サイドストーリー② カナ 〜いるけど、いない〜
香奈は中学生だ。
暗い性格で、いつも前髪を長く伸ばして顔を隠している。
香奈は毎日クラスで一部の女子からいじめられていた。
彼女達は担任や先生の前では常に従順な良い子だった。ある意味とても賢かった。そのため、香奈が何度被害を訴えても全く信じてもらえなかった。
女子達は様々な手口で香奈を苦しめていた。
無視や文具を盗むくらいは当たり前、授業中椅子の背もたれの隙間から背中を蹴ったり、給食のスープに消しゴムのカスを入れたり……挙げればきりが無いくらいだ。
美術部だった香奈。絵が得意で顧問の先生からも褒められていたが、描いた絵はいつもコンクール前に破られ出品されなかった。
友達はいない。みんな自分が狙われるのが怖いから。
最後の望みをかけて両親に相談したが、最大の関心事は成績についてだけだった。
『あんたは来年受験するんだから!変に騒ぎ起こして通信簿に何か書かれたらどうするの!』
香奈本人の気持ちなど全く聞こうともしなかった。
同じ中学校でも他の皆は地元の商業高校に進学するが、香奈だけは隣の県の進学校を目指していた。
それは両親の希望だった。母親はいわゆるお受験ママで、香奈の心よりもテストの成績やいかに他の親に自慢できるかが最大の関心事だった。
(もう、誰も分かってくれないんだ……)
休日の朝、香奈は友達と遊んでくると嘘をついてお小遣いをもらい電車で樹海へ向かった。
鬱蒼とした森の中を歩くと少し心が落ち着く。
途中で何人かに呼び止められた。きっとそういうボランティアなのだろう。
まだ若い、希望はまだある、私が味方、などと色々言われたが香奈の心には全く響かない。
ただただうるさいだけだった。
(騒々しいなあ……)
みんな決まって追いかけてくるので、その度に走って逃げた。お年寄りばかりだったので逃げるのはたいして難しく無かった。
そうこうしていると、日が暮れて森が真っ暗になってきた。
木が多く、月の光すら入ってこない。
地図用に持ってきた携帯には親からのLINEや電話の通知がいっぱいになっていた。
今頃警察に捜索願いを出している頃だろうか。
(そうやって心配しているふりをするのも、世間体のためなんでしょう?)
(私の事なんて見ようともしないよね、二人とも)
香奈は樹海の奥へと消えていった。




