異国の夕日を眺めて
昼食後はタクシーを拾って南下。ショッピングモールで買い物してから島の南西岸、ウルワツ寺院へ赴いた。夕日の名所である。
ショッピングモールと渋滞で予定より遅れたが夕日の30分ほど前に到着した。観光客、タクシー、バイク、野生猿が多い。入場料を払って入っていく。古い石造寺院が断崖絶壁の上にあった。見下ろせば巨大な波が砕けている。風は弱いのに波が大きい。赤く断崖が色付いている。世界の果てだ。
これまた古い鉄格子の向こうに祭壇がある。
白人のお姉さんに頼まれて撮影してあげる。勿論言葉は通じない。勇司が積極的に話しかけている。やる気満々だなこの男。そして日没だ。
まだ暗くならない。
断崖脇の小道を歩いていくと遺跡のような円形広場がある。また通行料を請求される。祭事らしい。客席の上段に勇司と並んで座る。中央に炎の祭壇が揺らめいている。やがて客席が満ちた。
半裸の男たちが現れて祭壇を囲んで座る。歌い始めた。座したまま踊り始める。石畳を叩く。リズミカルだ。
悪魔と聖なる猿と住民の話らしい。
次第に暗くなり、祭壇の炎が鮮やかになる。
男たちが歌い続ける。参加の男は多く若いが、中年も輪の外側に少しいて、そこは少し適当で熱意が足りない。修三は祭壇にあがる炎を見ている内に、炎の向こうの客席のお姉さんと眼が合った。修三はじっと見てそれから少し笑った。なかなかの美人さんである。
やがて悪魔が現れて祭壇の周りを回る。男たちが恐れおののく。すると聖なる白い猿が輪の外からやってきた。修三は背中から猿に抱き付かれて驚いた。猿のぬいぐるみの中に優しそうな男の目があった。勇司が笑って撮影した。
この祭事、ケチャダンスという。
二人は夜の海辺に置かれたテーブルで夕食を取った。流しのバンドマンが押しかけてきて勝手に歌い、金を請求してきた。小銭で追い払った。
修三は部屋で登山の準備を始めた。勇司の登山靴、ヘッドライトなどの装備は、全て修三の予備品を充てる。しかし勇司がなんだか乗り気でない。
「本当に行くんですか」
「行く」
予定では24時に迎えの車が来て、2時くらいから登り始め山頂で朝日を見る。ホテルに戻るのは明日の正午だ。ガイドが案内してくれる。弁当はガイドが用意してくれる。アグン山の標高は3031m。バリ島の最高峰だ。
「そうか、まあ、そうだな、絶対に来いとは言わないよ。ホテルで待っててくれてもいいよ」
しばらく修三は勇司と話し合う。「わかりました、行きますよ」最後には勇司も覚悟を決めてくれた。
約束の時間、ホテルの玄関で二人が待っていると、白いワンボックスカーが現れた。




