サイドストーリー❷ わたしとわたし達
『アテナタイプ、試験終了……』
モニターの向こうから声がした。
プシュッと空気の抜けるような音がして、体に付けられた吸盤とコードが勢いよく外される。
今日も無事終わったみたい。
「データが取れたぞ、ありがとう。今日はもう疲れただろう?帰ってゆっくり休んでくれ」
「はい、マスター」
わたしはアテナ。ここで造られた造竜の一人。
今日は体の耐久試験をした。
燃え盛る炎の中に飛び込んだり、電気椅子に座ったりする事から始まって……刃物で切りつけられたり皮膚や爪を剥がされたりした。
暑かったり寒かったりビリビリしたり……
もう慣れっこだけど。
皮膚とか爪はちょっと痛いし血がいっぱい出るからびっくりするけど、すぐまた元に戻るから平気。
何しても全然大丈夫。
わたしはそう造られているから。
今いるここは、ラボっていう名前。前にマスターが教えてくれた。
黒い壁の暗い部屋。パソコンの画面がつくと光が周りに広がって眩しくなる。
わたしはここから出た事ないけど、外はもっと明るいらしい。すごいな。目がしょぼしょぼしたりしないのかな。
試験の部屋から少し離れたところに『わたし』と『わたしたち』の部屋がある。
部屋にいっぱいあるガラスの柱みたいな装置。これがわたしの寝る場所で、何もないときはいつもここにいる。
綺麗な黄緑色の水が流れてるから、立ったまま入ってぷかぷか浮くの。気持ちいいんだよ。
わたしの部屋にはこの装置がいっぱいあって全部わたしがいる。
わたしたちはクローンなんだって。ここのどこかにいる『わたし』のコピーなの。
わたしよりその『わたし』は賢いんだって。
オリジナルだから。
わたし、難しいことよくわかんないけど……その『わたし』ならきっと何でも分かっちゃうんだろうな。すごいや。
マスター達もいっぱいいるけど、ちょっとずつ違う。
マスター達は『研究員』っていって、みんなオリジナルなんだって。わたしと違って。
わたしに初めて話しかけてくれたマスターとその次のマスターは『駄目になっちゃった』から、今はどこかの部屋の檻の中。
今のマスターもそろそろ『駄目になっちゃう』気がする。
またお別れかな、嫌だな。寂しいもん。
でもお薬がいっぱいになってきたから、そろそろだと思う。
綺麗な色とりどりのお薬。マスターがポケットにいっぱい持ってるやつ。
最初は一個ずつゆっくり飲むのに、そのうちいっぱいジャラジャラ口に放り込むようになって『駄目になっちゃう』の。
あんなに綺麗なのにな。何が駄目なんだろう。




