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最初はのんびり

 インドネシアの工場に陽介が転勤して半年ほどが過ぎた頃。

 修三は、インドネシアのジャカルタ観光を計画したが結局はインドネシアのバリ島観光にした。ジャカルタからバリ島までは空路が主流。ジャカルタ近郊に住む陽介からは「行けないよ」と連絡があった。そこで、以前から話をしていた昔の後輩、勇司を誘い、五月の連休を利用して、午後10時バリ島のデンパサール空港に降り立った。でるなり真夏のような熱気が押し寄せて来た。南半球のバリ島はこれから乾期を迎え、過ごしやすくなってくる。世界中から観光客の来るシーズンだ。

 勇司が先に入国審査にトライする。彼は三度目の海外旅行で性格も物怖じしない。海外が初めての修三にとって実に頼れる男だ。丸暗記の言葉で修三もなんとか通過。

 滞在予定は5日間。修三はアグン山を登るツアーを予約してある。明日の夜、ツアーコンダクターが来る。他の予定は勇司に任せた。勇司は精力的に海や史跡、繁華街の情報を集めていた。

 ホテルは老舗で広大な敷地があった。古くとも驚くほど高級で、映画に出てきそうな雰囲気がある。天井で大きな扇風機がゆっくり回っている。百年くらい昔の南国植民地様式とでも言えば良いのか、伝統を感じる。とりあえず明日からに備えて休みたい。二人はライトアップされたプール脇のバーで軽く飲み食いしてすぐに寝た。


 朝。

 南国は朝から陽射しが強い。

 先に目覚めた修三が二階のベランダから木々の茂る庭を見下ろすと、灰色のリスのような小動物がうろちょろしている。椰子に登って近寄って来る。人をあまり怖がらない。風は予想外に涼やかだ。日本と違い湿度が低いのかな。

 やがて勇司も起きてきた。

 二人はプライベートビーチ脇を歩いて池の上の食堂へ行く。椰子の木が並んでいる。水平線が見える。波は静かだ。遺跡のような、しかしきれいなプールがある。朝から長椅子でゴロゴロタイムの白人男性がいる。何かの神様が祀られている。活発そうな、魔物のような神様だ。食堂の窓際に席を取り池と庭を眺めながら色々食べる。贅沢だ。

 午前中はプールやプライベートビーチでゴロゴロタイムを満喫した。何も考えない。無念無想。勇司はしばらくするとホテル内の探検に出かけて行った。修三は旅行前の慌ただしい日常との落差を思い溜め息をついた。日本人は働き過ぎる。ビーチを眺めていると勇司がナンパにトライするのが見えた。同じ飛行機で日本から来た二十代の三人娘だ。失敗していた。金髪の子供が走り回ってプールに飛び込んだ。平和だな。解放感がすごい。

 昼に街へ繰り出した。やはり観光客が多い。欧米人が多いようだ。

 スーパーに入ってみる。気でも狂ったようなピンクのスナック菓子がある。全体的に派手な色合いの物が多い。飲み物を買ったが現地紙幣の取り扱いに戸惑う。お釣りの端数を切り捨てるからだ。レジもタクシーも全て同じで、足りたのかどうか毎回計算が必要だった。どうも慣れなかった。

 テラスのある食堂に入ってみた。ミーゴレンという焼きそばを選択。英語は苦手だったが、単語繰返しと身振り手振りでなんとか注文。この地の焼きそばは甘くて濃く、実に旨かった。勇司はナシゴレンという焼き飯と煮魚?揚げ魚を食べたがイマイチだったらしい。ビンタンビールを注文。これも旨い。暑いところで飲むから旨いというタイプの甘めなビールだった。

 なんとも異国情緒がある。

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