タイトル未定2026/04/19 18:09
内心とは裏腹に列車は順調に運行すると最寄り駅まで3駅、憤りは駅毎に薄れてゆき代わりに諦めがカウントアップしてゆく、残り2駅、私は両手で吊り革を掴み大きな溜息を吐き項垂れた、その様はまさにタロットカードのハングドマン、これから執行される刑罰は如何なるものか自らが犯した罪なら贖罪もあるが身代わりではそれはただの痛み贖罪等一切生まれる事はない、最後の駅の案内看板が右から左へ流れてゆくホームの遮蔽物で西陽が明滅を繰り返し駅を抜けるとお待たせしましたと照り付けてきた、叶うわけもない願いを西陽へ唱えた。
『どうかあまり怪我人なく、あっ死者なんか絶対ダメですけど、そんな感じで⋯んんーやっぱ明日には普通に仕事できる程度で…とりあえず小さな隕石が降ってきて3、4時間一帯の社会活動が滞る、こんな感じでお願いします』
叶うわけのないと重々理解した上でも保険を掛ける小物振り、体育会系が聞いて呆れる小心者な私、なんとでも言え本当に起これば贖罪に押し潰されるのは嫌なのだ、一応確認の為に西陽差込む窓から目を細め空を眺めた、すると車窓の外が一瞬白い光に包まれた雷だと身をすくめた瞬間、激しいスキール音と共に車両が急制動、乗客は将棋倒しになりバタバタと車両前方に倒れ彼方此方で悲鳴が上がる、私も後方の乗客に押されたが辛うじて乗車口の空間へ逃げたがそこで不思議な感覚に襲われた咄嗟に掴んだ床から天井に伸びる長椅子両端にあるステンレス製の手摺が全身を押してくるのだ、そしてその手摺と扉の間にある空間に吸い込まれそうになる、何事かと必死に耐えていると目の前を男性が飛んでいった手足をバタつかせ飛んでゆく様子はアニメかマンガで見た飛空術を覚えたての者が慌てふためいてるようで少し面白くなり目で追った、すると男性は車両中央に出来た謎の壁にぶつかった、同時に壁がギャっと鳴いた、ここで漸くメルヘンの世界から抜け出した、手摺で頭でも打ったのだろうズキンと響くとそれが合図と言わんばかりに視界がハッキリした、壁と思われたそれは紛れもなく壁ではあるのだがしかしその材質は人、人間の壁だったサッカーのフリーキックで見せるそれではない例えるなら生乾きのコンクリートの壁に人を埋め込んだそんなおぞましい壁であった上半身を壁から出す者、下半身だけを晒す者、概ね手足が壁から露出していた、先程までけたたましく鳴り響いていた鐘の音も止み聴覚も正常になるとその壁からは叫び声、呻き声、悲鳴が合唱のように響いていた。




