眼帯をしており超がつくほどの巨乳。
見た感じ剣士でも魔術師でもなさそうだ。
また、両手に包帯を巻いているのも気がかりではある。
こういう怪しい痴女には関わらない方がいい。
成長を司る方のフュンディーニみたいにヤバい奴の可能性もある。
一応、おっぱい液を飲ませてもらったおかげで動けるようにはなった。
その点においては感謝しよう。
丁寧に頭を下げ、その場を立ち去ろうとする。
「せっかく無限ワープから救出して、魔力も回復してやったというのに、何も言わずに立ち去ろうとするとは薄情な奴だな」
そう言われてみればそうだ。
あの危機的状況を抜け出せたのは、このヘンタイ女のおかげ。
授乳も魔力回復の一環というわけか。
つまり、命の恩人。
どうやら俺は痴女に救われるタチらしい。
それに彼女からは敵意のようなものは感じ取れない。
両手両膝を地面につき頭を深く下げる。
言葉で礼を述べられない俺なりの最大限の感謝だ。
「面白い格好だな。それが何を意味してるのかは知らないが、顔を上げな」
女は豪快な笑みを浮かべていた。
「私はネフェリタス・ユートフィア。アンタの名は?」
さて、どうやって自己紹介しよう。




