表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第7回HJ大賞応募作】あなたを殺したのは私です―死んだ教師が暴く、最後の真実―  作者: 鷹司 怜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/28

【第四章 五年前の少年】  『第18話 救済の代償』


 地下保管庫に沈黙が落ちた。


 二十五年前の写真。


 三浦修司。


 高坂正人。


 そして当時の校長。


 三人は肩を組み、楽しそうに笑っている。


 まるで親友同士のようだった。


「高坂……正人」


 教頭が呟く。


「遼君のお父さんですか」


 美咲が尋ねる。


 教頭はゆっくり頷いた。


「そうです」


「ですが、彼は元々この学校の生徒でした」


 全員が息を呑む。


「卒業生……?」


「しかも優秀でした」


 教頭は写真を見つめる。


「成績優秀」


「スポーツ万能」


「教師からの信頼も厚かった」


「そんな人が」


 美咲は言葉を失う。


 虐待をする父親になる。


 簡単には結び付かない。


「何があったんですか」


 教頭は答えなかった。


 代わりに写真の裏面を見せる。


 そこには一行だけ書かれていた。


『約束を忘れるな』


 神谷の胸がざわつく。


 約束。


 誰と誰の。


 その時。


 結衣が写真を見つめながら呟いた。


「私、この人を知っています」


 全員が振り返る。


「え?」


「高坂さんのお父さんじゃありません」


 結衣の指は三浦を示していた。


「私が一年生の時」


「学校に来ていました」


 神谷の顔色が変わる。


「三浦が?」


 退職したはずだ。


 十二年前に。


 だが結衣は首を横に振らない。


「見ました」


「職員室の前で」


「教頭先生と話していました」


 教頭の表情が固まる。


「それは……」


「どういうことですか」


 美咲が詰め寄る。


 長い沈黙。


 やがて教頭は観念したように息を吐いた。


「三浦は退職していません」


 全員が凍り付く。


「正式には」


「退職扱いです」


「ですが」


「今も学校に関わっています」


 美咲の背筋が寒くなる。


「どういう立場で」


「外部相談員です」


 その言葉に神谷が怒鳴った。


 もちろん誰にも聞こえない。


「嘘だ!」


 外部相談員。


 そんな名前は聞いたことがない。


 何かを隠している。


「本当のことを言ってください」


 美咲も追及する。


 教頭は苦しそうな顔をした。


「私にも全部は分からない」


「ですが」


「三浦は二十五年前の事件を知っています」


「事件?」


 教頭は頷く。


「一人の女子生徒が亡くなりました」


 地下室が静まり返る。


「事故として処理された」


「しかし」


「本当は違った」


 神谷の胸が激しく脈打つ。


 まただ。


 事故として処理された死。


 朝倉結衣。


 自分。


 そして二十五年前の少女。


 同じ構図だった。


「神谷先生は」


 教頭が続ける。


「その事件に辿り着いたんです」


 美咲が息を呑む。


「二十五年前の事件が」


「全ての始まりでした」


 その瞬間。


 神谷の頭に閃光が走る。


 思い出した。


 橋の上。


 死の前夜。


 自分はUSBを握っていた。


 そして。


 誰かに言ったのだ。


『二十五年前と同じだ』


『また隠すつもりか』


 その相手は――


 三浦修司。


 神谷の顔から血の気が引く。


 その時。


 地下保管庫の奥から風が吹いた。


 誰も開けていないはずの棚。


 そこから古びた封筒が落ちる。


 表紙にはかすれた文字。


『事故報告書』


 そして。


 その下に書かれた名前。


 白石千尋


 死亡年月日。


 二十五年前。


 全ての始まりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ