道明寺 晶 V
公への開示は行われたが我々は出動する事もなく幼稚園や小学生への訪問の日々が続いていた確かにスキンスーツ姿は求められるそれそのものであり色分けしてポーズでも考えてはと誰からともなく聞こえてきた、私の考えは変わらない我々が色分けされ決めポーズで子供の前に現れる日々が続くならそれに越した事はないのだ、しかしそれは突然崩壊した。
ウェイトルームで3時間が経過した21時前、私がコーヒーメーカーのポットへ手を伸ばそうとした時、ガラスの中の褐色の液体が激しく波打ち床へ落ち粉々に飛び散った耳をつんざくボリュームでアラート音が響き詳細が告げられた。
『フタマル、ゴーヨン、富士山頂火口及び側火口より噴火、同時刻、伊豆でマグニチュード8強の地震観測、各地の震度は⋯』
脊髄反射で私の下半身は揺れも気にせずハンガーへ走っていた途中、佐久間に出会うと無言で背中を叩かれた遅れて五十嵐と由依、迅と加藤は非番で基地内にはいないが遅れて現地合流になるであろう、外へ飛び出すとローター機は既に離陸できるまで回転数を上げていた吹き降ろす風が我々の行手を阻むが関係なく後部ハッチより搭乗し最後に由依が搭乗するのを確認して地上クルーに親指を立てた、油圧パイプの中の作動油が流れる音が聞こえハッチがゆっくりと閉じてゆく同時に機は回頭して重力が一瞬切れるとティルトローター機は浮き上がり機首を西に向けた、上空に達すると深見隊長の指示がインカムから聞こえた。
「情報が錯綜しており現地の詳細はわからない、お前らの判断で動け噴火口は多箇所あり山体崩壊の恐れもある、既に埋もれた町は捨てろお前達といえど全ては救えん救える者をより多く救えそして生きて戻れ命令だ、以上」
13分後キャノピー越に赤く染まる空がハッキリ見えだすとパイロットが言った。
「火山灰を吸うと機が保たない、自分の判断で着陸する、よろしいか?」
「どのくらいまで寄れますか?」
佐久間が聞く。
「噴火から20分以上経過している、そろそろ噴き上がった火山灰が降下している⋯近付けても2、30km程度だな」
「了解した、迂回して南、富士市方面から低空で進入して下さい、多分救助拠点は富士市になると思います」
「了っ」
富士市より北西に位置する富士宮市は数年前の断層噴火で未だゴーストタウン、不幸中の幸いであった富士吉田市も当然救助へ向かうべきであるが東西を結ぶインフラは太平洋岸に集中している選択の余地はなかった救助拠点は富士市、機体をロールさせ地震被害も当然ありうる伊豆上空を通過して一路駿河湾を目指した。




