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場当たり  作者: 真鍋
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タイトル未定2026/05/02 06:08

 佐久間の言う東名高速から以北の避難は順調に進んでいた、その佐久間も前線での解析に五十嵐をひとり残し合流するとそのスピードは更に増し東名以北に残っていた市民はほぼ運動公園迄避難を終えようとしていた、我々は其れを確認すると避難困難者探索に再度北へ向かった。


 夜間、停電、更には火山灰で自分の手すら見えない漆黒の闇に包まれていたがHMDS越しの視界は至ってクリアであったゴーストタウンと化した辺りは逆に生体センサーを乱す要因がなく探索には好都合であった、佐久間、由依、そして私を入れた3人はガスマスクを装着した自衛官を引き連れ運動公園から扇状に三方に別れ探索を開始した。


「出たよ、このまま噴火が続けば明日正午には溶岩流が富士市中心にまで到達するわね後、風向きによるけど火山性ガスは夜明け前に運動公園を襲いそうだけど致死濃度まで達するかどうかは不明、でも早目に引き払った方が良いわね」


「了解だ、では五十嵐お前は運動公園に戻り避難の指揮をとれ我々も探索終了次第すぐに向かう」


 富士の火柱は未だ衰えを見せないでいた、運動公園を出て30分が経とうとした時、HMDSが生体反応探知を表示した、数値は微弱だがまだ生きていると私は感ある場所へ急いだ、すると視界には電灯が灯っている場所を発見した“緊急時災害救援ベンダー”それは地震の発生情報をLED電光掲示板が知らせている自動販売機であった、そしてその足元に子供が1人膝を抱え泣きじゃくっていた。


「大丈夫、立てる?怪我はない?」


 私の呼び掛けに上を向いたのは4、5歳の少女であった顔は火山灰で黒く染まり涙の伝った場所だけ地肌を覗かせていた私は『よく頑張ったね』と声を掛け抱き起こそうとすると『お母さんが、お母さんが』と又、泣き出した私は『お母さんはどこ?』と少女の膝を払い立たせた、この状況下で少女が移動できる範囲は限られている生体センサーの感知範囲は半径300m、誤発報も許容範囲に入れれば500mまでは大丈夫であるが残念ながらその範囲に反応するものはなかった、それでも少女は私の手を握りこっちだとその方向へ連れて行こうと必死だったがそこへ向かえば確実にこの子は母親の遺体と対面する事となる私は悩んだ、ここで現実を見せるべきか優しい嘘で大人になるのを待つか私はその場に立ち竦んだ、すると懸命に引かれていた手から力が抜け少女が急に卒倒した、突然HMDS内が赤色に照らされH2S(硫化水素)濃度上昇のアラートが鳴り数値は760ppmを表示した私は少女を抱え自販機の上に飛び乗ったミシミシと音を立てアーマー装備の重量に耐えていたが長くは持たない、しかし今は少女の蘇生を急いだ既に呼吸は止まり心停止状態、背面ボックスに納まる緊急蘇生キットを取り出し酸素吸入、AEDパッドを少女へ取り付けボタンを押す、少女の身体が波打つが戻ってこないAEDチャージ中、アドレナリン投与、ボタンを再度押すも少女は戻らなかった。


「五十嵐っ!すぐ来て女の子がっ!女の子が!」


「晶、落ち着いて容態を教えて」


 何を伝えたか覚えていない、ただH2S濃度と曝露時間を伝えた途端、五十嵐が黙り込んだのだけは覚えている。


「⋯無理よ晶、残念だけど」


「何かある筈よ!五十嵐あんた頭いいんでしょ教えてよ⋯お願いだから⋯教えて、お願い⋯」


「道明寺、すぐ戻れ今は人手が必要だ、その様な少女をこれ以上出すな、オクレ」


 佐久間の正論に反応する様に私は叫んだ、辺り中の物を手当たり次第破壊した、なぜ少女を西側に立たせていた、なぜ私が西側に立たなかった、なぜ少女の行く末など考えた、なぜ、なぜ、なにが特救だこの装備がなんだ、ひとりの少女すら救えない装備などクソだ、クソ以下だ、私は交通標識を引き抜くと富士山へ向かって投げ飛ばした。


 放物線を描き飛んでゆく標識、その向こうには富士から立ち昇る三匹の火焔龍、その火焔に照らされ闇の中が微かに見えた、富士の山体は既に美しい円錐形が崩れ醜い姿に成り果てていた、そしてその闇の中を横切る巨大な人影を私は見た。

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