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始まり(裏)
(よしよし、上手くいった!これで後は……)
満月の夜。
アパートの壁をすり抜けて少年が出てきた。そこは三階だが、彼は宙に浮いていた。
彼は悪魔。厳密に言うと夢魔だが。
今ちょうど、一人の人間をゲームに誘う事に成功したところだ。
「おい、遅いぞ!」
ふいに偉そうな鋭い声がした。
声の主は同じく宙に浮いていた。銀髪の背の高い青年だ。眉間に皺を寄せイライラしている。
「ああ、待たせたね。契約完了だよ」
「いつまで待たせる気だ!全く、俺が行けば一言ですぐ済んだと言うのに」
「脅しは駄目だよ。契約どころじゃなくなっちゃう」
「ふん!面倒な生き物だな、人間は!」
「そんな事よりこれからどうするかだよ、これは彼女と僕の勝負であり……」
「私とお前の勝負でもあるからな!」
「うん、そう。彼女の勝利は君の勝利……この世界は終わる」
「ふふっ。あの人間、その内に強い闇を感じる……これはなかなか期待できそうだな」
「でも、もし僕が勝ったら……そのときは……」
「ああ、分かってるさ。そのつもりだ」
「ありがとう。やはり持つべきものは友、だね」
「ふん、では私は結果を待つとしよう」
「うん、ゆっくり待っててね。時間かかるから」
「待つのは苦手なんだがな」
二人の姿は夜の闇に溶けていった。




