タイトル未定2026/04/27 01:58
少し雨が強くなり私はコンビニでビニール傘を購入しダメ元で一応店員に聞いてみた、名札にはカタカナで“シュンリン”聞いた後で後悔したが奇跡的に重要な情報を手にする事ができたのだ。
「ガンさんいつも一緒いる人ゆうじ言ってる」
ガンさん、裕二があの男と仮定するならあの大柄の男はガンさんと言われてるのか、いつもあの2人が一緒に居るとは限らないが大きな手掛かりに間違いはなかった私はその2人を探していてしばらく店内で待たしてもらって良いかと店員に許可を貰いコーヒーを追加で買うとイートインスペースで通りを叩く雨を眺めていた。
コーヒーを追加して更に2時間が経ったが彼らが通りにもこのコンビニにも現れる気配はなかった、しかし私は詰めの一歩手前にいる事に満足しており雨も止みそうにないので今日は切り上げて後日、再び訪れようと立ち上がると空のコーヒーカップをゴミ箱に放り込んだ瞬間ふと気付いた、あの簡易宿泊所、この下並木に何軒あるかは知らないが20軒もないだろうならばその全ての管理会社か管理人へ問い合わせばあの2人に行き着くのではないかと、私は店員に礼を告げると一番近い簡易宿泊所を訪ねた。
私は折角買った傘を忘れ走った、1分も走らずに最初の簡易宿泊所を見つけた、看板には“春風荘”何とも昭和感漂うネーミングセンス、いや建物の雰囲気からして春風荘と言うネームが違和感ない時代に建築されたのであろう私はとりあえず入口を覗き込んだ、蒲鉾状に波打つガラスの嵌まる両開きの木製扉、ガラスには金文字で“春風荘”と書いてある、そのガラスを指でなぞると掃除は行き届いている様子で指が汚れる事はなかった『ごめんください』と声を掛けて私は扉を開いた、蝶番がキーと鈍い音をたて開く玄関の床は玉砂利が埋め込まれた洗い出し、そこらじゅうに昭和感が漂う逆にメンテナス費は結構掛かるのではと心配になった、玄関からは土足厳禁なのか上り框で板張りの廊下が奥へ伸びていた、玄関を見回すと来客用のビニールスリッパがあるので私はそれに履き替えるともう一度『ごめんください』と声を掛け廊下に上がった、すると一番手前の扉が開き老婆が『はいはい、ちょっとお待ち下さい』と言いながら出てきた、アバンギャルドなカラーリングのニットセーターを着た老婆、足元はギャルを思わせるピンクファーのスリッパ何ともギャップのある姿だった、老婆は『お客さんかい、誰呼ぶ?』と聞いてきたので私は要旨を伝えた、すると老婆の表情はみるみる曇ってゆき『悪いがそれは答えられない』と突き放す様に言われた、確かに個人情報にうるさい時代、昭和の雰囲気漂うここでも当然それは心得ていたようで私は謝罪して靴に履き替え春風荘を後にしようとすると老婆が『悪い人には見えないが此処には色々抱えた人が多いからね気を悪くしないでくれよ』と言われた、もう一度黙礼して春風荘を出た、成程攻め方を変える必要があるとその日は川崎を後にして先生のいる病院へ向かった。




