道明寺 晶 Ⅱ
別に隠すほどの事ではないどこにでもある話である、この苗字に纏わる苦難に比べれば、小さい頃は良かった“道明寺”なんか難しい響きだけで聞き慣れれば気にする事はなかった、小さい頃で言えば“晶”の方が子供の心に引っ掛かるようで『男の子みたい』『男女』色々言われた、そして歳をとると共に今度は“道明寺”が引っ掛かり始まる、子供の様にあからさまには言われないがそれは日の当たらない日陰から聞こえてくる“道明寺”即ち“道明寺桜餅”なのだ、桜餅の地方名ではあるが大人になれば子供の情報量とは桁違いそれは容易に手に入る、それに付随して“半殺し”と言うワードが一人走りし始めもう取り留めがなくなる、世間はよっぽど暇なのだろうかそれとも憧れへの反抗心なのだろうか私に言わせれば“御手洗”の方が大問題であろうと思うが。
実際この名前のどうのこうのはどうしようもない我慢すれば良かったが私が小5の時に両親が離婚した、私は父に連れられ兄は母が心配であると母について行った、兄は本当に優しい人だ、そんな兄だが数年振りに突然『泊めてくれ』と現れたのだ、兄はコンサルタント業で結構な業績を上げ裕福な生活を送っていると聞いていたが現れた兄は痩せ細り何も食べてないのかと見紛うばかり、事業で失敗して借金生活でもしているのか私は咄嗟に『お金ならないよ』と言ってしまった兄は不気味な笑顔で手を振っていた、結局兄はすぐ眠りにつき母の事も聞かず仕舞い、明け方1人出て行ったテーブルには封をされた1万円の束と『最悪を想定して行動しろ』と書き置きを残して、こんなお金があるならホテルに泊まれよとは思ったが欲しいバッグがあったので喜んで使わしてもらったのは言うまでもなかった兄思いの出来た妹なのだ、しかし何故突然現れ100万円を残し兄は消えたのか暫く私は兄の名がないか気掛かりでネットニュースを良く覗いている。
まぁ俗に言うlightに複雑な家庭というやつなのだ、だから食後のトークはなるべく避けたいのだ、多分、この目の前にいるメダリスト『徳丸 由依』は順風満帆、家庭円満、叩いて出てくるものといえば小学生の頃一度遅刻したくらいだろう、別に羨ましくもないが逆に私の生い立ちを聞いて温室育ちの彼女はどんな反応をすべきか困るだろう私の嫌なのはそこなのだ私の中の事は私の中で処理できるが他人の中の事は手を出せないそれが嫌なのだった。




