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場当たり  作者: 真鍋
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庄崎

 シャワーで濡れた髪が傷に触れると電気が走る様に痛んだ、まだ皮膚は強張り違和感があるし多分もう一度は植皮術を施す事になるであろう、背中の火傷は深達性Ⅲ度熱傷であった、右の肩から右肩甲骨、背骨辺りまで広範囲に広がっていた自然治癒は難しく植皮術を施術するのだが熱傷部が余りに広範囲で自己移植は困難と自家培養表皮細胞シートによる培養表皮移植術を施術した、しかし培養シートが完成するまで1ヶ月以上時間を要しその間、私は感染症を防ぐため無菌室に監禁された、火傷では死に至らずその後に細菌感染症で死ぬならばそれはそこ迄の命、私の命だ私の好きにさせてくれ正直、私は疲れているのだ死が救済になるとは思わないが(わずら)わしい世界からは解放される、まぁ彼方(あちら)の世界があるのなら手ぐすね引いて待っている連中は多いであろう、結局生きようが死のうが煩わしいのだ、まったく何の為に産まれて来たのか、父も母もいないと言うのに。


 しかし感謝はしているあの時、慈照様が私を守ってくれていなければ不細工な消炭と化していた、あれから目覚めたのは病院のベッドの上だったあの胴抜きで倒せたとは思えない、ならば慈照様はどうなったのだろうか、慈照様にも付き人がいた私同様逃げ仰たのだろうか『(わたくし)が必ず弱体化させ私が赴き必ず祓いますのでご心配なく』あの男へ言った言葉、もし生きているならお笑い草である、しかも敵前逃亡の挙句、車まで盗んだのだ、もし死んでいたなら確実に怨霊となり私の元へ現れるだろうその時は謝罪して苦しむ事なく送り届けるとしよう。


 壁に両腕をつき目の前の鏡を眺める、鏡は白く曇っていて何も見えない、私は息を吹き掛けると途端に鏡面はクリアになり水滴がツーっと滴る、水滴が通り過ぎた鏡にはいつもの不細工な顔が不細工な表情でこちらを見ていた、この顔には本当に嫌悪感しか抱かない左瞼は眼輪筋が切断され半分閉じている予期せぬ時に涙が落ちる事もある、私は傷を指でなぞる『綺麗な顔なんだから形成外科で治して貰いなよ』などと簡単に言う奴も多い、私は表面上“厚生労働省、職業安定局、障害者雇用対策課、第三分室”に勤めている中央合同庁舎第二号館地下2階にそれはある、刑事物ドラマ等でよく見るあの建物の隣だ、他の職員からは顔の傷を見れば成程な部署と思われているのだろう、だから私は敢えて傷を隠さない、顔だけではない私の身体は傷痕の総合商社である皆は気付いていないだろうが両手合わせて3本の指を失くしているシルキャップ(手指義手)の技術革新で本物と見分けは殆どつかない実際、表の仕事で役に立つ事があるのは複雑であったが。

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