サイドストーリー① アオイ 〜独り〜
葵はワンルームのアパートで一人暮らしをしていた。
特に趣味もなければ彼女もいない。もちろん結婚もしていない。夜遅くまで、酷い時は日付が変わるまで残業して寝るためだけに家に帰る毎日。
休日は日曜日だけ。疲れて寝ていたいので色々な誘いを断り続けていたら、いつの間にか友達がいなくなっていた。
今はちょうど帰宅したところだが、時計は夜中の二時を指していた。辺りは静まり返っている。
帰る途中で買ったコンビニ弁当をテーブルに置くと、携帯が鳴る。
高校の同級生からLINEが来ていた。
最近全く連絡取ってないから、内容は見なくても分かる。どうせ結婚式の招待だろう。
(人数合わせなんだろ、どうせ)
テレビをつけて温かい弁当を頬張る。
毎日ローテーションで選んでいるが、安い弁当なんてみんな同じような味だ。
たまに何を食べているか分からなくなる時もあるが、そんなのどうでもいい。腹が満たされればそれでいい。
自分の周りはほとんど結婚し、中には子供がいるような奴もいる。
それと比較すると……自分の人生ってなんだろう?
虚しさが込み上げてくる。
いつも疲れていて何をやっても今ひとつ楽しめない。そんな人生をずっと今まで送ってきて、これからも死ぬまで続くのか。
俺は何をしているのか。この先独りで老いていくのか。
弁当と一緒に買った安い缶酎ハイのタブを開ける。気持ちが滅入ったときはこれだ。
爽快な味で飲みやすくジュースのようにゴクゴク飲めるタイプ。さっさと酔える。
ふとテレビの脇に立ててある写真が目に入った。就職祝いと称して大学の友達数人と山登りに行ったときのものだ。
写真の中の自分は楽しそうに笑っている。あの時はこんな未来など想像もしていなかった。どうしてこうなってしまったんだろう。
弁当を食べ終わり、風呂に湯を張る。
いつもならシャワーで済ませるが、今日はなんとなく熱い湯に浸かりたくなった。
湯船に体を沈める。ざばざばと溢れた湯が排水溝に吸い込まれていく。
酔いと熱めのお湯の相互効果ですぐに体の芯まで暖かくなり、段々と眠くなってきた。
(あ〜あ、)
(もう俺の人生どうしようもねぇじゃん)
(何してんだろ俺)
(このまま一生目覚めなきゃいいのに……)
体を低くし、肩まで湯船に沈める。暖かくてふわふわとしていい気持ちだ。
周りの景色がぐるぐると周り始め、まるで異世界に迷い込んだよう。
意識はそこで途切れた。
彼の体は静かに沈んでいき、その後戻ってくる事は無かった。




