13 合鍵
【side:マコ】
まるで自分の家のようにくつろぐカナに麦茶を出して座る。
DVD鑑賞の為にテレビを点ければ夕方のワイドニュースをやっていた。関西弁の芸人が街ブラしていた画面が突如緊迫した表情のアナウンサーに変わった。
電車の脱線事故らしい。横倒しになった車両が映し出されている。
アナウンサーは感情を抑えるように淡々と現在の事故の経緯や死傷者を伝えている。
なんだかDVD鑑賞な雰囲気ではなくなった。
どうしようかとカナを見ると、カナはいつになく真剣な顔をしていた。
「……事故っていつ遭うか分からないし、人間っていつ死ぬか分からないもんだね…」
思い詰めたような真面目なカナの言葉に頷く。
「そう、だね。……うん。予想なんてできないね」
「事故なんて、年とか病気なんて関係ないじゃん?私だってもしかしたら明日事故に遭うかもしれないんだよね」
「そうだね。この電車に乗っていた人たちみんな事故に遭うなんて思ってもみなかっただろうしね」
番組は現場近くでリポーターが現状を伝えている。
亡くなった方や重症者が少しでも少なければいい。縁もゆかりも無い人達だが心からそう思う。
一通り伝え終わった後はスタジオで別のコーナーが始まっていた。急に明るくなった番組が気まずくて消してしまう。DVDは後からでもいいや。
「マコちゃん。あのね、うちの合鍵を持っててもらえないかな?」
「え?どしたの、急に」
キリっとした顔で告げられて、意味もなくドキッとした。……いや、恋とかではなくて。
カナの突然の言動に身構えるというか、まぁ、条件反射?
「私ね、気づいたの。もし、事故とか事件で急に死んだりしたら、家族に連絡いくよね?」
「そうだね」
「そしたら、家族が私の部屋を片付けるのよね?」
「そうだ……ね……」
カナの部屋を思い浮かべて、言わんとしている事がなんとなく分かった。
「ヤバいのよ。オタクなのは知られてるの。そこはいい、そこはいいのよ。でも、趣味の物あれこれを見られちゃうのよ!!」
あー、うん。アレは、うん。
「BLの商業誌、同人誌はまだギリ良い。烈くんグッズも祭壇も良い。むしろ拝観して拝め、崇めたつ祀れ。
でも、本の在庫。ネタ帳。資料として集めたヤバい画像と動画。オタ仲間から貰った薔薇や百合を始めとするアダルトゲームの数々とアダルティな資料道具。アレを家族、ましてや警察官なんかに見つかるワケにはいかないのよ!!」
鬼気迫るカナの気持ちが痛いほどよく分かってしまう。
それは自分にもあるからだ。絶対に人には見せたく無い、見られたく無い物が。
カナの言い分にわかりみしかない。あんなものを死後暴かれると思えば、死んでも死に切れない。
「だからと言って生きてるうちに処分なんて無理っ!全部要る物なんだもん。私の魂が削られるっ。
だから、マコちゃん!私に何かあったら真っ先に荷物を運び出して!!お願いっ!
優先順位は書き出して渡すから。出来たら、烈くんグッズと聖書は一緒に棺に入れてください」
両手をガシっと掴んだカナがググッと顔を近づけてくる。
普段なら「近い」と引き剥がすところだが、その手をギュっと握り返す。
「請け負ったわ。ただし、カナ。私の時もお願いね」
一瞬だけ目を見張ったカナは、次には決意に満ちた笑顔でしっかりと頷いた。
「もちろんよ」
今、二人は同志だった。過去最高に同じ気持ちを分かち合っていたと言える。シンクロ率が200%を超えていると本気で思えるぐらいに。
後に、この同盟にリカが加わる事になる。
カナ「マコちゃんの一番ヤバい物って何?」
マコ「中二の時に書いたポエムノート……」
カナ「それな(禿同)」




