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11.喪中

【side:マコ】


『行っていい?』


珍しく文字だけの連絡を不思議に思いながら『いいよ』と文字だけで返事をした。

なんとなく、面倒な予感がしたけど気にしすぎかもしれない。そういう予感というものは漫画や小説では当たるが現実では外れる事が多い。


ちょうど夕食を作る前で良かった。夕食予定の炒飯は、2人分には足りないので冷凍餃子も焼こう。ついでにかきたま汁も作っちゃおう。

カナの家からうちまで30分ぐらいなので、今から作っても十分間に合う。


器に盛り付けテーブルに並べる。かきたま汁は来てから温めるので後。

飲み物は何にしようか。

冷蔵庫を確認しようと立ち上がると、チャイムが鳴り玄関からカナの声が聞こえた。

タイミングがいいのか悪いのか。

玄関を開けると黒のワンピースに真っ黒のパンプスとバッグという、まるで喪服の様な格好のカナが立っていた。しかも、外国の葬儀で女性が被っているレース付きの帽子、トークハットまで被っている。


「カナ………?」


顔を上げたカナは、悲しみに堪えているような辛い表情をしていた。

あぁ、当たるはずのない予感が的中した。これ、めんどくさいやつだ。

玄関に入り込むなり、カナは蹲って号泣し始めた。


「うぇぇ〜。りょーくんが……りょーくんが、死んじゃったぁぁぁ」

「ちょっ、とりあえず中入ってっ」


おいおいと泣くカナの手を引いて中に入れる。

こんなところを誰かに見られるのは遠慮したい。

手を繋いだままラグの上に座らせる。カナは取り出した黒のハンカチで涙を拭くが間に合わないぐらいの勢いで泣いている。

聞きたくないが、聞かないと進まないんだろうなぁ。


「えっと、……どうしたの?」


待ってましたとばかりに、カナが顔を上げた。


「聞いてよ〜!!りょーくんが死んじゃったのぉぉ!!先週、フラグは確かにあったよ?あったけどさ、裏をかくのが定石じゃん。なのに、普通に回収しないでよ。Lia picture(制作会社)のバカァ。

確かに、桂の腕の中で息絶えるとかグッとくるものがあったさ。桂を庇って斬られた時の桂のあの表情っ。咄嗟に受け止めて敵に反撃した時の表情の落差にキュンときたよ。りょーくんの名前を必死に呼ぶ涙声とその後の慟哭に全腐女子が涙したと言っても過言ではないはず!

あの挿入歌も良かった。走馬燈のように流れる2人の思い出。かぁらぁのぉ、りょーくんの囁く様な切ない独白。中の人が神すぎるっ。

認めるさ、ああ、認めてやるさ。泣いたよ。感激と感動に咽び泣いたさ。SNSでも呟いて共感者多数だと実感したさ。

物語的に間違ってない。盛り上がりもトキメキもあった。だが!!私の愛しのりょーくんが死んじゃったあぁぁぁぁぁ!!!」


おいおいと泣くカナにかける言葉が見つからない。マジ泣きなんだもんなぁ。

ああ、やっぱり面倒くさかった。

どうしたら泣き止むかな。と思案しながら、宥める為に背中をさすってあげる。

アニメの推しの死など、私にはどうしようもないじゃないか。


「カナ。炒飯と餃子が冷めちゃうよ?とりあえず食べよう?かきたま汁温めてくるから」


声をかければ「……炒飯」と呟く。食欲があるなら大丈夫か。

少し冷めた餃子をレンジで温めて、かきたま汁と一緒にローテーブルに並べる。

落ち着いたカナがもそもそと食べ始めた。

うん。食事は大事。食べる元気があれば大丈夫だとおばあちゃんも言っていた。


「あ〜〜、来週からりょーくん居ない現実に泣きそう。でも続き見たい。焦燥の桂が見たい。遅れて恋心を自覚したのに、相手は自分を庇って死んでしまうとか切な系。これもある種の純愛。そんな憂いのある桂に引き寄せられる小石川を希望。それでもりょーくんを想い続ける桂が尊い」


うん。口を挟むのはやめよう。せっかく浮上してるんだ。そっとしておこう。

このメーカーの冷凍餃子、やっぱり美味いなぁ。また買い足しておかなきゃ。


食べながらもしゃべるのを止めないカナの妄想は原作から逸脱してもはや薄い本のネタ語りになっている。

ミニノートを取り出してメモし始めたよ。

とりあえず、食え。


「あ、そうだ。マコちゃん週末ひま?」

「ん?今のとこ予定はないけど?」

「じゃあ、京都行こう!」

「………は?」

「りょーくんの元ネタになった坂本龍馬のお墓が京都にあるの。せめてもの慰めにお墓参りに行きたい。てか、行く!だから行こう!」


いや、待て。

元ネタって時点で坂本龍馬とりょーくんは関係なくない?

その為に京都に行くの?え?本気?


「舞台にもなったお寺もあるし、りょーくんと桂が歩いた小道もあるし、京都は聖地だらけなのよっ!しかも、しかもよ、京都の龍馬のお墓って中岡慎太郎と隣同士なのっ!萌えずにいられようかっ!」


ああ。カナの中では既に決定事項になっている。これ断るとめんどくさいやつだ。

京都かぁ。京都ねぇ。


「南禅寺の湯豆腐食べるなら行ってもいい」

「オケオケ。もちろんでござるよ。マコちゃんの行きたいとこピックアップしてね。よし!ご飯食べたら計画を練ろう。そうだ!京都に行きたいかー」


なんか色々間違ってる掛け声に苦笑いを返す。

北海道に行くつもりだったんだけどなぁ。

まぁ、京都もいいか。

スマホであれこれと検索して旅行の計画を立てるのはかなり楽しかった。



*作中の仮想アニメは新撰組や坂本龍馬たちを元ネタにした現代スパイ系。……たぶん。


マコ「喪服着てきたら帰るからね」

カナ「ええーーー!なんでーー!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 後片付けの手間を惜しまずに喪服を着るファンの鏡なところw [気になる点] 完全オリジナルアニメなんてそうそう無いでしょうから小説や漫画なんかの原作があると思うのですが、アニメからのファンで…
[良い点] 最初の1行目にして喪服のカナさん登場が読めてしまってもその後の展開に全く捻りが効いてなくても一切興ざめ感を与えない怒涛感が爽快でした^^; [一言] 更新ありがとうございます。 京都…三…
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