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第三十八話「一日目・探索」


 地震龍の背中に空いた穴の内部は暗く、手をかざしてみると時折力強い突風が吹き上がってくる。


 ヤバそうなガスの匂いはしない。

 これなら入った瞬間、即死亡ということにはならないだろう。


 アイズに合図をし内部へ飛び込もうとすると、


「待って」


 服の端を掴む彼女は少し不安そうな顔をしていた。


「ノックス、気をつけてね。すぐそっちに行くから」


 あぁ。待ってる。


 アイズの頭に手を添えると、クシャッと微笑みかけてくる。


 さぁ、行こう!




 ど

 わ

 あ

 あ

 あ

 ぁ

 ぁ

 ぁ

 ・

 ・

 ・

  °


 ド

 ス

 ン

 ッ

  °


 痛ぇぇぇ。

 すんげぇ落ちたな。十メートルはあるか? いや、下手したらもっとある。

 咄嗟に風魔法を逆噴射して正解だ。危うく落下死するところだった。


 我が反射神経あざす、とでも言っておこう。


 ともあれ、無事突入成功。


 合図を送るため、上方の穴目掛けてモールス信号のように風を送る。


 シューシューシュー、シューシュッシュー


 最近は魔術の扱いにも慣れてきたものだ。とは言え、風魔術だけだが。それでも基礎的なものなら何の意識もせずに扱えるようになった。


 今の俺に扱える魔術は、


 1、閃光の輝き(シャイニング・フレア)

 2、烈風および烈風脚

 3、旋風(切り裂く効果のある烈風ほど威力はないが、大規模な風力を生み出すことができる) 

 4、風剣(エアリアル・カリバー)


 そして、

 5、神域魔術


 しかし、これに至っては確実にものにしているわけではない。扱えたのもたまたまというか、環境依存的な感じはする。


 神域魔術を最初に放ったのは閃光の輝き(シャイニング・フレア)

 これは正確には神域魔術ではない。フュンディーニは、俺と繋がったと言っていた。それに彼女の聖域内だったということもある。この二つの要因によって魔術が進化したのだろう。


 つか、魔術って進化するのか?


 次に発動したのは神層世界から脱出する時に放った、我が軌跡(エアリアル)は暴嵐なり(・テンペスト)

 これも風の加護が付与されたグアルケラスを使って放つことができた。他力発動に他ならない。


 俺の最強魔術って外的要因頼みじゃねぇか……って考えたところで、扱えるだけ感謝しなくちゃな。

 こんな初級魔術もろくに使えなかった俺が、飛び級で神域魔術を放てるだけでも奇跡と言っていいだろうから。


 次が、本戦第二試合エクストラ戦で放った、空虚なる旋風(エアリアル・バースト)

 しかしこれも、百パーセント魔術を行使したとは言い難い。完全発動一歩手前で、彼女の零式魔術『白影』によって無力化されたのだから。


 でも、あの時は初めて神域魔術を自分の力のみで発動した。何の力を借りることもなく。


 そして最後にさっき放った、我は深淵を(ソード・オブ)穿つ嵐刃なり(・テンペスト)

 

 これも神域魔術と言っていいのかもわからない。

 咄嗟に思いついた魔術。故に、どの魔術書にも載っていない俺のオリジナルだ。

 といっても、ほとんどフュンディーニの神域魔術の応用に過ぎないが。

 この時はアイズと赤井の魔力を借りて発動した。故に、これも自力発動とは呼べない。


 友情パワー炸裂って感じだな。

 なんか俺、漫画の主人公みたいじゃんか。

 このまま君臨者にでもなっちまったりして。


 ガッハッハ。



 しかし、この融合異世界はまだまだわからないことだらけだ。神の性格や歴史は俺の知っているゲーム知識とは異なっている。

 これはヘヴゲのストーリーに関わる超重要なこと。何故そのようなことになったのか、もっと調べなくてはならない。


 もっと他の神に会って情報を集めなければ。


 他にも七大君臨者が全く別人な点も気がかりではある。

 大賢者アルファス・ペンドラゴンは不在。

 獣王グレガリオンは何故だか君臨者になっている。

 暴漢ウーズ・ウォーズなんて全くの初見だ。


 何故そのようなことになっているのかは現時点では不明。


 頼むから剣聖オルフェウス・アレリオンと大聖者メシア・フラネルは存在していてくれ。

 もし彼らに会えたのならこれほど心強いことはない。彼らなら何かこの融合異世界について知っていることはあるだろうから。



 ふと、アイツの顔を思い出す。

 アイツがこの場にいたなら色々とアドバイスしてくれるのにな。

 いかん。いない者を引き合いに出して弱音を吐くな。


 融合異世界の歩き方なんてわからなくたっていいんだ。どれだけ不格好でも、俺は俺で一つずつ学んでいけば。


 ゲームと同じように、そう、一歩ずつ確実に、だ。




 ……うむ。


 しばらくこの世界について思考を巡らせていたはいいものの、アイズが一向に降りて来る気配がない。


 臆しているのか?

 いやぁ、彼女に限ってそれはないだろう。


 風が上手く吹き上がっていないのか?

 もう少し強めの風魔法を放ってみる。


 シーーーーン……。


 うーん、これでもダメかぁ。

 仕方ない。とりあえず、この辺りで待つことにしよう。


 その間に周囲を探索してみる。


 まぁ所謂普通の洞窟って感じだな。

 光源はないが、不思議と辺りを見回せる程度には明るい。ゴツゴツした岩壁は若干湿っている気がする。そして、やや肌寒い。

 魔物もいないし、食べられそうなものもない。

 つか、岩以外何もない。


 穴に落ちてから二〜三十分は経過しただろうか。


 いつアイズが落ちて来るかわからないから、穴が目に入る付近をウロチョロするしかない。


 流石に一か八かで降りてきてもいい頃合いだと思うが。


 逆の立場なら、

 合図が送られて来ない

 ↓

 魔物と遭遇してる!?

 ↓

 直ちにGO!


 となりそうだが、まぁこればっかりは俺の考えだし、他人の考えなんて俺ら凡人に読めるわけないんだから仕方ない。


 神でもない限りな。


 あ、そうだ。上に行ってみればいいんだ!

 俺は足裏から風を噴射させ、穴の方へ飛んだ。


 あれ? 確かこの辺りだよな?

 落ちてきた場所を探してみたが穴は見つからない。

 もしかして塞がってしまったのか!?

 まさか生き埋め!?

 地震龍は生き物であるためその可能性もなくはない。


 神域魔術を放って彼女を助け出すか?


 いや、もし本当にアイズが埋まっているとして、この状態で魔術を放ったら危険な目に遭わせてしまうだろう。


 どうする。考えろ。


 原作ではダンジョンは移動していた。

 正確には、ダンジョン自体も動くが、ダンジョン内のフロアや部屋も移動している、といった方が正しい。


 故に迷宮ダンジョンと呼ばれていたのだ。


 ゲームと融合異世界で同じ法則が働いているのだとしたら……。


 ここへ繋がる通路が切り替わったことになる。


 つまり、アイズは別の部屋、もしくは別のフロアにいる可能性が高い。

 そう遠くへは行っていないはずだ。


 よし、こうしちゃいられん!

 絶対にアイズを見つけ出すぞ!



 コロン……


 足元の石が転がり、青白い光を放つ。


 魔石か?


 洞窟内ではたまにレアな魔石が見つかることがある。

 長い年月を経て洞窟内に蓄積された魔素が凝縮することで魔石となる。

 グラムヘルの体内であるここは洞窟とはまた違うが、魔力が溢れていることは確かだ。


 これもそうなのか?


 石を手に取ろうとした瞬間、石の放つ光が辺りを照らした。


 シュンッ


 途端に俺は別の場所へ”ワープ”した。


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