14.異世界設定
【side:カナ】
イズ イスト エニィ アルト ゲシュヒェンツ. エィン ベーカー カム ズェンニェン アーメル アルツェン エフェッパー. ダズ ギュザンジィ アルト エフェッパー ヴェアミッター ダズ ベン アン デェン ベッター, シィヴェルディ マールフェンティン ウニ ゲス イッヒェン エニィ ベッツ.
スクロールしても延々とカタカナで埋め尽くされたスマホ画面をホームに戻す。
連絡用のアプリで「RIKA」にメッセを送った。
「なに、あのカタカナの羅列」
ーー「エダン語で書いてみた」
5分も待たずに来た返事に首を傾げる。
「意味不」
ーー「新作の『マリオネットの復讐』の世界言語」
「は?」
ーー「長くなるから電話する」
直後にリカちゃんから電話が掛かってきた。
はやっ。
「おつおつ」
『おつ。まぁ、聞いてよ。先週さ、連載してた悪役令息の話にウザい感想が付いたんだけどね。
サンドイッチの由来をつらつらと書いて、異世界にはサンドイッチ伯爵はいないと思います。とか、日本の諺や比喩が出てくるのはおかしい。そもそも歴史とか建築物とかちゃんと考察してますか?中世と近世は違うんですよ。その辺分かってますか?異世界物を書くなら世界観をキチンとしてください。
って、長々と蘊蓄混じりの批判でさ。すっごい、ムカついたんだよね。なので、ドイツ語を基にした異世界言語を作ってプロローグだけ書いてやったってワケよ』
予想外な答えに「うぇぇぇ」って変な返事しか、出来なかった。
ムカついて言語作るってどゆこと。
ああ、だからあらすじに「◯◯様。貴方の為に書きました。異世界言語が表記出来ないので、出来るだけ似せたカタカナで書いております。頑張って読んでください」って書いてたのか。
『感想は拝聴するけど、批判はただただ腹が立つわ。誰も校閲なんて頼んでないって言うのよ!私が作った異世界の何を知ってんだっ!サンドイッチ伯爵がいなかったとか証明できるのか!って思うでしょ。
そいつさ、友達のとこにも「遊郭にそんな制度はありません」とか「遊女の生活や階級をもっと勉強してください」とか講釈垂れてたんだけど、歴史物を書いてるならともかく江戸風ファンタジーに実際の歴史を当てはめんなっての。つーか、正確に言えば、遊女じゃなくて蔭間だしね。ああいう勘違い野郎ってホント嫌いっ』
ヒート状態で悪態を吐くリカちゃんに「分かる」「そうだよねー」と相槌を打ちながら、リカちゃんの有能さに感心してしまう。
だからって、言語作っちゃうもん?凄いなぁ。
「でも、せっかくの新作なのにちゃんと読めないの?」
『まさか。ちゃんと書き終えたら翻訳版を投稿するわよ。気が済んだらアレは消すけどね。言語作るのも意外と楽しかったし。もういいわ』
良かった。新作読めないのはヤだもんね。あれを翻訳する気はさらさら無いしー。
気持ちが分からん事もないが、リカちゃんって好戦的だよね。そこもカッコいい。うん。
あぁ、ケンカップル描きたくなった。不良×不良?いやいや、ヤクザ×リーマンでもいい。なんなら逆も美味しい。ヤクザ(下っ端)×ヤクザ(若頭)の下剋上物も良い。
あぁ、迷う。
そのままリカちゃんとケンカップル話で盛り上がり、結局、運動部長×文化部長のDKケンカップルになった。
因みに、新作の翻訳版は無事に投稿され、例の蘊蓄さんは的外れな感想を書くもリカちゃんに放置されたらしい。合掌。
カナ「マコちゃんがいないと思ったそこの貴方!甘いわね、電話する私の後ろでパスタを作ってくれていたのよ」
マコ「誰に言ってんの…」
リカ「えー!いいな、パスタ。押しかければ良かった。無念」




