17.本当は〇〇な童話
【side:マコ】
「三匹の子豚ってさ、腹黒三兄弟のぽっちゃり攻と俺様ヘタレ狼の受の話だよね」
疑問符がないカナの言葉に即座に否定する言葉は出てこず、一瞬だけでも「そうかもしれない」と思った私はかなりカナに毒されていると思う今日この頃。
突飛な彼女が読んでるのは「本当は怖い童話」というちょっと昔に流行った内容。
懐かしいという理由だけで図書館から借りた本である。
大学生の私たちに自由にできるお金というのはそんなに多くない。しかもカナはそのほとんどを趣味に費やしている。
その趣味の為の資料集めに図書館はうってつけなのである。
なにしろ、市民という理由だけで最大十冊を二週間も借りることができる。
最近の図書館の蔵書数とジャンルは目を見張るものがある。絵本から歴史、趣味、辞書を始め、時代小説からライトノベルまで置いてある。BL、TL関連まである。
大学のレポート作成にも、漫画の資料集めにも重宝している。
まぁ、それ以外でも色々と借りる本は多い。
カナが今読んでいるのが「本当は怖い童話」で、私が読んでいるのが巨匠の時代劇シリーズだ。
チョイスがカナらしい上に、その感想もカナらしい。
「アリとキリギリスもさ、陽キャなキリギリスを陰キャなアリが冬中囲い込むって話でしょ。北風と太陽なんてNTR?奪い愛?童話って意外とエロいよね」
いいえ、全く?と言えない自分がいる。
極端すぎない?とかキリギリスの陽キャは分かるけど、アリって陰キャかな?とは思う。
大抵のBLって、陽キャが攻で陰キャが受だよね。
ボサボサ黒髪を切って、黒縁眼鏡を外したらやたらと美少年で、そんな陰キャくんを陽キャくんがプロデュースして変身させて溺愛していくっていうやつ。
最近そんなマンガを読んだわ。しかもカナから借りたやつだわ。
カナさん、未来予知でもあるの?この話を振るための準備とか言わないでよね。
……そんなわけないか。カナから借りる(強制的に借りさせられる)マンガや小説はそんな話がたくさんあったし。
「まぁ、童話ってもともと民話とか逸話とかの寄せ集めでしょ。完全に子ども向けじゃないからさ」
「あー、大人の話か。まぁ、ラプンツェルとかそんな感じだもんね。私も、子どもの時から白雪姫の王子はヤバい変態だと思ってたけど間違いじゃなかったね」
「変態って」
「だって死んでる姫に一目惚れしてキスするようなやつよ?ヤバさ全開。生き返ったら興味無くすかと思ったのに連れ帰るし。王子の趣味がわからない」
「ウケる。王子が屍体愛好家確定になってる」
白雪姫かぁ。確かに、王子が一目惚れした姫は屍体だったんだよね。
「屍体じゃなければいいんじゃない?白雪姫が七人の小人に追い出されてから出会ったとか?」
何気なく言った言葉にカナの顔が一瞬真顔になったかと思うと、ぶつぶつと何かを呟き出した。
あー、なんかイッてる。
今、頭の中で色々と妄想してるんだろうな。
そっとしておこうと、続きを読みだして一行で名前を呼ばれた。早い。
「白雪姫は魔法のリンゴで男に体を変えられちゃうんだよっ。男になった白雪姫を七人の小人が追い出して、泣きながら森を彷徨う白雪くんと王子が出会って恋に落ちるのよ。へっぽこ王妃のせいで上半身しか男に変化してなかったから、白雪くんはちゃんと王妃になるの。そして、同性愛推進委員会の後援を得て同性での結婚と、同性でも子どもができる魔法の開発に勤しんで発展させていくのよっ!!」
どうして世紀末覇者のポーズを取るのか。
そういえば、あの濃い絵柄のマンガで、覇者の兄×医者の弟で萌えていた。
彼女にNGはあるんだろうか。
「そうなると、小人が悪人だよね。小人のくせにノーマルとか生意気な。白雪が男になったことで、小人たちのカップリングに乱れが出てくるってどう!?自分たちの平和を乱す白雪を泣く泣く追放。小人たちがカップルだったなら白雪姫の貞操が無事なのも納得いくでしょ」
スケブに相関図まで書き出したよ。
落書き絵まで書き出しちゃった。
まぁ、楽しそうだからいいか。
椅子に座り直した私は、鉛筆の音を聞きながら小説の続きを読み始めた。
マコ「三匹の子豚が攻なの?」
カナ「肉食動物が雑食動物に、でろっでろっに攻められる下剋上って萌えるじゃん」




