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みどりの世界  作者: あさぎ
【第一のゲーム】ファンタジーの世界 〜傲慢のエミィ〜
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2.呆れるほどに馬鹿な人

 


 今日も大量の報酬を持って帰る。

 予定よりだいぶ早く終わってしまったので、まだ日没まで時間があった。

 せっかく晴れてるんだし、家にいるのももったいない。どこか散歩でもしよう。


(そうだ、森へ行こうっと。仕事以外で最近行ってなかったから……そうと決まれば、暗くなる前に早く行かなきゃ!)


 エミィは家に着くなり、やんちゃな子供のように荷物を乱暴に中に放り投げるといそいそと近くの森へ向かった。

 そういえば、今ちょうどペガサスの子供が生まれてくる時期だ。子供はまるで子犬のように懐っこく目がくりくりとしていて可愛い。


 彼らは森に住んでいるから、散歩中にそんな可愛らしい子供の姿が見れるかもしれない。

 そんな期待に胸を膨らませて森を散策していると、どこかから甲高い悲鳴が聞こえた。




 声の元に駆けつけると、まだ幼い少女がカラスのような黒い鳥の魔物に囲まれていた。魔物に怯え、頭を抱えて震えながら座り込んでいた。


 エミィは杖を振り炎の渦で散らばる魔物達をまとめて巻き込むと一気に爆発させた。

 周りには黒い羽が飛び散り、焦げた塊がいくつか地面にぽとりぽとりと落ちた。

 あまりに一瞬の出来事で少女は何が起きたのか分からずしばらく唖然としていたが、助けてもらった事に気づくとエミィに駆け寄ってきた。


「……あ、あの!助けてくれてありがとうございます!」

「たまたま気が向いただけよ」

「怖い魔物達があんな一瞬でやられちゃうなんて……」

「あなただって頑張ればできるようになるわ」

「えっほんと?わたしもできる?」

「うん。もう少し大きくなって……学校でたくさん練習すればきっと強くなれる」

「ほんと……?!ほんとに、ほんと?!」

「ほんと」

「わぁ……やったぁ!」


(違う。本当は練習でも何でもない、この杖のおかげ……)


 あまりの強さにみんなから恐れられるようになった今。

 でも、本当の私は違う。こんなに強くない。


(私にできることは……私の存在意義は……魔物の討伐、ただそれだけ。それだけのために生きてる。だから、みんなのために私は戦わないといけない……)


 エミィの心の内には複雑な感情が渦巻いていたが、何も知らない少女は嬉しそうな顔で帰っていった。




 エミィは気を取り直しさらに森の奥へ。

 さわさわと葉っぱの揺れる音と共に気持ちの良い風が流れてくる。たまに胸一杯に空気を吸い込み深呼吸しながら歩き続けた。

 ふと木々の隙間から向こうのほうに泉があるのが見えた。喉が渇いてきたのでちょうどよかった。


 泉は日の光を反射し輝いていた。

 水は透き通っていて底を泳ぐ小魚まではっきり見えた。

 水のせせらぎに癒されていると背後でチャリ、と金属のような音がした。


 何者かが後をつけて来ている。


 先程から薄々何か気配を感じてはいたが、敵意は感じられなかったのでたいして気にしていなかった。

 変わらず戦意や殺意は無いのだが、静かにじわじわと距離が縮まって来ている。


 泉に着くのが先か、その何者かに遭遇するのが先か。杖に手を添えわずかに緊張しながら歩く。




 しかし、結局何も無く着いてしまった。


(なんなんだよもう、誰なの?!要件あるならさっさと来いっての!)


 しかし物音一つしない。

 だんだん、なんだか待つのも面倒になってきた。

 目の前は泉、屈んで水を飲もうと思ったその時……やっと木陰から現れた。


「こんにちは」

「げっ!」


 重そうな鎧に身を包んだ背の高い騎士。金色の綺麗な長い髪を後ろで一つ結びしている。

 端正な顔立ちでその穏やかな笑顔に騙されそうになるが、コイツはヤバい奴なのだ。


(うげ……また来たのかコイツ!)


 あれは一年前の事だ。

 吹雪の雪山で遭難し凍死寸前で倒れていたコイツを助けた……いや助けてしまったのだ。今思えば放っておけば良かった。


「いや〜奇遇ですね。こんな所で会うなんて……」

「いやそれ、わざとだろ……奇遇も何もアンタが追いかけて来たんだから」

「しかし、こんな薄暗い森で一人出歩くなんて……そろそろ日も暮れます。危ないですからお供いたしましょうか?」

「それが言いたいだけだろ、絶対」


 あれからずっとこうやってたまに現れてはお供させてくれとうるさいのだから、溜まったもんじゃない。


「そもそも、自分の仕事はどうしたんだよアンタ。隣国の騎士だろ?それも隊長だかなんだかいい身分の……」

「え?ああ……辞めましたよ、先日」

「は?」

 何言ってんだコイツ。辞めたって……おいおい正気か。

 収入が無くなるのもそれなりに大問題だが、それ以上に騎士辞めたって事は国を捨てたも同然だ。今のコイツはもはやその辺の盗賊やら蛮族と同じ。自由なんてレベルじゃない。


 それに騎士って事はそれなりの家柄だったはず。家族までほっぽって来やがったコイツ。


「……頭大丈夫か?」

「……!私の心配していただけるなんて……なんてありがたい……!」

「いや、そうじゃなくて……馬鹿じゃないのって」

「ははっ、そりゃ仲間に散々笑われましたよ。親族からは勘当されましたし……」

 もはやここまでくると言葉が出ない。頭が痛くなって来た。

「さあ……一緒に、参りましょう?」

 こちらに手を差し出してくる。手袋をはめた、エミィより一回り大きい手。


「……なんか興が冷めちゃった。じゃあね」

(誰がお前の手なんか取るか、ば〜か)


 近づいてくる手を振り払い杖に跨ると急加速。

 アイツは魔法は使えないから追って来れない。ば〜かば〜か。ざまぁみろ。




 上空から米粒くらい小さくなった彼の姿を一瞥するともう一度聞こえるように大声でば〜か!と言って家に帰った。


(あ〜あ、ほんとはもう少しゆっくりしてたかったのになぁ)




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